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大人のための読書の全技術』

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 No.1145

 

 『大人のための読書の全技術』齋藤孝著(中経出版)を読みました。

 教育学の第一人者である著者は、読書教育を非常に重視しています。
 名著『読書力』(岩波新書)をはじめ、 『読書のチカラ』『古典が最強のビジネスエリートをつくる』『教養力』など、これまでにも著者には読書に関する多くの著書があります。本書は340ページを超える大冊です。

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   本書の帯


 

 本書の帯には「社会人が読んでおくべき50冊の必読リスト付き」と書かれ、帯の裏には「他人の10倍速く読み、100倍深く理解するために。齋藤メソッドのすべてをこの一冊に詰め込みました。」と書かれています。また「本書の技術をマスターすると・・・・・・」という言葉に続いて以下のように効果が列記されています。


■文書処理能力が上がり、こなせる仕事量が飛躍的に増加する!
■仕事の隙間時間で、1日10時間以上を読破できるようになる!
■語彙と知識が豊富になって、会話の達人になる!
■新たな概念を獲得し、斬新な企画が立てられるようになる!
■経験と教養が蓄積して、優れたリーダーになる!
■思考力と集中力が磨かれて、どんどん頭が良くなる!

 

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   本書の帯の裏


 

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。


「はじめに」
序章  社会人にこそ、読書術が必要な理由
第1章 読書のライフスタイルを確立する
第2章 読書の量を増やす―速読の全技術
第3章 読書の質を上げる―精読の全技術
第4章 読書の幅を広げる―本選びの全技術
第5章 読書を武器にする―アウトプットの全技術
終章  社会人が読んでおくべき50冊リスト
「おわりに」

 

 「はじめに」の冒頭に、著者は次のように書いています。


「この本は、『誰よりもたくさんの本を、誰よりも精密に読み込み、すぐに仕事に応用できるようになる方法』のすべてを、書いた本です」


 著者は読者に対して、「まず最初に、理解していただきたいことがあります」として、以下のように述べます。


「まずは『楽しむ』だけでいいのです。読書は、修行ではありません。もし本を読むのが面倒だったり苦しかったりするのであれば、それは正しい読書のやり方を知らないからです。本書でおいおい伝えていきますが、正しい読書術を知ってさえいれば、本を『楽しむ』だけで、いつの間にか大量の本を正確に読み込むことができるようになります。
 正しい読書術をマスターするのに、才能や頭の良さは必要ありません。しかし、一度、正しい読書術を身につけさえすれば、知識や教養がみるみる増えて、企画がどんどん出てくる頭の良い人になることができます」

 

 続いて、著者は以下のように述べています。


「私は現在、明治大学文学部の教授として、数多くの学生を指導しています。さらに、毎週月曜日から金曜日まで、朝の情報番組の司会者を務めています。生放送ですから、失敗の許されない厳しい仕事です。もちろん、本の執筆もしています。
 そのような忙しい毎日を送っていますが、それでも私は読書を続けています。多い日には、1日に10冊以上を読破します。なぜなら、読書をしなければ、絶対に、いい仕事などできないからです。私が忙しい中でも大量の読書をできる理由、それは、長い時間をかけて自分でつくり上げてきた、最強の読書術をマスターしているからです。本書では、そのすべてを出し惜しみすることなく、あなたにお伝えしていきます」

 

 序章「社会人にこそ、読書術が必要な理由」の冒頭にある「本を読めば、古今東西の偉人から直接学ぶことができる」では、著者は次のように述べています。


「自分の人生や生活スタイルをデザインしブランド化していくためには、2つ、絶対に必要なことがあるからです。
 1つ目は、自分をデザインするやり方を先人に学ぶこと。
 2つ目は、強烈なモチベーションを持つこと。そのモチベーションは、精神力・思考力と言い換えることもできるでしょう。
 では、その2つをどこに求めればいいのでしょうか?
 それは、本の世界です。私は読書によって『私淑する』という学び方が好きです。直接会ったことはなくても、師として仰ぎ、学ぶ・・・・・・そのように素直に学ぶ心構えが、『私淑する』関係にはあるからです。そして、古今東西の偉人たちが残した本には、人生をデザインしていくためのヒントが詰まっています」


 序章では、他に「読書というのは自己イノベーション(自己刷新)のいちばん重要な手段であり、なおかつ意識自体を高めるものです。私は、それを行わずにいるということが、残念でなりません」という言葉も気に入りました。
 また、ドイツの哲学者であるショウペンハウエルの「読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである」(『読書について』)、同じくドイツの哲学者であるニーチェの「私は読書する怠け者を憎む」(『ツァラトゥストラはかく語りき』)といった言葉を紹介しつつ、著者は「人類は、優れた人の思考をなぞるという形で、ずっと思考を深めてきているじゃないか」と反論します。また、「だいたい、現代文明の99.99%は、すでに過去の歴史の中で考え抜かれたことでできあがっています。そのことを知ったうえでなければ、今後、人類が発展していくことは難しいでしょう」とまで言い切っています。わたしも同感です。


 第1章「読書のライフスタイルを確立する」では、「本棚を置くことから、確固たる精神文化の創造がはじまる」の項が良かったです。著者は次のように述べています。


「本棚は人間にとって、とても大事な心の拠り所なのです。
 たとえば、医者であるヴィクトール・E・フランクルが自らの強制収容所での体験を描いた『夜と霧』が本棚にあったとしましょう。ちょっと落ち込むようなできごとがあったとしても、その背表紙を目にすると、はじめて読んだときに自分の中に流れ込んできた大きな感動が、改めて蘇えってくるはずです。そしてフランクルが強制収容所を生き延びたプロセスを思い出し、「ああ、生きるということを軽んじてはいけないんだ」という気持ちになれるのです。その結果、安易に自己否定したり、自分の環境を儚んで死ぬことを考えたり、ということをしなくなります。
 本棚を持つことで、そういう強い心の支えを自分のものにできるのです」


わたしも、この読書館でも『夜と霧』でフランクルの名著を紹介しました。

 

 「役に立つ読書と快楽としての読書を分けて、コストパフォーマンスの高い読書を目指す」では、著者は以下のように述べています。


「日本では、新刊本だけでも1年間に8万冊を超える本が出版されています。その状況は、まったく違う生物が泳いでいる水族館のようなものです。
 それだけに、本の種類によって読み方を変える必要があります。また読書には、『役に立つ読書』と、『快楽としての読書』があります。ですから、私は本を読むとき、目的がそのどちらかによって、読み方を変えています。役に立つ読書とは、そこから得た情報や知識を実際に活用するための読書です」

 

 第2章「読書の量を増やす―速読の全技術」では、「読書量を増やすことで知識を蓄積し、読書のスピードと理解力が上がっていく」として、以下のように書かれています。


「なぜ読めば読むほど楽に、速く、正確になっていくかというと、本は知識で読んでいるものだからです。それゆえ、読書においては、知識の積み重ねがそのまま実質的な意味を持っており、量を重ねていくことで質的な変化を起こす・・・・・・いわゆる量質転化が起きるのです」


 また、本を読むにはIQが高いほうがいいと多くの人が思っています。
 しかし、著者はIQについて以下のような考えを示しています。


「私は読書力とIQはあまり関係ないと思っています。
 浅田彰さんの『構造と力―記号論を超えて』(勁草書房)という本がベストセラーになったときのこと、ある人が『自分はIQがものすごく高いのに、この本はわからない』というのです。
 しかし、そもそも本というのはIQで読むものではなく、知識で読むものです。
 『構造と力』はフランス現代思想(構造主義、ポスト構造主義)を解説したものですが、そのことについてある程度知識のある人にとってはものすごくわかりやすい本でした。だからこそ、ベストセラーになったのでしょう」


 なるほど。じつは、わたしも『構造と力』を学生時代に読んでさっぱり理解できなかったことを記憶しています。だからといって、わたしがIQが高いという意味ではありませんけれども・・・・・・。


 面白かったのは、「逆から読む『逆算読書法』で、あっという間に内容を要約する」です。著者は「頭から均等に読む必要は一切ない。大事なところから読めばいいということになります」と述べ、次のように書いています。


「第1章は、『今まで皆さんこうお考えでしょう』といったところから入って、第2章で『それで今までの学説はこうです』といった内容に触れていきます。
そして、肝の部分を書きはじめるのは3、4章からで、自分がいちばん言いたい結論は最後の終章にまとめるのが一般的です。それなら、何も最初から読む必要はありません。すべてを要約してある最後の結論から読めばいいわけです。
 このように本を逆から読む方法を、私は『逆算読書法』と呼んでいます」

 

 第4章「読書の幅を広げる―本選びの全技術」では、「学生時代の読書は、人間の幅を広げることを目的とせよ」で、著者は以下のように述べます。


「一見、現実社会では何の役にも立たないと思えても、それが極めて役立つことがあるところが、教養としての読書のおもしろさです。
 役に立つ、役に立たないなんて当人ですらわからない。それが読書の凄味です。だからこそ学生時代に、哲学に親しんだり、古典に親しんだり、あるいは科学ものを読んだりして、実社会とは直接関係ないような分野に没入して勉学する機会を持つ。それが非常に大切なのです」

 

「名作の中にある深い知識の海を感じとり、『アウトプット力』を身につけよう」では、藤子・F・不二雄、ビートたけし、黒澤明といった人々が大変な読書家であることを明かし、この「人間の奥行き、あるいは引出し」こそが彼らの武器だとして、以下のように述べます。


「この引出しを増やしていくというのが、実は発想を枯渇させないためには大事なことなのです。映画は、自分の感性や主張を世の中にアウトプットしていくための1つの手段と言えますが、そのアウトプットの質を高めるためには、やはりインプットの質と量を増やしていくしかありません。読み続け、聞き続けて、自分の中でどんどん積み重ねていくことが必要なのです」

 

 「読書によって自分を成長させるには、やはりリアルな本が向いている」では、著者は次のように紙の本の効用を述べています。


「実は、紙の本を読むとき、1ページ、2ページと、ページを繰りながら読んでいくことがモチベーションを高めています。あるいは、実際に手にとることでこれは200ページの1つのまとまったものなのだと認識しているものです。だからこそ、ラストを目指して読む気にもなるのです。
 ところが、インターネットの場合、情報は羅列的で、しかもタダですから、どうしても真剣に読む気になりません。その結果、ざっと目を通す以上のことがなかなかできません。だから、ほんとうに読書によって自分を成長させようと考えるのなら、やはりリアルな本こそ向いていると私は考えているのです」


 この著者の発言には、わたしは「その通り!」と深く共感しました。

 

 第5章「読書を武器にする―アウトプットの全技術」では、「著者が渾身の力を込めて書いたものを読み、『一を知って十を知る力』をつける」の項で、著者は次のように述べています。


「理解力を発揮するには、想像力(推測力)が求められます。あることを聞いたとき、想像力を働かせなければ本当に理解することはできないからです。そして理解した上で先を予測することで、はじめて相手が満足するような提案ができる事になります。つまり、(想像力→理解力→予測力→提案力)という複数の力を働かせることで、相手に『この人は頭脳がしっかりしている』という印象を与え、信用を勝ち取ることができるのです」


 こういった文章を読むたびに、著者の説明力の高さに感心してしまいます。

 

 また、「読書で経験と言葉を結びつける力をつけ、チームをけん引する能力を磨く」では、著者は次のように述べています。


「読書というのは孤独な作業です。しかしその孤独な時間を使って、偉大な著者の言葉に触れることで、自分の思考力が高まり、強靭な精神力が鍛えられていきます。本で知り得たことを自分に引きつけながら読むことによって、経験と言葉を結びつけ、自分の精神世界を垂直方向へ広げていくことができるのです。そしてその結果、その人が持つ経験値は飛躍的に上がっていくことになります」

 

 そして「おわりに」の最後では、読書をする際に将来の点と点を結びつけることはできないけれども、1冊の本を読めば確実に、自分の中に1つの点を持つことができるとして、著者は「今すぐ役に立つかどうかはわからないけれど、本を読むこと。そうやって、自分の中にたくさんの点を持つこと。それを続けていれば、必ずやいつの日か、点と点を結ぶことができるはずです」と述べています。本書から、わたしはたくさんのヒントを得ました。
 読書を愛するすべての人に読んでほしい本です。