No.1725 マーケティング・イノベーション | 経済・経営 『最短で一流のビジネスマンになる! ドラッカー思考』 一条真也著(フォレスト出版)

2019.05.29

 36冊目の「一条真也による一条本」をお届けします。『最短で一流のビジネスマンになる! ドラッカー思考』(フォレスト出版)という本で、2009年9月25日に刊行されました。「一流の思考が身につく!47の実践テクニック」というサブタイトルがついています。わたしの著書の中で最もよく売れたものの1つです。

最短で一流のビジネスマンになる! ドラッカー思考
(2009年9月25日刊行)

 カバーにはなんと縦縞のショッキングピンクがあしらわれ、帯には「わかりやすさを『徹底』追求!」「解説+エピソード+実践プランで簡単に理解できる!」「一流をマネするだけで『結果』が手に入る! → 詳しくはまえがきへ」「目標管理・時間管理・人間関係・コミュニケーション・経営・マネジメント・リーダーシップ・マーケティング・セールスに今スグ使える!ドラッカー入門」「P.F.ドラッカーとは? 全世界のビジネス界に最大の影響を与えた経営学者で社会生態学者。『マネジメント』などビジネスに関するほとんどの理論を考え、約30冊以上の著書を書き残しています。その思考は、多くの一流ビジネスマンが実践し圧倒的な成果を出しています!」「無料!限定プレゼント!ドラッカー生誕100周年特典 →詳しくは巻末へ」と書かれています。ものすごい情報量です。

本書の帯

 また帯の裏には、「すでに、あなたの中にはドラッカー思考がある!」として、以下のように書かれています。
「ドラッカーの思考が日本に入ってきたときに、結構すんなり受け入れられました。それは日本人の中にもともとドラッカー的な思想があったからです。なぜなら、日本の資本主義の父といわれた渋沢栄一という人がドラッカーの尊敬する経営者で、日本のビジネスマンは渋沢栄一の思想に影響を受けているからです」
「発達心理学のデータでは、成人が大人になってから無意識に下す判断のうち8、9割が親の真似だといわれています。つまり、あなたのおじいさんから親へ、親からあなたへと、その思想が引き継がれているのです」
「あなたの中にある思考に少しつけ加えるだけでドラッカー思考は身につきます。ですから、すんなりと一流の思考は頭に入るのです!」
これまた、ものすごい情報量ですね。

本書の帯の裏

 さらにカバー裏表紙には、次のように書かれています。
こんな人に読んでもらいたい!
●仕事で最短で結果を出したい人
●圧倒的な成果を出して年収アップしたい人
●一流のビジネススキルを身につけたい人
●最高のコミュニケーション術で「他人」に認められたい人
●仕事にスピード感を出し、プライベートに使う時間が欲しい人
●常に正しい判断をつけたい人
●セールス・マーケティング・企画力を身につけたい人

本書のカバー裏表紙

 そしてカバー前そでには、次のように書かれています。
 ドラッカーは難しい!
 だから……本書の、「解説」「エピソード」「実践プラン」の3つの方法で学べば簡単に一流の思考が手に入る!今スグ使える!結果が出る!

本書の「目次」は、以下のようになっています。
「はじめに」
【プロローグ】ビジネスマンの成功はドラッカー思考から始まる!~一流の思考を簡単に使う方法~
●ビジネスマンを飲み込む資本主義崩壊の波
●超一流企業続々破綻!利益の無い世界で生き残る方法とは?
●ドラッカー思考を使うしかなかった・・・
●1位以外切る!
●赤字数億から利益約20億!
●ドラッカー思考で一流になる!プライドを持つ!
●革命を起こせ!
●いちビジネスマンとしてドラッカー思考を使う!
●思い切ってゴルフをやめる!「効果」「効率」を徹底する!
●超一流ビジネスマンから信奉されるドラッカー
●世界を変える!ドラッカー
●ノーベル賞とユダヤ人
●マネジメントは「人が主役」
●次の社会はどうなる?
●利益を出すただひとつの方法
●マネジメントの目標を定める
●一流のビジネスマンになるしかない!
●すでに、あなたの中にはドラッカー思考があるから簡単!
●わたしに実践できたから簡単!
【第1章】一流は最短で目標を達成する!~ドラッカー思考「自己実現」~
●あなたは何によって憶えられたいか?
●成果を出さなければ意味はない!
●強みだけを伸ばす!
●弱い部分は改善しない!
●「強み」を利用する方法
●「何をしているのですか?」
●部下と上司と社長は歯車
●歯車としての役割を果たす
●ミッションに気づく
●ボーイズ・ビー・アンビシャス!
●M&A
●ハートレス!ソサエティ
●働く理由
●知識を身につける
●チャップリンは逃げ出す!
●自己実現とは
【第2章】思考と成果を直結させる方法~ドラッカー思考「マネジメント」~
●マネジメントとは、単なる管理ではない!
●人を動かす方法
●一流のマネジメント法
●ドラッカー流「時間管理術」
●人生とは時間を生きること
●会社の理念を意識する
●あなたがビジネスで主役になる方法
●孔子と任天堂
●ハートフル・マネジメントとは?
●最短で利益を上げる方法
【第3章】なぜ、一流だけが成績を上げるのか?~ドラッカー思考「マーケティング」~
●一流のマーケティング力
●顧客は何を買いたいか?
●DVDが欲しい人はDVDが欲しいのではない!
●顧客の満足度を上げる方法
●隣人祭り
●あなたが本当に売っているものを知る
●喜ばれる仕事術
●自分の喜びを追求する
●ブランド
【第4章】仕事は破壊すれば結果が出る!~ドラッカー思考「イノベーション」~
●イノベーションとは?
●破壊!
●他産業を「マネ」れば結果が出る!
●誰かにできれば、あなたには楽にできる!
●イノベーションは知識である!
●専門知識を手に入れる!
●わたしが結果を出した!イノベーション
●強みを生かし逆転する!
●競争から抜け出す!
●日本のブルー・オーシャン
●新しい組み合わせをさがせ!
●横に跳べ!
【第5章】最強のコミュニケーション術~ドラッカー思考「リーダーシップ」~
●すべてのビジネスマンに必要なリーダーシップ
●人は「真摯さ」の欠如を絶対に許さない!
●すべてわたしに任せなさい!
●人に安心感をあたえる方法
●コミュニケーションの大切さ
●リーダーは利益を体現する!
●説得できるコミュニケーション力
●顧客がプロ化している・・・
●コーチングの概念
●「叱る」ことと「褒める」こと 
●チェンジ!リーダー!
●変化を読める人 変化を起こせる人 
●究極のコミュニケーション術
【第6章】一流は使っている!未来の結果をつくる方法~ドラッカー思考「未来創造」~
●未来予測に意味はない!
●「未来」は安定しない
●「未来」とは何か?
●未来のビジネストレンドを読む方法があった!
●ネクスト・ソサエティ
●「死ぬ覚悟」と「生きる覚悟」
●社会は今までの価値観を変えつつある
●「未来」をつくる方法
●わたしの戦略
●使命が勝手に未来をつくる
「あとがき」
●今、ドラの音を鳴らせ!

 P・F・ドラッカーは、いかなる人物か。
「超一流のビジネスマンが絶大の信頼をおく」
「マネジメントなど、ほぼすべてのビジネス理論を考え出した」
「ビジネスにかんする著書30冊以上」
「経営学者で社会生態学者」
 ……などビジネス界に最大級の影響をあたえた人物です。
 日本ではファーストリテーリングの柳井正会長、海外ではGEのジャック・ウェルチ前会長などがドラッカーから大きな影響を受けたことは有名です。つまり、一流のビジネスマンはドラッカーの思考を使って、圧倒的な結果を出しています。

 ドラッカーの思考を、少しあげるだけでも、「選択と集中」「知識化」「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」、「イノベーション」などがあります。この方法を使いこなせば圧倒的に成果が出ることは何十年間も実証されていますが、多くの人は使っていませんし、知りません。

 なぜでしょう? ズバリ難しいからです!
 難しいから、敷居が高く一般のビジネスマンにまでこの思考が広まりません。さらに、ビジネス界の大御所が何十年もの時間を使って作りだした理論を、いちビジネスマンが理解しようなど到底無理なのです。
 しかし、本書では、その「難しい」を徹底的に解消することに成功しました。なぜなら、

(1)「解説」
(ドラッカーのビジネス理論をシンプルに解説)
(2)「エピソード」
(わたしが実際に使ったドラッカー思考&身近なエピソードで理解が深まる)
(3)「実践プラン」
(ドラッカー思考を今スグ実際に使う方法)
の3つのアプローチで簡単に理解し、実践することができるからです。
この方法で、わたしも実際に成果を出したので、あなたの「仕事」「人生」は簡単に良い方向へ変わります。約8年間でわたしが学んだことをこの1冊で身につけられるようにしました。

本書の中身

 かつて、わたしが社長を務める冠婚葬祭会社は赤字会社でした。全国展開し、勢いのある会社のように一見みえていましたが、その内情は赤字会社です。そこで、わたしが社長に就任してから初めに取り入れたのがドラッカー思考の「選択と集中」というものでした。
 詳しくは、「プロローグ」に書きましたが、この方法を使って経営内容は改善し、強い部分をつくり出し、そこに資本投入を行っていく方法で、「赤字数億円から経常利益約20億」という成果を出しました。
 さらに、経営者としてではなく、1人のビジネスマンとしてこの「選択と集中」を使い「時間」「仕事」を効率化し圧倒的な成果を出すことができました。

本書の中身

 つまり、わたしはドラッカー思考をそのまま実行したわけです。一流の思考をひとつマネして実行しただけで、すぐに結果が出ました。本書の内容をひとつだけでもマネすれば、あなたも一流の結果を手にすることができます。
 金融危機、日本経済収縮、派遣切り、政権交代など今後のビジネスマンは何が起こってもおかしくない状況で生き残っていかなければなりません。いつ、あなたの会社が倒産するか、あなたがリストラされるのかわかりません。そんな中で生き残る!成果を出す!方法は、何十年もどんな状況でも残ってきたこのドラッカー思考しかないのです。

本書の中身

 本書を書き上げたとき、わたしは、しみじみと歴史のめぐり合わせの不思議さを噛みしめました。本書が刊行された2009年、100年に一度の世界不況。創業100年の世界最大の製造業であるGМの破綻。そして、ピーター・ドラッカーの生誕100周年。これら3つの出来事が一度に重なったのは偶然とは思えません。ましてや、ドラッカーはGМとはただならぬ深い関係にありました。なにしろ、彼が世界中に影響を与えるそのマネジメント理論を完成させたのはGМで行った調査がもとになっているのです。

 そして、100年に一度の世界不況の原因はサブプライムローンに代表される強欲資本主義にありました。それが行き詰まり、世界経済が危機的状況に見舞われている現在、世界を救うことができるのは、社会への貢献を重視し人間を尊重するドラッカーの経営思想以外にありません。世界中が蔓延した強欲インフルエンザに侵されているなら、ドラッカー思考はその特効薬としてのタミフルのようなものではないでしょうか。今こそ、高らかにドラの鐘の音を鳴らす時が来たのです。

 2005年11月11日にドラッカーは逝去しました。その訃報を聞いたとき、わたしは信じられない思いでいっぱいでした。わたしは、あまりにも多くのものをドラッカーから与えられました。2001年に38歳の若さで全国で冠婚葬祭業を展開する会社の社長に就任したときも、支えとなったのはドラッカーの著書でした。わが社の経営は彼の理論通りに行ってきました。

 まず、GEのジャック・ウェルチが実行したことで知られる「選択と集中」。わが社は、警備・旅行・生協など関連事業における不採算部門からすべて撤退し、本業に専念。また全国展開していた営業エリアにおいても、シェア1位の地域のみ残して、あとの地域からは思い切って撤退しました。大きな決断でしたが、今ふりかえれば、やはり正解でした。

 また、ドラッカーの代名詞ともいえる「知識化」も全面的に導入しました。業界では初となるISO9001を取得し、厚生労働省認定の1級葬祭ディレクターの資格者数も、全国一となることができました。典型的な「労働集約型産業」と見られている冠婚葬祭業を「知識集約型産業」へと発展させるべく努力してきました。そして、さらには思いやり、感謝、感動、癒しを提供する「精神集約型産業」をめざしたいと思います。

 ドラッカーが最も強調してきた「イノベーションを起こせ」というメッセージを忘れたことはありません。2004年には、日本の政令指定都市で最も高齢化が進行する北九州市に世界初の複合高齢者施設「サンレーグランドホテル」をオープンさせ、従来のビジネスモデルを組み替え革新するイノベーションを果たしました。また、古代ローマ風結婚式場や古代ギリシャ神殿などをつくり、ブライダル事業のイノベーションにも挑戦してきました。

 その他にも、「目標管理」「顧客の創造」「本質からの事業の捉え直し」「仕事に価値を与える」「ビジョンの提示」「ミッション重視」などなど、ドラッカーの数々の教えを愚直に実践し、わが社の業績は劇的に改善しました。何より、ドラッカーにはマネジメントの楽しさを教えてもらいました。わたしは、ドラッカーから受けた多くの教えを決して忘れません。今後もさまざまな形で、ドラッカーの「人が主役」という思想を世の人々に伝え、かつ自らの経営を成功させることで、ドラッカー理論の正しさを証明し続けてゆく所存です。

 ドラッカーこそは20世紀最高の思想家であり、21世紀社会の見取り図を示してくれた人です。その長年にわたる業績は、輝ける人類の宝です。そして、その置き土産である数々の「ドラッカー思考」は、わたしの人生の宝となりました。本書を読んで、ドラッカー思考に興味を持たれた方は、ぜひ、ダイヤモンド社から出ている多くのドラッカーの著書をお読みいただきたいと思います。きっと、あなたの輝ける未来を創造してくれるはずです。

 本書は、フォレスト出版の編集者(当時)である森下裕士さんによって産声を上げました。森下さんは、拙著『孔子とドラッカー』(三五館)を読んで感銘を受けられたそうで、わたしに連絡がありました。そして森下さんから、「ぜひ、若いビジネスマンが気軽に読めるドラッカーの入門書を書いて下さい」と言われました。最初にお会いしたときは26歳か27歳でしたが、森下さんの若さにまず驚きました。長髪で細身のスーツを着こなし、細いタイを締めていました。その姿は、まるで歌舞伎町の売れっ子ホスト(笑)、あるいはグループサウンズのボーカルみたいでした。つまり、貴公子みたいな雰囲気ということです。

 そんなソフトムードの森下さんですが、話してみると、非常に気骨のある若者でした。聞くと、熊本出身、つまり肥後もっこすとのこと。どうりで男気があるわけです。何よりも「一条さんの本、絶対、売ります!」の一言にシビレました。その後のメールのやりとりでも、森下さんからのメールの文末にはいつも、「絶対、売ります!」の一文がありました。著者にとって、これほど心強い言葉があるでしょうか!!
 そう、わたしは「森下マジック」にかかってしまったのです。

 森下マジックは、他にもありました。これは「フォレスト・マジック」というべきかもしれませんが、まず、太字を駆使した大胆な活字組みに驚きました。
 何よりも仰天したのは、ショッキング・ピンクのカバー。しかも縦縞です。
 まさか、ドラッカーの本に縦縞のショッキング・ピンクを持ってくるとは!
 おかげさまで、全国の書店のドラッカー・コーナーでも一番目立つ装丁となりました。それから、ちょっと長めのタイトルですが、なんと200以上のタイトル案の中から決めてくれました。若くても、本づくりにかける情熱はすさまじく、わたしは編集のプロフェッショナルとして彼を心からリスペクトしました。

 そして、2009年9月、『最短で一流のビジネスマンになる!ドラッカー思考』はついに出版されました。じつは、本書の初版部数は20000部でした。フォレスト出版でもあまり前例がないほど大きな初版部数だったのですが、この時も森下さんは「絶対、売ります!」と言ってくれました。そして、彼は実際にすぐに初版を売り切り、何度も増刷してくれたのです。おけげさまで、本書はその後も増刷を重ね、ロングセラーの仲間入りをしました。ドラッカー関連書では、2009年のベストセラー第1位の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』岩崎夏海著(ダイヤモンド社)に次いで読まれたそうです。
 本書は、アマゾンでも総合ベストテン入りを果たしました。
 さらには、ビジネス書大賞にもノミネートされた本です。

『もしドラ』の著者である岩崎夏海氏と

 わたしには、本書以前にドラッカーに関する著書がありました。
 一条真也の読書館『知の巨人ドラッカーに学ぶ21世紀型企業経営』で紹介した本で、2006年3月に上梓しました。しかしながら、同書の刊行直後に版元が倒産したことなどもあって、わたしとしては悔いが残る一冊となりました。このときの無念をは、3年後に上梓した『最短で一流のビジネスマンになる! ドラッカー思考』(フォレスト出版)で晴らすことができたわけです。わたしにとって、いろんな意味で忘れがたい一冊です。

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