No.1405 エッセイ・コラム | 人生・仕事 | 冠婚葬祭 | 幸福・ハートフル | 死生観 『人生の修め方』 一条真也著(日本経済新聞出版社)

2017.03.23

 『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)の見本が出ました。
 早速、沖縄行きの飛行機の中で読んだのですが、自分が書いた本ながら大変面白く、一心不乱に読み耽りました。改めて、わたしのこれまでの執筆活動および言論活動の集大成であると感じました。『儀式論』(弘文堂)とは違った意味でのわが代表作であると思います。

 日本経済新聞出版社の公式HPには、本書の「おすすめポイント」を以下のように紹介しています。

●日経電子版「ライフ」(現NIKKEI STYLE)に連載された人気コラムの単行本化です。
●古今東西の古典に描かれた老人像や、江戸時代としては長生きした徳川家康や『養生訓』で知られる貝原益軒らの生き方哲学に触れながら、老いは決して、忌避されるものではなく、人生の後半をこそ楽しむのが豊かな生き方であると著者は強調します。
●「老いるほど豊かに」の例として、最終的に豊かな死を迎えることを目的とした日本ならではの長寿祝いや、お盆参りや墓参などの老いにまつわるセレモニーの重要性と意義についても詳しく触れられています。
●老いや死のネガティブなイメージを払拭するべく、ヨーロッパの隣人祭りや、中国の死亡体験館など、日本ではあまり知られていないユニークな取り組みも交えて、誰もが心の奥底に抱く孤独に人生を終えることへの恐怖を和らげるヒントを提示しています。
●巻末には書誌情報をまとめたブックガイドをつけました。豊かな老いぐらしのために、それらの書物をさらにひもとき、さらに人生を深めていくという楽しみも与えてくれる一冊。

   本書の帯

 カバー表紙の懐中時計は、わざわざデザイナーさんが探して下さった珍品です。人生とは時間の集積であり、「人生を修める」とは「時間を修める」に通じることから、わたしが懐中時計をアイコンに使うことを提案しました。おかげで、大変渋い味わいのある表紙となりました。帯には、「人生100年時代。いつまでもポジティブでありたい人に贈るヒント集。『終活』から『修活』へ―。豊かに老い、美しく人生を修めるためのブックリスト50冊付き!」「日経電子版連載の大人気コラムが書籍化!」と書かれています。

   本書の帯の裏

 本書の「目次」は、以下の通りです。

「終活より修活―豊かに老い、美しく人生を修めよう」
1 老いることをポジティブにとらえよう
2 「好老社会」というコンセプトを見直そう
3 「好老社会」の源流を求めて
4 古代中国は「好老社会」だった
5 江戸時代は特筆すべき「好老社会」だった
6 健康に腐心した家康から学ぶ養生
7 高齢化が進む北九州市を老福都市に
8 茶道・囲碁・俳句・・・・・・豊穣なるグランドカルチャーの世界
9 俳句ほどすごいものはない!
10 お盆で豊かな時間を過ごそう
11 老いるほど豊かに―長寿祝いのすすめ
12 葬儀は人生の卒業式、お祝いの意味とは?
13 知っておきたいお墓参りの作法
14 月を見よ、死を想え
15 「人は死なない」―歌舞伎の襲名披露を見て
16 すべては世のため人のため、夢から志へ
17 「寺院消滅」に思うこと
18 「日本人を幸福にする方法とは」―柳田國男の志
19 バリ島で葬儀の本質に気づく
20 今は亡き愛する妻への挽歌3000回
21 正月と日本人のこころのDNA
22 なぜ葬儀は必要なのか
23 節分に厄を祓う理由
24 ブッダ最初の教え「慈経」のメッセージ
25 カースト制の残るインドで最大の平等とは
26 自分の幸福な葬儀をイメージする
27 桜を愛でながら想う人生の修め方
28 なぜ今、墓じたくなのか?
29 熊本地震と日本人の「こころ」
30 誕生日には同級生のことを考える
31 海に還るというお見送り
32 余命宣告されたら友人に会いに行く
33 「隣人祭り」で仲間をつくろう!
34 豊かな人間関係こそ最高の宝物
35 死と再生を疑似体験する
36 読書は最高のグリーフケア
37 島田裕巳氏と葬儀について語り合う
38 老年期は実りの秋である
39 老いと死があってこそ人生!
40 別れてもまた会える
「あとがき」
「豊かに老い、美しく人生を修めるための50冊」

   日本経済新聞電子版「ライフ」トップページ(2015年3月17日)

 本書は、日経電子版=NIKKEI STYLEに連載した「一条真也の人生の修め方」というコラムを40本分掲載しています。発信力の大きい日経電子版に隔週連載することで、わたしの予想をはるかに超える反響がありました。おかげさまで大変好評をいただき、「読まれている記事」ランキングでは何度も1位になりました。なんでも、日経電子版の記事はスマホで読まれることが多いそうですが、わたしのコラムだけは圧倒的にPCで読まれた方が多かったとか。おそらく、高齢の読者が多かったのでしょう。
 わたしは、1人でも多くの高齢者の方々に美しく人生を修めていただきたいので、嬉しいかぎりでした。わたし自身も、これから老いて死んでいくわけですが、美しく人生を修めたいと願っています。

   連載第1回(2015年3月17日)

 現在、世の中には「終活ブーム」の風が吹き荒れています。
 しかし、もともと「終活」という言葉は就職活動を意味する「就活」をもじったもので、「終末活動」の略語だとされています。正直に言って、わたしは「終末」という言葉には違和感を覚えます。そこで、「終末」の代わりに「修生」、「終活」の代わりに「修活」という言葉を提案しました。「修生」とは文字通り、「人生を修める」という意味です。

   連載第28回(2016年3月29日)

 よく考えれば、「就活」も「婚活」も広い意味での「修活」であるという見方ができます。学生時代の自分を修めることが就活であり、独身時代の自分を修めることが婚活だからです。そして、人生の集大成としての「修生活動」があるわけです。かつての日本人は、「修業」「修養」「修身」「修学」という言葉で象徴される「修める」ということを深く意識していました。これは一種の覚悟です。いま、多くの日本人はこの「修める」覚悟を忘れてしまったように思えてなりません。

   連載最終回(2016年9月27日)

 ずいぶん以前から「高齢化社会」と言われ、世界各国で高齢者が増えてきています。各国政府の対策の遅れもあって、人類そのものが「老い」を持て余しているのです。特に、日本は世界一高齢化が進んでいる国とされています。しかし、この国には、高齢化が進行することを否定的にとらえたり、高齢者が多いことを恥じる風潮があるようです。それゆえ、高齢者にとって「老い」は「負い」となっているのが現状です。人は必ず老い、そして死にます。「老い」や「死」が不幸であれば、人生はそのまま不幸ということになります。これでは、はじめから負け戦に出るのと同じではないですか。

   『人生の修活ノート』(現代書林)

 そもそも、老いない人間、死なない人間はいません。
 死とは、人生を卒業することであり、葬儀とは「人生の卒業式」にほかなりません。老い支度、死に支度をして自らの人生を修める。この覚悟が人生をアートのように美しくするのではないでしょうか。わたしは、本書で「豊かに老いる」そして「美しく人生を修める」ヒントのようなものを書きました。
 『人生の修め方』は3月30日に全国の書店で発売です。
 『人生の修活ノート』(現代書林)とともに、ご一読を!

Archives