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なぜ人は騙されるのか』

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No.1786


 『なぜ人は騙されるのか』岡本真一郎著(中公新書)を読みました。「詭弁から詐欺までの心理学」というサブタイトルがついています。著者は1952年、岐阜県生まれ。1982年京都大学大学院文学研究科博士課程(心理学専攻)満期退学。愛知学院大学文学部講師、助教授、教授等を経て、現在は同大学心身科学部心理学科教授。専攻は社会心理学です。

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本書の帯 

 

 本書の帯には「説得のテクニック 信じ込むプロセス」と大書され、帯の裏には「誇大広告や詭弁に騙される前に」として、以下のように書かれています。
「『オレだけど、会社の金を使い込んだんだ......』。振り込め詐欺の典型的な手口だが、私たちはなぜ簡単に騙されてしまうのか。詐欺だけではない。店頭や電車内には、効果を誇張した宣伝があふれ、政治家や官僚は都合の悪いことを言い繕い、SNSでは根拠のないフェイクニュースが流布している。騙されないために、どう心構えし、行動すべきか。社会心理学の観点から冷静に分析し、対処法を伝授する」

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本書の帯の裏 

 

 アマゾンには以下の「内容紹介」があります。
「対面、電話、メール、SNS......私たちは日々、コミュニケーションを取っている。街には広告があふれ、テレビや新聞はニュースを伝える。それら多くの情報をどうやって処理しているのだろうか。中には、購買意欲がわくように効果を誇張した宣伝や、都合の悪いことを言い繕うためのごまかし、根拠のない誤情報も混ざっている。だまされないために、どう心構えし、対処すべきか。言語心理学から冷静に分析する」

 

 本書の「目次」は、以下の構成になっています。

「はじめに」

第1章 説得する――そのメカニズムを探る

第2章 宣伝する――広告に惑わされる

第3章 騙す――日常生活に潜む危険

第4賞 言い逃れる――詭弁を弄する政治家たち

第5章 信じ込む――フェイクニュースが跋扈する

「おわりに」
「引用・参考文献」
「注」

 

 第1章「説得する――そのメカニズムを探る」の1「世の中をどのように判断するか――社会的情報処理」には、「私たちは考える前に行動している――自動的処理と制御的処理」として、著者は以下のように述べています。
「近年の心理学では、人の情報処理には大きく分けて2つのタイプがあると考えられている。その1つが自動的処理、そしてもう1つが制御的処理である。たとえば大人が簡単な文章を読むのであれば、一文字一文字、語句のいちいちにそれほど気を遣わずに全体の意味をどんどんつかんでいける。一方、小さな子供は声に出したり、指でたどったりしながら文字を1つずつ確かめ、それを組み合わせた単語の意味をとらえながら、ゆっくりと文章の意味を理解していく。前者が自動的処理、後者が制御的処理である」

 続けて、著者は以下のように述べています。
「簡単に言えば、自動的処理とはいろいろ考える前にさっさと行われる効率的な情報処理で、制御的処理とはじっくり考えて行われるが効率的には劣った情報処理である。つまり、自動的処理とは、『非意図的、無意識的、制御不可能、効率的、速い』といったことで特徴づけられる。制御的処理はその逆であり、『意図的、意識的、制御可能、非効率的、遅い』という特徴を有する」

 2「他者にどのように影響を与えるか――説得の過程」では、「感謝を先に言う」として、著者はこう述べています。
「コンビニのトイレなどで『いつも清潔にご使用いただきありがとうございます』といった張り紙を見かけることがある。ゴミ箱などにも『ゴミの分別にご協力いただき、ありがとうございます』という掲示がある。言うまでもなく、『ありがとう』と言うのは、通常は相手の行動を受けてからのはずだが、ここでは違う。相手に期待する『清潔にする』という行動を先取りした感謝先行メッセージである。もちろんこれは『清潔にすることが社会規範である』という前提があるからなのだが、こうした表現法の効果はどうなのだろうか。日本で行われたある研究では、この感謝先行型の表現の張り紙と『清潔に使用しましょう』といった張り紙の印象を比較すると、先行型のほうが印象がいいし、それに従おうという気持ちも強くなったことが報告されている」

 また、著者は以下のようにも述べています。
「ある対象に繰り返し接触するだけで、それに対する好意度が増すのではないか、こう考えたのはロバート・ザイアンス(1923~2008)というアメリカの社会心理学者である。彼は、漢字を知らないアメリカ人たちに漢字のような図柄を見せ、それに対する好意を測定した。すると判断する前に見る回数が多かった図柄に対してのほうが、好意度が増していた。また、見知らぬ人の顔写真を呈示してその好意度を調べるという実験でも、その前に何回か見た顔写真に対してのほうが好意度が高くなっていた。このように『接するだけで好きになる』現象を単純接触効果と呼んでいる」

 本書は全体的に硬い表現も目立ちますが、社会心理学の基本的な知識が紹介されており、わたしたちが日常生活の中で、「騙されない」ための有益な内容が書かれた本であると思います。わたしは、銀行の待ち時間の間に読破しました。