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面白い本』

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No.0709

 

 『面白い本』成毛眞著(岩波新書)を読みました。著者はマイクロソフト社の元社長で、著者は書評ブロガーとしても有名です。著者の本を取り上げるのは、『実践!多読術』の本に続いて2冊目です。


 『実践!多読術』は三笠書房の「知的生き方文庫」でしたが、今度は「岩波新書」と、読書論の王道を歩んでいる観がありますね。しかも、『面白い本』というシンプルなタイトル。わたしは短い書名が好きなので、うらやましい限りです。


 本書のカバーの前そでには、「面白いにもホドがある。書評サイトHONZの代表が太鼓判を押す、選りすぐりの面白本100冊。ハードな科学本から不思議な脱力本まで。いずれ劣らぬ粒ぞろい。1冊読んだら全冊読みたくなる。本代がかかって仕方がない、なんともメイワク(?)なブックガイド」と書かれています。


 本書の目次構成は、以下のようになっています。


「私の『面白い本』」
「この本で紹介する本」
1.ピンポイント歴史学
   真面目にオーパーツ
   現在日本民俗学
   国家という悪魔
2.学べない生き方
   破天荒すぎて学べない
   脱力しすぎて学べない
   天才すぎて学べない
(箸休め)お得な本の算出法
3.ヘビーなサイエンス
   不都合なヒトと合理的な生き物
   地球の真実
   読ませる医学
   数学と工学のドラマ
4.シチュエーション別読書法
   トイレット・ライブラリーのススメ   
   電車の中で読んではいけない
   子どもといっしょに読む絵本
5.嘘のノンフィクション
   ウソか? マコトか?
   ウソとマコトの実話
6.タイヘンな本たち
   手に負えない人たち
   突き抜けた人生
(箸休め)足でしか見つけられない、意外な秀作
7.金と仕事とものづくり
   さまざまな仕事
   経済学というアート
8.事実は小説より奇なり 
   運命に翻弄される人たち
   命からがら
9・鉄板すぎて紹介するのも恥ずかしい本
「あとがき」


 本書の「まえがき」に相当する「私の『面白い本』」の冒頭で、著者は次のように書いています。


 「ただただ、ページをめくるのが楽しい。これが読書の喜びであり、その喜びに耽溺してしまうのが本読みというものだと私は思う」


 いきなり強烈な先制パンチ。しかし、このパンチが気持ちいい!
 ノンフィクションを専門に紹介する書評サイト「HONZ」を主宰し、本を読みまくっている著者にとって最初の「面白い本」は、子どもの頃に読んだ『水滸伝』だったそうです。『水滸伝』の面白さは、少年期の著者の読書スイッチを入れてしまいました。その後のことを著者は、次のように書いています。


 「それからというもの、夢中に本を読み、とにかくページをめくるのが楽しくなった。やがて小学校高学年になると、百科事典が私にとっての「面白い本」になった。夜寝るとき枕元に百科事典を持ってきては、ひたすら読む。『あ』から始まる五十音順に読み進め、世界原色百科事典などは2周したほどだ。
 このときは『自分が何を知らないか』がわかることがとにかく面白かった」


 著者は百科事典を読みふけって幸せだったそうです。では、なぜ幸せになるのか、いまだによくわからないそうです。わかるのは「面白かった」ということだけだという著者は、次のように述べます。


 「そんな子どもが少し大人になったとき、ノンフィクションこそが『面白い本』になった。百科事典では記述不可能なほどに深く、新しい事実の数々。水滸伝のように、つねに予定調和の逆側へ突き進む、巧緻で、ときに滑稽な知の探求。大人になって、人並みにいろいろな道楽を知ったが、私にとってノンフィクションを読むことは、数ある道楽の中でも超越した道楽でありつづけた」


 「読書は道楽」と言い切る著者は、本を読むことに何も意味を求めません。純粋に面白ければそれでいいのであり、それが著者の読書の理想だというのです。では、なぜノンフィクションが面白いのか。これについて、著者は次のように述べます。


 「ノンフィクションで描かれるのは、おおむね極端な生き方や考え方だ。野糞をすることこそがエコロジーであるという極端な世界観をもつ人を知ったり、数学の難問ポアンカレ予想の証明の舞台裏を知ったところで、自分の日常生活には何の影響もないし、何の意味ももたない。
 しかし、一見無駄な、極端な知識を得ることで、自分が世界のどこに位置しているかはわかるようになる。それはつまり、人間の壮大な知の営みの中に、自分を位置づけられるということだ。自分という小さな個は、知の歴史という巨人の肩に乗っているだけの存在なのだ。その『巨人』と対話をすること。それが私にとっての読書なのかもしれない」


 本書は、そんな読書観を持つ著者が選んだブックガイドです。


 「私の『面白い本』」の最後に、著者は次のように書いています。

「この本では、そんな私が『これは面白い!』と思った、忘れられない本たちをご紹介しようと思う。どの本も、最近20年の読書道楽人生の中から厳選した『これぞ!』と思う本たちばかりだ。全部あわせて100冊。いろいろな楽しみ方ができるよう、第1章から第8章まで8つのテーマを立てて分類し、それがいかに面白いかを私なりに紹介していく。自称、究極のブックガイドだ」


 たしかに本書で紹介されているノンフィクションの本はどれも面白そうなものばかりですが、わたしはだいたい4割ぐらいの本を読んでおり、「オレって、けっこうノンフィクションが好きだったんだ」と再確認しました。もちろん読んでいない本も6割ぐらいあるわけですから、その中には「読みたい!」と思えるものがかなりあって、早速アマゾンで注文しました。本書に紹介してある100冊を全部購入すると20万円以上になるそうですが、わたしは今回、2万円ちょっとの本を購入しました。

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   本書で知って購入した2冊

 


 その中でも特に気に入ったのが、『絵本 夢の江戸歌舞伎』服部幸雄文、一ノ関圭絵(岩波書店)と『東海道五十三次 将軍家茂公御上洛図―E・キヨソーネ東洋美術館蔵』福田和彦著(河出書房新社)の2冊です。もう本当に美しい本で、何度読み返しても(眺め直しても)飽きることがありません。この2冊の存在を教えてくれただけでも成毛眞氏に感謝です。100冊の「面白い本」を紹介してくれる本書自体が「面白い本」なのは言うまでもありませんね。