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超高齢社会だから
急成長する日本経済』

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No.1477

 

 早いもので、もう今日から9月ですね。18日は「敬老の日」です。

 『超高齢社会だから急成長する日本経済』鈴木将之著(講談社+α新書)を読みました。「2030年にGDP700兆円のニッポン」というサブタイトルがついています。著者は1980年千葉県に生まれ。EY総合研究所シニアエコノミスト。2003年、慶應義塾大学商学部卒業。05年、同大学大学院商学研究科修士課程修了。08年、同大学大学院商学研究科後期博士課程単位取得退学、同年、第一生命経済研究所入所。14年から現職。専門分野は、マクロ経済・金融・産業構造の分析。著書に、『2060年の日本産業論』 (東洋経済新報社)があります。

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    本書の帯

 


 この読書館では、『未来の年表』『縮小ニッポンの衝撃』『限界国家』『絶望の超高齢社会』と最悪の未来予想図を描いた本ばかり紹介してきたので、少しは明るい未来も覗きたくなって本書を購入しました。その内容は、既にご紹介した『人口と日本経済』にも通じます。 カバー表紙では海辺のリゾート地でホットドッグを頬張る家族の写真が使われています。帯には「旅行、グルメ、住宅・・・新高齢者は1000兆円の金融資産を遣って逝く! 2016年の日本の個人金融資産は1800兆円! その約6割を持つ60歳超が経済を引っ張る」と書かれています。

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    カバー裏に書かれた内容

 


 カバーの裏には以下のような項目が並んでいます。

 

●高齢者だけの7つの消費行動

●流行をつくるのは高齢者の時代に

●高齢者の消費で現役の所得は増加

●高齢者ビジネスモデルを輸出

●相続も毎年50兆円規模に

●50兆円超の公的年金の購買力

●10兆円規模の利子所得も

●高齢者の消費効果は62兆円にも

●製造業も物流も変わる

●超高齢社会に対応する4つの産業

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    本書の帯の裏

 


 また、帯の裏には以下のように書かれています。

 

「本書で解説する『高齢者消費を起点とした若者を含む現役世代の成長』シナリオの効果を考慮に入れてみよう。これは、需要サイドからの長期的な経済成長を捉える試みである。消費や投資などの実質需要が2030年にかけて、36.3兆~62.2兆円拡大すると試算している。それをインフレを加味した名目に変換すると、41.7兆~71.5兆円となり、先述のベースラインである名目GDP(640兆円超)に加えると、681.7兆~72.5兆円となる。つまり、2030年に名目GDP700兆円の実現が視野に入ってくるのだ。もちろん、成長シナリオに転じることの難しさはある。しかし、成長できないのではない。『超高齢社会だからこそ』成長できるのだ」

 さらにアマゾンの「内容紹介」では、以下のように書かれています。

 

「2030年に3割が65歳以上になる日本―その社会には一体、どんな変化が起こるのか? 実はそのとき、2000兆円にもなる個人金融資産の6割、1200兆円は、高齢者が所有する。こうした現代の『ネオ高齢者』たちは、一点豪華主義に走ったり、世界遺産を巡ったり、あるいはグルメにも積極的。1200兆円を墓場まで持っていこうなどという気は、さらさらなし。新しい高齢者の消費が、日本経済を爆発させる! それに気づいた企業も、続々と、『ネオ高齢者』向け商品を発売している! 高齢化社会は、じつは明るい!」

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。

 

「はじめに―超高齢社会だからこそ経済が成長する背景」

第一章 超巨大な高齢者マーケットの潜在力

第二章 高齢者だけの七つの消費行動

第三章 高齢者を起点として豊かになる現役世代

第四章 超高齢者が変える日本の風景

「おわりに―高齢化で広がる成長フロンティア」

 「はじめに―超高齢社会だからこそ経済が成長する背景」の冒頭を、著者は以下のように書きだしています。

 

「『高齢化が進むから成長なんかしない』って、本当なのだろうか? しかし、ちょっと考えれば、『高齢化だからこそ成長できる』ということに気づくだろう。しかし、『高齢者が増えると労働力が減るので、供給力が落ちる。その一方で消費など需要も伸び悩む。需要両面から経済全体が縮小するなかでは、成長などしない』という考えに陥りがちなのだ」

 続けて、著者は以下のように述べています。

 

「ここでは、『将来は、これまでとは異なる』ということを見逃している。新しい技術という変数を使えば、『新しい技術×高齢化=経済成長』の式を解くことができる。高齢化こそ成長のきっかけになりうるのだ。 また、高齢者だから消費が激減するわけではない。むしろ、掘り起こされることを待っている潜在的な需要が多くある。高齢者マーケットの規模の大きさもあって、潜在需要が花開けば、大きな需要になることは目に見えるはずだ」

 高齢者の消費について考えるとき、以下の7つがポイントになります。

 

(1)チャレンジ消費

(2)延長戦消費

(3)プレミアム消費

(4)高齢化消費

(5)新文化消費

(6)血縁共創消費

(7)地縁共創消費

 

 これらの消費シチュエーションが広がっていけば、高齢者の消費パワーが開花するというのが著者の見方です。

 さらに、もう1つの重要な視点として、著者は「高齢化が技術進歩の大きなチャンスでもあること」を挙げ、以下のように述べています。

 

「たとえば、高齢化によって、人手不足が進むことが懸念されている。そうだからこそ、第四次産業革命のキーワードになっているAI(人工知能:Artificial Intelligence)やIoT(モノのインターネット:Internet of Things)、ロボット、自動運転など、多くの技術を生かせる絶好のチャンスである。人手が足りないのだから、リストラなども大きな問題にはなりにくく、むしろ課題解決のため、これらを積極的に導入しなければならない」

 第一章「超巨大な高齢者マーケットの潜在力」では、著者は「高齢者とタッグを組んで成功へ」として、以下のように述べています。

 

「高齢者と周囲の人の『認識のギャップ』。これが、高齢者向けビジネスの足を引っ張っている。『高齢者用の製品・サービスです』と売り出しても、高齢者は自分たちを対象にしたものではないと思い、見向きもしない。売り手の現役世代から見れば、『高齢者用の製品・サービスを開発しても売れない、だからダメ』ということになる。その結果、『高齢者向けビジネスも市場も期待できない』という、安易な結論に陥りがちだ」

 また、「高齢者中心のマーケティングに」として、著者は述べます。

 

「高齢化はますます進み、2030年には高齢化率は3割を超える。それを悲観的に捉えて何もしないのか、それともチャンスがあると見るのか――それによって、成長できるかどうかが決まる。幸運なことに、日本は高齢化のフロントランナーだ。その経験を生かして、先行者利益を確保できる可能性がある。欧州やアジアなど、高齢化が進む国が多いからだ。つまり、高齢化ビジネスモデルが海外に展開できるという意味においても、絶好の成長の機会が訪れるのだ」

 「おわりに―高齢化で広がる成長フロンティア」で、著者は述べます。

 

「世界に先駆けて高齢化を経験する日本において、法制度の整備も重要だ。個々の企業の取り組みはもちろん、産業界や中央・地方の政府が協力して、高齢化に適した社会を構築していく。それが高齢化による成長の前提条件になる。こうした高齢化は、実は、若者を含めた現役世代にとっても成長のチャンスである。高齢者の潜在的な需要を引き出すことは、何も高齢者だけの利益になるわけではない。現役世代も所得や消費が増え、より良い生活を送れるようになるメリットがある。高齢化という課題解決が、新たな商品、サービス、技術などの開発を促し、それが国内外にマーケットを広げていくからだ」

 本書には「日本は高齢化のフロントランナー」という表現が出てきますが、世界に先駆けて超高齢社会に突入した現代の日本こそ、世界のどこよりも「老い」を肯定する「好老社会」でなければなりません。日本が「老い」に否定的な「嫌老社会」で老人を嫌っていたら、何千万人もいる高齢者がそのまま不幸な人々になってしまい、日本はそのまま世界一不幸な国になります。逆に「好老社会」になれば、世界一幸福な国になれるのです。そして、日本が「好老社会」になるためには、どうすべきか?

 わたしのブログ記事「北九州市を老福都市に」に書いたように、わたしは日本が「好老社会」になるかどうかの大きな鍵を握っているのは北九州市であると思います。北九州市の最大の特徴とは、高齢者が多いことです。100万人弱の人口に対して、65歳以上の高齢者の比率は平成25年3月末が26.2%、平成27年3月末はさらに上がって28.2%となっています(数字はいずれも住民基本台帳人口要覧による)。この高齢者比率は、全国に20ある政令指定都市の中で最も高い数字です。

 「日本は高齢化のフロントランナー」ならば、「北九州市は日本一の高齢化都市」であると言ってよいでしょう。そこで、わたしは日本中の高齢者の方々に北九州市に来ていただきたいと考えています。現在、全国には600万8000人(平成27年、内閣府の推定)もの独居老人が分散しています。そういった方々に北九州に参集していただき、余生を過ごしていただきたいのです。北九州市は、高齢者が多いことを「強み」として、日本一、高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指すべきです。もちろん、高齢者が安心して消費のできる街づくりです。

 その街づくりにおいて大事なポイントは、「孤独死をしない」ということです。わが社を中心に年間600回以上開催されている「隣人祭り」をはじめとした多種多様な「隣人交流イベント」のノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築することが必要です。そうなれば、「北九州にさえ行けば、仲間もできて、孤独死しなくて済む」というふうになるのではないでしょうか。全国の独居老人には、どんどん北九州に移住していただきたいと願っています。わたしは「人は老いるほど豊かになる」というコンセプトに基づく「老福都市」をイメージし、そのモデルとして2004年に高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」を北九州市八幡西区に作りました。セレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題になりました。

 

 「老い」と「死」に価値を置く施設であるサンレーグランドホテルが北九州市に誕生したことは多くの方々から評価されました。なぜなら、高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのものだからです。こういった考え方も、すべてドラッカーの「強みを生かす」という思想をベースにしています。

 そのようなことを日経電子版連載の連載コラム「一条真也の人生の修め方」に書いたところ、予想をはるかに超える大きな反響がありました。その内容は、『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)に収録されています。