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ビジネスに効く最強の「読書」』

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No.1048

 

 『ビジネスに効く最強の「読書」』出口治明著(日経BP社)を読みました。

 「本当の教養が身につく108冊」というサブタイトルがついています。
 1948生まれの著者は、ライフネット生命の創業経営者(現在は代表取締役会長兼CEO)であり、無類の読書家としても知られます。

 

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   著者の写真入りの本書の帯


 

 帯にはお気に入りの本を前にして笑う著者の写真とともに「教養は読書でこそ磨かれる」「自他ともに認める"本の虫"がとっておきの本を紹介!」と書かれています。

 

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   帯裏では、章立てを紹介


 

 本書の「もくじ」は、以下のような構成になっています。


「まえがき」
PART1  リーダーシップを磨くうえで役に立つ本
       ~見坊術数や面従腹背よりはるかに大切なこと
PART2  人間力を高めたいと思うあなたに相応しい本
       ~優れた古典や小説にはヒトのあり方のすべてがある
PART3  仕事上の意思決定に悩んだ時に背中を押してくれる本
       ~読み応えのある超ド級の"原典"で脳を鍛えよう
PART4  自分の頭で未来を予測する時にヒントになる本
       ~社会の安定や平等を追求した先にある未来
COLUMN「出口流、本の選び方」
PART5  複雑な現在をひもとくために不可欠な本
       ~歴史は自分の立ち位置を測る格好のモノサシ
PART6  国家と政治を理解するために押さえるばき本
       ~「公」と「私」と「左翼」と「保守」を振り返る
PART7  グローバリゼーションに対する理解を深めてくれる本
       ~「現象」の裏にある「本質」は誰も教えてくれない
COLUMN「出口流、本の選び方」       
PART8  老いを実感したあなたが勇気づけられる本
       ~高齢者は、次世代のためになるから生かされている
PART9  生きることに迷った時に傍らに置く本
       ~過剰な愚痴、嫉妬、自己承認欲求は人生の無駄
PART10 新たな人生に旅立つあなたに捧げる本
       ~見聞きしたファクトの追体験が深い学びにつながる
「編集者のあとがき」
「紹介した書籍一覧」


 『本の「使い方」』でも紹介したように、著者は ビジネスリーダーの中でも有数の読書家として知られます。特に「歴史」についての造詣が深く、歴史書や古典を愛読する著者の読書傾向が本書のようなブックガイドにおいても存分に発揮されています。「まえがき」の冒頭には、以下のように書かれています。


 「『花には香り、本には毒を』、あるいは『偏見なき思想は香りなき花束である』。本についての蔵言では、この2つがたまらなく好きです。いくら美しい花であっても香りがなければ味気ないことこの上ない」

 

 続いて、著者は自身のことを以下のように告白します。


 「私は本の虫です。無芸無趣味のナマケモノで、一緒にいて楽しい家族や友人がいて、普通にご飯が食べられ、楽しく酒が飲め、ぐっすり眠れたら、人生では後は何もいらないと心底思っています。そして、空いた時間は、もっぱら読書と旅(観劇や鑑賞を含む)に充てています」

 著者の考え方には非常に共感しますが、以下のくだりも同感です。


 「1日は24時間しかありません。断捨離が大切です。私は、昔からテレビとゴルフは捨てています。人間は、島崎藤村の『三智』ではありませんが、人に会い、本を読み、世界を旅すること以外に賢くなる(人間と人間がつくった社会のことを知る)方法はありません」


 さらに著者は、読書の楽しさについて「まえがき」で語ります。


 「読書は本当に楽しいものです。アラブのことわざに『(人生の)楽しみは、馬の背の上、本の中、そして女の腕の中』とあるぐらいですから。デートより、読書の方が楽しいと7~8世紀のアラブ人は真剣に考えていました。そのおかげで、キリスト教の焚書にもかかわらずギリシャやローマの古典が生き残ったのです。よく知られているように、アリストテレスをはじめとするギリシャ・ローマの古典は、イスラム世界で保存され、アンダルシーアなどを経由して、アラビア語からラテン語に翻訳されてヨーロッパで再発見され、それがルネサンスの土壌になりました」


 PART1「リーダーシップを磨くうえで役に立つ本」では、『ガリア戦記』カエサル著、近山金次訳(岩波文庫)をはじめ、『ローマ政治家伝1 カエサル』マティアス・ゲルツァー著、長谷川博隆訳(名古屋大学出版会)、『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル』上・中・下、塩野七生著(新潮文庫)などを紹介しながら、著者は理想のリーダーとしてのカエサルを語ります。

 

 わたしにも『龍馬とカエサル~ハートフル・リーダーシップの研究』(三五館)という著書がありますが、塩野氏の『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル』は大いに参考にさせていただきました。出口治明氏も同書を高く評価されているようで、次のように述べています。


 「リーダーシップを学ぶ際、リーダーシップを抽象的に論じるよりは、生きた人間のケーススタディーを通じて具体的に学ぶ方が役に立つと私は思います。塩野さんの本は、カエサルについての総まとめに最適です。カエサルを多面的に知ることで、決断とは何か、あるいはリーダーはどうあるべきか、お金はどう使うべきなのかなど、様々な人生の実相が見えてくると思います」


 また、著者は新しいタイプのリーダーとして、なんと映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作であるトールキンの『指輪物語』(評論社文庫)の主人公フロドの名前をあげます。著者は、リーダーの最大の条件は強い思いを持ち続ける力であるとして、以下のように述べます。


 「イメージ的にはフロドはとても弱い人格なのですが、迷いに迷いながらも、世界を滅ぼす悪の指輪を火山の火口に投げ捨てて世界を救うのだ、という強い思いだけは最後まで決して捨てることがありません。迷っても迷っても、何度も立ち上がって、最後には指輪を捨てて世界を救います」


 著者は、「やりたいことがあって初めて人はついてくる。これを機に、週末に家族でロード・オブ・ザ・リングのDVDをご覧になってはいかがでしょうか」とまで述べています。そして、自分自身について、次のように述べます。


 「私は今、ライフネット生命というベンチャー企業を経営していますが、強い思いを持ち続けているかどうか、常に自問しています。私の強い思いの中身は、ミッション(保険料を半分にして、安心して赤ちゃんを産み育てることができる社会を創りたい)、コアバリュー(真っ正直に経営し、情報公開を徹底し、分かりやすくて安くて便利な商品・サービスを供給するというマニフェスト)、ビジョン(100年後に世界一の保険会社になる)の3つです」


 PART2「人間力を高めたいと思うあなたに相応しい本」では「優れた古典は心の栄養になる」として、東西の古典を紹介します。たとえば、ペルシャの物語、フェルドウスィーの『王書』(岩波文庫)です。著者は、この本を以下のように紹介します。


 「日本で言えば、古事記と平家物語を足して2で割ったような作品だと思います。平家物語には、諸行無常、盛者必衰などいくつもの有名な言葉がありますが、『王書』を読むと実にそっくりであることに驚かされます。英雄や神様が大勢登場する、中央ユーラシアの人々の精神的な核になっている、古代ペルシャの人々の魂の物語です。別の言葉で言えば、ペルシャ版『諸行無常』の物語です」


 また、『ドン・キホーテのごとく セルバンテス自叙伝』上下、スティーヴン・マーロウ著(文藝春秋)を紹介しながら、「人間の類型は、実は3パターンしかないと言われることがあります。それはドン・キホーテ型、ハムレット型、そしてドン・ジョバンニ(ドン・ファン)型の3タイプです」などと述べ、興味はつきません。この他にも、本書には多くの本が紹介されています。本を読むことに慣れていない人には敷居が高そうな古典も見られ、骨太のブックガイドとなっています。筋金入りの本好きが書いた読書案内だと思います。