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「大学」を素読する』

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 No.0948

 

 『「大学」を素読する』伊與田覺著(致知出版社)を再読しました。
 この本には、「読本『仮名大学』」というサブタイトルがついています。
 以前、この読書館で紹介した『修己治人の書『論語』に学ぶ 「人に長たる者」の人間学』の著者が『大学』を講義しています。著者は、近代日本を代表する陽明学者として知られる安岡正篤の高弟であり、7歳から80年以上ものあいだ『論語』を学び続けた人です。


 本書は、そのような古典活学の第一人者が直筆で記した素読のための『仮名大学』です。なぜ、素読用のテキストが大学なのでしょうか。


 明の王陽明は初学の者に対しては、必ず『大学』を教えたといいます。日本でも、近江聖人と称せられた陽明学者の中江藤樹が11歳のとき、『大学』の中にある「天子自(よ)り以(もつ)て庶人(しょじん)に至るまで、壹(いつ)に是(こ)れ皆(みな)身を修むるを以て本(もと)と為(な)す」の一句に非常に感動して聖賢の道に志したと伝えられます。さらには、野の聖人と称せられた二宮尊徳が少年時代に薪(たきぎ)を背負いながら常に読み続けたのが大学です。


 つまり、『大学』は、修己治人(しゅうこちじん)の最も手近な古典なのです。そして、古典を学上において大切なことは「素読」であると、著者は言う。素読は天明に通ずる先覚の書を、自分の目と口と耳とそして皮膚を同時に働かせて吸収するのだといいます。これを読書百遍で繰り返し繰り返し続けることによって、自ら自分の血となり肉となります。それが時あって外に滲み出ると風韻となり、そういう人格を「風格」というのです。


 素読といえば、江戸時代の寺子屋では子どもたちが四書五経を素読しました。著者の筆による力強い字を大きな声で読み上げると、まるで江戸時代の子どもになったような気がしてきます。

 正しい素読の仕方を収録したCDも付録としてついています。大いに使える、人間学を学ぶ大人の教科書と言えるでしょう。


 なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。