2011.07.14

 『孔子とドラッカー新装版』(三五館)の見本が出ました。

 『孔子とドラッカー』は、これまで多くの方々に読まれ、版を重ねてきました。今回の新装版も、「出版界の青年将校」こと三五館の中野長武さんが編集してくれました。

 新装版のカバーは、コラージュを中心とした非常にPOPなデザインになっています。帯に「二人がいつも助けてくれた!」と大書され、「大学で『孔子研究』『ドラッカー研究』の講義を担当、いま最も碩学とされる経営者の、『マネジメント』を理解する『論語』の読み方」というコピーが記されています。もちろん版元が考えたコピーですが、自分のことですので非常に面映いです。特に「碩学」という言葉には、穴があったら入りたい心境です。

 しかしながら、『孔子とドラッカー 新装版』が無事に刊行され、心より嬉しく思います。旧版は2006年4月に刊行され、おかげさまで多くの読者を得ることができました。

 『孔子とドラッカー』が刊行されてから、はや5年。その間、本書を取り巻く環境は激変しました。中国では孔子リバイバルが起こり、たいへんな『論語』ブームとなりました。

 ブームの火付け役は、北京師範大学の于丹(ユータン)教授です。彼女が中国CCTVの人気番組で『論語』についての講話を行なったところ、大ヒットしたのです。当時は中国の全人口の約半分が視聴しているといわれ、その数はなんと7億人だそうです。そのときの講話をまとめた本は、海賊版も含め、これまでに1000万部以上が売れたとか。中国の最高指導者・胡錦濤国家主席もいたく感動したそうで、多くの中国の人々が『論語』を愛読するようになったといいます。北京オリンピックの開会式で『論語』の言葉が引用されたことは記憶に新しいですね。

 一方、ドラッカーは日本で大ブームとなりました。

 作家の岩崎夏海氏の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(『もしドラ』)が2009年末にダイヤモンド社から発売されるや、大ベストセラーとなったのです。ライトノベル風にドラッカーのマネジメント理論を解説した同書は、2011年4月現在で電子版とあわせ累計で250万部を突破。NHKでアニメ化、人気アイドルの主演で映画化もされるという一種の社会現象にまでなりました。この『もしドラ』によって、これまでビジネスマンの世界では有名であった「ドラッカー」の名前が一躍、日本中に知れ渡ることになったと言えるでしょう。

 このように時代は、明らかに「孔子」と「ドラッカー」を必要としています。

 本書『孔子とドラッカー 新装版』は、わたしが発見した多くの両者の共通点を中心に、「人は、必ず心で動く」ということを説いた本です。本書によって、孔子やドラッカーの新しい一面を知っていただくのも嬉しいですが、何より「人間の心」に関心を持っていただければ、著者としても新装版を出した甲斐があると言えます。

 ちょうど大学の「孔子研究」の講義が終わった日に見本が出たのも不思議なタイミングでした。夏休みを経て、後期は「ドラッカー研究」の講義がスタートします。

 新装版ではカバーを一新し、ハードカバーをソフトカバーに変えただけではありません。本書の中に出てくる項目の多くを新たに改稿しました。特に、「義」や「智」の一部を書き換えた他、「信」「悌」「欲」「縁」「祈」「謝」「笑」「泣」をほぼ全面改稿、さらには新たに「過」という項目を書き加えました。

 そして、改稿した項目についてはすべて孔子およびドラッカーの考え方に触れています。まさに、最強モードで生まれ変わった『孔子とドラッカー 新装版』。旧版をお持ちの方も、ぜひ新装版をお求め下されば幸いです。

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