No.0875 小説・詩歌 『幸福な生活』 百田尚樹著(祥伝社文庫)

2014.02.13

 『幸福な生活』百田尚樹著(祥伝社文庫)を読みました。
 国民的ベストセラー作家が、ショートショートに挑戦しています。赤色の帯には、「最注目の作家が魅せる超技巧!」「宮藤官九郎さん『嫉妬する面白さ―』」「衝撃のラスト1行! そのページをめくる勇気はありますか?」「単行本未掲載『賭けられた女』を新たに収録」と書かれています。

 また、帯の裏には「見事なオチに戦慄を覚える」として、宮藤官九郎氏の「どれも本当に怖い。落ちそうな落とし穴が幾つも仕掛けられている。そして短いから次の落とし穴も覗きたくなる。やがて先読みする快感を覚え、その読みはことごとく外れるのですが、巧みに騙されることが快感に変る。・・・・・・憎たらしいほど手玉に取られると同時に凄みすら感じました」という言葉が紹介されています。

 さらに、カバー裏には以下のように書かれています。

 「ご主人の欠点は浮気性」帰宅すると不倫相手が妻と談笑していた。こんな夜遅くに、なぜ彼女が俺の家に? 二人の関係はバレたのか? 動揺する俺に彼女の行動はエスカレートする。妻の目を盗みキスを迫る。そしてボディタッチ。彼女の目的は何か? 平穏な結婚生活を脅かす危機。俺は切り抜ける手だてを必死に考えるが・・・・・・(「夜の訪問者」より)。愛する人の”秘密”を描く傑作集!」

 336ページの中に19篇のショートショートが収められていますが、どれもそのまま10分から15分ぐらいのテレビドラマ化できるような内容でした。フジテレビの「世にも奇妙な物語」なんかピッタリだと思います。じつはオチがわかってしまう作品も多かったのですが、最後の1行ですべての真実が明らかになるという構造は見事です。また、右ページの1行目にそのラスト1行を必ず持ってくるところが職人技だと感心しました。

 とにかく一編が短くてすぐ読めますし、肩が凝らない文章で書かれています。乗り物の中とか、病院の待合室などで読むのに最適な一冊と言えるでしょう。『永遠の0』『『影法師』 、
『「黄金のバンタム」を破った男』 、そして 『海賊とよばれた男』といった著者の渾身の長編作品群に比べると、やはり物足りない感じはします。

 でも、こういうものも書けるという著者の七色の筆力には感服するのみです。

 なお、一番怖かったのはカバー裏でも紹介されている「夜の訪問者」で、一番面白かったのは「催眠術」という作品でした。

 本書を読んで、なつかしい星新一のショートショートを思い出しました。
 やはり「ショートショートの神様」といえば、星新一です。わたしは、小学校高学年から中学生にかけて、新潮文庫から出ていた文庫本を次々に読みました。
 星新一の自宅は品川区の戸越にありました。祖父の星一が創立した星薬科大学の近くです。わたしも長く戸越に住んでいました。
 ですので、何度か御本人を見かけたこともあります。
  ちかく、「星新一ミステリーSP」としてフジテレビで放映されるそうです。放映当日は予定があってテレビ観賞できませんが、録画して後日観るつもりです。

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