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情緒と日本人』

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No.1782


 『情緒と日本人』岡潔著(PHP研究所)を再読しました。著者は1901年、大阪市生まれ。22年に京都帝国大学物理学科入学、数学科に転科、同大を卒業。29年、28歳でフランスに留学、帰国後広島文理科大学助教授となります。教授職を辞してからは、純正数学の研究に没頭し「多変数複素函数論」の分野における「三大問題」といわれる難題に解決を与え、世界的な数学者として認識されました。60年、文化勲章受章。63年に毎日出版文化賞受賞。79年、勲一等瑞宝章受章。78年没。

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本書の帯


 本書の帯には、以下のように書かれています。「世界的数学者にして憂国のエッセイストが日本人に伝え残したこと――没後三十年、数々の言葉がいま甦る」

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本書の帯の裏


 また、アマゾン「内容紹介」には以下のように書かれています。「世界的数学者にして、憂国のエッセイストが、われわれ日本人に伝え残したかったこととは――。没後三十年、著者が鳴らし続けた警鐘は、ますます真実味を帯びてきている。『情緒』という言葉を定義し、日本人としてのあり方を説き続けた著者の切なる想いが込められた名著『春宵十話』、また小林秀雄との歴史に残る対談本『対話 人間の建設』、司馬遼太郎、井上靖、石原慎太郎といった著名な有識者たちとの対談がおさめられた『岡潔集』など、数々の名著から印象深い文章、言葉を選り抜き、箴言集のスタイルでまとめあげたのが本書である。(編集・解説は、評伝『天上の歌――岡潔の生涯』を書いた帯金充利氏が担当)」


 本書の「目次」は、以下のようになっています。

はじめに――解説にかえて

第一章  情緒と日本人

第二章  日本民族

第三章  数学と芸術と文学と

第四章  教育

 付章  松下幸之助との対話 


 それぞれの章には、心に沁みこむ言葉がちりばめられています。まさに、日本人が忘れてはならないものがここにあります。それでは、わたしの心に残った名言の数々をご紹介したいと思います。


 人と人との間にはよく情が通じ、人と自然の間にもよく情が通じます。これが日本人です。(『岡潔集』第五巻)


 たとえば、すみれの花を見るとき、あれはすみれの花だと見るのは理性的、知的な見方です。むらさき色だと見るのは、理性の世界での感覚的な見方です。そして、それはじっさいにあると見るのは実在感として見る見方です。これらに対して、すみれの花はいいなあと見るのが情緒です。これが情緒と見る見方です。情緒と見たばあいすみれの花はいいなあと思います。芭蕉もほめています。漱石もほめています。(『風蘭』)


 こころというと、私は何だか墨絵のような感じをうける。彩りや輝きや動きは感じられない。こころの彩りや輝きという観念は、私たちは西洋から学んだのかもしれない。そういったものが感じられる言葉を使った方が、心を詳しく見るに都合がよいから、私は「こころの一片」という代りに「1つの情緒」ということにしたのである。(『春風夏雨』)


 私はこころと言うと、何だか色彩が感じられないように思ったから、「情緒」という言葉を選んだのである。「春の愁ひの極りて春の鳥こそ音にも鳴け」と佐藤春夫は歌っているが、何もこれだけがそうではなく、情緒は広く知、情、意及び感覚の各分野にわたって分布していると見ているのである(この言葉の内容をそう規定しているのである)。(『紫の火花』)


 人として一番大切なことは、他人の情、とりわけ、その悲しみがわかることです。これについては釈迦も孔子もキリストも口をそろえてそういっています。夏目漱石は『草枕』の初めに「情に棹させば流される」と書いているではないかという人もありますが、終りまで読んでください。「憐」という字に終わっていますから。(『春風夏雨』)


 人の中心は「情」であって、情の根底は「人の心の悲しみを自分のからだの痛みのごとく感じる心」すなわち観音大悲の心である。(『月影』)


 刹那に悠久を見るのが美です。美術というものは悠久の影です。(『岡潔集』第一巻/石原慎太郎との対話)


 あなた方にぜひおすすめしたい本に、フランスの作家サン=テグジュペリの日本語訳「星の王子さま」というのがあります。童心を知るまことによい本です。そうすると、きっと気づくでしょうが、日本人と情緒がまったく同じであること、ただちがうのは、表現がひどく歯切れがよい、ということです。(『風蘭』)