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第2図書係補佐』

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No.1089

 

 『第2図書係補佐』又吉直樹著(幻冬舎よしもと文庫)を読みました。

 『火花』でも紹介した著者は、1980年大阪府生まれ。吉本興業所属のお笑い芸人で、お笑いコンビ「ピース」として活動中です。「キングオブコント2010」準優勝。TV番組「ピカルの定理」出演中。お笑い界一の読書家として知られ、「本読み芸人」の異名もあるとか。

 

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   本書の帯


 

 表紙カバーには、書棚を前に本を読んでいる着物姿の著者の写真が使われています。また本書の帯には、以下のように書かれています。


 「小説家・ピース又吉直樹はここから生まれた!!」「読書という趣味を見つけたことにより僕の人生から退屈という概念が消えました。」「又吉ワールド炸裂! 14万部突破」

 

 さらに、カバー裏には以下のような内容紹介があります。

 

 「僕の役割は本の解説や批評ではありません。(略)自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました―(本書はじめにより)。お笑い界きっての本読み、ピース又吉が尾崎放哉、太宰治、江戸川乱歩などの作品紹介を通して自身を綴る、胸を揺さぶられるパーソナル・エッセイ集。巻末には芥川賞作家・中村文則氏との対談も収載。」

 

 本書には47冊の文学作品が紹介されていますが、じつにバラエティーに富んでいます。それにしても本書は単なる読書紹介ではなく、単なる書評でもなく、じつは著者の短編私小説集とでもいうべき、見事に極私的な話題を書き綴っています。そもそも、それぞれ取り上げている本について数行しか言及していないのです!(笑)

 

 自身のさまざまなコンプレックスをユーモラスに告白し、これまでの人生でおそらく無数の不条理や行き場のない悔しさを感じたであろうに、けっして世界を呪わず、すべてをありのままに受け容れるハートフルな内容になっています。それにしても文章もきれいだし、大変面白く読みました。こんな変わった読書案内は読んだことがありません。恐るべし、又吉直樹!

 

 著者がいかに本を愛しているか、本書から痛いほど伝わってきます。たとえば、関口良雄著『昔日の客』を取り上げた文章では、以下のように書かれています。

 

 「その頃の僕は暇さえあれば古本屋を回り、本棚の背表紙を端から順に追い、題名から物語を想像した。作者の名で五十音順に並べられているのだが、たまに『な』の作家の列に『む』の作家が混ざっていたりすると、それを店員でもないのに『む』の列に戻してみたりもした。気になる本は手に取り裏の紹介文を読み、帯文を読み、ページを開く。するとそこに宇宙が現れる。どんどん活字が大きく濃く強くなっていき雑音が遠退き異世界が拡がる。動悸がする。深く息を吸い込まなければと解っていながらも眼は文字を追い、もっとくれもっとくれと指はページをめくる。『今だ』と思う。『この瞬間だ』と思う。日常でそのように思える時はそうそうない。その作家の名前や題名をいつまでも覚えておく。三百円の古本は安い。その値段で宇宙を買えるのだから相当安い。だが当時の僕には、その三百円が無かった。結局は店の軒先に置かれた雨ざらしの三冊百円コーナーから面白い作品を選ぶ」

 

 また太宰治の『人間失格』を取り上げた文章では、小説の楽しみ方について以下のように書いています。


 「小説の楽しみ方は色々とあるが、僕が文学に求める重要な要素の1つが、普段から漠然と感じてはいるが複雑過ぎて言葉に出来なかったり、細か過ぎて把握しきれなかったり、スケールが大き過ぎて捉えきれないような感覚が的確な言葉に変えて抽出されることである。そのような発見の文章を読むと、感情の媒体として進化してきた言葉が本来の役割を存分に発揮できていることに感動する。多くの人が、自分との共通点を太宰文学に見出すのも太宰がその感覚に長けているからだろう」


 わたしはこの文章に100%共感するとともに(太宰治は苦手ですが)、著者自身も「普段から漠然と感じてはいる」ことを見事に言葉にしています。

 

 太宰といえば、『親友交歓(『ヴィヨンの妻』より)』を取り上げた文章では、著者と太宰治との不思議な因縁が書かれていますが、これを読んでわたしは仰天しました。いわゆる「奇妙な偶然の一致」が続けて紹介されているのですが、これだけ続けばもう偶然ではありません。又吉直樹は太宰治の生まれ変わりではないでしょうか? いや、マジで。


 詳しい内容を知りたい方は、ぜひ本書をお読み下さい。