No.1613 オカルト・陰謀 | 心霊・スピリチュアル 『オカルト・クロニクル』 松閣オルタ著(洋泉社)

2018.10.15

 『オカルト・クロニクル』松閣オルタ著(洋泉社)を読みました。
 「オカルト・クロニクル」というサイトの記事を集めて書籍化したものです。本書の内容はこのサイトの内容については、「懐疑と肯定のハザマで世界のオカルト事件をアーカイブし、研究するサイト、オカクロ。」とサイト内に書かれています。このサイト、内容も興味深いですが、各記事の上についているアイ・キャッチ画像が素晴らしい!これは、もう、「アート」と呼ぶ他はありません。これを見ているだけで、心が異世界に連れていかれそうになりますね。

   サイトのアイ・キャッチ画像が素晴らしい!

 本書には、「奇妙な事件 奇妙な出来事 奇妙な人物」というサブタイトルがついています。著者は、怪事件専門ルポライターです。Webサイト「オカルト・クロニクル」主筆。奇現象・怪事件研究家。会社員として企業に勤務するかたわらオカルト事象、未解決事件などの資料を収集しています。

   本書の帯

 本書の帯には「懐疑と肯定の狭間 そこにこそオカルトの本当のミリョクと真実が眠っている!」「膨大な資料と独自の視点で読み解く『超濃厚オカルト研究読本』」と書かれています。たしかに、こんなに超濃厚な本はなかなかありません!

   本書の帯の裏

 本書の「目次」は、以下のようになっています。

「はじめに――信奉者はタフなロマンを!
 信奉者の敵は懐疑論ではなく安易な否定論だ!」
ディアトロフ峠事件
――ロシア史上最も不可解な謎の事件
熊取町七名連続怪死事件
――日本版『ツイン・ピークス』の謎
青年は「虹」に何を見たのか
――地震予知に捧げた椋平廣吉の人生
セイラム魔女裁判
――はたして、村に魔女は本当にいたのか……
坪野鉱泉肝試し失踪事件
――ふたりの少女はどこへ消えたのか……
「迷宮」
――平成の怪事件・井の頭バラバラ殺人事件
「人間の足首」が次々と漂着する”怪”
――セイリッシュ海の未解決ミステリー事件
「謎多き未解決事件」
――京都長岡ワラビ採り殺人事件
ミイラ漂流船
――良栄丸の怪奇
科学が襲ってくる
――フィラデルフィア実験の狂気
岐阜県富加町「幽霊団地」
――住民を襲った「ポルターガイスト」の正体
八丈島火葬場七体人骨事件
――未解決に終わった”密室のミステリー”
獣人ヒバゴン
――昭和の闇に消えた幻の怪物
ファティマに降りた聖母
――7万人の見た奇蹟
赤城神社「主婦失踪」事件
――「神隠し」のごとく、ひとりの女性が、消えた
「あとがき」
[付記]

 「はじめに――信奉者はタフなロマンを!信奉者の敵は懐疑論ではなく安易な否定論だ!」の冒頭に、著者は「つまらないUFOを見たことがある。小学校低学年のころだったと思う」と書き、自身のUFO目撃体験を綴っています。
 また、著者は「つまらない幽霊に襲われたことがある。中学生になったころだったと思う」と書き、自身の心霊体験を綴っています。なかなか文章がうまい書き手ですが、それから次のように書いています。
「ほかにも『つまらない何か』にまつわる不可解な体験をいくつかしてきたが、あれらはいったいなんだったのだろう?つまらないUFOなどは、市街地から風で流れてきた気球だったのかもしれないし、つまらない幽霊などはレム睡眠が引き起こした幻――あるいはまったくの夢だったかもしれない」

 著者は、こと不思議な出来事や超常的なものに向き合うとき、大きく分けてふたつの立場が存在するとして、以下のように述べます。
「まず信じてかかる『信奉派』いわゆるビリーバーという立場、そして疑ってかかる『懐疑派』という立場で、このふたつの潮流はコトの真偽をめぐってたびたび衝突を見せる。そんな潮流を傍目に見ながら、関心はあるものの懐疑派になるには知性・知識が足りず、信奉者になるには純粋さや信仰心が足りない、でもカヤの外は嫌だから仲間に入れてほしい――というワガママな立場から、本書ではなるべく両方の意見・仮説を取り上げるようにしている」

 そして、著者は以下のように述べるのでした。
「多くの奇妙なケースや不思議な事象が陳腐化してきたとはいえ、調べが進んだことによって、さらに謎を深めたモノも少なからず存在し、本書でも過去の記事公開から新事実が発覚したモノについて多少の加筆修正を加えている。それが皆の疑問符――『いったいなんだったのだろう?』であったり、『何が起こったんだろう?』のすべてに解を与えるものではない。が、デタラメや誇張、デッチ上げや捏造が判明しているものは把握できるかぎり除外されているので、正しい推測へ到達するための正しい前提、あるいはそのヒントになってくれれば、と思う。筆者は情報の中継器にすぎない」

 本書に収められた15のエピソードの中には、純粋なオカルト(というのも変な表現ですが)話と、いわゆる未解決事件の話が混在しています。わたし的には「どうして、未解決事件がオカルトと関係あるの?」と思ってしまいますが、そこは「奇妙な事件」や「奇妙な出来事」や「奇妙な人物」というジャンルに収斂されるのでしょう。個別のエピソードに関しては立ち入りませんが、行方不明者の話題も多いです。

 最後の「赤城神社『主婦失踪』事件――『神隠し』のごとく、ひとりの女性が、消えた」で、著者は以下のように書いています。
「日本では毎年8万5000人前後の人たちが失踪している。少なくとも、統計として残されている1956年以降で8万人を切った年は一度もなく、当たり年――最も多かった1983年で約11万5000人が行方不明になった。そう、日本では神隠しは珍しくないのだ、ここは人が消える国――。などと商業オカルト媒体で書かれそうな数字ではあるが、実際のところ警察庁の資料によれば行方不明者届の受理から1週間以内にその大多数が帰宅ないし所在確認されている。手元にあるうちで最新の統計にあたる2016年度を見てみれば、行方不明者84,850人に対し、83,865人――実に98.8パーセントが所在確認されていることになる」

 続けて、著者は「20年前、1998年の行方不明者のなかで結局所在が確認されなかった12,985人。このなかにN子さんがいる。統計から見える失踪の原因・動機は例年ほとんど変わらず、認知症を含む疾病関係、そして家庭関係がそれぞれ20%前後、事業職業関係が10%と約半数を占めており失踪の過半数が自発的なモノだったことがわかる。他には恋愛絡みの異性関係で2%前後、で犯罪関係は0.7パーセント前後となっており、意外なことではあるが、こと失踪案件において事件絡みはおしなべて少ない。これらの内訳――『原因』は我々人間が人間である以上、過去も現在も大きく変わるモノではないだろう」と述べています。

 さらに、著者は「神隠し」について、こう述べます。
「民俗学者の小松和彦氏は、神隠しを扱った著作のなかで過去の神隠し事例を紹介し、その『社会的機能』について指摘している。誰かが失踪したさい、神隠しの原因を『外』つまりは天狗なり異界なりの『あちら側』に求め、真相をまるごとヴェールで覆ってしまうことにより、誰も――もちろん本人も失踪の責を負わないシステムであったと。こうした『不問の文化』によって『悪いのはあちら側』とされ、不可解な失踪から戻っても本人の居場所は失われない。失踪したまま戻ってこない者たちの家族も『異界に行っているだけ』『いつか帰ってくる』『神のそばから私たちを見守っていてくれる』と耐えがたい喪失感を柔らかく癒やしていった。これは旧い時代の『優しさ』『思いやり』だったのかもしれない」

 このあたりは一条真也の読書館『神隠しと日本人』でも言及しましたが、最近では「神隠し」の原因が北朝鮮による拉致と結びつけられやすくなっています。実際に多くの人々が北朝鮮の工作員によってかの国に連れ去られているからです。しかし、今年の8月15日午前、山口県周防大島町で同月12日から行方不明だった2歳男児が大分県から来ていた捜索ボランティアの70代男性によって発見されました。まさに「お盆」の日に子どもが発見されたこの事件などは「神隠し」の香りがプンプンしましたね。

 「あとがき」で、著者は以下のように述べています。
「インターネットの発達に伴い、『何か』を知ろうとするとき、我々は過去のどの時代のどの調査者よりも有利な位置から始めることができる。もちろんそれはネット黎明期に熱っぽく語られた『集合知』、その理想的な姿ではなくなってしまっているけれど、それでも無数のヒントは得ることができる。当該ケースについて触れた書籍を見つけることもできるし、信頼に足る有識者の呟きを見つけることもあるかもしれない。そしてその逆もしかり。いかに多くのデマが生み出され、横行し、定着しているか――をも目の当たりにすることにもなる」

 しかし、わたしとしては、やはり未解決事件というよりはガチのオカルト・エピソードを好みます。本書では、セイラム魔女裁判、ファティマに降りた聖母、フィラデルフィア実験、それから椋平廣吉の地震予知の記事を興味深く読みました。
 セイラム魔女裁判、ファティマに降りた聖母、フィラデルフィア実験の3つに関してはすでに知識がありましたが、椋平廣吉の地震予知なんて初めて知りました。まことに興味深く、このエピソードを読めただけでも本書を買って良かったと思います。

 本書には収録されていませんが、以下のような奇跡を起こした人物、あるいは霊媒に関する記事などがたまりませんね。わたしの大好物であります!
●「万病を治すルルドの泉 認められた奇跡」(2013・6・12)
●「フォックス姉妹 降霊会のスーパースターとその真実」(2013・5・21)
●「ダニエル・ダングラス・ホーム 19世紀最大の霊媒」(2013・6・14)
●「ケイティ・キング 美人霊媒の呼び出す美人幽霊」(2013・10・08)
 本書の続編が刊行化されたときは、ぜひ、これらの記事を収録していただきたい!

 それから、比較的最近に書かれた以下の記事も興味ありますね。
●「ワイオミング事件―真実はフィクションの中に」(2016・2・12)

 ワイオミング事件とはテレビの電波ジャック事件です。アメリカはワイオミング州、のどかなニオブララ郡の小さなテレビ局のローカルニュースの放送中に映像が乱れ、奇妙な映像が映し出されました。映像には不気味な人物といくつかの文章が映し出されました。プレゼンテーションは約6分間行われましたが、当時、この映像をリアルタイムで見た者は嘔吐や頭痛などの体調不良をきたし、病院へ駆け込んだ者もいたそうです。

 いやあ、よく、こんな変な事件を見つけてきますね。
 著者の取材力には頭が下がります。黒沼健、庄司浅水、南山宏、中岡俊哉といったオカルト・ライターが書いた本はかつてわたしの愛読書でした。現在も、並木伸一郎氏や山口敏太郎氏らのオカルト検証本をときどき読みます。華麗なる、いや怪奇なる彼らの系譜に松閣オルタという変わった名前の著者が加わることになりました。本書と前後して、『UFOクロニクル』『UMAクロニクル』(ともにASIOS著、彩図社)も読みましたが、オカルトって本当に面白いですね。だって謎でもなけりゃ、こんな退屈な世界なんか我慢できませんもの。

   『UFO事件クロニクル』と『UMA事件クロニクル』 

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