No.1069 児童書・絵本 『昭和ちびっこ怪奇画報』 初見健一著(青幻舎)

2015.05.05

 5月5日は「こどもの日」です。わたしにとっての「こどもの日」は「こどもに戻る日」です。毎年、この日には童心を思い出すようにしています。そのために、昭和の少年時代にタイムスリップすることができる本を読みます。

 たとえば、この読書館でも、2012年の「こどもの日」には『昭和ちびっこ未来画報』、13年には『ぼくらの昭和オカルト大百科』、そして昨年の14年にはわたしのブログ記事「今年の『こどもの日』は『怪獣の日』だった!」で紹介した本を読みました。今年は、『昭和ちびっこ怪奇画報』初見健一著(青幻舎)を再読。
 「ぼくらの知らない世界1960s-70s」というサブタイトルがついています。この本、『昭和ちびっこ未来画報』『ぼくらの昭和オカルト大百科』と同じく、昭和のキッズカルチャー研究家である初見健一氏の著書ですが、なつかしい怪奇イラストが約120点も掲載されていて、わたしにとっては宝箱のような本です。もう何十回も読み返しました。

   最初から、いきなりこんな感じです!

 本書のカバー裏には、以下のような内容紹介があります。

 「1960~70年代に巻き起こり、子どもたちを熱狂させた『オカルトブーム』。本書では、当時さまざまな子ども向けメディアに掲載された小松崎茂、石原豪人をはじめとするイラストの巨匠たちが描いた”怪奇画”を『心霊』『秘境』『異形』『残酷』『狂気』の5つの項目に分けてご紹介いたします。当時”怪奇画”は、少年少女たちに人気の定番コンテンツでしたが、雑誌の大量消費とともに破棄され、そのほとんどは読者の記憶の中だけで生き続けてきました。あの頃の”ドキドキ”とともに蘇る、奇々怪々の想像遺産の数々をお楽しみ下さい」

   この目で見た死後の世界「死者の証言」

   死者と語る夜

   なんと、少年誌で「野辺の送り」を図解!

   なんと、「魂呼び」まで紹介するとは!

 本書の前口上「地獄、極楽、覗きカラクリ・・・・・・」の内容も洒落ていて、冒頭の「サァサァ、お立ち会い! 坊チャン、嬢チャン、お爺チャン、お婆チャンに、そこ行く紳士淑女の皆々様、御用とお急ぎのない方は、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」に始まって、以下のように続きます。

 「これから御覧に入れますは、世にも恐ろしき阿鼻叫喚の地獄絵巻、世にもあさましい異形のバケモノ、世にもむごたらしき浮世の修羅場、屈強な殿方も思わず目を背ける血みどろの惨事惨劇、人智を超えた摩訶不思議な夢物語の数々」

   幽霊船のすべて

   吸血鬼ドラキュラ

   きょうりゅうのすむ湖

   ヒマラヤの雪男

 さらに、前口上は以下のように続きます。

 「幽霊、物の怪、妖怪変化の百鬼夜行、人か獣か、はたまた古代の幻獣か、遥か南洋、人跡未踏の辺境魔境に棲まう奇っ怪な魑魅魍魎から、我が国ニッポンのそこかしこ、お集まりの皆々様の、ほら、その背中の影にも人知れず潜む奇々怪々なアレやコレやまで、残酷、野蛮、恐怖に怪奇、不可思議、悪趣味、エロ、グロ、ハレンチ、ナンセンスの大饗宴。善良な市民を自認なさるPTAの良識派ママさんなら、一目見たとたんにひと泡吹いてぶっ倒れること必至の絵図ばかり、ズラリと揃えました世にも稀なる展覧会にございます」

 この素晴らしい前口上はこの後も延々と続くのですが、最後は「とにもかくにも、地獄、極楽、覗きカラクリ・・・・・・。すべては一夜の幻、うたかたの夢。それが見世物小屋の真実にございます。それが浮世の、つまるところはアナタとワタシの、吹けば飛ぶよな人生の真実にございます」と語られています。うひょー、こりゃ、たまらん! もう最高ですね!

   南太へいようのカバ怪獣

   島のようなばけものクラーケン

   死のひょうりゅう

   あっ首がしゃべる!

 本書には、こどもの頃のわたしを震え上がらせた怪奇画が満載です。
 その出典となっている怪奇系児童書のほとんどはわが家にもあったのですが、その多くは捨てられてしまいました。現在では「まんだらけ」をはじめとして大変な高価格がついており、かえすがえすも残念です。
 実家の書庫を数年前に建替えたので、そのときが最後のチャンスだったのですが、わたしも多忙だったため十分なチェックができず、この手の本には疎い父から処分された可能性が大であります。
 それでも、わずかな冊数ながら思い出の本のいくつかを避難させました。

   わが書斎に避難した思い出の怪奇系児童書

 本書を読めば、なつかしい少年時代にタイムスリップできます。嗚呼、これらの怪奇画から、どれだけ想像力を豊かにしてもらったことでしょうか!
 本当に、何度も何度も読み返したくなり、こんな企画を実現してくれた初見氏に感謝です。あえて言わせていただければ、文庫版サイズで小さいのが玉にキズ。この本だけは、ぜひ大型本で出版してほしかったですね。ということで、束の間こどもに戻ったわたしですが、もうすぐ52歳になります。

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