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ハリー・ポッターと死の秘宝 上・下』

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No.1074

 

 いま、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の人気エリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を楽しんでいます。その前の予習として、『ハリー・ポッターと死の秘宝』J・K・ローリング著、松岡佑子訳(静山社)を再読しました。


 本書は、言わずと知れた世界的大ベストセラー『ハリー・ポッター』シリーズの最終巻です。この新時代のファンタジーは全世界で3億冊も読まれたそうで、すでに古典の風格さえあり、「現代の聖書」と呼ぶ人さえいます。


 このシリーズが歴史的ベストセラーになった最大の要因として「ホグワーツ魔法魔術学校」の存在があると思います。魔女や魔法使いになるために教育を受けなければならないという設定は非常に説得力があります。このシリーズが現れるまで、ファンタジー文学に登場する人物はふつうの人間と魔女・魔法使いとに二分されていました。


 作者のローリングは、ふつうの人間でもいくばくかの才能があり、良い教育を受けることができれば、魔女や魔法使いになれるという設定を考案しました。まるで、スポーツ選手や芸術家になるのと同じように。これこそ、ファンタジー文学にとって大きな躍進でした。しっかりした教育を受けていない、あるいは訓練を怠った魔女・魔法使いは、ただの人間にすぎません。


 じつは、わたしは常々、接客サービス業に携わる人間とは「魔法使い」をめざすべきだと言っています。 この読書館でも紹介したサン=テグジュペリの名作童話『星の王子さま』には、「本当に大切なものは、目には見えない」という言葉が出てきます。本当に大切なものとは、思いやり・感謝・感動・癒し、といった「こころ」の働きだと思います。そして、接客サービス業とは、挨拶・お辞儀・笑顔・愛語などの魔法によって、それを目に見える「かたち」にできる仕事です。


 もちろん、それらのホスピタリティ・スキルを身につけるのには教育と自らの訓練が必要になります。『星の王子さま』で人類に示された「本当に大切なもの」が、『ハリー・ポッター』の方法論で目に見える「かたち」になるなんて、なんて素敵なことでしょうか! しかも、この2つの偉大な作品のあいだには、およそ50年という時間が流れています。


 わたしは、「ドラッカーの法則」というものを唱えています。
 経営学者にして社会生態学者でもあったピーター・ドラッカーは、重大な事件や発明の半世紀後、社会が一変すると唱えました。15世紀、グーテンベルクが活版印刷術を発明した半世紀後、ルターによる宗教改革が起こりました。18世紀、ワットが蒸気機関車を発明した半世紀後、産業革命が起こりました。20世紀では、1946年に世界最初のコンピューターであるエニアックが発明されました。それから50年後の96年にはインターネットが世界的に普及しました。まるで50年が魔法の時間に思えてきますが、『星の王子さま』は1943年に書かれ、その約半世紀後にJ・K・ローリングはシリーズ第一作である『ハリー・ポッターと賢者の石』を書きました。偉大な2つの作品の間にはまさに魔法の時間が存在していたのです。


 シリーズ最終巻である本書『ハリー・ポッターと死の秘宝』を読めば、これまでに張られていた伏線から主要人物のその後まで、すべてが明らかになります。21世紀、魔法について書かれた本が世界中で読まれること自体が、最大の魔法ではないかと思います。なお、本書はシリーズの他の作品同様に映画化もされています。わたしはこの連休にDVDで初めて観たのですが、少年の頃に戻ってワクワクドキドキしました。