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新日本プロレス 封印された10大事件』

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No.1982


 12月16日、東京では678人という過去最多の感染者を記録しました。この日、朝から衆議院議員会館の会議室での冠婚葬祭互助制度議員連盟との意見交換会の後、西新橋の全互協本部に移動して4つの会議に参加、夜は忘年会。じつにハードな1日となりました。
 『新日本プロレス 封印された10大事件』別冊宝島編集部編(宝島SUGOI文庫)を紹介します。一条真也の読書館『猪木力:不滅の闘魂』『アントニオ猪木 世界闘魂秘録』で紹介した本では、‟燃える闘魂"アントニオ猪木の偉大な足跡を紹介しましたが、猪木が創った新日本プロレスにおいては彼の思いつきによって団体そのものが大いに迷走した時期がありました。本書は、その記録です。2014年に宝島社より刊行された別冊宝島『新日本プロレス 10大事件の真相』を増補・改訂した内容となっています。

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本書の帯

 

 本書のカバー表紙は、第1回IWGP優勝戦で、アントニオ猪木にアックスボンバーを繰り出すハルク・ホーガンの写真が使われています。また帯には、「当事者、目撃者たちの最終告白!」「‟新日の黒い霧"」「◎猪木vsアリ◎猪木舌だし◎クーデター未遂◎タイガー引退◎第一次UWF◎長州移籍ほか」「特別収録:前田日明が語るA・猪木、長州力、佐山聡」と書かれています。

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本書の帯の裏

  

 帯の裏には「まだ話していない『秘話』がある」として、佐山聡、新間寿、桜井康雄、大塚直樹、永島勝司、ミスター高橋、上井文彦、猪木啓介、田中ケロ、ターザン山本、小佐野景浩の名前が並んでいます。

  

 カバー表紙の裏には、以下の内容紹介があります。
「1980年代、新日本プロレス黄金期は『スキャンダルの歴史』でもあった。リング内外で展開された数々の『ドラマ』はファンの想像を大いに膨らませた。第1回IWGPでの猪木舌出し事件、クーデター未遂事件、タイガーマスク突然の引退、第一次UWFの設立......。本書は新日黄金期を象徴する10大事件の当事者、目撃者たちの証言集である。令和になっても消えない"新日の黒い霧"、その真相とは――」

  

 本書の「目次」は、以下の構成になっています。

「はじめに」

特別収録

「前田日明が語る新日本プロレス『平成』重大事件」

第1章 第1回IWGP優勝戦「猪木舌出し」事件

第2章 クーデター未遂事件

第3章 タイガーマスクが衝撃デビュー&引退

第4章 第一次UWFの旗揚げと崩壊

第5章 前田日明のUWF移籍と新日追放

第6章 長州力が新日本プロレスを離脱

第7章 新日3大暴動事件

第8章 3団体オールスター戦

第9章 全日本との「外国人選手引き抜き」戦争

第10章 「猪木vsアリ」世紀の一戦

"特別インタビュー"越中詩郎 

UWF、長州顔面襲撃、2大暴動

......全日育ちの"ド演歌ファイター"が見た

新日イズムとアントニオ猪木

    

 「はじめに」の冒頭を、ターザン山本は以下のように書きだしています。
「『プロレスファンは過去に生きる』『プロレスファンは記憶に生きる』。これが昭和プロレスのアイデンティティ、誇りだ。時代がどんなに変わっても関係ない。プロレスに限らない。人間は現在を生きているようにみえて、じつは過去に支配されて生きている。すべては『脳』のせいだ。1970年代後半から80年代をプロレスとともに青春時代をおくった昭和プロレス野郎たちの脳の中をじっくりのぞいてみよう。オー、そこにいたのは比類なきヒーロー、我等がアントニオ猪木ではないか。そして、猪木が立っていたリングは新日本プロレスという一触即発の狂ったドグマだった。一体どれだけのドラマ、物語、事件があったというのだ。確執、嫉妬、裏切り。はたまた近親憎悪、分裂、離脱。なんでもありだった」

  

 また、ターザン山本は「80年代、新日本プロレスの黄金時代は別名『スキャンダルの歴史』でもあった。どうみても、どう考えても猪木は確信犯だ。もし、猪木が確信犯でなかったら、おそらく何もなかっただろう。しかし、そのことで多くの人間が人生を狂わされた。猪木は加害者か? 違う。猪木はただ単に自作自演の舞台を創造していっただけだ。その舞台に上がった人間は誰もが時代の共犯者になったという事実だけが残ったのだ。我々が被害者であるわけがない。それらの一部始終を同時体験したファンは幸福な存在と言えるのだ。あの時代を体感できた我々は、今となっては堂々と勝利宣言してもいいのだ」と述べます。相変わらず、ターザンは冴えていますね!

  

 そして、ターザンは「猪木的に言うとこの本のタイトルは『猪木プロレス10大命綱の真相』となる。果たしてその事件の真相、命綱の真相はどこにあるのか? これはきわめて面白いテーマだ。この謎解きに集まってきた人間はフロント、レスラー、プロレス記者、評論家、その道の名だたるスペシャリストばかり。いずれも当時、現場のド真ん中にいた。これ以上の『同時体験者』はいない。もちろん、ファンもともに同時体験していた。当然、真相は知りたい。しかし、それ自体がもう猪木の仕掛けに、罠にはまっているのだ。ファンもまた言い返すだろう。それも望むところさと」と述べるのでした。

    

 本書に登場している事件は、すでに多くの本で真相が語られており、わたしも大抵のことは知っています。なので、本書によって初めて知った箇所のみをピックアップして紹介したいと思います。第1章「第1回IWGP優勝戦『猪木舌出し』事件」では、永島勝司の著書『プロレス リングとカネ 暗黙の掟を破った男たち』(宝島社)より、以下の記述があります。
「当時、東京スポーツ新聞社の記者であった永島氏は、猪木と手が合い、猪木は永島氏に『一般の新聞にプロレスを載せる方法はないものか』という話を頻繁にしていた。朝日、読売、毎日の三大紙をプロレスに振り向かせる方策はあるのか、を猪木がたずねるたび、永島氏は『そりゃ、事件しかない。試合では一般紙は動かない』と返答した。試合当日、永島氏は猪木がホーガンのアックスボンバーを受けて、場外に転落したとき、『あっ、猪木がやった』と思ったという」

  

 猪木がホーガンに失神KOさせられて、悲願のIWGP王者になれなかったことは、当時のプロレスファンを大いに驚かせました。しかし、ファンを裏切り、ファンの誰をもがっかりさせたサプライズに疑問を持つ人物がいます。プロレス界を震撼させた『流血の魔術 最強の演技』(講談社+α文庫)の著者で、当日の試合のレフェリーだったミスター高橋です。彼は、「第1回IWGPは猪木さんが優勝して、皆をハッピーにしておいて、翌年のIWGPで再びホーガンと闘って、ここでホーガンに取らせる、というシナリオでもよかったんじゃないか、と思います。今となれば、の見方ですがね」と語ります。猪木失神舌KOの影響は大きく、猪木の社内での求心力は低下しました。また、アントン・ハイセル問題もあり、新日クーデター事件、タイガーマスクの電撃引退、第一次UWF、ジャパンプロレスの旗揚げへと繋がってゆきました。

  

 第二章「クーデター未遂事件」では、新間寿、桜井康雄、ターザン山本の3人による鼎談の内容をふまえて、「当時の新日本の社員は社債購入を強いられ、アントン・ハイセルへの強い不満と懸念はあっても、それは大人として肚に収め、『IWGPを成功させよう! 猪木社長にベルトを巻いてもらおう!』と一枚岩、一致団結していたと考察できる。しかし、坂口が『人間不信』と書き置きしてハワイに行ってしまった異変からも、遠からず、レスラーや社員の間に『病院送りはアクシデントではなく、猪木社長の演技だった』という事情も暗に知れ渡り、レスラーや写真が肚に収めていた不満と懸念の抑制が外れ、爆発したのが会社改革を掲げたクーデター事件であったと考え得るのも的外れではなるまい。逆に、IWGPで猪木が優勝していたら、社員の我慢は継続され、クーデター事件が起こらなかった可能性も推測できる」と書かれています。 

 

 第5章「前田日明のUWF移籍と新日追放」では、第一次UWFへの猪木の参戦が流れて、窮地に立たされた新間寿が前田日明ら数人を選手を引き抜いて全日本プロレスに参戦させようと画策したことが明かされます。しかし、前田が「UWFをつづける」と腹を括ってしまったために頓挫してしまいます。新日本プロレスから前田ともに第一次UWFに移籍した営業の上井文彦は、「新日本とUの提携や、前田さんの全日本への引き抜きの話が出たとき、我々と同じ思いで、我々と一緒にUをつづけていくって、前田さんはよく決断してくれましたよ。あの前田さんの決断がなかったら、Uは旗揚げシリーズだけで終わっていました。いまも残るUの伝説も何もない。のちに語られることもない、他にいくらでもある短命団体のひとつになっていたでしょうね」と語っています。 

 

 第7章「新日3大暴動事件」では、新日本プロレスの黒歴史となっている3つの暴動事件について語られます。1つめは、1984年(昭和59年)6月14日の第2回IWGP決勝戦の猪木vsホーガン戦での長州乱入のアングルに対してでした。2つめは、1987年(昭和62年)3月26日、大阪城ホールでの「INOKI闘魂LIVE PARTⅡ」での猪木vsマサ斎藤戦に海賊男が乱入して、斎藤に手錠をかけたときでした。3つめは、同年12月27日、両国国技館での「87イヤーエンド・イン・国技館」で、メインイベントの猪木vs長州戦の前にTPG(たけしプロレス軍団)がリングに上がり、彼らの刺客であるビッグバン・ベイダーと猪木が戦うカードに変更されたときでした。  

  

 これらの暴動では、椅子が破損されたり、会場に火がつけられたりして、警察や機動隊や消防隊まで出動したこともありました。新日本プロレスは多額の弁償を強いられ、会場の使用も自粛させられました。本書には、「猪木イズムはファンに憎悪の記憶も残す!?」として、「悪名は無名に勝る、という。大会場で行われた試合でも『どんな試合だったっけ?』と時間の経過のなかでファンの記憶も確実に風化してゆくものだが、3代暴動事件は今もってファンに語り継がれ、猪木の名前と共に名勝負ならぬ迷勝負が生々しい憎悪の記憶として残っている。これも猪木イズムのひとつ、と私たちは釈義するべきなのかもしれない」と書かれています。  

 

 第8章「3団体オールスター戦」では、1979年8月26日に日本武道館で開催された全日本プロレス、新日本プロレス、国際プロレスによる「プロレス夢野オールスター戦」が取り上げられます。メインイベントはジャイアント馬場&アントニオ猪木組vsアブドーラ・ザ・ブッチャー&タイガー・ジェット・シン組でした。入場時にはブッチャー、シン、猪木、馬場の順番で各自のテーマ曲に乗って入場したのですが、「猪木がリングに登場するや、猪木コールが期せずして起こり、館内に響き渡った。馬場コールも起こったが、揃い踏みしたなかでも、猪木コールに比べると勝負にならず、大観衆には『人気では馬場より猪木』を印象づけた」と書かれています。じつは、新間寿が大学生だった息子に「50人集めろ。2階席のチケットはもちろんタダでやる。そこに1人2000円つけてやるから猪木コールを必ずやれ」と頼んでいました。

 

 試合は、猪木が新を逆さ押さえ込みでフォールした後、猪木はマイクを取り、「今度は一騎打ちです! 馬場さん、戦いを受けて下さいッ!」と絶叫。轟音のような大歓声のなか、馬場もマイクを取り、「よし、やろう!」と呼応。館内の興奮はクライマックスで、感激で泣き出すファンもいたそうです。このイベントについて山本、桜井、新間の三氏が鼎談していますが、以下のように語られています。

山本 桜井さん、メインの試合後の猪木さんおマイクアピール、あれも馬場さんにとって想定外で、ショックだったでしょうね。

桜井 そう、想定外。

新間 大事件だよ。私ですら仰天したもの、事前に猪木が試合後にマイクアピールするなんて、一言も私には言わなかったし。

山本 でも、マスコミは大喜びでしたよ。一面記事にして売れるから。

 最後に、山本氏は「馬場さんには、政治力がなかったですね」「8・26に関しては、馬場さんは後付けで、『しまった、やられた』の繰り返しでしたね。前日の緊急会談、猪木コール、メイン終了後の猪木さんのマイクアピールも」と総括しています。

   

 第9章「全日本との『外国人選手引き抜き』戦争」では、「新日本で誕生する可能性があった『超獣コンビ』」として、ハンセン&ブロディの超獣コンビ、ミラクルパワーコンビが、新日本で誕生する可能性もあったことが紹介されます。もともとハンセンは、ミスター高橋にブロディの写真を見せて、「友人だが、使ってくれないか?」と頼んだそうです。初来日が新日本であれば、気難しいことで知られたブロディも当然、新日本で成功するために聞く耳を持ち、高橋氏と良好な関係が築けていたことと思われます。高橋氏は、「ブッチャーにしろ、ブロディにしろ、全日本にUターンした。結局、引き抜き合戦をプラスマイナスで考えてみると、僕は新日本の完全なる負けだったと思っています。ブッチャーもブロディも全日本で光っているから、そのまま新日本へ引き抜いても光る、と思ったわけですが、やっぱり水が合う、合わないがありましたね。猪木さんのスタイル、馬場さんのスタイルの差でもあったでしょう。シンにしても、長く全日本で使ってもらったにせよ、猪木さんと戦っていた頃の輝きはありませんでしたから」と語っています。 

 

 巻末の「【特別インタビュー】越中詩郎」では、全日本プロレスから新日本プロレスに移籍し、馬場も猪木も間近で見てきた越中詩郎が猪木について、「一言でいえば、俺らとは感性が違うひと、まだキャリアもなくて、木偶の坊だったハンセンやホーガンを一流レスラーに育てたのも猪木さんの感性でしょ。リングの外でも例えば、俺が車やマンションをローン組んで買おうとすると、猪木さんは『そんなの、つまんねえぞ』みたいなことを言うんですよ。サラリーマンみたいな人生を送るな、みたいなことが言いたかったんだと思うんだけど、俺はもともとサラリーマンだから(笑)」と語るのでした。最後の越中のインタビューは必要なかったような気がするのは、わたしだけではありますまい。