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最強の系譜』

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No.1824

   

 『最強の系譜』那嵯涼介著(新紀元社)を読みました。素晴らしい名著でした。本当は昨年読了していたので、「一条賞」に選ぶ予定でしたが、諸般の事情で、ブログ掲載が今年になってしまいました。「プロレス史 百花繚乱」というサブタイトルがついています。プロレス史専門ムック『Gスピリッツ』(辰巳出版)に、2008年から現在まで著者が寄稿してきた、論文や評伝、インタビューといった文章のほぼすべてを1冊にまとめたものです。著者は1965年、埼玉県出身。本名非公開。格闘技史研究家。ライター。2008年、『Gスピリッツ』誌に「Uの源流を探る―カール・ゴッチとキャッチ・アズ・キャッチ・キャン」を寄稿、ライターとしてデビューしました。正直、こんな凄い書き手がいることを知りませんでした。感動です! 

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本書の帯

 

 本書のカバー表紙には、左上から時計回りにルー・テーズ、カール・ゴッチ、ダニー・ホッジ、ビル・ロビンソン、ローラン・ボック、ビリー・ライリー、エド・ルイスといった最強プロレスラーたちの写真が使われ、帯には「格闘史研究家 渾身の評論集」「テーズ、ゴッチ、ホッジ、ロビンソン、そしてボック......プロレス史を彩る強豪たちの軌跡」と書かれています。帯の裏には「欧州を中心とした、強豪レスラーたちのエピソード満載」「プロレス・ファン必携の一冊!」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

 アマゾンの「内容紹介」には、こう書かれています。
「テーズ、ゴッチ、ホッジ、ロビンソン、そしてボック......。プロレス・ファンの間で語り継がれる伝説の強豪レスラーたち。本書は長年にわたり格闘技史研究を続けている著者が、彼らの真の強さを探求した評論集です。特に1978年にドイツ・シュツットガルトでアントニオ猪木と死闘を繰り広げその後、長い間、沈黙を守り続けたローラン・ボックのロングインタビューや、1977年、78年にアントニオ猪木や坂口征二と異種格闘技戦を行ったザ・モンスターマンのインタビューなど、これまであまりプロレス・マスコミに登場しなかった選手の証言も収録。昭和プロレスファンには必読の内容となっています」

 

 本書の「目次」は、以下の通りです。

「はじめに」

第1章 ベルギーのカレル・イスタス
    ―カール・ゴッチの欧州時代―

第2章 ウィガンにあった黒い小屋
    ―‟蛇の穴""ビリー・ライリージムの実像―

第3章 危険で野蛮なレスリング
    ―キャッチ・アズ・キャッチ・キャンの起源―

第4章 JIU-JITSUは果たして敵なのか?
    ―日本柔術とキャッチ・アズ・キャッチ・キャンの遭遇―

第5章 ゴッチが勝てなかった男
    ―伝説の強豪バート・アシラティ評伝―

第6章 「イスタス」から「ゴッチ」へ
    ―カール・ゴッチ アメリカ時代の足跡―

第7章 カール・ゴッチが出会ったアメリカン・キャッチの偉人たち―オールド・シューター発掘―

第8章 史上最強の三大フッカー
    ―テーズとゴッチ、ロビンソンの複雑な関係―

第9章 ふたつのリスト
    ―テーズとゴッチ、それぞれの最強レスラー論―

第10章 20世紀のパンクラティスト
     ―ダニー・ホッジ回想録―

第11章 世界各国の戦前レスリング稀覯本

第12章 恐怖のトルコ 
     ―コジャ・ユーソフとトルコレスリング―

第13章 戦前の英国プロレス盛衰記
     ―「白紙の20年」とオールイン・レスリング―

第14章 大河に抗わず―前座レスラー長沢秀幸の人生―

第15章 『ゴッチ教室』の全貌
     ―指導者カール・ゴッチの原点―

第16章 もうひとりの‟ゴッチの息子"独白
     ―ジョー・マレンコ インタビュー―

第17章 盟友アントニオ猪木とともに
     ―琴音隆裕 インタビュー―

第18章 木村政彦のプロレス洋行記
     ―知られざる戦いの足跡―

第19章 30年の沈黙を破り、あの‟墓堀人"が甦る
     ―ローラン・ボック インタビュー―

第20章 『イノキ・ヨーロッパ・ツアー』の全貌
     ―猪木のロマンとボックの野望―

第21章 ダイナマイト・キッドとシュート・レスリング―爆弾小僧の創生期―

第22章 ウィガンからのメッセージ
     ―ロイ・ウッド インタビュー―

第23章 怪物たちの述懐―ザ・モンスターマン&ザ・ランバージャック インタビュー―

「あとがき」
「参考文献一覧」 

 

 「はじめに」の冒頭には、「プロレスラーに‟強さ"を求めて何が悪い」と太字で書かれ、著者はそういう視点でこのジャンルと接してきたし、これからもそうやって生きていくだろうとして、以下のように述べています。
「『プロレスとは元来、強さを競うものではないし、ましてや‟最強"などというワードを当てはめるのは幻想にすぎない。愚の骨頂である』
格闘技ファンのみならず、プロレスを愛する者たちの間でも、そうした論調が大勢を占めるのは百も承知である。だが待て。果たして本当にそうか。我々は子どもの頃、彼らの勝ち負けや強さの優劣に一喜一憂していなかったか。ボクシングや大相撲の延長戦上に、プロレスを捉えていなかったか。『ガス灯時代の強豪』に、思いを馳せたことはないか。そして世界中のプロレスラーの中で果たして誰が一番強いのか、知りたいと思ったことはないか。少なくとも、筆者はそういう少年だった。長じて、プロレスというジャンルの‟本質"を知ったあとでも、その想いは一度も萎える事はなかった。そのことに一切の後悔はない」 

 

 また著者は、プロレスについて以下のように述べます。
「プロレスというジャンルは、決して狭義なものではない。万人の眼があれば万人の捉え方があり、いずれの想いにもプロレスは必ず応えてくれる。正解など存在しないのだ。筆者の如く、プロレスラーの強さに興味を抱き、その術理や系譜を紐解くべく歴史書を読み漁り、多くの声を聞き、悠久の歴史に想いを馳せる者にすら、プロレスは胸襟を開いてくれる。もちろん、それは、観る者に留まらない。プロレスラーの側にも、強さを飽くことなく追及し、その生涯を捧げ全うした多くの者たちが間違いなく存在し、そして、彼らが有したプロレス固有の技術も、様々な形で現存している」
 そして、「この本は、そんな‟最強"を追い求めた男たちのドキュメンタリーである」と述べるのでした。 

 

 テーズ、ゴッチ、ホッジ、ロビンソンといった最強セメント・レスラーたちの素顔を知ることができるレポートをはじめ、本書は全編がプロレス史の貴重な資料の宝庫ですが、わたしが特に興味深く読んだのが、第19章「30年の沈黙を破り、あの‟墓堀人"が甦る―ローラン・ボック インタビュー―」と第20章「『イノキ・ヨーロッパ・ツアー』の全貌―猪木のロマンとボックの野望―」です。1978年11月25日、シュツットガルト大会で猪木とボックは4000人の観衆の前で、3度目の対決を行います。猪木が判定負けを喫し、「シュツットガルトの惨劇」と呼ばれたこの試合についてのボックと猪木の述懐が紹介されています。


 猪木とボックの試合は当時のテレビ朝日「ワールド・プロレスリング」でも録画中継され、わたしも観ましたが、暗い照明の会場の中でオールド・クラシックなプロレスが延々と続いていたという印象です。後年、旧UWFが旗揚げして行われた前田vsマンテル、その後の前田vs藤原の試合をビデオで観たとき、「猪木vsボック戦みたいだな」と思ったことを思い出しました。猪木vsボックは、UWFの原点だったのかもしれません。とにかく本書は素晴らしい名著ですので、プロレス&格闘技が好きな方はぜひお買い求めの上、ご一読下さい。絶対に後悔しません!