No.0972 人間学・ホスピタリティ | 小説・詩歌 『念に生きる』 坂村真民著(致知出版社)

2014.08.23

 『念に生きる』坂村真民著(致知出版社)を再読しました。

 宗教詩人が、95歳で出版した素晴らしい詩墨集です。読み終えて、心が洗われるような思いがしました。

 わたしは月が好きです。月は人間の魂の故郷だと思えてなりません。すべての人は月の下では平等であり、月を眺めていると平和な心になります。月は「人類平等」、「世界平和」のシンボルでもあるのです。

 月と同じような気持ちに、わたしをさせるものが他にもあります。坂村真民の詩です。月と坂村真民の詩はよく似ています。その証拠に、彼の詩には月が登場するものが多いのです。本書にも月が出てきます。たとえば、次に紹介する「歓喜」という荘厳な詩です。

今年最初の
満月に
わが面(おもて)を合わせ
合掌し祈願し
その光を吸飲する
ああこの歓喜よ

 そして、次に紹介する「昼の月」という優しい詩です。 

昼の月を見ると
母を思う
こちらが忘れていても
ちゃんと見守っていて下さる
母を思う
かすかであるがゆえに
かえって心にしみる
昼の月よ

 お釈迦さまは満月の夜に生まれて、悟りを開き、お亡くなりになったといいます。月はきっと仏で、月光は慈悲なのです。それに気づいた西行は「月の色に心をきよく染ましや都を出(いで)ぬ我身なりせば」など多くの月の歌を詠み、芭蕉は「「名月や池をめぐりて夜もすがら」など多くの月の句を詠みました。坂村真民は、「自分は、西行、芭蕉の道を行く者だ」と言っているそうです。

 3人は月よりの使者に違いありません。地上に降りてきて、月光の代わりに詩によって人々の魂を癒すのです。

 なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。

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