No.2227 社会・コミュニティ 『ソーシャルイノベーション』 雄谷良成監修、竹本鉄雄編著(ダイヤモンド社)

2023.04.06

『ソーシャルイノベーション』雄谷良成監修、竹本鉄雄編著(ダイヤモンド社)を読みました。「社会福祉法人佛子園が『ごちゃまぜ』で挑む地方創生!」のサブタイトルがついています。 ブログ「Share金沢」「Share金沢ツアー」で紹介した施設などを展開する社会福祉法人佛子園の軌跡を紹介した本で、監修者の雄谷氏は同法人の理事長です。なお、本書は2018年9月26日に初版が刊行されています。

本書の帯

本書の帯には、「政府から熱視線!」「マスコミも大注目!!」「時代を先取りした福祉のまちづくり」と書かれています。また、帯の裏には「地方創生のトップランナーが宿す起業家精神と革新的発想」と書かれています。

本書の帯の裏

アマゾンの「内容紹介」には、こう書かれています。
「佛子園は1960年に発足した社会福祉法人で、知的障害児の入所施設としてスタートした。95年からは知的障害者の更生施設の運営にも乗り出し、98年には障害者就労施設として奥能登に地ビールレストランを開設。地元福祉関係者や行政の間ではよく知られる存在だった。その名が全国区に躍り出たのは、2013年9月に金沢市郊外にオープンした『シェア金沢』がきっかけだった。監修者である雄谷理事長は、周辺地域住民が集まる福祉の町づくりを志向し、約1万坪の敷地にサ高住、障害児入所施設、訪問介護施設などのほか、天然温泉やキッチンスタジオなど周辺地域から人を呼び寄せる多様な施設を『ごちゃまぜ』をコンセプトに集積。高齢者、障害児、地域の人々が交流するコミュニティを形成した。「シェア金沢」は、地方創生を推進する政府にも注目され、日本版CCRC(生涯活躍のまち)のモデルともされた。その佛子園が約60年の歴史の中で積み重ねてきた大小さまざまな試みは、『ソーシャルイノベーション』に相当する。本書では、佛子園及び雄谷理事長ならではの先進性、独自性あふれる取り組みを。このソーシャルイノベーションの横串としてつまびらかにしていく」

本書の「目次」は、以下の構成になっています。
「まえがき」
第1章 地方創生のモデル、「輪島カブーレ」

第2章 「ごちゃまぜ」誕生、「三草二木 西圓寺」

第3章 福祉のまちづくりに挑戦、「シェア金沢」

第4章 「ごちゃまぜ」なまち進化系、「B’s行善寺」

第5章 地域の課題解決へ、
ソーシャルイノベーション拡大

第6章 佛子園流イノベーションを全国へ、世界へ

「まえがき」の冒頭には「『ソーシャルイノベーション』という言葉をご存じだろうか」と読者への問いかけがあり、もともとは欧米のNPOなど非営利組織間で使用されていた用語が2000年代に入って、経済や経営学のフィールドで頻出するようになったのは、バングラデシュの経済学者で事業家でもあるムハマド・ユヌスが2006年にノーベル平和賞を受賞したこととも無縁ではないことが説明されます。

ムハマド・ユヌスは1970年代に貧困者向けの少額融資(マイクロクレジット)を行うグラミン銀行を創設し、非営利と営利を融合した「ソーシャルビジネス」のあり方を世界に示しました。竹本鉄雄氏は、「ユヌスが考案し仕組みをつくったマイクロクレジットは、『ソーシャルイノベーション』の典型的な一例として広く知られるようにもなった。以降、非営利的な”利他”に主眼を置きながら、ビジネスとしても成立させる『ソーシャルビジネス』、『ソーシャルイノベーション』への関心は日本国内でも高まり、そうした分野で起業を志す社会起業家の育成を目的とした講座やコースを、大学院などに設ける高等教育機関も近年、徐々に増えている」と書いています。

第1章「地方創生のモデル、『輪島カブーレ』」の「縮小する地方都市の再生を目指す」では、石川県輪島市で、2018年4月18日午後、過疎や高齢化に負けない新しいまちづくりのモデルが誕生したことが紹介されます。輪島市が「漆の里・生涯活躍のまちづくりプロジェクト」と銘打ち計画を進め、その一環として社会福祉法人佛子園が整備してきた複合型の地域共生施設「輪島KABULET(カブーレ)」です。

「多様な7施設を『ごちゃまぜ』に」では、「輪島カブーレ」の拠点施設には、地域交流を促進する蕎麦処「輪島やぶれかぶれ」、源泉掛け流しの天然温泉「三ノ湯・七ノ湯」や「足湯」、地域住民の会合・交流の場となる「住民自治室」などを設けているほか、隣接地には高齢者デイサービスセンターを併設。拠点施設の正面には地域密着型の健康増進施設「GOTCHA!WELLNESS(ゴッチャ!ウェルネス)輪島」があることが紹介されています。

「輪島カブーレ」開設という晴れの日、佛子園の雄谷理事長は「社会福祉の世界ではこれまで、障害者は障害者だけ、高齢者は高齢者だけ、子どもたちは子どもたちだけという縦割りの時代が長く続いてきました。それぞれで制度や質の改善などが進んでも、交わることなくバラバラのままでした。しかし、当法人が10年前に小松市内の寺院を改修して開設した『三草二木 西圓寺』で、障害者や高齢者が『ごちゃまぜ』になるとそこにはエネルギーが生まれてくることに気づかされました」と語っています。

「温浴施設は住民交流促進の要」では、天然温泉の浴場を設けている点は「三草二木 西圓寺」、「シェア金沢」、「B’s行善寺」と共通であることが紹介されます。地元河井町の7区と11区に限定されていますが、拠点施設近くの住民は無料で利用できます。地域住民の交流を促す佛子園ならではの仕掛けであり、地下1165mまで掘削し湧出させた、ナトリウム・カルシウム―塩化物泉の源泉を時間の許す限り楽しむことができます。

第2章「『ごちゃまぜ』誕生、『三草二木 西圓寺』」の「廃寺寸前の『西圓寺』を交流の場に再生」では、1960(昭和35)年に佛子園が創立して以降の歴史を見返す中で、理事長の雄谷が「最大のターニングポイントになった」と指摘する事業として、2008年1月に開設した「三草二木 西圓寺」が紹介されます。生活介護と高齢者デイサービス、障害者の就労継続支援施設、地域住民が利用できる温泉入浴施設の機能を兼ね備えた「三草二木 西圓寺」の運営は、佛子園関係者の事前の想像を上回る化学反応を引き起し、後に「シェア金沢」や「B’s行善寺」、「輪島カブーレ」を構想していく上での土台になっていきます。佛子園による福祉のまちづくりの「シーズン1」と言えるでしょう。

施設名に付く「三草二木」は、法華経で説かれるたとえ話にちなんでいます。仏の慈悲は育ち方の異なる大小さまざまな草木に、降り注ぐ雨のように差別なく平等に注がれていることを指します。障害のある人間もない人間も、また老いも若きも、分け隔てなく等しく付き合うことのできる場に西圓寺をしていきたいとの思いが「三草二木」には込められているのです。

「予想もしていなかった奇跡が生まれる」では、ある佛子園関係者が「デイサービスで西圓寺に通う認知症のおばあさんが、生活介護サービスを利用している車椅子の全身性障害者にスプーンでゼリーをあげようとする。ぶるぶると震える手で。それが日課になると、自宅で夜に一人で歩きまわることがぱったりなくなったそうです。『あの子は私がおらんと駄目なんや』と言って、朝、ぱっと起きるとスプーンをポケットに入れて、すぐさま西圓寺に出掛けたがるようになった。ほかにも、認知症の症状が改善する傾向が表れ、私たちもご家族も大変驚いた」と語っていることが紹介されます。

一方、当の障害者も最初は自分にやたら構おうとするおばあさんを警戒する様子だったそうですが、徐々に受け入れて、おばあさんのスプーンを運ぶ手に合わせて顔を向けようとするうちに、首の可動域が広がったそうです。本書には、「そうした姿を目の当たりにして、社会福祉の仕事で最も重要なのは、障害者や高齢者が自ら役割を見つけ、生きる力を取り戻すことで、サービスの提供に自分たちが頑張り過ぎるのは、彼らから力を発揮する機会を奪い、逆効果なのではないかと痛感したという」と書かれています。

第3章「福祉のまちづくりに挑戦、『シェア金沢』」の「『生涯活躍のまち』のモデルに」では、2014(平成26)年3月に全面オープンした「シェア金沢」(金沢市若松町)が、「三草二木 西圓寺」で生まれた「ごちゃまぜ」の発想を初めて大掛かりに反映し、地方創生を重要施策とする政府から「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」の先進モデルと評されていることが紹介されます。シェア金沢は13年4月の第1期オープン、同年9月の第2期オープンを経て、関係者が思い描いた理想の完成形として誕生しました。

「首相も来訪、視察が今も相次ぐ」では、2015年4月には安倍晋三首相が「シェア金沢」を視察に訪れており、敷地内の各施設をつぶさに見て回る一方で、「シェア金沢」に住む高齢者や学生、障害児、集まった周辺地域住民らの声を直接聞くことに貴重な時間を割いたことが紹介され、「ここで、『生涯活躍のまち』で目指すべき具体的な方向性を首相は確信したに違いない」と書かれています。ちなみに「生涯活躍のまち」は、「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、希望に応じ地方や『まちなか』に移り住み、地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくり」と定義されています。

「シェア金沢」は本来、大都市から地方への高齢者移住の受け皿ではなく、障害者が地域住民や高齢者などと交流し、就労できる場を求めて佛子園が誕生させた施設です。サービス付き高齢者向け住宅も、構想段階では「シェア金沢」が立地する周辺地域や金沢市内からの転居者を想定していましたが、案に相違して、入居世帯の半数を首都圏、関西圏からの入居者が占めているとして、「人口減少、東京一極集中という急速な時代のうねりが、佛子園の先駆的発想の背中を追いかけ、キャッチアップしたと言えるのではなかろうか」と書かれています。

「高齢者、障害児、学生が住むまち」では、「シェア金沢」は、金沢市中心部から東へ車で10分ほどのなだらかな丘陵地の一角にあることが紹介されます。新興住宅街に接しながらも周辺には豊かな自然が残る。敷地面積は約3万5700㎡。坪数に換算すると約1万1000坪であるとして、「現在ここに、サービス付き高齢者向け住宅6棟、障害児・障害者入所施設4棟、児童発達支援センター、放課後等デイサービスセンター、学生対象の賃貸住宅、天然温泉の入浴施設、レストラン、高齢者デイサービス&訪問介護ステーション、障害者向けグループホーム、全天候型グラウンド、クリーニング取次店、コインランドリー、NPO法人および民間企業オフィス、カフェ&バー、キッチンスタジオ、ボディケア店、共同売店、ブータンの工芸品ショップなどが軒を並べる。ドッグラン、アルパカ牧場、自家菜園用の小規模農園も併設し、多機能な1つの”まち”を形成している」と書かれています。

「シェア金沢」の学生向け住宅

このほか、「シェア金沢」では大学生も暮らしています。同施設のある金沢市若松町の周辺エリアには、金沢大学、金沢美術工芸大学、北陸大学などの高等教育機関が立地していることから、対象を大学生に絞った1Kの賃貸住宅6戸と、金沢美術工芸大学の学生向けに天井の高いアトリエを横に備えたトレーラーハウス2戸を用意しています。家賃を1Kタイプ3万円/月、トレーラーハウス4万円/月と割安な設定とする一方で、入居学生には月30時間のボランティア活動を義務づけています。

「シェア金沢」の若松共同売店

ボランティアの中身はさまざまです。代表的なところでは、「シェア金沢」内にある「若松共同売店」での商品販売、障害児入所施設での衣類の洗濯と洗濯物を仕舞う仕事、天然温泉の稼働設備の電源スイッチを朝一番に押す役割など。また、トレーラーハウスに入居する美大生には、身につけているスキルを生かして、高齢者や障害児に絵画などを教えたり、「シェア金沢」敷地内のテナントの窓ガラスなどに事業PRにつながるイラストを描いたりするボランティアもしてもらっているとか。

「地域の理解を得るため、まちづくりから」では、佛子園では2005年に、白山市内の法人本部近くにある住宅地で障害者向けグループホームの建設を計画した際、地元住民の理解を得られず、建設が中止しかかった経験があったことが紹介されます。この時、佛子園では「地域に溶け込むというより、さらに踏み込んで、まちづくりそのものを自分たちで手がけるくらいのことをしないと、思うような施設をつくれない」との思いを強くしたといいます。

春の「シェア金沢」

「シェア金沢」の敷地は、2005年に閉鎖した国立病院機構金沢若松病院の跡地で、2011年6月に同機構本部から条件付売払の公示が行われ、同年8月に佛子園が取得しました。売払の条件は、医療法人や社会福祉法人による活用を想定した「医療および医療に準ずる計画とすること」と、約3万5700㎡の土地を一筆、つまり丸ごと買い取ることだったため、躊躇はあったといいます。

「シェア金沢」のドッグラン施設

「シェア金沢」の計画のスタート時から、地元の町内会などへの丁寧な説明を繰り返す一方、地域からも希望の声を上げてもらったそうです。例えば、「シェア金沢」にはドッグランがありますが、これは近隣住民からの要望で敷地内に設けた施設です。サービス付き高齢者向け住宅の入居者だけでなく、周辺の地域住民がペットを連れて「シェア金沢」に散歩に訪れているそうです。「シェア金沢」前にある路線バスの停留所も敷地に引き込み、屋根付きにしました。同施設の清水愛美施設長は「雪や雨の多い地域でもあり、近隣住民のリクエストに応えた」と振り返ります。2012年3月31日に行った起工式には、町内会関係者も招き、地域との一体化に努めました。

「シェア金沢」のウクレレ教室

また、「シェア金沢」で特徴的なのは、佛子園以外の事業者やNPOが敷地内にオフィスや活動拠点を構え、「シェア金沢」の機能に多彩さを加えている点です。料理教室を行う「加藤キッチンスタジオ」、全天候型グラウンド「S-STADIUM(エス スタジアム)」内のフットサルコート、クリーニング取次店およびコインランドリーの「おしゃれ洗料 ハンズプラス」、タイ式マッサージの「ボディケアゆらりシェア金沢店」、ウクレレ教室の「ウクレレパイナ金沢」、カフェ&バー「Mock(モック)」などが外部の事業者によって運営されています。

「『パタン・ランゲージ』を活かす」では、雄谷理事長の「まちの中心はハード、つまり建物ではなく、人であるという考え方が雄谷さんにはありました。ヒントとして、雄谷さんからクリストファ・アレグザンダーの『パタン・ランゲージ』を参考にしてほしいと依頼されました」という言葉が紹介されます。「パタン・ランゲージ」は、オーストリア出身の都市計画家・建築家であるクリストファ・アレグザンダーが1970年代に提唱した都市計画、まちづくりに関する理論で、書籍化もされている。

アレグザンダーの著書『パタン・ランゲージ―環境設計の手引』(鹿島出版会)では、人々が「心地よい」と感じるまちなかの環境をヒューマンスケールで分析して、狭い路地や窓からの眺め、目にとまる植栽など253のパターンを挙げています。望ましいコミュニティを形成していく上で参考になる点が数多く、「建築好き」と周囲から評される雄谷理事長が半ば趣味で精読し書棚に置いてあった専門書を引っ張りだしてきた格好だといいます。そして、このパタン・ランゲージの中で、「人と人の交わり」や「人と人のつながり」が実現されます。高齢者も障害者も地域住民も元気にすると佛子園では考えています。介護保険の枠をあえて超えて導入している「高齢者デイサービスオール」は、そうした考えから生まれた、他ではお目にかかれない佛子園独自の仕組みです。

第4章「『ごちゃまぜ』なまち進化系、『B’s行善寺』」の「『あんやと券』え住民参加を後押し」では、地域交流を出城地区全体で加速させるアイデアとして生まれた「あんやと券」が紹介されます。「あんやと」とは、「ありがとう」の意の石川県の方言で、北安田町内会や出城地区が実施する清掃や除草のボランティア活動に参加すると、「あんやと券」と名付けられた入浴無料券がもらえる仕組みです。地域の活動に新住民に参加してもらい、さらに「B’s行善寺」に誘導して、交流を深めてもらうための仕掛けです。2015年4月に「三草二木 行善寺」が先行オープンして以降、町内ボランティアの参加人数は同年5月の約200人から、1年後の2016年5月には約280人へ増加しました。「あんやと券」の効果と言えます。

「3タイプの『生涯活躍のまち』モデルを運営」では、「生涯活躍のまち」の分類に当てはめると、「輪島カブーレ」と「B’s行善寺」は市町村レベルのタウン型、「シェア金沢」は地区レベルのエリア型、「三草二木 西圓寺」は単独施設による施設型にあたることが指摘されます。しかも、同じタウン型でも「輪島カブーレ」は急速な人口減少地域、「B’s行善寺」は人口増加地域にあります。一法人がこのように3タイプにわたる「生涯活躍のまち」のモデルを同時運営している例は全国でも他にありません。

第6章「佛子園流イノベーションを全国へ、世界へ」の「『幸せの国』ブータンに国境を越えた協力」では、2012年、佛子園は”幸せの国”として知られるブータンの王室ゆかりのNGO「タラヤナ財団」とパートナーシップの覚書に調印するとともに、現地事務所を設置し、人事交流や産業創出支援をスタートさせたことが紹介されています。その一環として、2013年から3年間、同財団の職員を研修生として迎え入れる一方、「シェア金沢」にブータンの工芸品のセレクトショップ「タラヤナジャパン」を14年3月の同施設全面オープンの際に開店した。同年3月26日に開催された「シェア金沢」の開設記念式典には、タラヤナ財団の創設者である同国のドルジ・ウォンモ・ワンチュク皇太后(第4代国王妃)が臨席し、佛子園と同財団との信頼関係の深さをうかがわせました。ただし、2018年に刊行された本書ではブータンが”幸せの国”として紹介されていますが、それから5年が経過した現在では様子が違ってきているようですね。

「『人生100年時代』の自民党戦略案に関与」では、自民党は2017年に「人生100年時代戦略本部」(本部長:岸田文雄政調会長)を立ち上げ、2018年5月に政府への提言申し入れ書を安倍首相に提出したことが紹介されます。提言は「人生100年時代」の到来を見据え、定年などのない「エイジフリー社会」の構築を求める内容となっています。「人生100年時代」とは、英国ロンドンビジネススクールの教授であるリンダ・グラットンが、超長寿時代の生き方を説いた著書『LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略』で用いているキーワードです。

一条真也の読書館『『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で紹介したグラットンの著書の日本語版が2016年発行されると、多くのマスコミが取り上げ話題となりました。日本人の寿命が年ごとに上昇していく中で、100歳という寿命を現実的に捉え、どう対処していくかが一種の社会的ムーブメントとなりました。自民党も「人生100年時代戦略本部」を設置して、時代の変化に備えようとしたのです。そして、「シェア金沢」をはじめとした佛子園の一連のプロジェクトが影響を与えていたとされています。

「BUSSIEN VISION2030」でさらに彼方へ」では、佛子園では、法人運営の最上位の基本理念として、ラテン語の「PLVSVLTRA(プルスウルトラ)」を掲げていることが紹介されます。「さらに彼方へ」という意味があり、この基本理念に従うように、佛子園は社会福祉の新しい地平を目指して、これからも画期的な「ソーシャルイノベーション」を生み出し続けていくだろうと述べられ、本書は終わっています。本書は、シェア金沢の清水施設長から頂いた本で、3月27日に同施設で行われたセミナーの際にも配布されました。佛子園という仏教を基本とした社会福祉法人のユニークな事業展開の軌跡が的確にまとめられており、コンパッション都市づくりを目指すわたしには非常に勉強になりました。

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