No.0301 人間学・ホスピタリティ 『修身教授録』 森信三著(致知出版社)

2011.03.21

 いま、森信三が読書界でブームになっているようです。

 「哲人教育者」として知られた人で、彼の名言集などがベストセラーになっています。

 そこで、「春分の日」の今日、わが愛読書でもある森信三の古典的名著を読み直すことにしました。まずは、『修身教授録』森信三著(致知出版社)を再読しました。

 本書は、昭和12年から14年にかけて大阪天王寺師範学校(現・大阪教育大学)で行われた講義をまとめたものです。

 全篇これ、人間として生きる上での基本中の基本が凛々と説かれています。

 「私は、人生の真の出発は、志を立てることによって始まると考えるものです。古来、真の学問は、立志をもってその根本とすと言われているのも、まったくこの故でしょう。(中略)この二度とない人生を、いかに生きるかという根本目標を打ち立てることによって、初めて私達の人生は始まると思うのです。」(第1講 挨拶)

 「気品が身につくようになるには、やはり修養による外ないと分かったとしても、ではいかなる修養が、人間の気品を高める上に役立つかと申しますと、(中略)私の考えでは、内心のけがれを除くということかと思われます。すなわち「慎独」、つまり独りを慎むということではないかと思うのです。」(第8講 気品) 

 「私は、教育において、一番大事なものとなるものは、礼ではないかと考えているのです。つまり、私の考えでは、礼というものは、ちょうど伏さっている器を、仰向けに直すようなものかと思うのです。」(第32講 教育と礼)

 などなど、哲人の含蓄ある言葉が心にしみわたります。

 また、各章の前後にある生徒による添え書きが素晴らしい。この添え書きが臨場感を醸し、まるで森信三が目の前で実際に講義をしているような気分にさせてくれます。

 それにしても、こんな素晴らしい本が昭和の日本、いや20世紀の世界に生まれたとは信じられません。それほどの名著です。まだ未読の方は、ぜひ、お読み下さい。

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