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2040年の未来予測』

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No.2025


 『2040年の未来予測』成毛眞著(日経BP)を読みました。著者は、1955年北海道生まれ。中央大学商学部卒業。元マイクロソフト代表取締役社長で、現在は書評サイトの「HONZ」代表です。一条真也の読書館『実践!多読術』『面白い本』『本棚にもルールがある』『情報の「捨て方」』『amazon』で紹介した本の著者でもあります。 

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本書の帯

  

 本書の帯には「知っている人だけが悲劇を避けられる」と大書され、「あなたの20年後に関係あることを全部出しました!」「年金/社会保障/医療費/ベーシックインカム/資産形成/MMT/5G/空飛ぶクルマ/監視カメラ/ゲノム編集技術/核融合/温暖化/南海トラフ/首都直下型地震」と書かれています。

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本書の帯の裏

  

 帯の裏には「考えられる人の未来は明るい」として、以下のような内容紹介があります。

chapter#01

テクノロジーの進歩だけが

未来を明るくする

・新しいテクノロジーが登場したとき、
 人間はその普及に反対する

・空飛ぶクルマも2040年には可能になる

・中国と監視カメラと個人データ

・日本の過疎化を救うのは5Gでの診療

・ゲノム編集技術で難病の治療に光が見える

・再生医療がパーキンソン病や
 アルツハイマー病を治すかも

・風力発電に向かない日本の地形

chapter#02

あなたの不幸に直結する未来の経済

ーー年金、税金、医療費

・国の財源は、私たちの社会保険料からまかなうしかない

・すべての問題は、高齢者が増えること

・70歳まで働くなら、今と同じ額の年金はもらえる

・日本のGDPはお先まっくらなのか

・これからの時代はテクノロジーよりも
 政治が株価を決める

chapter#03

衣・食・住を考えながら、

未来を予測する力をつける

・遺伝子編集した魚を食べないともうもたない

・マンションの価値は下がる

・日本では学歴の意味がなくなる

・貧しくなる日本にシェアリングは不可欠

chapter#04

天災は必ず起こる

・南海トラフ地震の際は、日本中で

 地震が連動して起こる可能性が高い

・温暖化によって戦争が起こる

・「水」が最も希少な資源になる 

 

 カバー前そでには、「『今日』には、これから起こることの萌芽がある。現在を見つめれば、未来の形をつかむことは誰にでもできる(「はじめに」より)と書かれ、アマゾンの「内容紹介」には、こう書かれています。
「20年後、あなたは何歳だろうか? ひとつ確実なことがある。それは、人間が必ず歳をとることだ。iPhoneが発売されたのは、たった13年前だった。現在、スマートフォンがない世界なんて考えられない。そして、これまでの10年より、これからの10年の方が世界は大きく、早く変わるだろう。テクノロジーだけでなく、ほかのことも、気づいたときには手遅れになっているのが人間の性である。地震や災害も、リスクをわかっていながらも被災するまで手を打つ人は少ないし、明らかに社会制度の破綻しつつある。人口は増えず、老人ばかりの国になるし、環境問題も悪くなる一方だ。これまでと同じように暮らしていたら、今の年齢によっては取り返しのつかない可能性もある。この本は、あらゆるデータから導き出されるありのままの未来を書いた。「今日」にはこれから起こることの萌芽がある。現在を見つめれば、未来の形をつかむことは誰にでもできる。本書は、ただ知識を得るためだけの本ではない。読んだ後、俯瞰的に未来を考えられる力がきっとついているだろう」 

 

 「はじめに」の冒頭を、著者はこう書きだしています。
「2021年の今、電車の中を見渡しても、ゲーム機や本を持ち歩いている人はめっきり見なくなった。道を聞くために交番に駆け込む人も激減しただろう。すべてを変えたのはスマートフォンの普及だ。日本で米アップルの『iPhone』が発売されたのは2008年7月だ。今からたった13年前の2008年の正月にはスマホがない景色が日常だったのだ」 

 

 これまでの10年よりこれからの10年の方が世界は大きく、早く変わるだろうとして、著者は「これまでの10年間の変化は、主に情報通信の大容量高速化がもたらした。この大容量高速化は今後さらに進む。すでにパソコンやスマホでストレスなく動画を見られるようになったし、家にいながらビデオ会議ができるようになっている。その恩恵はますます大きくなる。2030年頃には第6世代移動通信システム『6G』が始まるといわれている。たとえば、つい最近までダウンロードに5分かかった2時間の映画が、0.5秒もかからなくなる。瞬きほどの時間になるのだ」と述べています。 

 

 chapter#01「テクノロジーの進歩だけが」の「未来を明るくする」の「新しいテクノロジーが登場したとき、人間はその普及に反対する」では、著者は「19世紀末にカメラが、20世紀初頭に映画が、20世紀終わりにテレビゲームが登場した際、いずれも当初は受け入れられなかった。『カメラに写ると魂をとられる』などといわれたものだ。しかし、現在、この3つがない暮らしなど考えられるだろうか」と述べています。 

 

 1970年代末に携帯電話が登場してしばらくは、戦場での無線機のような大きさだったことが記憶にある人もいるだろうとして、著者は「その不格好さに誰もが『いらない』といったと思う。その後、1999年にNTTドコモの『iモード』が登場しても、電話にそんな機能は必要ないと指摘されたし、iPhoneが登場した際も、おもちゃと揶揄された」と述べています。 

 

 しかしながら、今や子どもから大人まで、寝る間を惜しむどころか、歩きながらもスマホをいじることが社会問題になるほど生活に欠かせない存在になっており、このiPhoneが登場したのはわずか13年前に過ぎないことを指摘し、著者は「新しいテクノロジーに対して、ふつう、人は懐疑的になる。そういうものなのだ。だからこそ、いち早くその可能性に思いを巡らせられる人にはチャンスがある」と述べるのでした。

 

 「5Gとはそもそも何で未来の何を変えるのか」では、通信の規格は約10年ごとに次の世代に進むことを指摘し、著者は「日本電信電話公社(現NTT)がアナログ方式の1Gを開始したのは1979年だ。あのショルダーフォンの時代だ。自動車電話もそうだ。それから約14年後の1993年にデジタル方式の2Gが始まる。アラフォー以上の方はPHSの記憶があるかもしれないが、PHSが2Gである。そして、2001年にNTTドコモが『W-CDMA』と呼ぶ方式で3Gサービスを開始する」と説明。 

 

 ここからは多くの人の記憶にあるかもしれないとして、「携帯電話のメールで写真をやりとりするのが不自由なくなったのもこの頃だ」と言います。そして、2010年にLTE(4G)が始まりました。世代が代わると何がすごくなるのかというと、通信速度が速くなることと、情報伝達量が増えることだと指摘し、著者は「ここまでの30年で最大通信速度は約10万倍である。そして、4Gから5Gへの大きな特長は、さらに高速になり、大容量化が進んだことにある。5Gは4Gの最大100倍の速さになる」と述べています。 

 

 鮮明な映像をストレスなく配信・視聴できるだけではありません。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の利用も進むだろうと推測し、著者は「ポイントは、通信速度が速くなり、情報伝達量が増えるということだ。これが世界を変える。とはいえ、現在は基地局が限定されていることもあり、しばらくは4Gでつながり、時に5Gがつながるという状況だ。4Gという大海に5Gという島がいくつか浮いているイメージが正しい。その5Gがさらに進化するのが6Gだ。これまでの歴史を振り返ると、2030年頃に実用化される」と述べるのでした。 

 

 「6Gのすごさは『早く』『大量の情報のやりとりができる』こと」では、ネットワークは地上だけでなく、衛星、航空機などでも使えることが指摘されます。また、消費電力が減り、省エネにもなるともいわれているとして、著者は「デジタル機器の1回の充電での利用時間が、今の10倍になるのも夢ではない。高速通信の6Gの登場とともに、ディスプレイやセンサーなどの映像機器も発達すれば、ライフスタイルそのものが変わる。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などは誰もが使うツールになり、家にいながら服を試着したり、モデルルームに行くというサービスが登場するだろう」と述べています。 

 

 「6Gで自動運転が可能になる」では、遠隔手術も現実になるとして、著者は「カメラとロボットを使って、専門医師が多くの救えなかった命を遠隔で救うはずだ。専門医師が不在だったという理由で、世界では1億件以上の手術が行えていないとの試算もある。安定した大容量超高速通信は会議のあり方も変える。クラウド経由で、リアルタイムに翻訳することも可能だ。あなたが日本語しか話せなくても、遅延なく、世界の人と会話ができるようになるはずだ」と述べています。 

 

 コロナ禍であたりまえになったテレビ会議も、技術的にはSF映画にかつて見られたような、あたかも目の前に人がいるかのような3Ⅾのホログラムによる会話も可能になるといいます。上司が3Ⅾになってもうれしい人は少ないだろうと突っ込みながらも、著者は「違う場所にいる人が同空間にいるように感じることができるようになれば、遠隔での教育も進むだろう」と述べるのでした。 

 

 「家中が便利な家電でいっぱいになる」では、著者は、未来の生活について以下のように述べています。
「あなたが、朝起きると必ず枕元の照明をつけ、カーテンを開けて、ソファーに座りテレビをつけてニュース番組をみていたとしよう。これを繰り返していると、あなたが起きただけで、照明がつき、カーテンも自動で開くようになる。あなたがテレビの前に座れば、好んで見ているニュース番組が自動に映し出される。あなた以外の人が座ってもニュース番組は映らない。住人の行動をAIが学習するから、予測して勝手にすべてを行ってくれる。家中に配置されたセンサーがあれば可能だ。これは間違いなく、スタンダードになる。遠い未来のことに映るかもしれないが、じつは、これらの機能を搭載した『AIマンション』はすでにアメリカで商品化されている」 

 

 「コンビニやスーパーは無人店舗になる」では、すでに、小売店舗の無人化への助走は始まっているとして、アメリカではアマゾンドットコムが、2018年初め、シアトルの本社敷地内に初のレジなしコンビニ「アマゾンゴー」を開設した。今では20店舗近くを展開することが紹介されます。著者は、「アマゾンゴーのしくみはこうだ。まず、店舗の入り口に改札口のようなゲートがあり、事前に携帯にダウンロードしたアプリのコードをゲートでスキャンし入店する。この段階で、システム上で客は店内での行動が追跡される。カメラと棚に設置された重量センサーを使用し、客がどの商品を棚から取ったかを特定する。客は、自分の持っているバッグに、購入する商品を入れるだけだ。買物が終了してゲートを通過すると、自動的に課金されアプリに通知される」と述べています。 

 

 「無人店舗のメリットは、万引きが防止できること」では、今、アマゾンが人間の手のひらをクレジットカード代わりにしようとしていることを紹介し、著者は「指紋認証と同じように、来店者の手のひらを、クレジットカード情報と連携してカードやスマートフォンを取り出さずに決済できるしくみだ。具体的には、静脈ではなく、手のひらの幅や指の長さなどで認証するもののようだ。最初に、これらの情報を登録して、決済用のクレジットカードと紐づければ、あとは、スキャナーに手のひらを一瞬かざすだけで決済が済む。その時間は、わずか0.3秒というから、カード決済でわざわざカードを財布から取り出す手間などを考えるとケタ違いに利便性が高まる」と述べています。 

 

 「中国と監視カメラと個人データ」では、中国が監視カメラ国家なのは有名であり、中国の一部の都市で設置が進む信号無視防止システムがその象徴であるとして、著者は「このシステムは、横断歩道が赤のとき、動いている物体を感知すると、写真と動画を自動的に撮影する。そして、これらの画像を自動的に解析し、公安が保有する身分証の顔写真データと照合し、違反をした歩行者の名前、住所、勤務先を特定する。そのあと、警察当局が電話などで違反者に通知し、罰金を科すのだ。勤務先などにも通知される。それだけではない。交差点近くに設置された大型モニターに、信号無視した人の顔写真も大きく映される。赤信号を渡っただけなのにと思われるかもしれない。信号無視で街頭モニターに顔が晒され、職場にも通知された日にはお先真っ暗な感じもするが、これは大げさにしても、事故や犯罪の防止には強い抑止力があるだろう」と述べます。

 

 アリババが運用する「芝麻信用」は、ネット通販の取引履歴や職業、クレジットカードの支払い状況からソーシャルメディアでの言動までをもとに、個人を350~950点でスコア化しているとして、著者は「低い得点の人や、サービスを利用しない人は、すでに就職や結婚で不利になる事態になっており、このような『人のスコア化』は社会の常識になっている。特筆すべきは、こうしたIT企業のサービスが、行政と強く結びつき始めている点だ。想像しづらいかもしれないが、共産主義なので、個人情報のデータを国が使える。この評価システムも国が使っているのだ。すでに上海など20以上の地方政府で、個人の評価システムが始まっている。就業情報、社会保険の支払い状況のほか、刑事罰や行政処分の有無を判断材料に個人の評価を5段階に分けるのだ。大手企業が構築したスコアリングのしくみに、地方政府が持つ個人情報をのせて判断する」と述べています。 

 

 「日本の過疎化を救うのは5Gでの診療」では、2040年には、病院に行かなくてもいいかもしれないとして、著者は「医療は最も変化の激しい領域だ。通信技術が高度化し、高速な上に途切れにくい5G回線の利用が進めば、オンライン診療の環境も整うだろう。現時点では、オンライン診療は対面診療を補助するものとしてしか存在しておらず、診られる病気も生活習慣病など慢性疾患に限られている。しかし、地方の過疎化が絶対にとまらない今、田舎の医師不足は必至だ。過疎化がオンライン診療を後押しするのは間違いないのだ。この流れは以前からあった。加えて、新型コロナウイルスの爪痕の深さから、『直接対面せずに診断する』という取り組みは加速するだろう。アメリカや欧州ももちろんだ」と述べます。

  

 「ゲノム編集技術で難病の治療に光が見える」では、がんにはいろいろな種類があるが、メカニズムはすべて同じだと指摘します。遺伝子の変異によって起きるとして、著者は「2000年代以降、個人の遺伝子配列の解析が進んだことで、遺伝子に直接アプローチして治療できる抗がん剤が実用化された。『分子標的薬』だ。この薬はがんの原因となっている特定の遺伝子を攻撃できる。2005年頃に乳がん、胃がん、血液がんから開発が始まり、2010年代に入ってからは膵臓がんなど治療が難しいがんも対象にし始めている。遠い未来の願望ではなく、がんは治る病気の時代がすぐそこまできているといっていいだろう」と述べ、いまだに「がんになったらおしまいかも」と思う人は多いかもしれないとしながらも、著者は「2035年にはほとんどのがんが治るのではとの楽観的な見方もある」と述べるのでした。 

 

 chapter#02「あなたの不幸に直結する未来の経済ーー年金、税金、医療費」の「老人が増え、それを支える若者が減る」では、少子高齢化が進んだ2040年の世界は想像するだけでも恐ろしいとして、「団塊世代が90歳、団塊ジュニア世代が65歳になる。そして、団塊ジュニアの4割が集中するのが首都圏だ。膨大な数の都民が高齢化を迎える。見渡す限り老人だ。過疎地ではすでに現実になっている老老介護が現実のものになる。東京都の年少人口(15歳未満)が占める割合は2019年は11%だったが、2040年以降には10%を割り込む。子育て支援に力を入れようとしても、対象となる子どもがいなくなるのに歯止めがかからない皮肉な状態だ」と述べます。 

 

 「すべての問題は高齢者が増えること」では、一昔前は医療や栄養問題から子どもがたくさん死にましたが、これからは増え続けた高齢者が多く亡くなる社会になるとして、著者は「当然、医療の発達もあり、なかなか簡単には亡くならず、慢性的な病気を抱える人も増える。1950年生まれの男性の35%、女性の60%は90歳まで生きるといわれている。1990年生まれの場合は、65歳まで生きた女性の2割は100歳まで生きる。これは、少なく見積もってだ。おまけに、現在、65歳以上の7人にひとりは認知症といわれているが、高寿命化により、2035年には4人にひとりが認知症になる。100歳を超えると必ず認知症になるともいわれるが、つまり、高齢になれば認知症になるのはあたりまえなのだ。これは確実に訪れる未来だ」と述べます。 

 

 「老人ホームは高い」では、現在、都心部だと、看護師が夜も常駐している民間の老人ホームは、月35万円くらい出さないと入れないと指摘します。安くても25万~26万円はするとして、「特別養護老人ホームの利用料でも、年金で入れるような月15万円くらいの施設は都市部にはない。特養であっても、経済的余裕がなければ入れないのが実情だ。施設に入れない人の介護を誰が引き受けるかというと、家族が自宅で面倒を見ることになる。自宅で亡くなる人の割合は東京17.5%、大阪では15.4%だ」と書かれています。 

 

 自宅での介護も、介護保険で全部まかなえるわけもなく、肉体面、金銭面における自己負担が大きいとして、著者は「特に都市部では、地域の共同体のむすびつきも希薄だから、家族がすべてを背負いがちだ。その上、介護離職者も全国10万人を超え、男性の離職者も増えている」と述べます。2019年時点の75歳以上の未婚者は全国で70万人弱。2030年には約140万人に増え、2045年には約250万人になる。総人口は減るにもかかわらず、未婚の人口は今の3~4倍になると指摘し、「独身で低所得だった場合、孤立死は避けられない」と断言します。

  

 「日本のGDPはお先まっくらなのか」では、日本の人口は2008年がピークだったことを指摘し、政府がまとめた高齢社会白書(2018年)によると、2045年には1億1000万人を割り、2055年には1億人の大台も下回る。そして、2100年には現在の半分以下の6000万人規模になると予測されていることが紹介されます。さらに恐ろしいのは高齢者比率だとして、高齢者を65歳以上とすると、2035年にはほぼ3人にひとり(32.8%)、2065年には2.6人にひとり(38.4%)になることを指摘し、著者は「誕生する子どもが減少し続ける状況は、変わらないどころか、加速する。医療の発達と食生活の改善などで、それまでなら亡くなった人たちも長生きする」と述べます。

 

 chapter#03「衣・食・住を考えながら、未来を予測する力をつける」の「日本では学歴の意味がなくなる」では、大学生が勉強しないことを指摘し、著者は「大学生の平均学習時間は小学生よりも短いという統計調査もある。なぜ勉強しないかというと理由は簡単で、勉強しようがしまいが、大半が入社する企業での処遇がほとんど変わらないからだ。アメリカでは大卒と博士課程修了者は初任給が約5割違うが、日本の場合、よくて2割程度だ。学生にしてみれば金も時間もかけようと思わないだろう。むしろ、理系ですら博士まで進学すると給与があがるどころか就職口も減るのが現実なので、誰も進学しようとしない」と述べています。 

 

 chapter#04「天災は必ず起こる」の「このまま温暖化がすすむと、飢餓に満ちた世界が必ずくる」では、このまま何の対策も講じなければ、今から2100年までに地球の平均気温は4度上昇すると指摘し、著者は「これがどのくらい異常なことかというと、1880年から2012年までの世界の平均気温の上昇は、1度にも満たない。4度上がると何が起こるか。気温が上昇すれば、海水の温度も当然上昇する。そうすると、ほぼすべての珊瑚礁が白化、絶滅する。珊瑚礁には海洋生物種の3割以上が生息するといわれており、結果的に、数億人の人々の食料事情が深刻なものになる」と述べています。ちなみに最悪の場合、2100年には日本は熱帯化しているそうです。著者は、「夏の東京の昼間の気温は40度をこえ、夜も30度をほとんど下回らない。米はとれなくなり、関東や近畿圏でバナナやパイナップルが栽培に適しているようになるだろう」と述べます。 

 

 「南海トラフ地震の際は、日本中で地震が連動して起こる可能性が高い」では、遠くない将来に確実起きるといわれている南海トラフ地震と首都直下型地震について、著者は「これらはどれくらいの確率で起きるだろうか。マグニチュード(M)9級の南海トラフは、30年以内に70~80%、M7級の首都直下型は30年以内に70%の確率で起きると予測されている。今後30年で交通事故に遭遇して怪我を負ったり、死んだりする確率(1.05%)よりはるかに高い。被害もすさまじい。南海トラフは、死者行方不明者数は最も多い場合だと23万1000人、全壊・全焼する建物は209万4000棟としている。首都直下型地震の場合は、死者数は2万3000人、家屋の全壊・全焼は61万超棟と想定する」と述べます。 

 

 また、電気や上下水道などのライフラインや交通が長期にわたり麻痺し、交通渋滞が数週間継続するかもしれないとして、著者は「鉄道も1週間から1ヵ月程度運転ができなくなるだろう。首都直下型の場合、避難者数は720万人に達すると想定されており、通常モードになるまで、混乱が数年、いや数十年続く可能性すらある。地震発生から20年間の経済損失は、首都直下型で778兆円、南海トラフで1410兆円になると推定している。建物の被害だけだとそれぞれ47兆円と170兆円だが、交通インフラが寸断されて工場が長期間止まる影響など、間接的な影響が重くのしかかる。国の年間予算が約100兆円だ。いかに巨大なリスクかがわかるだろうか。どちらの地震による被害も「国難」級だと指摘している」と述べます。 

 

 さらには、南海トラフ地震に対応する財源の問題を指摘する声もあるだろうとして、著者は「それならば、東京一極集中を見直せばよい。経済活動の3割を地方に分散すれば、首都直下地震による被害額は219兆円軽減できるという試算もある。自然災害はパンデミックとは関係なく襲ってくる。近代日本ではこれらが重なったことはないが、1918~1920年に猛威をふるったスペイン風邪の3年後の1923年は、関東大震災が起こっている。弱り目に祟り目というが、こちらの都合に関係なくウイルスは到来するし、自然災害も起こる。巨大地震のリスクから目を背けている余裕はないのである」と述べるのでした。 

 

 「富士山が噴火すると日本中の機能がストップする」では、災害大国日本で想定しなければならないリスクは地震だけではないと指摘し、「火山だ。万が一、首都圏近郊で大噴火が起きれば影響は広範に及ぶ。京都大学大学院人間・環境学研究科の鎌田浩毅教授は『火山学的に富士山は100%噴火する』と断言している。日本の活火山は現在111あるが、このうち50を常時観測が必要な火山として、24時間体制で気象庁が監視している」と述べます。

 

 富士山が最後に大規模噴火したのは1707年ですが、そのときは16日間、噴火が続き、現在の東京の都心部に5センチ、横浜には10センチの火山灰が積もったとされることを紹介し、著者は「5センチと聞くと影響がないように思えるかもしれないが、数ミリ積もるだけで、車道は通行不能になり、飛行機などもエンジンが動かなくなり、公共交通機関も麻痺するだろう。物流もストップする。インフラの崩壊は道路だけにとどまらない。東京湾周辺に集中する火力発電所の発電機は火山灰を吸い込んで動かなくなるだろうし、コンピューターに火山灰が入り込めば通信機能もダウンするはずだ。数センチも積もれば火山灰の重さで送電線は倒壊し、停電は長期化する。農作物も全滅だ。噴火で起きた泥流や火山灰が川をせきとめ、決壊などすれば流域では浸水などの被害もでる」と述べます。

 

 富士山が噴火すれば、おそらく1年以上、首都圏は機能しなくなるとして、著者は「日本経済が止まれば全世界の経済は滞り、世界のGDPは年率5%程度は下落するはずだ。株価は絶望的に下落するだろうし、不動産価値は紙くずになるはずだ。とはいえ、2040年代の日本は落ちぶれたとはいえ、いまだ世界有数の経済国であることは間違いないだろうから、ハイパーインフレにはなりにくい。世界経済のために、諸外国が支えてくれるだろう」と述べます。日本ではこの300年ほど大きな噴火は起きていませんが、歴史的には珍しいそうです。「逆にいえばいつ起きてもおかしくないともいえる。現代の科学の力では、地震や火山がいつ起きるかは正確に予測できないが、いつかは起きる前提での備えが必要だ」と述べるのでした。 

 

 「『水』が最も希少な資源になる」では、1995年に、世界銀行環境担当副総裁のイスマイル・セラゲルディン氏が発した「20世紀の戦争が石油をめぐって戦われたとすれば、21世紀の戦争は水をめぐって戦われるであろう」という警告を紹介し、著者は「食料不足もそうだが、その前に深刻な水不足も起きるだろう。水は石油よりも貴重になる。すでにアフリカでは、気候変動による水不足に2億5000万人が直面している。2050年は、アジアでも水不足が起こる。10億人が水不足に陥り、世界中の都市部で利用できる水が今の3分の2まで落ちこむ。水不足で戦争も起きかねない。かつて、エジプトとスーダン、エチオピアがナイル川の利権でもめたような事態が常態化する。20世紀には石油の利権が戦争を引き起こしたが、21世紀は水を巡る戦争が多発するはずだ」と述べます。 

 

 テクノロジーが解決する根拠を示せといわれれば難しいとして、著者は「100年前の人は、100年後には地震や噴火を完璧に予知できるようになると考えていたが、できていない。ただ、一方で、なくなるといわれていた石油は、枯渇していないし、核戦争も起きていない。公害が深刻化して住めないような場所もでていない。危機に直面してもテクノロジーで解決の道筋を示してきたのが人類なのだ。それは本書をここまで読みすすめてきた方は十分に理解しただろう。そして、20年前のあなたが、今のあなたの生活を想像できなかったほどにテクノロジーが進展していることを考えれば、自然がもたらす危機に対しても解決策を示してくれるかもしれない、と考えるべきではないだろうか」と述べています。 

 

 「おわりに」では、GAFAのような企業が日本から生まれる兆しはまるで見えないと指摘し、いまだに産業界では「かつてのソニーのウォークマンのような製品を日本企業はなぜ生み出せないのか」と真顔で議論しているとして、著者は「ソニーのウォークマンが世界を席巻したのは1980年代だ。産声を上げた赤子が中年にさしかかるほどの歳月がたっていることに、どれほどの産業人が自覚的なのだろうか。つまり、政治の世界も民間の世界も、飛び抜けて優秀な人材が日夜を問わず働いても、世界的ヒット商品のひとつ生み出せないのが実情だ。今、これを読んでいるあなたは、国を忘れて、これからの時代をどうやって生き残るのかをまず考えるべきだ。どうすれば幸せな人生を送れるかに全エネルギーを注ぐのをオススメする。生き残るためには、幸せになるためには環境に適応しなければならない。生き残るのは優秀な人ではなく、環境に適応した人であることは歴史が証明している」と述べるのでした。 

 

 本書には、わたしの知らなかったことも多く書かれていました。まるで未来社会の生活カタログを読んでいるような気分になり、SF好きとして楽しい読書となりました。空飛ぶクルマなんて、たまりませんね。しかしながら、超高齢化社会、巨大災害への不安はさらに増大しました。2040年といえば、わたしは78歳になっています。生きていたとしても老人ですが、未来社会がどんなふうになっているのかを想像すると、やはりワクワクします。

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アマゾンより