No.0952 人間学・ホスピタリティ | 帝王学・リーダーシップ 『吉田松陰 一日一言』 川口雅昭編(致知出版社)

2014.07.17

 『吉田松陰一日一言』川口雅昭編(致知出版社)を再読しました。
 かのピーター・ドラッカーが「人類史上最高の社会的イノベーション」と呼んだ明治維新。そのスイッチャーである吉田松陰の「一日一言」です。通読すると、佐藤一斎と同じく、松陰がコンセプトの達人であることがよくわかります。特に、概念の定義において実に優れています。 

 たとえば、「仁義同根」という条では、仁と義が同じ根から生じたものであり、対象によって名前が違っているだけであると述べます。つまり、父子の間では仁といい、君臣の間では義という。それらの実際は、一つのまごこころから出たものであるというのです。

 その他にも、「気」「心」「情」「徳」「誠」「恥」「勇」「志」などの数多くの一文字によるハートフル・キーワードを見事に定義づけています。思えば、かの孔子こそは「仁義礼智信」に代表されるように偉大なコンセプトの編集者であり、キーワードの達人でした。だから、松陰の言葉はシンプルにして深く、そこに言霊が宿るのでしょう。

 また、「松下陋村(しょうかろうそん)と雖(いえど)も、誓って神国の幹とならん」という言葉が好きです。松本村はひなびた一寒村ですが、必ずや日本国の幹となるというのです。この心意気、地方に在って、志ある者は松陰の気概を見習いたいものですね。

 最後に、読書についての一言を紹介しましょう。「読書最も能(よ)く人を移す。畏(おそ)るべきかな書や。」です。「読書というものは、最もよく人の心を変えるものである。書物というものは何と恐るべきものだなあ」という意味ですね。このことを心して、ぜひ本書をお読み下さい。

 なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。

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