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2025年、高齢者が難民になる日』

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No.1705


『2025年、高齢者が難民になる日』小黒一正編著(日経プレミアシリーズ)を読みました。「ケア・コンパクトシティという選択」というサブタイトルがついています。編著者は、法政大学経済学部教授。京都大学理学部卒、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。1997年大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。
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本書の帯



 本書の帯には「幸福な老後は、住む『まち』で決まる。」「高齢化の進行で、医療・介護難民が続出!? 日本の現状を知り、解決策を考える」「魅力ある『地域』の創り方」と書かれています。
20190326130617.jpg本書の帯の裏



カバー裏表紙には、以下の内容紹介があります。
「団塊の世代すべてが後期高齢者となる2025年、大量の『介護難民』が発生すると言われる。この事態に私たちはどう向き合うべきか。誰もが、いつまでも暮らしやすい地域はどうすれば実現できるのか。医療・福祉、地方自治、『まちづくり』のあり方など、様々な視点から考え、人も、地域も甦らせる『ケア・コンパクトシティ』という解決策の真髄に迫る」

 アマゾンの「内容紹介」は、以下の通りです。
「まもなく、団塊世代が後期高齢者となり、日本の社会保障、福祉の問題は大きな課題にぶちあたります。医療・介護はどうする、終の棲家をどう提供するのか、悪化しつづける財政問題をどう考えるのか・・・・・・このままでは、住まいを確保できない、介護を満足に受けられない、死に場所すらない高齢者が大量発生してしまう恐れがあるのです。深刻化する問題を解決するためには、他人任せ、国任せにしてはいられません。地域レベル、住民レベルでの取り組みが重要になります。そこには、新しい街づくりの視点が必要になります。そして、その解決の一手となるケア・コンパクトシティとはどんなものなのでしょうか。財政、社会福祉、街づくりなど、多くの専門家がさまざまな視点から鋭く説き明かします。人間は誰でも老います。どこで、どのように暮らしていきたいのか。本書は、すべての日本人にとって切実な問題について、新たな視点を与えてくれます」


 本書の「目次」は以下の構成になっています。

はしがき「誰もが、いつまでも暮らしやすいまち」

第1章 幸せな老後は、どうすれば実現できるのか

第2章 日本の医療と介護に、何が起きているのか

第3章 地域を、医療・福祉を誰が「経営」するのか

第4章 まちづくりはヒューマンスケールで

第5章 地域の共同体マインドを共有する

    ――重要な規範的統合

第6章 「ケア・コンパクトシティ」が日本を救う

「あとがき」

「謝辞」

「参考文献」


 はしがき「誰もが、いつまでも暮らしやすいまち」では、「『2025年問題』を先取りするまちづくり」として、小黒氏は以下のように述べています。
「言い古されたことではあるが、『2025年問題』が目前に迫っている。細かな数字はともかく、各種調査や研究によれば、団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、居場所を失う『介護難民』が大量に発生することは間違いない」

 しかし、「希望を捨てることはない。市民と企業、行政が心を1つにして取り組めば、必ず道は開ける」として、小黒氏は「キャナリーゼ」という言葉を紹介します。これは、東京都江東区の石川島播磨重工業(現IHI)の工場跡地を再開発したウオーターフロントのニュータウン、豊洲地区に暮す奥さんたちのことで、小黒氏は「地域の高層マンションに住み、ファッショナブルな装いをこらして運河沿いを散策し、買い物やお茶を楽しむ子供づれの女性たちは近未来の都市住民である」と述べています。

 また、「豊洲はもう1つの顔を持つ」として、小黒氏は以下のように述べています。
「仕事を勤め上げ、子育てを終えたあとのラストリゾート(老後の居場所)を求めて、郊外の一戸建て住宅を処分して、ここのマンションに移り住んできた人々が余生を楽しむまちでもある。地下鉄豊洲駅を中心にほぼ400メートル以内の歩いて行ける範囲に、病院、クリニック、郵便局、区役所の出張所、図書館、大型書店、ショッピングセンター、シネマコンプレックス、レストラン・飲食店、スポーツジム、散歩やジョギングができる海岸公園、保育園などが揃っている。最先端のまち銀座まで地下鉄で6分足らず、羽田空港へバスで30分、成田空港へ70分前後と海外にも直結したまちでもある」

 国は、「医療・福祉施設、商業施設や住居等がまとまって立地し、高齢者をはじめとする住民が公共交通により生活利便施設等にアクセスできる」というコンパクトシティを「いつまでも暮らしやすいまち」として推進していますが、「豊洲」は、それを先取りしているわけです。
 さらに「日本列島で始まった、団塊世代中心の『民族大移動』」として、小黒氏は「『豊洲』だけではない。こうしたラストリゾートを夢みて、郊外の一戸建てから駅に近いマンションなどに住み替える高齢者が増えている。日本列島を舞台に、団塊の世代を中心とした高齢者が終の棲家を求めて『民族大移動』を始めたのだ」と述べています。

 内閣府の調査によれば、老後に移住を望む人々の過半数が移住の条件として「医療・介護の環境」(65%)と「商業施設があり買い物が便利」(61%)を挙げています。小黒氏は、「人は医療・介護の心配がなく、消費生活に不自由しないまちなら住み替えてよいと考えているのだ。ならば、そのようなまちづくりをすれば、自ずと人はわがまちに住み続け、よそからも人を誘い入れて、まちは蘇ることだろう」と述べます。
 続けて、小黒氏は以下のように述べています。
「人生80年の時代を迎え、60代からの人生は黄昏どきというより、むしろ人生の収穫期と言っていいだろう。"余生"を自分の仕事の完成に注ぐか、趣味や生涯学習に打ち込むか、あるいは現役時代にはできなかった自分だけのライフワークにかけるか――いずれにしても、安心な毎日を保証する『居場所』を確保しなければ豊かな老後はおぼつかない。そのようなラストリゾートをめざすということは、自己責任による『自助』、介護保険など社会保険制度という『共助』、近隣での助け合いやボランティアなどの『互助』、そして税金による生活保障である『公助』を組み合わせた新しいコミュニティを創造することにほかならない」

 ここで「互助」という言葉が出てきましたが、互助会こそは日本人の老後を幸福なものにすることができる組織であると、わたしは思います。小黒氏は、「これからは、老いも若きも生産と効率向上に奉仕するだけではなく、『人生の意味』を充実する〈生活世界〉を主眼とするまちづくりが、都市計画の本流となる。そのための仕組みこそ、地域包括ケアシステムの本質である。大都市だけでなく地方都市も、過疎地においても、それが21世紀のまちづくりの基本コンセプトなのである」と述べます。

 さらに小黒氏は「21世紀のまちづくりは、『近代化』によって失われてしまった、あるいは喪失の危機に瀕している〈生活世界〉を再生あるいは再構築する試みにほかならない。それは、地域包括ケアシステムを内包したコンパクトシティをつくることである」とも述べます。地域包括ケアシステムを内包したコンパクトシティを「ケア・コンパクトシティ」と呼びます。小黒氏は「ケア・コンパクトシティをつくるということは、超高齢社会の到来をチャンスとしてとらえ、コミュニティの再生や創生をめざす『グレートジャーニー』への旅立ちである。それが21世紀に生きる私たちにとって世代を超えたミッションである」と訴えるのでした。

 第1章「幸せな老後は、どうすれば実現できるのか」では、千葉商科大学政策情報学部准教授の小林航氏が、「医療保険と介護保険でも、不安は消せない」として述べます。
「日本では、老齢年金、医療保険、介護保険はいずれも強制加入の社会保険制度として整備されている。したがって、これらの制度が整っていない状況と比べれば、はるかに安心感は高いのだが、生活資金を賄えるだけの年金給付を受けられるとは限らない。
『医療・介護の給付を受ける際に一定の自己負担が必要となる』『施設や人材が不足しているために、いざというときに必要な治療や介護が受けられない可能性がある』といった問題もあり、不安感を解消するのは容易ではない」

 また、「日本人は、どこで最期を迎えているのか」として、小林氏は以下のように述べます。
「医療保険は1960年代に国民皆保険体制が確立されたが、それに比べると2000年からスタートした介護保険は歴史が浅い。近年になって介護保険が創設された背景の1つに高齢者の『社会的入院』と呼ばれる現象があった。これは、医学的観点からは入院の必要性が低下しているにもかかわらず、患者や家族の都合によって入院が継続される現象のことであり、介護サービスの基盤が整っていないことがその背景として認識されていた」

 第2章「日本の医療と介護に、何が起きているのか」では、厚労省出身のコンサルタントで東京大学非常勤講師の武内和久氏が、「『在宅医療・介護をいかに実現するか』が大きなテーマ」として、以下のように述べています。
「我々が抱えている課題の本質を一言で表現すると、それは「地域の実情に応じて、必要な社会資源をいかに整備し、組み合わせ、ニーズに応えられる価値を生み出すか」という点にある。その際、国(中央政府)が決めたやり方に沿って、画一的な方法論を全国に普及させるという発想ではなく、それぞれの地域ごとに『最適解』や『納得解』を生み出すという視点が不可欠である」

 続けて武内氏は、地域包括ケアシステムについて述べます。
「地域包括ケアシステムの構築に向けては、医療・介護をめぐり、4つのパラダイムシフトが重要である。それは、『入院から外来へ』『専門医療からプライマリケアへ』『病院から施設、そして在宅へ』『医師のみから多職種連携へ』だ。 これらを横断的に貫く政策テーマは、『在宅医療・介護をいかに実現するか』である。特に、認知症はじめ中・重度の介護ニーズが生じた場合であっても、地域コミュニティのなかで、在宅でどのように療養するのか、必要な介護サービスを受けながら過ごしていくための環境整備をどのように行うのか――これがきわめて重要な課題となる」

 2015年6月、民間の有識者会議「日本創成会議」は、団塊の世代すべてが75歳以上の後期高齢者となる2025年に、全国で約43万人が、「介護難民」となり、特に東京圏だけで3割の約13万人に上るとする試算を発表しました。「2025年、『介護難民』が大量発生する?――ハコの問題」として、武内氏はこう述べています。
「プロの介護職員が不足して、必要なサービスが提供されなくなれば、家族の負担に跳ね返るとの見方もある。いわゆる『介護離職』の問題だ。働き盛りの40、50代の人々が、親の介護の精神的・肉体的な負担に耐えられず、離職に追い込まれたり仕事のセーブを余儀なくされたりする事態となっている。毎年10万人が介護のために離職しているとの推計もあるほどだ」

 武内氏は、介護人材の不足は、我が国の経済活動そのものに打撃を与えるおそれもあると指摘します。こうしたこともあって、2015年9月末に安倍首相が提起した「新・3本の矢」の3つめの事項として、「介護離職ゼロ」が掲げられ、2020年代初頭の実現が目標とされました。そのために、介護人材の確保を大きな柱とする施策として2015年度補正予算では、約444億円の措置が講じられました。
「自治体レベルでの取り組みはこれから」として、武内氏は以下のように述べています。
「そもそも、介護人材は不足していると言っても、2000年度の55万人から、2014年度には171万人を超えた。わずか10年余りで3倍強の拡大をしているのも事実である。サービス利用者数の増加(2000年度の149万人→2013年度の471万人)に応じるポテンシャルはあるはずだ」

 第3章「地域を、医療・福祉を誰が『経営』するのか」では、千葉商科大学人間社会学部教授の吉竹弘行氏が、「分野横断的な『ヒューマンウェア』が必要」として、以下のように述べています。
「これからいちばん大切なことは、『ヒューマンウェア』である。『仲間を創る』『目標を創る』という、ごく当たり前のヒューマンウェアを確立していく。こうした古いけれども新しい学際的なヒューマンウェアの重要性を理解し、実際に専門職のことを理解して管理できる人材育成の方法論を確立して教育する機会を増やすこと。それこそが地域包括ケアシステム確立への王道になる」

 第4章「まちづくりはヒューマンスケールで」では、トシ・ヤマザキまちづくり総合研究所代表の山崎敏氏が、「医療・福祉で地場雇用を確保した旧産炭地」として、以下のように述べています。
「地方都市の人口減少がとまらない。国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口データによれば、2010年から2030年の間では毎年、鳥取県の人口に匹敵する約57万人、2030年から2060年までは毎年、秋田県の人口に相当する約100万人ずつ減少していく」

 続けて、山崎氏は以下の事例を紹介します。
「こうした現象は地方都市のほとんどと農村部で起こっているのだが、頑張っているところもある。もう1つ、ケア・コンパクトシティのモデルは福岡県中間市にある。主産業の炭鉱が廃坑になり、人口が減少していった地方都市のまちおこしである。
『ウエルパークヒルズ』。約6万6000平方メートルの敷地に病院、特別養護老人ホーム、老人保健施設、ケアハウス、有料老人ホーム、デイサービスセンターの介護施設のほかスーパーマーケット、スポーツクラブ、ラドン温泉など、いろいろな機能が配置されている」

 また、「ヒューマンスケールのまちづくりを」として、山崎氏は北九州市の小倉を取り上げ、こう述べています。
「徒歩圏内に様々な機能を有する例を紹介したい。新幹線小倉駅(福岡県・北九州市)を降りると駅前は整備された街区で、地方都市の風景が広がっている。そこから車で約15分。小倉南区は市街地から南へ下り周辺は新興住宅で構成される。開発できる平坦な土地があったことから大型ショッピングセンターやアミューズメント施設、クリニックモールなどが連なっている」

 その一区画に介護付き有料老人ホーム「ラフィーネ」(運営主体:ファーストライフ株式会社)が2015年夏にオープンしています。山崎氏は、以下のように紹介します。
「居室は全室個室で最上階は介護予防を重点的にとらえたマシーンや屋上庭園には足湯があり地域の高齢者も集う。光触媒の床仕上げやイオン水の飲料水など居住者の健康環境にも配慮している。7階建ての2階にはワンフロア―に保育所をつくり老幼交流を目指している。立地場所は徒歩圏に様々な機能が集積している。住宅を基本に商業、アミューズメント、医療が徒歩圏のなかにある。まさしく『病院完結型』から地域で高齢者を支える『地域完結型』の典型例といえる」

「気分を変えて地方のコンパクトシティに移住」として、山崎氏は以下のように述べています。
「内閣官房の調査によれば、東京から地方移住を予定または検討したい人は約4割いるという。そこで、『日本創成会議』(座長・増田寛也元総務相、有識者による民間組織、2011年5月発足)は、人々が要介護になる前に、介護施設や医療機関に余裕がある地方に移り住むことを提案している。地方は高齢者の絶対数が減るため病院や介護施設のベッドや居室が余ってくるからだ。移住候補地として全国の41地域を挙げている」
 日本創成会議の推計によれば、2025年には東京圏で13万人分の介護ベッドが不足するといいます。

「障害者も高齢者も若者も子どもも『ごちゃまぜ』に共生」として、山崎氏は石川県金沢市の「Share(シェア)金沢」を紹介します。ここは、障害者も健常者も、若者も高齢者も、そこに住む人も、訪問者も、「分け隔てなく交わることができる」まちです。
「天然温泉・レストランなどが揃い地域コミュニティをはぐくむ街」なのです。 山崎氏は、「特筆すべきはお母さんたちのために産前・産後ケアの相談に乗る『子育て応援相談室』が設置されていること。ノーマライゼーションとソーシャルインクルージョンに同時に取り組むコンパクトタウンと言っていいだろう。2014年、都市・地域・コミュニティづくり分野でグッドデザイン賞を受けている。『ヒューマンスケールの街を創ることを目指した』ことが評価された」と述べています。
「行きたいところに行けますか」として、山崎氏は一家のように述べています。
「年をとって足腰が弱っても商店街、金融機関、駅、医療・福祉施設などには自分のペースで歩いていきたいものである。地域社会とはそういった距離感覚で生活する空間だったはずである。それが経済発展とともに拡大してきた。人が住む『領域』が暮らしの距離感覚を逸脱して広がってしまったのである。
 ところが、人口が減少に転じたのであれば、拡大しきった『領域』を縮小したほうが、暮らしやすく、効率的にもなる。ヒューマンスケールを基本にした空間づくりが求められるゆえんである。それは、住宅と生活サービス機能をコンパクト化しただけではすまない。高齢者の移動に便利な交通システムが今後ますます重要になる」

「スマートシュリンクをタウンマネジャーに託す」として、山崎氏は以下のように述べています。
「人口の減少と少子高齢化が同時に進む不可逆的な変化をかわしていけるのか、人類が初めて経験する壮大な実験に我が国は直面している。スマートシュリンク、すなわち賢く身の丈にあったサイズで暮らす方法を探すということは、かつて実施してきたように、住まい方のベースをコミュニティに置くことから始まる。それは、ヒューマンスケールのまちづくりに立ち還ることである」
 そして山崎氏は「韓国、台湾、中国など他のアジア諸国は、高齢化のフロントランナーである日本が進む道を注視している。高齢者の団塊が我が国を覆う2025年まで残された時間はわずかである」と述べるのでした。まったく同感です。

 第5章「地域の共同体マインドを共有する――重要な規範的統合」では、ジャーナリスト、老・病・死を考える会世話人の尾崎雄氏が、「パラダイムシフトを促す医療介護総合確保推進法」として、地域包括ケアについて述べています。
「『地域包括ケア』とは、保健・医療・介護・福祉、身の回りの手助けなどのサービスを包括的(一体的)に、かつシームレスに(切れ目なく)、必要とする人々に提供することだが、現状では、医療は医療保険が、介護は介護保険が、住民自身が行う近隣の助け合いや生活支援はNPOなどが・・・・・・といった具合に、手続きと費用を支払う窓口がバラバラである。頻繁に行われる制度改正や運用の変更によって、その複雑さが増し、『包括ケア』どころか『分断ケア』になっているのが実情だ。

「『死に場所づくり』は自治体の仕事」として、尾崎氏は『』斎藤芳雄著(教育史料出版会)という本の「私たちの仕事は、当然のことながら、住民の生きることを支えることである。しかし、それだけではない。同時に、住民の死をも保障しなければならないのである。『地域〈医療・保健・福祉〉(の整備)とは死に場所づくりのことなり」という言葉を紹介します。

「時代とともに変わるまちづくりの思想」として、東京・豊洲のニュータウンづくりや横浜市の「MM21」などを手掛けてきた小林重敬・横浜国立大学名誉教授(森記念財団理事長)の「明日のまちづくり」の考えが紹介されます。
「我が国で始まっている人口減少、市街地縮減は、これまでどの国も経験したことのないものになる可能性が高い。したがって、21世紀における新たな都市の状況変化を見据えて、あらたな都市づくりの仕組みを構築することは、我が国に課せられた国際的な課題ではないか」

 小林氏は「都市づくりにかかわる力」を3つに分けました。「行政によるコントロールの力(規制)」、「近隣社会によるコミュニティの力(協働)」と「民間企業によるマーケットの力(市場)」です。そうした3つの力が「どのような関係性を築くかによって都市づくりの仕組みは変わる」のです。そのうえで、小林氏は「近代都市計画の仕組みは、あくまでも行政によるコントロールの力を中心に置く仕組みであり、とくに我が国ではその色彩が強く、またコミュニティの力やマーケットの力とは個々に調整してきたにとどまってきた。そのため、近隣社会によるコミュニティの力、民間企業によるマーケットの力と協調して、都市づくりを新しい都市の状況に対応させてゆくものとする点では課題をかかえてきた」と述べるのでした。

「『日本創生』を担う『ヨソモノ、ワカモノ、バカモノ』」として、尾崎氏は「地域包括ケア」とは人が生まれてから死ぬまでを支える一連の社会サービスの仕組みを地域に創造する営みであるとし、その前提は、地域のステークホールダーを串刺しにして、そのまちならではのコミュニティマインドを醸成し、共有すること、つまり「規範的統合」であると指摘します。尾崎氏は「かつて、それをリードしてきたのは、カリスマ性を備えた首長や使命感にあふれた医師ら専門職だったが、今の人々が求めているのは、強烈な個性を備えたカリスマとは一味違った個性である。たとえば『ヨソモノ・ワカモノ・バカモノ』の出番だ」と述べるのでした。

 第6章「『ケア・コンパクトシティ』が日本を救う」では、本書の編著者である小黒氏が、「施設ケアか在宅ケアか、二者択一を超えて」として、「都市部での介護難民の急増問題、消滅危機に直面する自治体問題、巨額の債務を抱える財政問題。これら3つの問題を同時に解決する方法は限られているが、何も存在しないわけではない。解決の鍵を握るのは『ケア・コンパクトシティ』構想である」と喝破します。小黒氏は「本当に豊かな社会とは、年を取ったときの居場所と死に場所を、自分が必要な時に、家族構成やその状況に応じて、フレキシブルに施設も在宅も選択でき、必要なサービスを受けることができる社会である」とも述べています。

「日本版『ケア・コンパクトシティ構想』とは何か」として、小黒氏は以下のように述べています。
「『ケア・コンパクトシティ』とは、『地域包括ケアシステム』と『コンパクトシティ』を一体化した『まち』および『まちづくり』の手法を指す。すなわち、『まちづくり』や『エリアマネジメント』という視点を盛り込みつつ、医療・介護など生活に必要なサービスを、『コンパクトシティ』という集約的で質の高い住まいや、地域の空間の中で効率的かつ効果的に提供するという考え方だ。都市再構築戦略検討委員会(国土交通省)の表現を借りれば、『高齢者が出かけやすく、生きがいを感じられるまち』『歩きやすさを備えたまちづくり』である。『歩きやすさ』や『歩いて行ける範囲に』がコンパクトシティのキーワードになっている」
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「日経電子版」2015年6月23日



 これから日本は、「都市部で急増する後期高齢者と介護難民」「社会保障費の膨張に伴う財政危機」「人口減少に伴う地方消滅」という3つの大きな問題に直面します。その最大の解決策が「ケア・コンパクトシティ」であることは間違いないでしょう。
「ケア・コンパクトシティ」という考え方は、わたしが長年提唱し続けている「高齢者福祉特区」、ひいては「老福都市」という考え方とほぼ同じです。日本は「世界一の高齢化先進国」だそうですが、その日本でも最も高齢化が進行している政令都市が、わたしが住む北九州市です。北九州市は、高齢者が多いことを「強み」として、日本一、高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指すべきだと思います。
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「サンデー毎日」2017年9月24日号



 老福都市をつくる上で大事なポイントは「孤独死をしない」ということ。わが社を中心に年間700回以上開催されている「隣人祭り」をはじめとした多種多様な「隣人交流イベント」のノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築することが必要です。そうなれば、「北九州にさえ行けば、仲間もできて、孤独死しなくて済む」というふうになります。わが社がこれまでに蓄積してきたのは、まさに「ヒューマンウエア」のノウハウであり、その方法論は全国的に通用するものであると自負しています。

 拙著『老福論〜人は老いるほど豊かになる』(成甲書房)で、わたしは「人は老いるほど豊かになる」と訴えました。そのコンセプトに基づいて、高齢者が幸福に暮らせる「老福都市」というものをイメージし、そのモデルとして2004年に高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」を北九州市八幡西区に作りました。セレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題になりました。
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サンレーグランドホテル



「老い」と「死」に価値を置く施設であるサンレーグランドホテルが北九州市に誕生したことは多くの方々から評価されました。なぜなら、高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのものだからです。こういった考え方も、すべてドラッカーの「強みを生かす」という思想をベースにしています。ぜひ、全国の独居老人には、どんどん北九州に移住していただきたいです。 改元まで、あと32日です。