No.0277 人生・仕事 | 評伝・自伝 『運命を高めて生きる』 渡部昇一著(致知出版社)

2011.02.20

 『運命を高めて生きる』渡部昇一著(致知出版社)を再読しました。

 偉大な思想家であり教育者でもあった新渡戸稲造の人生を描いた本です。

 新渡戸稲造といえば、5000円札の顔ですね。

 また、ロングセラー『武士道』の著者としても知られます。

 その新渡戸稲造には、知る人ぞ知る『修養』という大著がありました。

 本書は、『修養』に出てくる、よく生きるための役立つ考え方や生活の工夫を多数紹介しています。明治・大正期には「修養」の大ブームが起こりました。

 日本が一番いい時代に最もはやった言葉の一つが「修養」だったのです。

 一番いい時代というのは、憲法が発布され、日清戦争に勝ち、日英同盟を結び、日露戦争に勝ち、大正デモクラシーが起こって、毎年毎年日本の繁栄が目に見えて進んでいくようなポジティブな感じのある時代です。

 その頃に「修養」をテーマにした本が多く出版されました。

 そして、新渡戸の著書はその代表的存在でした。

 それでは、「修養」とは何か。新渡戸は、修養の「修」は修身の修、つまり「身を修むる」意味であり、「養」は「心を養う」の意味だと述べています。

 養という字は「羊の食」と書きます。

 つまり新渡戸は、修養の根本的な目的とは自分を修めることであると同時に、仔羊のような幼稚で愚かな心を養って横道に逸れないようにしていくことであると言っているのです。本書には、そのための具体的な方法が豊富に紹介されており、いずれも現代において通用するものばかりです。

 ちなみに、キリスト教をはじめ、儒教でも仏教でも、いい教えは何でも取り入れた『修養』は、日本の心学の伝統を受け継いだ「新心学の書」であるという著者の指摘は非常に興味深いと思います。

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