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読書する人だけがたどり着ける場所』

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No.1729


 『読書する人だけがたどり着ける場所』齋藤孝著(SB新書)を読みました。読書術の大家が、ネット時代に教える「だからこそ本を読む」理由が書かれた本です。著者は1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。文化人として多くのメディアに登場。著書多数。

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本書の帯

 

 カバー表紙には読書する少年のイラストが描かれ、帯には「毎日情報に触れているのに知識が深まらないのは、なぜか?」[読んだ本の差で人生は変わる]と書かれています。

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本書の帯の裏

 

 カバー裏表紙には、「『本』を読むからこそ、思考も人間力も深まる」として、「『ネットで情報をとるから本はいらない』という風潮が広がっていますが、それは本当でしょうか? 私たちは日々ネットの情報に触れますが、キーワードだけを拾い、まったく深くなっていない、ということも多いのではないでしょうか?読書だからこそ、『著者の思考力』『幅広い知識』『人生の機微を感じとる力』が身につきます。ネットの時代にあらためて問いたい『読書の効能』と『本の読み方』を紹介します」

 

 本書の「目次」は、以下の構成になっています。

「まえがき」

序章 なぜ、いま本を読むのか

「ネットでいいじゃん」と思っている人に

第1章 読書する人だけがたどり着ける「深さ」とは

「深い人」「浅い人」は何が違うか

第2章 深くなる読書 浅くなる読書 何をどう読むか

一流の人の「認識力」を身につける

第3章 思考力を深める本の読み方

読書で思考力を磨く

【思考力を高める名著10】

第4章  知識を深める本の読み方

知識を持つほど世界が広がる理由

新しい本との出合いで知識を広げる

【現代に必要な知識が持てる名著10】

第5章 人格を深める本の読み方

偉大な人の器に触れる

【人生の機微に触れる名著4】

第6章 人生を深める本の読み方

勝ち負けよりも生き方

【人生を深める名著6】

第7章 難しい本の読み方

あえて本物を選ぼう

【難しくても挑戦したい不朽の名著10】

「参考文献」

 

 「まえがき」では、「いまこそ本を読むべきだ」として、著者は以下のように述べています。
「読書の楽しみや効用について、私はこれまでも繰り返し語ってきました。いつの時代も、読書は素晴らしいものです。思考力を伸ばし、想像力を豊かにし、苦しいときも前進する力をくれる。自己を形成し、人生を豊かにするのに欠かせないのが読書です。その価値はずっと変わらないのですが、あえて『いまこそ』と言いたいと思います」

 

 また、「ネットで文章を読むことと、本を読むことは違う」として、「ネットで読むことと読書には重大な違いがあります。それは『向かい方』です。ネットで何か読もうというときは、そこにあるコンテンツにじっくり向き合うというより、パッパッと短時間で次へいこうとします。より面白そうなもの、アイキャッチ的なものへ視線が流れますね。ネット上には大量の情報とともに気になるキャッチコピーや画像があふれています。それで、ますます1つのコンテンツに向き合う時間は短くなってしまう」と述べています。

 

 続けて、著者は「最近は音楽もネットを介して聴くことが多くなっていますが、ネットでの「向かい方」ではイントロを聴いていることができません。我慢できなくて次の曲を探しはじめてしまいます。そこで、いきなりサビから入るような曲のつくり方をしているという話を、あるアーティストの方から聞きました」とも述べています。

 

 ネット上で文章を読むことと、読書とは行為として全然違うという著者は、両者の違いについて以下のように述べます。
「これは情報の内容やツールの問題というより、『構え』の問題です。著者をリスペクトして「さあこの本を読もう」というときは、じっくり腰を据えて話を聞くような構えになります。著者と2人きりで四畳半の部屋にこもり、延々と話を聞くようなものです。ちょっと退屈な場面があっても簡単に逃げるわけにはいきません。辛抱強く話を聞き続けます」

 

 逃げ出さずに最後まで話を聞くとどうなるか。それは「体験」として刻み込まれます。著者は、こう述べます。
「読書は『体験』なのです。実際、読書で登場人物に感情移入しているときの脳は、体験しているときの脳と近い動きをしているという話もあります。体験は人格形成に影響します。あなたもきっと『いまの自分をつくっているのは、こういう体験だ』と思うような体験があるでしょう」

 

 体験について、さらに著者はこう述べています。
「自分1人の体験には限界がありますが、読書で疑似体験をすることもできます。読書によって人生観、人間観を深め、想像力を豊かにし、人格を大きくしていくことができるのです。読書よりも実際の体験が大事だと言う人もいます。実際に体験することが大事なのはその通りです。でも、私は読書と体験は矛盾しないと考えています。本を読むことで、『これこれを体験してみたい』というモチベーションになることはありますし、それ以上に、言葉にできなかった自分の体験の意味に気づくことができます。実際の体験を何10倍にも生かすことができるようになるのです」

 

 序章「なぜ、いま本を読むのか」では、AI(人工知能)の最新の動向に言及しながら、「『AIに負けない』なんて本末転倒」として、著者は「AIに負けないことを目的に据えて生きるなんて本末転倒です。それこそAIに人生を明け渡してしまったようなものです。AIが出てこようが出てこなかろうが、『自分の人生をいかに深く生きるか』が重要なのではないでしょうか」と述べています。

 

 また、「人類の未来のために」として、わたしたち人類は「ホモ・サピエンス=知的な人」であると指摘し、著者は「本を読まないのは、ホモ・サピエンスとしての誇りを失った状態。集中力もさらに低下して、いよいよ『本を読まない』ではなく『読めない』ようになってしまったら、人類の未来は明るくないのではないかとすら思えてきます」と述べています。

 

 第1章「読書をする人だけがたどり着ける『深さ』とは」では、「『深い人』『浅い人』は何が違うか」として、以下のように述べています。
「その浅い・深いはどこから来ているのでしょうか。それは一言で言えば、教養です。教養とは、雑学や豆知識のようなものではありません。自分の中に取り込んで統合し、血肉となるような幅広い知識です」

 

 そして、教養のカギとなるのは、物事の「本質」を捉えて理解することであるとして、著者は「バラバラとした知識がたくさんあっても、それを総合的に使いこなすことができないのでは意味がない。単なる『物知り』は『深い人』ではないのです。教養が人格や人生にまで生きている人が『深い人』です」と述べます。深い人になるには、読書ほど適したものはありません。本を読むことで知識を深め、思考を深め、人格を深めることができるというのです。

 

 「コミュニケーション能力は文字で磨かれる」として、著者はこう述べています。
「コミュニケーション能力の根底には『認識力』があります。相手の状況や感情、言動を認識する。言動それぞれに、その場の文脈というものがあります。『期待しているよ』という言葉が、『あなたを信頼しているから、ぜひ頑張ってね』という意味のこともあれば『いい加減成果を出してくれないと困る、最後のチャンスだぞ』という意味のこともあるかもしれません」

 

 著者いわく、人の「複雑な感情」を瞬時に理解するのも認識力です。著者は、「嬉しい、悲しい、悔しいと単純に言えない、表現しにくい感情。そうしたものを消化したり感じ取ったりすることができれば、より深いコミュニケーションにつながると述べます。文字にはそういった複雑な感情が描かれています。文学を読むことで、複雑な感情を感じ取ったり言語化したりする能力を身につけることができます」と述べます。

 

 深いコミュニケーションができる人は魅力的な人です。「『魅力的な人』とはどんな人か?」として、著者は以下のように述べています。
「平安時代の恋愛は、実際に顔を見る前に手紙のやりとりをして『素敵な人だ』と思っていました。見た目がよくなくても頑張って教養を身につけて魅力を出していた。『やはりあの人は育ちが違うわね、教養があるわね』なんて言われたわけです。実際、周囲で魅力的な人を思い浮かべてみると、見た目だけではないはずです。話が面白く、深いコミュニケーションができる人、人間性が高い人、深みのある人が魅力的だと思うのです」

 

 また、「深みは読書でつくられる」として、著者は以下のように述べています。
「SNSはコミュニケーションのツールとしてとても優れていますが、情報摂取の観点から言うとあまり役立ちません。友達とのコミュニケーションからは、基本的に「新情報」は出てこないもの。お互いに知っている物事、身近な物事について情報交換をしていることが多く、新情報へのきっかけはあるとしても、深く知ることは難しいでしょう」

 

 さらに、著者は以下のようにも述べるのでした。
「せめて寝る前1時間は読書にあててはいかがでしょうか。すると、毎日少しでも深い時間を過ごすことができます。日中は浅いコミュニケーションに終始している人も、突如深くなれます。いったいどうしたんだと言いたくなるくらい、考えも顔つきも深遠な感じになるでしょう。この『突如深くなる』感覚がいいのです」

 

 第2章「深くなる読書 浅くなる読書 何をどう読むか」の「一流の人の『認識力』を身につける」では、「情報としての読書 人格としての読書」として、著者は述べています。
「読書には大きく分けて2つあります。情報としての読書と、人格としての読書です。ノーベル物理学賞受賞で話題になった『重力波』について知りたいと思って、情報がコンパクトにまとまっている新書を読もうとするのは、情報としての読書。中勘助の自伝的小説『銀の匙』を読み、自分の子ども時代と重ね合わせながら世界観を味わうのは人格としての読書。情報としての読書の場合、著者が誰であるかはさほど重視しないこともあるでしょう。その人の世界観というより、事実を知りたいと思っているからです」

 

 「『著者の目』で物事を見てみる」として、著者は世界史を例に出して、以下のように述べています。
「世界史について言うと、日本は世界史への興味が最もある国だと思います。世界史を学ぼうと思ったら、古代文明からイスラム世界、ヨーロッパにアメリカと膨大な知識を必要とするのですが、日本の高校では必須科目。どれだけ深くやっているかは置いておいて、とりあえず一通りは学ぼうとしているわけです。この極東の国が、世界を学ぶことに熱心であれば、世界の中でバランサーとして働くことができるのではないでしょうか。私たちは西洋的な生活をしていますが、東洋的な考え方をベースに持っています。西洋第一主義、欧米中心主義では考えません。イスラムやインドについても偏っていない見方ができると思うのです」

 

 「一冊の本から、連綿と続く『精神文化』につながる」として、著者は以下のように述べます。
「私たちは誰しも1人で生きているのではありません。連綿と続く文化の中で生きています。ふだんなかなか意識しないかもしれませんが、根底にある精神文化を掘り起こし、感じることで強くなれます。文化を共有している人たちとのつながりが感じられるのです。精神文化は、読書によって掘り起こすことができます。哲学や思想書はもちろん、文学も適しています」

 

 また、文豪たちは大量の本を読んでいることを指摘し、著者は「川端康成、太宰治、谷崎潤一郎の読書量はハンパではありません。大量の読書によって精神文化を背負い、それを文学の形にあらわしているのです。だから、谷崎潤一郎の本を1冊読むだけでも、その背景にある大量の本がガーッとなだれ込んでくるような感じです。著者固有の視点というのはもちろんあるけれども、背景に精神文化が濃く流れているのです」と述べています。

 

 第3章「思考力を深める本の読み方」の「読書で思考力を磨く」では、「『星の王子様』の『狐』は誰か?」として、著者は「思考を深める際にまず大切なのは、自分に引きつけて考えることです。文章を読んで『そういう意味か、なるほど』と言って終わらせるのではなく、『これは自分の場合の何にあたるだろう?」「自分だったらどうだろう?」と考えるのです』と述べています。

 

 「思考を深める『対話』『レビュー』の活用法」として、著者は「思考を深めるには、対話をするのが一番。だからおすすめしたいのは本を読んだら人に話すことです。話しはじめれば何か言わなければと思考が動き出します。相手から質問をされたり、違った理解の仕方を提示されればさらに考えが深まります」と述べます。また、「ニーチェにもツッコミを」として、著者は「少し距離を保ちつつ、思考力を働かせて読むには、『ツッコミを入れる』のがおすすめです。お笑い芸人のように『そんなわけないだろ』とか『よしなさい!』とか言って笑いながら読むのです」とも述べています。

 

 第4章「知識を深める本の読み方」の「知識を持つほど世界が広がる理由」では、著者は「知識と認識はセットです。知識なしで頭だけ鍛えようと思っても難しい。知識が増えると認識力も高まるという関係にあります」と述べ、さらには「宇宙、生命、物理など自然科学の知識を手に入れると、一気に世界が広がります。ミクロの世界もマクロの世界も、驚きと感動でいっぱいです。人生観さえ変わるかもしれません」と述べています。

 

 「『驚く』ことが知のはじまり」として、著者は以下のようにも述べています。
「驚くべきことに驚けるのは、実は教養があるからです。知識豊富で教養豊かな人は、もうあまり驚くことがないのではないかと思うかもしれませんが、逆なのですね。知れば知るほど、心の底から驚くことができるのです。知識がないと、何がすごいのかわからない。ぴんとこない、ということになります。プラトンは、『テアイトス』(岩波文庫)で、ソクラテスに『驚くということ、驚異の情が、知の探究のはじまり、すなわち哲学だ』ということを言わせています。驚いて、深めていくことが人間らしい行為と言えるのではないでしょうか」

 

「『つながり』を意識すれば、知識が取り出しやすくなる」として、著者は「本を読んで知識を自分のものにするには、人に話すのが一番です。自分が発見したことであるかのように臨場感を持って、感情をのせて語る。そうすると、知識はしっかりと定着し、自在に使うことができるようになります」と述べ、さらには以下のように述べています。
「知識を使うには、『文脈』が重要です。文脈に合わせて、さまざまな知識を取り出す。本の中にあったエピソードをひとまとまりにして話せたりすると会話も盛り上がります。話の流れに乗りながら、自然な形で本の話題を出し、そこからまた次へつなげていきます。そういった取り出しがうまい人が『知識のある人』として評価されるのです」

 

 第6章「人生を深める本の読み方」の「勝ち負けよりも生き方」では、著者は文学について以下のように述べています。
「私たちはアメリカ式の資本主義に慣れてしまっているので、『成功したい』という欲求を自然のように感じています。でも、文学の世界に浸ってみると、成功や勝ち負けなんてどうでもいい、というか、意味がわからないという感覚になるはずです。文学とは経済的成功や勝ち負けとは違う次元で成立しているものだからです。『生きる』ことの意味の深さを何とかつかまえようとしている、そういう営みなのです」

 

 また、著者は以下のようにも述べています。
「『勝ち組、負け組』という言葉は、10年ほど前はよく使われていました。当時はそれなりにリアリティのある言葉だったのかもしれません。しかし、流行当時であっても、文学に親しんでいる人であればそんな言葉を使うのはためらったはずです。たとえ頭が良くて仕事で成功をおさめていたとしても、そういった浅い言葉をバンバン使う人は『残念な人』という感じがします。教養に欠けていると疑わざるをえない。これは重要な視点です。お金を持っている人が偉いとか立派だというわけではないからです。資本主義のゲームに勝つのはうまいかもしれませんが、それが偉いわけではないでしょう。あえて勝たない道だってあります。人が生きる意味を問いながら、その深みを掘っていくのが人生の醍醐味です。生きていくうえで経済は重要ではありますが、当然ながらそれだけではありません」

 

 そして、第7章「難しい本の読み方」で、著者は以下のように述べるのでした。
「『この本を読んだ自分、かっこいい』と思うのも、読書の習慣化に大事なことです。洋書や古典、新書を待ち合わせの時間にでもさっと開いて読む。ピックアップしたところを読み直すのでもいい。あるいはカフェでゆったりと読書。そんな人ってかっこいい、本はモテの必須アイテム。出版文化の明るい未来を願う者としては、そうなってくれたらいいと思う次第です」
 本書はネット全盛の時代における読書の意義と可能性をといた高著であると思いました。なによりも、タイトルが素晴らしいです!