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本脈』

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No.1944


 九州北部地方に停滞している前線の影響で12日の小倉は雨でした。一条真也の読書館『頭がいい人の読書術』には多くのアクセスがあり、同書の著者である尾藤克之さんからは「拝見しました。こんな長文をサラリと紹介するなんてすご過ぎです。読書本は私にとってチャレンジでしたがホントに出してよかったと思います。有難うございました!!」とのメールが来ました。喜んでいただけて良かったです。尾藤さんとは15日に東京でお会いする約束をしました。楽しみです!
 さて、尾藤さんの本にわたしの名前を発見して驚きましたが、以前もこんな経験をしたことを思い出しました。『本脈』柏本湊著(ごま書房新社)という本を読んだときです。2012年に刊行された同書には、「生きる知恵が次々見つける新しい読書の楽しみ方!」というサブタイトルがついています。

  

 著者は、生き方研究家・節約家・個人投資家・読書家(年間250~350冊)。1968年生まれ、大阪府出身。東京大学法学部卒業後、某大手金融機関(メガバンク)に勤務。その間、法人営業、産業調査・企業調査、事業会社への業務出向、海外勤務(アジア)、日本企業の海外戦略推進支援、取引先向けセミナーの企画・運営等の業務を歴任。特に産業調査・企業調査では、10年以上に亘り延べ100件超の案件を手掛け、調査のプロとして活躍。2012年春に独立し、フリーランスでビジネス書、評論、エッセイなどの執筆活動を本業として開始。尾藤さんが1967年生まれですから、著者はその1年後のお生まれですね。お二人とも同世代ということになります。

  

 本書の「目次」は、以下のようになっています。
「はじめに」

1 生き方や夢について考える

第1章 あらゆる本に学びあり(一条真也

第2章 サプライズという彩り(小山薫堂)

第3章 極端であること(見城徹)

第4章 幸せのとらえ方(五木寛之)

第5章 セレンディピティ(諸富祥彦)

第6章 人生があなたに期待している 

    (ビクトール・E・フランクル)

第7章 全ては自分の責任(フィリップ・マグロー)

第8章 リスクマネジメントについて(勝間和代)

第9章 負の感情との付き合い方(神田昌典)

第10章 講演の値段をどう見るか 

     (ジャック・ウェルチ)

第11章 手帳で夢を!(熊谷正寿)

第12章 日記で夢を!(今村暁)

第13章 地図で夢を!(望月俊孝)

第14章 人は選んで付き合いなさい(鳥居祐一)

2 お金や時間について考える

第15章 時間をかけて成果を出す人達  

     (クリス岡崎)

第16章 ロバート・キヨサキ氏のマネー戦略 

     (ロバート・キヨサキ)

第17章 顔を出さない著名人達(本田健) 

第18章 となりの億万長者 

     (トマス・J・スタンリー) 

第19章 サラリーマン債券で十分か(橘玲)

第20章 希少性を高めよう(内藤忍)

第21章 堅実な資産形成法(木村剛)

第22章 長期投資で応援しよう(澤上篤人)

第23章 人知れぬ努力(山田真哉)

第24章 自分の時間を増やすには(柴田英寿)

第25章 週末起業の情報管理(藤井孝一)

第26章 圧倒的な読書量の人達(水野俊哉)

第27章 レバレッジの威力(本田直之)

3 知の巨人や偉人の考えに触れる

第28章 最初の仕事はくじ引きである  

     (P・F・ドラッカー)

第29章 教養軽視のつけ(齋藤孝)

第30章 会ってみたい歴史上の賢人(ゲーテ)

第31章 命を絶つこと(水木しげる)

第32章 コミュニケーションしづらい人々

     (村上隆)

第33章 逃げ出すということ(日垣隆)

第34章 集中投資のすすめ(午堂登紀雄)

第35章 思考停止に陥らない(養老孟司)

第36章 知の巨人の衝撃(松岡正剛)

第37章 親兄弟というもの(ドストエフスキー)

4 芸能人や著名人の考え方に学ぶ

第38章 大きいものは信じない(東国原英夫)

第39章 成功の要諦(島田紳助)

第40章 人生、運が98%(秋元康)

第41章 思い立ったらすぐ着手(茂木健一郎)

第42章 アイデアは本質をながめれば尽きない  

     (佐藤可士和)

第43章 不屈の生き抜く力(矢沢永吉)

第44章 人とは違う着眼点(テリー伊藤)

第45章 自立のすすめ(藤原和博)

第46章 アイデアは速く形に(原尻淳一)

第47章 ファン層の裾野(梅田望夫)

第48章 凄さの裏にあるもの(羽生善治)

5 様々な方法論を知る

第49章 「仕組み」を作る(泉正人)

第50章 長期の経営戦略・経営計画はラフに  

     (吉越浩一郎)

第51章 新書礼賛(奥野宜之)

第52章 検索の向こうで勝負(野口悠紀雄)

第53章 CD・オーディオブックの活用

     (大橋悦夫)

第54章 恐るべしフェルミ推定(佐々木正悟)

第55章 読書をしても変われない理由(丸山純孝)

第56章 不平等な扱いを学ぶ(高田靖久)

第57章 既に実現した未来(道幸武久)

第58章 商業出版を実現する法(吉江勝)

第59章 貯蓄の極意(岡本吏郎)

第60章 人生の最大幸福とは(本多静六)

「掲載書籍一覧(著者50音順)

「おわりに」

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第1章に登場するのは一条真也

 

 この「目次」を見ておわかりのように、本書の第1章は一条真也の章になっています。初めてこれを知ったときは非常に驚きました。そもそも、著者どうして本書を書こうと思ったのか? 「はじめに」の冒頭で、著者は以下のように書いています。
「海外勤務から日本に帰ってきて、久しぶりに本を読み始めたところ、読書から離れた生活をしていた反動からか、あっという間に数百冊の本を読み終えていました。そしてある時、『本が別の本を紹介してくれている』ことに気付いたのです。ある本の著者が別の著者や作品に触れていることが多いことに、私は興味を覚えました。読んだ本が別の本を呼んでいる、声をかけている、と感じるようになったのです」

  

 その後、著者はどの本がどの本について言及しているのか、細かく見て記録していく作業を日々行うようになりました。そして、数十冊の本が、数十人の著者が一本の線でつながった頃に、人脈ならぬ「本脈」として、1冊の本にすれば面白いのではないかと思うようになったそうです。ちなみに「本脈」というのは著者の造語で、ビジネス社会で「人脈」という言葉があることから、1冊の本が別の本に導いてくれる繋がりを、「本脈」という言葉で表現してみたとか。

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本書のカバーデザイン

 

 本書における「本脈」で繋がった本は60冊(60人の著者)で、ジャンルは、ビジネス書、人生訓、小説、哲学書、マネー本、エッセイなど多岐に亘ります。本のカバーデザインは、60名の著者の繋がり(=本脈)を図にしたもので、著者が自宅で、手書きで大きな紙に描いてきたものがベースになっているそうです。著者は、「そもそもは個人的な乱読がスタートですが、広がりのある知の繋がりになったと思います。従って、思いがけない本と出会う新しい読書の楽しみ方を示した本であると同時に、知の繋がりを発見するガイドブックでもあります」と述べています。

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ドナルド・トランプの名も!(本書のカバー裏表紙)

 

 なかなかユニークな試みであると思いますが、残念なことにそれほど話題にならなかったようです。それでも、「知の繋がり」を見える化する壮大なプロジェクトのトップバッター、あるいはスターターに小生が選ばれたことは光栄であります。まあ、わたしが選ばれたというより、本の構成上たまたまだったのかもしれませんが、ある編集者の方は「それでも、一条真也が起点となったのは事実ですよ」と言ってくれました。

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あらゆる本に学びあり!

 

 1「生き方や夢について考える」の第1章「あらゆる本に学びあり」の冒頭を、著者は
「本書のスタートは、‟本脈"の冒頭にふさわしい読書術の本です。そもそも本好きな私は、基本的に読書術の本に目を通すことはあまりないのですが、本のタイトルに惹かれて手に取ったのが『あらゆる本が面白く読める方法 万能の読書術』(一条真也著、三五館)です。実は、読後に自分が書いたメモには、『要はこの著者は本が大好きであって、本が嫌いな人への処方箋にはああまりなっていないだろう』と辛口コメントを残していました。また、一条さんには数多くの著書がおありですが、私にとってはこの本が初めてだったので、著者の知見や思考の深さといったところまではよく分かりませんでした」と書きだしています。

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あらゆる本が面白く読める方法』(三五館)

  

 著者の言う通りで、わたしは本が大好きでたまりません。そして、本が嫌いな人のことなど、どうでもいいのです。というか、「この世に、本が嫌いな人がいるなんて信じられないな。本を読まないなんて、もったいない!」と考えているのです。当然、本が嫌いな人への処方箋などを書く気は毛頭ありませんでした。本が好きな人にもっと好きになってもらおうと思って、一条真也の読書館『あらゆる本が面白く読める方法』で紹介した本を書いたのです。ある意味で、「看板に偽りあり」ですが、この書名はわたしではなく、版元の社長さんが付けたものです。わたしは『心ゆたかな読書』とか『ハートフル・リーディング』といったタイトルを提案したのですがダメでした。まあ、その社長さんはわたしが提案するタイトルでは「ど直球過ぎて売れない」と判断したのでしょうね。同書の冒頭が本が嫌いな人への処方箋的な内容になっていますが、これも自分の考えというより、編集者の考えを反映した部分が多く、今読み直すと、「とってつけた」感があります。ですから、著者の柏本氏が「本が嫌いな人への処方箋にはああまりなっていないだろう」とコメントされたのは当然だと思います。

  

 しかし、著者が『あらゆる本が面白く読める方法』を読んで、「これは自分の実感とぴったりだなあと思った箇所があるそうです。「それは、《どんなにつまらない本でも、少しは知らないことも書いてあるし、良いことも書いてある》、《くだらないと思える本でも知らないことや驚くことが1つはあるものです》、です。私は本を読むと、必ず自分にとって新しい考え方や情報、知らなかった言葉づかいなどをパソコンに記録するようにしているのですが、何も記録することがない本はほとんどありません。『こんなこと全部知ってるよ』と、たやすく片付けられる本はまずないのです」と書いています。

  

 さて、「本脈」の第一走者であるわたしのバトンを受けとった著者は、なんと、放送作家の小山薫堂氏でした。小山氏は一条真也の真ハートフル・ブログ「おくりびと」で紹介した日本映画の脚本を担当され方なので、「そっちの繋がりかな?」と思ったのですが、違いました。じつは、『あらゆる本が面白く読める方法』の中で、小山氏の『人を喜ばせるということ』(中公新書ラクレ)という著書に言及しています。同書には「だからサプライズがやめられない」というサブタイトルがついており、帯などには小山氏が「サプライズの達人」として知られていることが書かれていました。それで、わたしは具体的なサプライズの事例を期待して読んだのですが、スタッフを騙して驚かせるといった、「ドッキリカメラ」まがいの話が多く、正直言って期待とはたがう内容でした。

  

 しかし、同書には、「自分が死ぬときにも人を驚かせたい」という話が出てきました。たとえば、ハート型の金具を飲めば、火葬場で自分の遺体を焼いたとき、ハートが残る......。たとえば、ある若者を呼んで「君は僕の隠し子なんだ」とささやいて、驚く相手に遺書を渡す。亡くなった後で、遺書を開くと、そこには「ウソだよん」と書いてある。いずれもイタズラですが、小山氏は「自分が死ぬときに何のサプライズを仕掛けようかと考えていると、不思議と、死ぬのが怖くなくなる」と書かれており、これには、わたしも大いに共感しました。ということで、『本脈』の著者である柏本氏は、この記述から、わたしの後続ランナーに小山薫堂氏を選んだわけです。

  

 このリレーの繋ぎ方は、正直言って「ショボい!」と感じました。これでは、ある本に登場する本を次に紹介するだけではないですか! それよりも、もっと、わたしが著書で最も言いたかったメッセージを受け止めて、次の著者の方に繋げていただきたかったです。わたしが『あらゆる本が面白く読める方法』で最も言いたかったのは「DNAリーディング」というものの重要性です。DNAリーディングは、わたしの造語で、いわゆる関連図書の読書法です。1冊の本の中には、メッセージという「いのち」が宿っています。その「いのち」の先祖を探り、思想的源流をさかのぼる、それがDNAリーディングです。当然ながら古典を読むことに行き着きますが、この読書法だと体系的な知識と教養が身につき、現代的なトレンドも完全に把握できるのです。

  

 現時点で話題となっている本を読む場合、その原点、源流をさかのぼり読書してゆくDNAリーディングによって、あらゆるジャンルに精通することができます。たとえば哲学なら、ソクラテスの弟子がプラトンで、その弟子がアリストテレスというのは有名ですね。また、ルソーの大ファンだったカントの哲学を批判的に継承したのがヘーゲルで、ヘーゲルの弁証法を批判的に継承したのがマルクスというのも知られていますね。マルクスの影響を受けた思想家は数え切れません。こういった影響関係の流れをたどる読書がDNAリーディングです。

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 「『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。

 

 「本脈」が本のヨコ糸を探る試みなら、DNAリーディングは本のタテ糸を探る試みです。つい最近、「『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。」というネット記事を目にしました。kindle作家の綿樽剛氏という方が書かれた記事ですが、その冒頭で、わたしのことについて「冠婚葬祭業大手(株) サンレーの社長で、作家で、大学で『論語』を教える客員教授という『知の巨人』一条真也氏の読書法だ。年間700冊を読み、同時に相当のアウトプットもしている。アマゾンを見ると、なかなか重い著作も何冊も書いている。とりわけ、葬祭業なので、死生観についても深い思索を巡らせていることが分かる。軽く書ける本ではなさそう。専業作家ではないんだから、どうやって時間を使っているんだろう? さらに、社長業として、経済学などにも通じており、あらゆるジャンルを幅広く、なおかつ深く読んでいるのがすごい」と書かれています。

 

 過分な評価に恐縮の至りですが、綿樽氏は「とにかく、本を愛する気持ちが、行間から、これでもか、これでもかと伝わってくる。そんな一条氏の読書法の中で際立っている『DNAリーディング』を紹介してみたい」として、「DNAリーディングというのは一条氏のオリジナル語彙のようだ。基本的には『関連図書』を芋づる式に読んでいく方法なのだけれど、特に際立っているのは、その作家の思想の源流を探る読み方をするということだ」とも書かれています。

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『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。」 

  

 また、『あらゆる本が面白く読める方法』や『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)といった拙著を紹介された後、「たどって読み続けるうちに、源流にたどり着いていく一条氏の読み方は、まさに『自分の頭で考えている』読書法ではないだろうか。一条氏は「読書というのは、人の頭を借りて考えること」というショーペンハウアーの批判を取り上げつつ、自分の場合は、本を読めば読むほどひらめくと述べている。それも、一条氏が思想の源流をたどるような深い読み方をしているからだと感じた」とも書かれています。

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『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。

  

 最後に、「ただ、読みやすい本を濫読しているのではないのだ。これは、これから目指していきたい一つの読書法の形になりそうな気がしたので、NOTEに残しておきたいと思った」とも書かれています。まさに、わたしの言いたいことの核心を綿樽氏が衝いて下ったことに感激しました。わたしも多くの本を引用しますが、いやしくも他人様の本を引用するときは、その人が一番言いたいところを引用しなければいけないと痛感しました。いわば「引用の礼」とでも言うべきものです。『論語』を座右の書としているわたしは、何よりも「礼」を重んじるのです!

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世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP)

 

 この綿樽氏の記事があまりにも嬉しかったので、2人の出版関係者に転送しました。1人は、『あらゆる本が面白く読める方法』の担当編集者で、現在は三五館シンシャ社長の中野長武さん。もう1人は『世界一わかりやすい「論語」の授業』の担当編集者で、現在は造事務所社長の堀川尚樹さんです。中野さんからは、「『たどって読み続けるうちに、源流にたどり着いていく一条氏の読み方は、まさに「自分の頭で考えている」読書法ではないだろうか』など、この人自身がしっかり読みこんで、きちんと自分のものにしていることが伝わってきます」という返信がありました。堀川さんからも、LINEで「たいへんな読書家さんですね。分析がすごいです」という感想が届きました。

  

 なんだか「本脈」よりも「DNAリーディング」が話題の中心になってきましたが、「本脈」のアンカーとなる60人目の著者は本多静六でした。極貧の貧乏学生から東大教授となり、日本初の林学博士として目覚しい業績をあげ、独自の貯蓄・投資法で大富豪となり、かつ、晩年は多額の資金の寄付で知られた人物です。本書では本多静六の著書『私の財産告白』が取り上げられています。わたしは、同書を一条真也の読書館『財運はこうしてつかめ』で紹介した渡部昇一先生の著書でその存在を知って、読みました。著者は、第60章「人生の最大幸福とは」の冒頭で、『私の財産告白』の中の「人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の愉快さには比すべくもない」という本多静六の言葉を紹介しています。

  

 ところが、著者は「人生の理想形はこの言葉通りと思うのですが、現実にはそうはいかず、大半の人は食べていくために、道楽とは到底呼べない仕事に日々追われる生活を送っています。であれば、そうした仕事に納得する、仕事を正当化させるロジックも必要だと私は感じていました」と述べます。探し求める中で、著者は次の文章に出合い、書き留めたそうです。
「古今東西、人間は仕事について様々な考え方をしてきました。現代の養老孟司さんはあの『壁』連作の中で、仕事とは、社会に空いた穴だと言っています。放っておけば、皆が転んで困る。だから埋める。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものだと。自分が穴を埋めた分、世の中は平らになる。歩きやすくなる。そこが肝心です。つまりどんな仕事も社会的役割を負っている。仕事とは、人間が生きるための役割分担だということです」(2007年7月28日「読売新聞」朝刊、編集委員・芥川喜好)

  

 著者は、仕事で苦しんでいるときに、この言葉を何度も思い返したといいます。しかし、一方で「自分が心底好きなことを仕事にできればいいなあ」と何度も何度も思ったそうです。著者は、こう書いています。
「昔の人は、しばしば『どんな仕事でも歯を食いしばって取り組んでいれば、その仕事はものになる(好きになる)』、『仕事を選ぼうとするな。自分に合った仕事があてがわれるのだ』と言います。これはこれで否定はしません。やってみないと分からない、好きか嫌いか分からない仕事も多いわけで、選り好みせずまずはやってみるということは大切です。しかし一方で、『やっているうちに好きになっていく仕事』と『最初から好きなことで、それにさらに打ち込める仕事』の間には、決定的な違いがあると私は感じます。わかりやすく表現すれば、前者は‟好きになれた仕事"であり、後者はずばり"天職"だと思うのです。誰しも、早いうちから『これが自分の天職に違いない』という仕事に巡り合いたいでしょう」

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あらゆる本が面白く読める方法』の帯

 

 わたしの本業は冠婚葬祭業です。しかし、もともと書くことが好きだったのですが、作家業も仕事にすることができました。さらには、大学の客員教授として研究や講義をしたりすることも仕事にできました。そういう意味では、わたしは非常に恵まれている人生を歩んでいると思います。『あらゆる本が面白く読める方法』の帯には、「経営者、作家、客員教授......一人三役を可能にする驚くべき読み方!本邦初公開」と書かれています。でも、わたしは「一人三役」だとは思っていません。経営者、作家、客員教授もそれぞれが分かちがたく結び付き合っていると思っています。

  

 わが社の冠婚営業のエースである松柏園ホテルの中田武志副支配人が、綿樽氏の書かれた「『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。」を読んで、「社長の本当にスゴいと肌で感じたのは、各施設に随行でお供させていただいた時でした! 読書量と読む速さ、また得た知識を活かし新たなミッションへ導く発想力! 私はいつも社長の側で貴重な経験をさせていただいております!」という嬉しいメッセージをLINEに送ってくれました。たしかに、彼の言うように、わたしは、どんな本を読んでも、そこで得た知識やヒントやアイデアを必ず本業で活かしたい、また本業のミッションを再確認する一助としたいと考えるのは事実です。

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世界孔子協会の孔健会長と

 

 わが社のミッションは「人間尊重」です。そして、2500年前に孔子が説いた「礼」の精神こそ、「人間尊重」そのものだと思います。わたしは「天下布礼」の幟を立てています。かつて織田信長は、武力によって天下を制圧するという「天下布武」の旗を掲げました。しかし、わたしたちは「天下布礼」です。武力で天下を制圧するのではなく、「人間尊重」思想で世の中を良くしたいのです。冠婚葬祭ほど、人間関係を良くするものはありません。太陽の光が万物に降り注ぐごとく、この世のすべての人々を尊重すること、それが「礼」の究極の精神です。天下、つまり社会に広く人間尊重思想を広めることがサンレーの使命です。わたしたちは、この世で最も大切な仕事をさせていただいていると思っています。

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 これからも冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをしていきたいものです。また、わたしが大学で教壇に立つのも、講演活動を行うのも、本を書くのも、すべては「天下布礼」の活動の一環であると考えています。ですから、作家業は大好きな仕事ではありますが、わたしの天職は礼業すなわち冠婚葬祭業であると思っています。著者は「最初から好きなことで、それにさらに打ち込める仕事」が「天職」だと定義していますが、わたしの考えは違います。やはり、「好き」よりも大切なことは「誇り」だと思います。さらに大切なことは「使命感」や「志」だと思います。その仕事に心からのプライドを持ち、自らのミッションやアンビションに気づいたとき、「好き」という次元さえも超越して、そこには大いなる「天職」の地平が現れてくるのではないでしょうか?

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本も書くけど、本業は「礼業」です!

  

 最後に、これほど「礼」の世界にどっぷりと浸かっているいるわたしですが、「金」にはあまり縁がありません。本書で伝説の大富豪である本多静六翁とはスターターとアンカーという不思議な御縁をいただきました。この御縁によって、わたしも少しは財運に恵まれるでしょうか?(笑)いずれにしても、日本を代表する賢人たちから、ゲーテ、ドストエフスキー、ドラッカーまで参加した華麗なる「知のリレー」の先頭を切らせていただけたことは光栄でした。良い思い出になりました。著者の柏本氏に感謝申し上げます。