No.0973 人間学・ホスピタリティ | 小説・詩歌 『詩人の颯声を聴く』 坂村真民著(致知出版社)

2014.08.25

 『詩人の颯声を聴く』坂村真民著(致知出版社)を再読しました。
 著者は全国にその詩碑が次々に立てられる宗教詩人です。北九州市門司区にある「皇産霊神社」にも、著者の言葉「念ずれば花ひらく」の石碑があります。

 「颯声(さっせい)」とは、風のさっと吹く音をいうそうです。そのさっと吹く音のなかに、何を聴きとるか。宗教詩人・坂村真民は、宇宙の声を聴くと言います。
 彼は「念ずれば花ひらく」「大宇宙大和楽」の2つを真言として、世に残そうと、詩を作ってきました。核開発によって人類をはじめとした生きとし生けるものの生命が消滅の危機にある今、彼は日本の国と民とに、神仏の使命が託されていることを信じ、次のような詩を詠みました。

風がさっと吹いてゆく
その音を
宇宙の声として
聞きとる
海は万物を産んできた
だから地球の危機を救う民を
産んでくれる
わたしは絶望しない

 詩人は「日本は今が一番悪い」と嘆きながらも、日本民族に大きな期待をかけています。思想から宗教から、あらゆるものを「ひとつ」にすることができる民族は日本民族しかいないといいます。インドも固有の文化を持ちながら世界性というのを持ちません。中国もすごい文化を持っていますが、それが排他性になっています。ところが、日本は何も持たないから、あらゆるものが入ってきます。もともと神道があったところに、仏教も儒教もキリスト教さえ入ってきました。日本海と太平洋と、2つの海に挟まれて存在している長い列島の使命はそこにあると言うのです。

 わたしは、本書を「日本一優しい憂国の書」であると思いました。そして、詩人の言葉が世界を救う力を秘めていることを信じたいと思います。全篇を通じて、致知出版社の藤尾秀昭社長が聞き手を務めておられます。

 なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。

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