No.0692 宗教・精神世界 『オウム事件17年目の告白』 上祐 史浩・有田 芳生著(扶桑社)

2013.03.20

 今日、3月20日は「地下鉄サリン事件」から18年目の日でした。あの悪夢のような事件から、もう18年も経ったのですね。本当に信じられないほどの速さで月日が過ぎていきます。ちょうど東京に来ていて、今日も地下鉄に乗りました。
 オウムといえば、少し前に『オウム事件17年目の告白』上佑史佑著(扶桑社)を読みました。上佑史佑というオウムの元大物幹部が書いた本だけあって、貴重な歴史の証言に満ちています。じつは、この本の中にわたしの名前が登場するのです。どういう形での登場かは自分では言いにくいですね。

 代わりに、拙著『法則の法則―成功は「引き寄せ」られるか』を紹介していただいている或る方のブログ記事を紹介させていただきます。今年2月24日の記事です。

 「一条真也氏の『ハートフル・ブログ』を愛読されてきた方はご承知でしょうが、一条氏は宗教関連の書籍にも造詣が深くていらっしゃいます。昨年末に出版された、元オウム幹部・上祐史浩氏の『オウム事件17年目の告白』(扶桑社)に、なんと一条氏の名前が登場します。これには『ご本人』も驚かれているのでは・・・・・」

 そう、わたし自身も、これを知ったときは大いに驚きました。最初は、「出版界の青年将校」こと三五館の中野長武さんに教えていただきました。中野さんは、元オウム信者の宗形真紀子氏の著書を編集されました。なお現在、宗形氏は上佑氏が主宰する「ひかりの輪」に所属しておられます。

 さらにそのブログでは次のようにも述べています。

 「断るまでもありませんが、一条真也氏が掲げる『天下布礼』の根本義は『人間尊重』。多くの著書でも書かれておられる『人の道』について、かつてオウムを盲信していた元信者さんが改心し、一条氏が提唱されている『人を幸せにする法則』に感動したエピソードが紹介されているのですね。その箇所はp229(スミマセン・・・ネタバレですね)。元オウム信者・宗形真紀子さんの著書『二十歳からの20年間』に対する一条氏の書評が引用されていました。これは凄い・・・今はオウムから改心している上祐氏も一条氏の慧眼に敬服されておられます」

 上祐氏がわたしの慧眼に敬服ということはないと思いますが、少なくともわたしの考え方に共鳴していただいたことは嬉しく思います。難しい仏教の教義や宗教理論などではなく、本当にシンプルな真理を述べただけなのですが。

 ところで、この『オウム事件17年目の告白』は、もともと朝日新聞出版から発刊が予定されていたそうです。それが、例の橋下徹大阪市長に関する「週刊朝日」の記事の煽りを受けて、急遽取りやめになったとか。くだんの記事に上祐氏の著書の担当者も関与していたため、その方の企画が御破算となったそうです。このことは、上祐氏のブログで知りました。しかし、その後、複数の出版社からオファーがあり、結果的に扶桑社から出版される運びとなったわけです。本書には、17年前にオウム真理教事件を追及したジャーナリストの有田芳生氏と上佑氏との対談も収録されていますが、これがまた興味深い内容でした。

 ちょうど3年前の3月20日、わたしは村上春樹氏の著書も含めて、オウム関連の書評などを自身のブログにおいて1日に6本も書きました。以下の通りです。

『オウム~なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』
『アンダーグラウンド』
『約束された場所で』
『1Q84』BOOK1&2
『二十歳からの20年間』
「地獄」(石井輝男監督)

 その中の島田氏の大著『オウム~なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』の書評記事で、次のように自分なりにオウム事件を総括しています。

 「日本の犯罪史上に残るカルト宗教が生まれた背景のひとつには、既存の宗教のだらしなさがあります。あのとき、オウムは確かに一部の人々の宗教的ニーズをつかんだのだと思いますが、そのオウムは自らを仏教と称していました。そもそもオウムは仏教ではなかったという見方ができました。オウムは地獄が実在するとして、地獄に堕ちると信者を脅して金をまきあげ、拉致したり、殺したり、犯罪を命令したりしたわけです。本来の仏教において、地獄は存在しません。魂すら存在しません。存在しない魂が存在しない地獄に堕ちると言った時点で、日本の仏教者が『オウムは仏教ではない』と断言するべきでした。ましてやオウムは、ユダヤ・キリスト教的な『ハルマゲドン』まで持ち出していたのです。わたしは、日本人の宗教的寛容性を全面的に肯定します。しかし、その最大の弱点であり欠点が出たものこそオウム真理教事件でした。仏教に関する著書の多い五木寛之氏は、悪人正機説を唱えた親鸞に「御聖人、麻原彰晃もまた救われるのでしょうか」と問いかけました。核心を衝く問いです。五木氏は最近、小説『親鸞』(講談社)上下巻を発表してベストセラーになっていますが、くだんの問いは、親鸞が開いた浄土真宗はもちろん、すべての仏教、いや、すべての宗教に関わる人々が真剣に考えるべき問いだと思います」

 あれから3年が経過した今でも、わたしのオウム事件に対する考えは基本的に同じです。ただ、藤原新也著『黄泉の犬』(文春文庫)を読んで麻原彰晃に対する見方が少し変わったのと、本書『オウム事件17年目の告白』を読んで上佑史佑に対する見方も少し変わりました。もちろん、彼らが行った凶悪な犯罪行為はどんな言葉を用いても許されることではありません。ともかくは、これからの上佑氏の生き方に注目したいと思います。なお、本書の印税収入は、税金等の経費を除いて全て、扶桑社からオウム事件の被害者の賠償を行っている団体(オウム真理教犯罪被害者支援 機構)に振り込まれるそうです。

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