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路上の伝説』

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No.1993


 『路上の伝説』朝倉未来著(KADOKAWA)を読みました。一条真也の読書館『強者の流儀』で紹介した本の続編です。著者は、総合格闘家、YouTuber。階級はフェザー級。1992年愛知県豊橋市生まれ。喧嘩に明け暮れた中学・高校時代を送り、「路上の伝説」と称されたとか。2013年にTHE OUTSIDERに参戦、史上初の二階級王者となる。2018年にRIZINデビュー。現在、8勝1敗。2019年5月にはYouTuberとして活動開始。2020年12月にはチャンネル登録者数160万人、投稿動画の総再生数が5億回を突破。実の弟に総合格闘家の朝倉海がいます。

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本書の帯 

 

カバー表紙には、サンドバッグに右ストレートを叩き込んでいる著者のモノクロ写真が使われ、帯には「その一撃で、彼は伝説になった――朝倉未来 初の自伝!」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

帯の裏には、「RIZINを7連勝」「総動画視聴回数5億回突破」「チャンネル登録者160万オーバー」「いまやMMA(総合格闘技)のみならず、日本の格闘技界を牽引するようになった男・朝倉未来。YouTuberとしても圧倒的なカリスマを発揮し、格闘家YouTuberブームの先駆けとなった。他者とは異なった視点・発想から齎される分析力は、格闘技における強さのみならず、人々を楽しませるエンターテナーとしても超一流であることを実証した。今や誰もが認める"成功者"となった朝倉未来。しかし、そんな彼が生まれたのは、愛知・豊橋の平凡な家庭。人よりも身体能力に優れていたが、大きな体躯の子供を恐がる、一人の気弱な少年に過ぎなかった。少年は、いかにして"路上の伝説"と呼ばれるようになり、そして"アウトサイダーの英雄"に成り上がったのか?」と書かれています。

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 本書の「目次」は、以下の構成になっています。

第一章  子供時代

第二章  路上の伝説

第三章  少年院と格闘技

第四章  アウトサイダーの英雄

第五章  終わり、そして始まり

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 本書のページを開くと、8ページにわたって著者の不良時代から、アウトサイダー時代のヤンチャ感満点のカラー写真が13点掲載されています。その後、巻頭に以下のように書かれています。
「ある日、先輩から連絡が来た。――抗争になる、お前の力が必要だ。隣街の暴走族との総力戦。中間地帯に集められ、俺たちは対峙した。全員で激突したら、どちらが勝っても共倒れになってしまう。総長同士で話し合ったその結果、一番強い奴同士だけで決闘させて、それで勝敗を決することになった。行くのはお前だと、指名されたのが俺だった。俺はまだ無名の喧嘩自慢。暴走族にも入ったばかりけれどそんなこと関係なかった。強い奴とやれるなら、相手は誰でもよかった。顔も名前も知らない、敵の族の代表と対峙する。始まるや否や、飛びかかってくる相手の顎に、俺は左フックを打ち込んだ。そのたった一撃で相手は失神し、二つの族の全面抗争は一瞬で終結した。――その日から、俺は"路上の伝説"と呼ばれるようになった」 

 

 この巻頭の一文を見てもわかるように、本書には著者のヤンチャ時代のエピソードが満載なのですが、正直あまり興味が持てませんでした。著者が入った鑑別所や少年院の内情は少し興味深く感じましたが、喧嘩無敗のエピソードとかアウトサイダーでの活躍ぶりなども今ひとつ心に響いてきません。そのあたりのエピソード披露は、テレビの「しくじり先生」ですでに知られています。正直、前作の『勝者の流儀』の方がずっと面白かったです。 

 

 著者の若き日の武勇伝に乗れない理由は、ひとつは、昨年11月21日、RIZIN.25のRIZIN初代フェザー級王座決定戦で斎藤裕と対戦し、0-3の判定負けしたことも影響していると思います。王座獲得に失敗しただけでなく、YouTubeで言い訳をしたのは著者の株を大いに下げました。また、昨年12月31日のRIZIN.26では、弥益ドミネーター聡志を1ラウンド4分20秒、KO(左ハイキック→パウンド)しましたが、相手があまりにも格下の選手だったので汚名挽回とまではいきませんでした。 

 

 RIZIN.26では、大晦日のメインイベントとして、現RIZINバンタム級王者の朝倉海と、初代同級王者の堀口恭司による、2019年8月18日以来の再戦が「バンタム級タイトルマッチ」として行われました。前戦では、朝倉海が1ラウンド1分08秒、KOで堀口に勝利。元UFCトップファイターの堀口は海戦後、右膝前十字靭帯断裂と半月板損傷により手術を行い、RIZINバンタム級王座とBellator世界バンタム級王座を返上。1年4カ月ぶりの再起戦となった朝倉海戦では、1ラウンド2分48秒TKO(レフェリーストップ:グラウンドパンチ)で見事に雪辱を果たしました。 

 

 この朝倉海vs堀口恭司戦。今どきの格闘技ファンの間では、それなりに盛り上がったようですが、わたしは満足できませんでした。なぜなら、大晦日の格闘技大会のメインイベントがバンタム級の試合というのに違和感があったからです。さらに言えば、ヘビー級の選手でないと物足りないと思ったからです。かつてのヒョードル、ノゲイラ、ミルコといった最強ヘビー級戦士たちが懐かしくて仕方ありません。じつは、著者は「路上の喧嘩で最強なのは総合格闘技のヘビー級選手だと確信している。その見解は恐らく、今後も変わらないだろう」と本書で述べています。 

 

 著者は小学2年生で空手を、小学4年生で相撲を習い始めますが、太れない体質ゆえに相撲は断念して空手に専念します。しかし、中学に上がると「空手って本当につまらないな」と思っていたそうです。著者は、「空手をやっている人からは反発されるかもしれないが、喧嘩の最中に顔を殴られて、本当に『空手ってくそだな』と思ったものだ。子供の空手では顔面を攻撃することはできない。現実には顔面を殴ってこられるのに、なぜその練習ができないのか。それでは実戦の役に立たない。そもそも、喧嘩では何でもできる。だから、喧嘩は楽しい。喧嘩の楽しさを知った俺は、すぐに空手を辞めることになった」と述べています。 

 

 喧嘩をするようになって、その奥深さにとても感銘を受けるようになったという著者は、以下のように述べています。
「喧嘩の世界には、別に格闘技を熱心に練習してきたわけでもないのに、喧嘩そのものが強いという奴が存在していた。ルールに縛られていると、想像の外側を考えなくてよくなってしまう。たとえば顔面への攻撃を想像しなくていいということもそうだが、寝かされたらどうするのか。相手が柔道家やレスラーだったらどうしたらいいのか。寝技がないからといって、逆に顔面を殴ることに特化しているボクサーみたいな相手と対峙して同じように対応できるのか。それについて考えがなければ、とても対応できないだろう。そして喧嘩が強いやつというのは、こちらの思い込みの外側から攻撃してくるので、驚かされる。そこに、喧嘩というものが持つ抗えない魅力を感じた。それは同時に、格闘技への興味の喪失を意味していた」 

 

 このように、「喧嘩の美学」というか「喧嘩の魅力」というか、本書を読んでいると、やたらと「喧嘩って素晴らしい!」と思えてくるのでした。著者が本当に喧嘩最強の格闘戦士を目指すなら、ヘビー級とは言わないまでも無差別級で通用する80キロ台まで増量してほしいと思います。じつは、著者とわたしは身長が同じで177センチです。もちろんスタイルの良さという面では著者の方がずっとスリムなのですが、身長178センチで「400戦無敗」と呼ばれたヒクソン・グレイシーが全盛期に84キロだったことを考えると、やはりもう少しウエイトがあった方がいいと思います。著者が真の意味で「格闘技界最強の男」を目指すなら、水抜きまでしてフェザー級などに固執せず、ヘビー級とも戦える最強戦士になってほしいと願うのは、わたしだけではありますまい。