No.0761 児童書・絵本 | 宗教・精神世界 『天使のまなざし~天国からの訪問者』 ジャッキー・ニューカム著、山川紘矢・山川亜希子訳(主婦の友社)

2013.07.15

 『天使のまなざし~天国からの訪問者』ジャッキー・ニューカム著、山川紘矢・山川亜希子訳(主婦の友社)を再読しました。
 グリーフカウンセラーという職業があります。大切な人との死別などの「喪失」を体験した人に精神的援助を行うカウンセラーのことですが、著者はイギリスを代表するグリーフカウンセラーとして知られています。

 また、世界的ベストセラー作家であり、著作を通じて最愛の人を亡くした多くの人の心のケアをしています。 また著者は、「エンジェル・レディ」とか「スピリチュアル・マスター」とも呼ばれています。いわゆるスピリチュアルな世界観に基づいて、「悲しみや喪失を乗り越える」ためのアドバイスを送っているのです。
 日本でもスピリチュアル系の本というのは、それこそ数え切れないほどありますね。それらをいちいち紹介していてはキリがありませんが、本書だけは特別な存在感を持っていると、わたしは一読して感じました。
 もともとイギリスは「幽霊大国」と呼ばれるくらい、スピリチュアル研究の進んでいる心霊先進国ですが、じつは、わたしはグリーフケアの問題というのは霊的な次元にまで踏み込まないと解決できないと考えているのです。心理学だけでは手に負える問題ではありません。

 本書を翻訳している山川紘矢氏と山川亜希子氏は、長年、精神世界関係書の翻訳を続けてきたことで有名な夫妻です。
  『30冊の本』という、この夫妻によるブックガイドもあります。『アウト・オン・ア・リム』『神との対話』『ザ・シークレット』といった夫妻が訳してきたベストセラーがたくさん紹介されていますが、その中の1冊に本書『天使のまなざし~天国からの訪問者』があったのですが、強い興味を惹かれました。

 山川夫妻による本書の紹介文の冒頭には、次のように書かれています。
 「亡くなった家族や親友にもう一度会いたい、もう一度話をしたい、と思ったことはありませんか? もっと温かく接してあげればよかった、もっと一緒にいてあげたかったなどと思って、一度そのことを謝りたいと思ったことはありませんか。
 『天使のまなざし』は、そのような人たちのための本です。私たちは波動の存在であり、この世に肉体を持っていようと、体を失って向こう側の世界にいようと、実は私たちは様々な方法で再会し、触れ合っているのですよと、この本の著者、ジャッキー・ニューカムはやさしく語っています」

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。

 「この世を去るとき―ジャッキー・ニューカム」 「日本の読者のみなさまへ」
序 章   スピリチュアルな旅
第1章   私たちは何を知っているのでしょうか?
第2章   幽霊、それとも精霊?
第3章   精霊がやってくる理由
第4章   手を差しのべる
第5章   悲しみを乗り越えるために
第6章   動物に魂はあるのか?
第7章   別れの物語
第8章   天国からのメッセージ
第9章   天国からの合図
第10章  有名人と死後の世界
第11章  異次元につながる方法
第12章  死者の人生を祝福する
第13章  質問に答えて
第14章  天国は本当にあるの?
「見て、お母さん、私はチョウチョよ―ジャッキー・ニューカム」
「訳者あとがき」

 「日本の読者のみなさまへ」の最後に、著者は次のように述べています。

 「亡くなった人々は、天国から手を差しのべて、自分たちが元気で生きていること、ただ、違う次元に違う形でいるだけだということを、私たちに知らせたがっています。そうすることによって、私たちを安心させ、元気づけたいのです。
 この本では、こうした情報が私たちに届けられる様々な方法について、みなさまにお話ししたいと思っています。パズルのピースがピタッとはまってゆくように、私たちの魂の旅を深く、はっきりと理解できるようになるかもしれません。
 私たちは亡くなった愛する人々と出会い、言葉や心を交わしあっています。それには多くの方法があるということを、この本から知ってほしいと思います。
 死とは、もう1つの人生の始まりにすぎないのです」

 第2章「幽霊、それとも精霊?」には、次のような内容が書かれています。

 「幽霊の出没と精霊の訪れとでは、天と地ほどの違いがあります。幽霊とは、次のようなものです。建物の構造に刻み込まれた『エネルギーの記憶』(テープに声を録音する時のことを考えてください)、地上のよく知っている場所のまわりをうろついている迷子の魂(未完成の仕事を抱えてることが多い)、そして、自分が死んだことを知らない魂などです。つらい事件や急死などのために、一時的に魂が時間と空間に捉えられてしまうことがあり、こうした魂が幽霊となるのです」

 「愛する人々の訪れは、こうした幽霊の出没とはまったく違います。知らない人がドアをノックするのは、友だちが訪ねてくるのとは大違いですね。それと同じことなのです。亡くなった親しい人々の魂は、私たちの間にあった愛という磁石に引きつけられてやってきます。愛がカーナビの役割を果たして、彼らが私たちを見つけるのを助けているのです。私たちが自分の家にいなくても、魂たちは私たちのエネルギーとのつながりに導かれて、私たちが世界のどこにいようと見つけ出すことができます」 「ありがたいことに、ほとんどの場合、訪問してくる霊は、私たちが愛し、愛されていた魂です。その人が肉体を脱ぎ捨てて、私たちと彼らの世界の境界線を越えたからと言って、私たちはその人を愛することを止められはしません。私たちの間には、まだ愛がそのまま存在しているからです」

 また、「愛する人を亡くした人」について、著者は次のように述べます。

 「愛する人が亡くなると、私たちは何とかしてもう一度その人に会いたいと願います。そして彼らがどこかで元気にしていると、知りたいと思います。しかし、親しい人の死は非常につらい出来事であり、私たちの体はショック状態に陥ります。すると心理的な空白状態になって、何一つ受け入れることも外に出すこともできなくなります。自分の周囲にあるオーラ(体を取り囲んでいるエネルギーの場)をぎゅっと締めつけて、傷つくことをおそれるあまり、すべての感情をしめ出してしまいます。亡くなった人々からのコンタクトは愛のエネルギーに導かれてこそ可能なので、このコンタクトも閉め出されてしまいます。死者は私たちのすぐ隣にすわっているかもしれないのに、私たちは何も感じることができないのです。それも誰のせいでもありません。
 この状況では、死者の魂はしばしば、子供や隣人や友だちなど、もっと簡単に死者の来訪を受け入れられる人たちを訪ねてきます」

 さらに、著者は「愛する人に現れてほしいのに、彼らが来てくれないのはなぜなのだろうか?」として、悲しみとは別に、愛する人が私たちの所に現れない8つの理由を以下のように紹介します。

1.亡くなった人が死後の世界の存在を信じていないと、自分が遺された人々を訪ねることができるとは思わずに、訪ねてみようとしない。

2.急死した場合、彼らはしばらくの間、自分が死んだことに気づかないことがある。

3.長患いや身体的な苦痛のあとで死んだ場合は、魂は最初にいやしの時間をすごす。この時間が必要な人は、向こう側の世界で病院のような場所で目を覚ますことが多い。

4.自殺した場合もいやしのプロセスを通るために、遺してきた人々を訪ねられるようになるまでにはかなりの時間がかかる。

5.亡くなった人は新しい生活にすっかり夢中になり、時間の経過を忘れてしまうことがある。天国には私たちが今知っている時間は存在しない。

6.魂たちは自分の新しい生活について学ぶのにとても忙しい。そのために私たちが彼らの来訪を待ち望んでいることに気がつかないことがある。

7.助けてもらわないと、最初は1人で訪問できない魂もある。練習すれば彼らも完璧にできるようになる。

8.私たちのもとに来ることができても、そのメッセージを私たちが受けとれないことがある。それも私たちが悪いというわけではない。
『天使のまなざし~天国からの訪問者』p.56~57)

 興味深かったのは、「トンボ」について書かれた文章でした。
 拙著『ハートフル・ソサエティ』(三五館)の表紙には、なぜかトンボの写真があります。同書は「心ゆたかな社会」を論じた内容なので不思議に思っていると、トンボにはあの世とこの世を行き交う使者の役目があるので「心ゆたかな社会」のシンボルにしたと、後からデザイナーに聞きました。 ニューカムは、トンボについて次のように述べています。

 「トンボは、誰かが亡くなった時、しばしば不思議な動き方をして、異常に親し気にやさしく近づいてくることがあります。鳥も同じです。亡くなった人が鳥の体に入ったのでしょうか。そう信じている人もいますが、私はそれはないと思っています。でも、亡くなった人はこうした動物たちのエネルギーを一時的に操ることはできると、信じています。羽を持つ動物たちに注意していてください」

 また、ニューカムはチョウについても次のように述べています。

 「チョウは亡くなった人の魂からの合図だとする文化もあります。チョウが死の瞬間に現れることはよくあります。また、お棺の上にとまったり、霊柩車に乗った人の横にじっとしていたり、お墓であなたの横にとまったりします」

 第3章「精霊がやってくる理由」では、亡くなった人々は、何回も何回も、同じようなメッセージを携えてやってくることが示されます。残された人に死者が伝えたいと願うメッセージは、一般的似に次のようなものがあるそうです。

・愛しています。
・私はあなたと今も一緒にいます。あなたを見捨ててはいません。
・私が大丈夫だとあなたに知ってほしいのです。 ・死ぬ前にあなたと約束したので、無事、こちらに着いたことをお知らせします。
・私のことを心配しないでください。
・あなたの人生を進めていってください。
・あなたを誇りに思っています。
・あなたが成し遂げたことを知っています。 ・私はすでにお母さん/お父さん/弟・・・・・・にも会いました。
・まだ私のために悲しんでいるあなたが、とても心配です。 ・私が今いる場所はとても美しい所です。
・さよならを言いにやってきました。
・あなたは大丈夫ですよ。
 (『天使のまなざし~天国からの訪問者』p.80~81)

 そして本書の白眉は、第11章「異次元につながる方法」です。 どうすれば、今は亡き愛する人に自分に会いに来てもらえるのか。 これは、古今東西、多くの残された人々が考えたことです。
 著者によれば、その簡単な方法は、彼らに「どうぞ私の所に来てください」とお願いすればいいそうです。もちろん、必ず効果があるというわけではありません。でも、多くの人々がただそう願っただけでうまくいったと報告しているというのです。
 そして著者は、愛する人と再会するベストの方法は「夢の中で出会う」ことだと指摘し、次のように述べます。

 「夢の中で訪問を受けることは、やさしくて安全です。何の道具もいらず、何一つ、こわいことはありません。それに、何度も何度も自然に起こります。世界中の人々が夢の中で、今は亡き愛する人と話しています。夢の中での再会は、どんな文明であっても、どんな年齢の人であっても、どんな宗教を信じていても、男でも女でもみんなに起こるものなのです。
 夢の中に愛する人たちが出てきて、『こんにちは』と言った時に傷つけられたという人の話は、聞いたことがありません」

 なるほど、いくら生前は大切な人であっても、超常現象として幽霊の姿で現れたとしたら、やはり恐怖を伴うでしょう。その点、夢ならいくら出て来ても怖くもないし、何度でも自然に会うことができますね。
 著者は、うまく夢の中で故人に会う方法を次のように紹介しています。

1.愛する人の写真に話しかけます。あなたと2人で写っている写真、特に楽しく幸せな思い出の写真がいいでしょう。2人で写した写真がなければ、あなたの愛する人1人の写真を使っても大丈夫です。

2.もし、写真がなければ、愛する人が持っていた物を使いましょう(宝石がいいのですが、他の物でも大丈夫です)。 あなたがお願いする時、その物と故人のつながりを感じてください。

3.亡くなった人の最近の衣類があれば、それを使ってください。 その人のにおいはとても力があります。それに故人のエネルギーを思い出す、すばらしい方法です。

4.故人の写真や持ち物が無くても大丈夫です。何も手に持つ必要はありません。ただ目を閉じて、あなたの愛する人が目の前に立っていると想像しましょう。その人がそこに立っていると思って話しかけましょう(実は本当にそこにいるのだと私は信じています)。

5.一緒にすごした楽しい時間を思い出しましょう。故人と意思疎通を図ることは、2人がわかちあった愛の気持ちを思い出すことなのです。愛こそが、2つの世界をつなぐ電話回線なのです。

6.あなたの願いを書いてみましょう。特別なノートでも普通の紙でも構いません。あなたの手紙を封筒に入れ、それをまくらの下に入れるか、眠る時にあなたのすぐ近くに置きましょう。愛する人があなたの手紙を読んでくれるというわけではありませんが(本当に読むことだってあるとは思いますが)、あなたの思いや理由を文字でつづることによって、それがより明確になります。あちら側の人々はあなたのメッセージを感じとってくれるでしょう。

7.あなたとあなたの愛する人が、白い愛のエネルギーで守られていると想像しましょう。心の中に2人がふわふわした白い雲につつまれている姿を思い描いてください。

8.神様(女神様、または創造主など自分にふさわしいもの)にお願いして、あなたの愛する人を自分の所に連れてきてもらいましょう。
  (『天使のまなざし~天国からの訪問者』p.296~298)

 このように、本書にはスピリチュアルな世界観に基づいた具体的な「死者とのコミュニケーション」の方法が具体的に紹介されているのです。ある意味で、非常に実用的な本だと言えるでしょう。このようなグリーフケアの本が生まれること自体が、イギリスが心霊先進国であることを証明しているのではないでしょうか。
 最後に、「訳者あとがき」には次のように書かれています。

 「死者との交信は、昔から霊媒を介して出会うなど、様々な方法で行われてきています。しかし、実は死者は自ら、おもに夢の中で私たちの前に姿を現し、自分が無事であること、残った私たちに幸せになってほしいことなどを伝えてくれるのです。これはごく自然なことで、多くの人が体験しているそうです。そして、彼らはまた、私たちにいろいろな形で合図を送ってきてくれます。それによって、私たちは愛する人が肉体を失っても、向こう側の世界で元気にしていることを知ることができるのです」

 欧米のキリスト教文化圏では、「天国」や「天使」といった言葉を使いますが、そもそも死者というのは死後の話や別世界の話ではありません。わたしたちのいる、今の世界とつながっているのです。

 亡くなった人々は、わたしたちに何を伝えたいのか。それは、「自分たちが元気で生きていること、ただ、違う次元に違う形でいるだけだということ」です。その事実を伝えることによって、残された人々を安心させ、元気づけたいのです。
 また、この世で生きている人々も、今は亡き愛する人々と言葉や心を交わし合うことができます。そのための具体的な方法を、本書はたくさん教えてくれます。
 そして、「死とは、新しい生の始まり」にすぎず、「死者は生きている」という真実を教えてくれます。
 わたしは、拙著『ご先祖さまとのつきあい方』(双葉新書)で、「先祖を想う14の方法」というものを紹介しましたが、本書で示されている「死者との交信」方法の日本版と言えるかもしれません。
 なお、拙著『死が怖くなくなる読書』(現代書林)でも本書を取り上げています。

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