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論語の智恵 一日一話』

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No.0263

  

 しばらく、『論語』についての本をいろいろ紹介したいと思います。 

 

 『論語の智恵 一日一話』童門冬二著(PHP研究所)を読みました。

 

 著者は東京都庁に勤め、広報室長、企画調整局長などを歴任して退職した人です。現在、歴史の中から現代にも通ずるものを描く作家として知られています。


 本書の「まえがき」の冒頭は、次の一文ではじまります。


 「わたしが『改めて論語を勉強しなおそう』という気持ちを持ったのは"EQ"という言葉によってだ」


 EQ(Emotionarl Intelligence  Quotient)とは、企業や組織の成果を大きく左右するものとして、近年、大きな注目を集めている能力です。


 EQは「感情知能」「こころの知能指数」とも呼ばれていますが、わかりやすく言うと、「この人なら、信頼できる」「この人と一緒に仕事がしたい」と感じる人間的魅力と言い換えることができます。


 人は論理だけでは動かないのです。EQの発揮は人間的魅力として行動に表われ、その人の周りには人材が集まり、組織のエネルギーを生み出し成果の出せる環境を作り上げます。


 「この人と仕事がしたい」「この人のために頑張りたい」。


 こう思わせる人の能力にはIQ(Intelligence Quotient)つまり知能指数だけでなく、EQという能力が大きく貢献しているのです。


 一方で、知識が豊富でスキルが高いにもかかわらず、「この人とは仕事をしたくない」と感じたり、一緒に仕事をすることが苦痛だった経験は誰にもあるはず。


 このようにIQがいくら高くても、EQの発揮が上手くできなければビジネスはもちろん、社会での成功は難しいと言えます。


 EQ理論は1990年にアメリカで生まれました。日本では、1995年に刊行されたダニエル・ゴールマン著『EQ―こころの知能指数』がベストセラーになったことによって、一躍その名が広まりました。


 著者は、EQのメッセージは「知に対する情の復権」が目的であり、「知と情の二人三脚の必要性」の提起であると喝破します。


 そして、EQについての「どれだけ自分が相手の立場に立てるか、自分の持っているやさしさ・思いやりの量を示す指数」という説明文を読んだとき、一瞬、アッケにとられ、そしてすぐに笑いだしたそうです。


 それは、おかしかったからではなく、うれしかったからでした。


 何がうれしかったかというと、孔子が『論語』の中で「それ恕か」と述べているからです。


 「恕」を漢和辞典で引くと、「ゆるす」という意味をはじめ、「他人への思いやり、自分の心を他人の心におよぼす同情心。自分のことのように他人のこと(気持ち・立場)をおしはかる気持ち」とありました。


 古代中国の孔子が唱えた「恕」の意味がEQとまったく同じであることを知った著者は、思わず「ヤッター!」と叫んだそうです。


 そして、著者は「孔子はEQの必要性を二六〇〇年も前に強調している。この恕を起爆剤に、もういちど『論語』のなかから、だれかさんのお役に立てる身近な言葉を探させてもらおう」と思い立ち、本書を書いたのだそうです。


 本書には、一年分、365の『論語』の言葉が紹介されています。著者は、『論語』の魅力について次のように述べます。


 「『論語』は言葉の宝石の山だ。しかも深く坑道を掘らなくても、ちかづけば露天掘でその宝石が得られる。孔子は鉱山の所有権など主張しない。だれがどこを掘ろうと容認する。それこそ、「恕だよ」なのである。そのかわり特定の人の所有権も認めない。いつでも、だれにでも掘ることを認める全方位対応だ。あらゆる人間を愛するはかりしれないヒューマニズムだと言っていい」


 本書には、「恥はおこないを正しくする」、「人生にはまぐれもあるよ」、「人は憎んでもよい」など、意訳あるいは超訳といってもよい異色の『論語』入門といなっています。


 著者自身が歴史通であり、人間通である著者だからこそ、『論語』をここまで現代風に解説することが可能になったのでしょう。