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人生を面白くする本物の教養』

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 No.1158

 

 『人生を面白くする本物の教養』出口治明著(幻冬舎新書)を読みました。

 1948生まれの著者は、ライフネット生命の創業経営者(現在は代表取締役会長兼CEO)であり、無類の読書家としても知られます。著者の本を読書館で紹介するのは、『本の使い方』『ビジネスに効く最強の「読書」』『仕事に効く教養としての「世界史」』以来となります。

 

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   本書の帯


 

 本書の帯には著者の上半身の写真とともに「ビジネスにも必須!」「本を読み、人に会い、旅をする。そして自分の頭で考え抜く。」「ビジネス界きっての教養人が明かす、知的生産の全方法」と書かれています。

 

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   本書の帯の裏


 

 また帯の裏には「ようこそ、『出口塾』へ!」として、以下のようなエッセンスが並べられています。


●「自分の頭で考えられる」ことが教養
●「広く浅く」でなく「広く、ある程度深い」素養が必要
●日本のリーダー層は勉強が足りない
●「数字・ファクト・ロジック」で考える
●速読は百害あって一利なし
●人間が将来に備える唯一の方法は歴史に学ぶこと
●旅こそ最高の遊びにして、教養の源
●「選挙、民主主義」「お金」「税と社会保険」の知識は不可欠
●仕事とはあえて言えば「どうでもいいもの」

 

 さらに、本書のカバー裏には以下のような内容紹介があります。


「教養とは人生における面白いことを増やすためのツールであるとともに、グローバル化したビジネス社会を生き抜くための最強の武器である。その核になるのは、『広く、ある程度深い知識』と、腑に落ちるまで考え抜く力。そのような本物の教養はどうしたら身につけられるのか。六十歳にして戦後初の独立系生保を開業した起業家であり、ビジネス界きっての教養人でもある著者が、読書・人との出会い・旅・語学・情報収集・思考法等々、知的生産の方法のすべてを明かす!」

 

 本書の目次構成は、以下のようになっています。


「はじめに」
第1章 教養とは何か?
第2章 日本のリーダー層は勉強が足りない
第3章 出口流・知的生産の方法
第4章 本を読む
第5章 人に会う
第6章 旅に出る
第7章 教養としての時事問題―国内編―
第8章 教養としての時事問題―世界のなかの日本編―
第9章 英語はあなたの人生を変える
第10章 自分の頭で考える生き方
「おわりに」
「ようこそ、『出口塾』へ!」

 

 「はじめに」の冒頭で、著者はシャネルの創業者ココ・シャネルの言葉を紹介します。それは、「私のような大学も出ていない年をとった無知な女でも、まだ道端に咲いている花の名前を1日に1つぐらいは覚えることができる。1つ名前を知れば、世界の謎が1つ解けたことになる。その分だけ人生と世界は単純になっていく。だからこそ、人生は楽しく、生きることは素晴らしい」という言葉でした。著者は、これこそが教養の本質だというのです。

 

 第1章「教養とは何か?」の冒頭で、著者は以下のように述べます。


「教養とは何でしょうか? どうして人間には教養が必要なのでしょうか? もし、そう質問されたら、私の答えは『教養とは、人生におけるワクワクすること、面白いことや、楽しいことを増やすためのツールです』という一言に尽きると思います。よりワクワクする人生、より面白い人生、より楽しい人生を送って、悔いなく生涯を終えるためのツール、それが教養の本質であり核心であると私は考えています」

 

 第2章「日本のリーダー層は勉強が足りない」では、著者は「面白さ」の源は「ボキャブラリー」にあると喝破します。著者は次のように述べています。


「『面白そうな人だ』というときの『面白さ』の源が教養ということになるわけですが、具体的にはどういうことでしょうか。まず『ボキャブラリー』が挙げられます。日本語に訳せば『語彙』ですが、ここでは、たんに知っている単語の数の問題ではなく、話題が豊富でさまざまなテーマで会話ができるという意味で、『ボキャブラリー』という言葉を使っています。『引き出しの数』と言い換えてもいいでしょう」

 

 次に、著者は引き出しの多さ(ボキャブラリー)に加えて「広く、ある程度深い知識」が必要であると言います。著者は次のように述べています。


「私がつき合っていて、この人はすごいと思ったグローバルリーダーは、ビジネスや経済だけではなく、文学、美術、音楽、建築、歴史などにも間違いなく深い教養を持っていました。これは欧米だけではなく、広く世界共通と言っていいでしょう。
 日本では、素人が雑学的にいろいろなことを知っている場合、よく『広く、浅く』という言い方をします。専門家の場合は対照的に、『狭く、深く』です。グローバルリーダーの場合、どちらとも少し違っていて、『広く、ある程度深い』素養が求められます。しかも、個別に『狭く、深い』専門分野を持ったうえでの、『広く、ある程度深い』素養なのです」

 

 さらに著者は、決定的に重要なのは「自分の意見」を持っていることだとして、以下のように述べます。


「『ボキャブラリー』があって、『広く、ある程度深い知識』を持っていても、それだけではまだ十分ではありません。それらに加えて『自分の意見』を持っていることが決定的に重要です。日本では、知識自体は豊富でも、『自分の意見』を言えない人がたくさんいます。あれこれ評論家のように語ることはできても、その問題についてあなた自身はどう考えますか、と尋ねると、それまでの舌鋒がともすれば鈍りがちになります」

 

 第4章「本を読む」では、著者は古典に言及し、次のように述べています。


「優れた本とはどういうものでしょうか。保守主義の立場から言えば(私はバークが大好きな保守主義者です)、まず、古典は無条件に優れていると言えます。何十年も何百年も、無数の人々の眼力に耐え、市場で生き残ってきたものは、いいに決まっています。百年以上生き残ってきたものは、まず間違いがありません。どのような理由で生き残ることができたかは個々の事情があるでしょうが、時代が変わっても価値が認められてきたわけですから、99%クオリティの高いものと考えていいと思います」

 

 続けて、著者は古典について次のように述べています。


「人智・年月の淘汰に耐えて生き残ったもの、人類の経験知の集積として評価されているものが古典です。さしあたって読む本が見つからない場合は、まず古典を読むことをおすすめします。古典の定義はいろいろありますが、『岩波文庫や東洋文庫に入っている本』と考えておけば、まず間違いありません。古典は優れたプロのコーチです。慣れるまでが大変ですが、確実に賢くなることはプロのスキーコーチに教わる場合と同じです」
この著者の古典についての考え方は、わたしとまったく同じです。

 

 最後に、「おわりに」で著者は「教養とは、よりよい社会とよりよい人生を実現するための武器です」と述べています。この「よりよい人生を実現する」という言葉に異論はないのですが、わたしは死ぬまでの人生だけでなく、死んだ後の人生にとっても教養は必要であると考えています。
 わたしは、おそらく日本一いや世界一の私設図書館を作されたであろう上智大学名誉教授の渡部昇一先生の顔を思い浮かべました。渡部先生との対談本である『永遠の知的生活』(実業之日本社)でも述べましたが、わたしは「結局、人間は何のために、読書をしたり、知的生活を送ろうとするのだろうか?」と考えることがあります。

 

 その問いに対する答えはこうです。
 わたしは、教養こそは、あの世にも持っていける真の富だと確信しています。 あの丹波哲郎さんは80歳を過ぎてからパソコンを学びはじめました。霊界の事情に精通していた丹波さんは、新しい知識は霊界でも使えると知っていたのです。ドラッカーは96歳を目前にしてこの世を去るまで、『シェークスピア全集』と『ギリシャ悲劇全集』を何度も読み返したそうです。

 

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   『永遠の知的生活』(実業之日本社)


 

 死が近くても、教養を身につけるための勉強が必要なのではないでしょうか。モノをじっくり考えるためには、知識とボキャブラーが求められます。知識や言葉がないと考えは組み立てられません。死んだら、人は精神だけの存在になります。そのとき、生前に学んだ知識が生きてくるのです。そのためにも、人は死ぬまで学び続けなければなりません。
わたしがそのような考えを渡部先生に述べたところ、先生は「それは、キリスト教の考え方にも通じます」と言って下さいました。読書によって教養は永遠ではないでしょうか。

 

 さて、著者の出口治明氏は終活WEB「ソナエ」で、ライフネット生命・出口会長が考える『明るい終活』」という連載インタビューを行われました。つい最近、好評のうちに連載は終了されたようです。わたしも同じ終活WEB「ソナエ」で全3回のインタビュー取材を受け、現在はコラムも連載していますので、著者には非常に親近感を抱かせていただいております。出口氏とはメールでのやりとりもさせていただいており、「いつでも会社に遊びに来てください」とのお言葉を頂戴しています。なかなかライフネット生命訪問のタイミングが合わないのですが、ぜひ来年こそはお会いして、大いに読書談義を交わさせていただきたいと願っています。