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ビブリア古書堂の事件手帖5』

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No.0883

 

 『ビブリア古書堂の事件手帖5~栞子さんと繋がりの時~』三上延著(メディアワークス文庫)を読みました。

 人気のライトノベル・シリーズの最新刊です。この『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ、今や「日本で一番愛される文庫ミステリ」として驚異のミリオンセラーとなっています。この読書館でも『ビブリア古書堂の事件手帖(1~3)』、『ビブリア古書堂の事件手帖4』と紹介してきました。

 

 カバーには、何かの資料を熱心に読み耽っている女性のイラストが描かれ、おびには「累計550万部突破! 日本で一番愛されるビブリオミステリ、最新刊」「美しき女店主に無骨な青年店員の想いは届くのか―?」「古い本は静かに人の想いを育みます」と書かれています。

 

 また、カバー表紙の裏には、「青年の想いを古書は静かに見守ってきた」というリードに続いて、次のような内容紹介が書かれています。
 

 「静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。物思いに耽ることが増えた彼女はついにこう言うのであった。必ず答えは出す、ただ今は待ってほしいと。
 ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。いわくつきのそれらに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。
 脆いようで強固な人の想いに触れ、二人の気持ちは次第に近づいているように見えた。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。この邂逅は必然か? 彼女は母を待っていたのか? すべての答えが出る時が迫っていた」

 

 そう、第5巻は「恋のゆくえ」がメインテーマとなっています。ビブリア古書堂の店主・篠川栞子と店員・五浦大輔の恋のゆくえです。第1巻から第3巻までは連作短篇でしたが、第4巻は初の長篇でした。しかも4巻は江戸川乱歩が題材ということで、乱歩大好きなわたしは狂喜しました。

 

 今回の第5巻では再び連作短篇に戻っています。ただし、これまでとは構成が違うことに気づきます。このシリーズ、通常は主人公である「俺」すなわち五浦大輔の視点で描かれるのですが、今回は章と章の間に「断章」と称して別のキャラクター視点で描かれる、短いエピソードが追加されているのです。この構成がなかなかよく出来ていて、本書の謎を解く大きなヒントになっています。

 

 ただ一部の読者にはわかりにくかったようで、アマゾンのレビューなどを見ると、「プロローグ」と「エピローグ」を誤読している人がいるようです。あまり書くとネタバレになるので控えますが、「断章3」をもう一度よく読んでみると誤解が解けるのではないでしょうか。


 わたしは「恋のゆくえ」などよりも古書のウンチクを読むのが楽しみで、このシリーズを愛読しているのですが、前回の乱歩ほどの大好物ではなかったにせよ、今回もさまざまな本が登場して興味深かったです。手塚治虫の『ブラック・ジャック』は、わが中学時代の愛読書でした。また、本書に登場する全400巻の『手塚治虫漫画全集』(講談社)は弟との共有物として、実家の書庫「気楽亭」に収められています。


 また、リチャード・ブローティガンの『愛のゆくえ』、寺山修司の『われに五月を』も登場します。2冊ともその存在は知っていましたが、未読です。本書を読んで、この2冊がいかにもわたし好みの作品であることが推察されましたので、早速アマゾンで注文しました。このようにブックガイドとしても使える点が、本シリーズの嬉しいところです。

 

 どうやら、この『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは、あと少しで終るようですが、次の第6巻で最後になるのでしょうか。詳細な下調べが必要な仕事なので、著者はさぞ大変だろうと思います。でも、最後にぜひ、「泉鏡花」「宮沢賢治」「夢野久作」「内田百間」「稲垣足穂」「澁澤龍彦」といった幻想文学系の作家の本を取り上げていただきたいですね。
 

 第4巻には『世界幻想文学大系』が登場し、第5巻でも寺山修司の才能を見いだした人物として幻想作家の中井英夫の名前、および著書『黒衣の短歌史』の書名が出てきたので、今後のサプライズに期待しています。

 

 本書には「この世界にあるものが現実だけだったら、物語というものが存在しなかったら、わたしたちの人生はあまりにも貧しすぎる」という言葉が出てきます。これは、わたしの持論とまったく同じだったので、言葉がすんなりと心に溶け込みました。第6巻の刊行が今から待ち遠しいですね。
 

 最後に、最近起こってた忌まわしい「アンネの日記事件」は、ぜひ栞子さんのような人に解決してほしいです。本当にそう思います。