No.0950 人間学・ホスピタリティ | 日本思想 『二宮尊徳 一日一言』 寺田一清編(致知出版社)

2014.07.15

 『二宮尊徳一日一言』寺田一清編(致知出版社)を再読しました。
 二宮尊徳こそは日本人における倫理・道徳のシンボルです。戦前の国定教科書には勤勉・倹約・孝行・奉仕の模範として載せられました。

 全国の国民学校の校庭には薪を背負い本を読む少年時代の銅像が作られました。わたしの書斎には、銅像のミニチュアが鎮座しています。子どもの頃のわたしは、尊徳の幼名である『二宮金次郎』の絵本を愛読していました。たしか、講談社の絵本だったと記憶しています。
 さて本書には、世界的思想家・二宮尊徳の凄みがあふれています。とにかく、「スケールが大きい!」の一言です。

 「神道は開国の道なり。儒学は治国の道なり。佛教は治心の道なり。」として、神儒佛の正味のみを取り、人の世の無上の教えとして「報徳教」と名づけます。また、それを「神儒佛正味一粒丸」と薬にたとえて、その効能の広大さをアピールします。
 常に「人道」のみならず「天道」を意識し、広大な太陽の徳を説きました。それは大慈大悲の万物をいつくしむ心であり、尊徳の「無利息貸付の法」も、この徳の実践の一つなのです。

 「勤倹・分度・推譲」の思想を唱え、六百以上の大名旗本の財政再建および農村の復興事業に携わった尊徳。彼が同時代のヘーゲルにも比較しうる弁証法を駆使した哲学者であり、ある意味でピーター・ドラッカーの先達的な経営学者でもあったことが、本書を読むと理解できます。 

 最後に、読書についての一言を紹介しましょう。

 「書を読む者ぜひとも人を済(すく)ふの心を存しねばならぬ。何となれば、書は人を済ふの道を書き載せたるものなり。故に之を読んでその心を存しなければ、何の益があろう。」です。
真の読書とは、単に物知りになることではなく、救国済民の心がなければならないのだ。このことを心して、ぜひ本書をお読み下さい。
 なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。

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