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これからの世界をつくる仲間たちへ』

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No.1471

 

 この読書館で紹介した『〈インターネット〉の次に来るもの』を読み、ITが拓く新世界と人間にとっての労働についてもっと知りたくなりました。そこで、『これからの世界をつくる仲間たちへ』落合陽一著(小学館)を読みました。

 著者は「現代の魔法使い」と呼ばれるメディアアーティストで、現代の若者から人気があるそうです。1987年生まれ。現在は筑波大助教を務めています。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)認定スーパークリエータ。超音波を使って物体を宙に浮かせ、三次元的に自由自在に動かすことができる「三次元音響浮揚(ピクシーダスト)」で、経済産業省「Innovative Technologies賞」を受賞。ちなみに、父は作家の落合信彦氏です。
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    本書の帯

 


 帯にはヨージ・ヤマモトの黒い服と帽子で本物の魔法使いのようなファッションをした著者の写真とともに、「人呼んで『現代の魔法使い』。世界が注目する異能の研究者が語る『すべてが変わる近未来』―」『コンピュータがもたらす新世界で輝くために、大切にすべきことがわかる一冊!』Nakajin(SEKAI NO OWARI)」と書かれています。

 また、帯の裏にはスカートをはいた著者の後姿とともに、「『ほんとうの21世紀』がやってきた今こそ、知っておくべきことがある」と書かれています。
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    本書の帯の裏

 


 さらに、アマゾンの「内容紹介」には以下のように書かれています。

「これから世界がどう変わるのか、教えよう
 著者・落合陽一氏は、28歳という若さにして、世界的にも『社会を変える』と見られている最先端の研究者だ2015年には、米the WTNが技術分野の世界的研究者を選ぶ『ワールド・テクノロジー・アワード』を受賞する快挙を成し遂げた。月刊『文藝春秋』(2016年2月号)では『日本を元気にする逸材125人』に選ばれた。『現代の魔法使い』と称され、『嵐にしやがれ』『サンデー・ジャポン』などメディアにも数多く出演、メディアアーティストとしても活躍している」

 続けて、アマゾンの「内容紹介」はこう続きます。

 

「落合氏は、コンピュータが人間の生き方に根本的な変革を迫っているという。世の中のすべてが変わる。たとえば、これまでのホワイトカラーの仕事は、何もかもコンピュータに持っていかれる。勉強していくら知識を得ても何の役にも立たない時代になる。そんな世界で生き抜くためにどうすればいいのか。落合氏は若者たちに熱く語る。『魔法をかけられる側になってはいけない。魔法をかける人間になれ』と―」

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。

 

プロローグ 「魔法をかける人」になるか、「魔法をかけられる人」になるか

第一章  人はやがてロボットとして生きる?

第二章  いまを戦うために知るべき「時代性」

第三章  「天才」ではない、「変態」だ

エピローグ エジソンはメディアアーティストだと思う
  
 プロローグ「『魔法をかける人』になるか、『魔法をかけられる人』になるか」の冒頭を、著者は以下のように書きだしています。

 

「21世紀が来て16年、今世紀のすでに6分の1を消費したいま、僕はやっと『ほんとうの21世紀』がやってきたような気がしています。ここで『ほんとうの21世紀』という言葉を使った意味は、前世紀の人類を支配していたパラダイム、映像によって育まれてきた共通の幻想を基軸とした思想の統治がようやく抜け落ちてきた、または変化してきたなという実感があるからです」

 著者は「現代の魔法使い」と呼ばれています。なぜか。 それは、著者が東京大学で博士論文を考えている頃、ハードウェアという「魔法」が見えないようにして描かれるようなユーザー体験を「現実」としての物理世界に作りたいと考えていたときに「魔法を実現する」とか「魔法使い」といったフレーズをよく使っていたことに起因するそうです。
  
 そんなときに「ホリエモン」こと堀江貴文氏が作品のインタビューで著者の研究室を訪れ、「魔法使い」に「現代の」をつけて記事のタイトルにしたそうです。著者は「キャッチ―なのでからかわれることも多いのですが、わかりやすいし、ハードウェアとしての『魔法』とデジタル社会のブラックボックス化としての『魔法』が象徴的に結びつくので、僕自身は気に入っています」と述べています。

 

 著者は、前著のタイトルにもあるように、21世紀は「魔法の世紀」だと考えています。コンピューターの発達が現代社会を魔法的に変えていったというのです。1981年にアメリカの社会批評家であるモリス・バーマンは「世界の再魔術化」を指摘しましたが、さらに大きいオーダーで、現在の魔術化は進行しているといいます。

 著者は「スマホという小さな道具の中で、アプリを使いこなして便利に生きているつもりでも、それは誰かが作った『魔法』の世界を見ているに過ぎないのです」として、以下のような具体例を示します。 「現金を出さずにモノが買えるのはクレジットカードという『魔法』が作り出した世界で、多くの人は『店舗からクレジット会社が手数料を取って代わりに払う。消費者はクレジット会社に後払いする』という『魔法のカラクリ』が分かっているでしょうが、スマホやコンピュータの進化で、世の中を動かしている『魔法』の仕組みを理解できず、ただ使っているだけの『魔法をかけられている人』が非常に多くなっています」

 続けて著者は、「モチベーションを持ってコンピュータを下僕のように使う『魔法をかける人』になれるか、あるいは『魔法をかけられている人』のままになるのか。そこに大きな違いが生まれます」と述べます。 スマホのアプリや、SNSなどテクノロジーを単に「便利」と思って使っているうちは、「魔法をかけられている人」にすぎないのであり、それでは、技術を操ることができる人に「奪われる」だけの人生となるわけです。そして、それが嫌なら、「魔法をかける人」になれと著者は説きます。このあたりは非常に説得力があると思いました。
  
 社会を魔術化している張本人はコンピュータです。 いま、コンピュータが人間から多くの仕事を奪うと言われています。しかし、第一章「人はやがてロボットとして生きる?」で、著者はこう述べます。

 

「あらゆる仕事がコンピュータに置き換わるわけではありません。たとえば工事現場の仕事は、少なくとも人間より正確に働くロボットが開発され、ローコストで実用化されるようになるまではなくならないでしょう。しかも、そうなってくると賃金はむしろ上がると思います。作業の段取りを君で指示を出す現場監督的な中間管理職がコンピュータに置き換わって不要になり、その分の人件費をブルーカラーに回せるようになるからです」

 さらに著者は「共産主義で平等にならなかったのはインターネットを発明できなかったから?」として、以下のように述べます。

 

「これまでブルーカラーの労働者は、その仕事をマネジメントするホワイトカラーの搾取を受けてきたと言うことができます。実質的な価値を生み出しているのは現場のブルーカラーなのに、どういうわけかマネジメントをしている側のほうが高い価値を持っているように見えていました。でも、それは決して本質的な話ではありません。むしろ錯覚のようなものだと言っていいでしょう。そんな錯覚が生じていたのは、ホワイトカラーに対抗するコンピュータという概念がなかったから、それだけのことです」

 続けて著者は「話はちょっと飛びますが」と断った上で、以下のように共産主義の失敗について言及します。

 

「たとえば共産主義が失敗したのは、そのようなコンピュータがなかったからかもしれません。もし『維持コストのかからない管理職』がいれば、労働者に富を平等に分配できるはずです。しかし実際には、マネジメントできるほどのコンピュータが存在せず、『管理職』としての共産党や役人を食べさせなければいけなかった。そこが富を搾取するから、労働者は豊かになれなかったわけです」

 

 もちろんコンピュータさえあれば共産主義が成功してとは思いませんが、著者のこの指摘は新鮮であり、一理あると思いました。ひと昔前の学生運動家や左翼的知識人には思いもよらない発想でしょう。

 本書の内容で最もわたしの心に響いたのは、「リソースは人間の頭の中にしかない」というくだりでした。著者は以下のように述べています。

 

「IT化は、『革命』と呼んでいいほどの変化を資本主義にもたらしました。親がお金持ちなら、それを丸ごと相続する子もお金持ちです。だから、資本家の子は資本家になれました。

 一方で、いまの時代のIT企業は物理的なリソースが不要なので、親がお金持ちでも子は『能力的な』資本家にはなれません。必要な資本は『能力の高い人間』であって、これは世代間で継承されるのではなく、遺伝子演算と教育の結果で、比較的どこからともなくランダムに湧いてきます」 つまり、お金がなくても資本家階級になれるというのです。
  
 著者は「これによって、マルクスが考えた『階級闘争』の大前提が、ある部分で崩れ去りました。その意味で、IT革命は『革命』だったわけです」と述べています。いやあ、この著者の言葉には説得力があります。

 それにしても、ホリエモンはとんでもない逸材を見つけ、「現代の魔法使い」と名づけたものです。この2人の人生観などには違和感も覚えるのですが、彼らが「未来」を見つめていることは確かだと思います。次は、ホリエモンの最近の考えを知りたくなりました。