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人間関係を良くする17の魔法』

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No.1664


 29冊目の「一条真也による一条本」は、『人間関係を良くする17の魔法』(致知出版社)です。2009年1月30日に刊行された本です。

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人間関係を良くする17の魔法』(2009年1月30日刊行)

 

 本書の帯には、「お客さま」「家族」「友人」「ご近所」「会社」というワードの中心に「魔法を知るごとに 人と会うのが楽しくなる!」と書かれ、さらに「伝統と文化に基づく究極の"人間関係"」とあります。

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本書の帯

 

 アマゾンの「内容紹介」には、こう書かれています。
「家庭、学校、会社、地域社会等、人生にはすべて人間関係がつきものだが、いま多くの人が人間関係に悩んでいるといわれている。冠婚葬祭業やホテル業を営む著者は、人生の様々な場面に接し、人間関係を良くする具体的なスキルを磨いてきた。また、小笠原礼法にも造詣が深く、伝統文化に基づく人間関係向上のコツも習得してきた。本書では、『身だしなみ』『言葉遣い』『掃除』『志』等、多岐にわたる17の方法を紹介し、人間関係をスムーズにする多くのヒントを示している。いずれも歴史を伝統に基づく実績ある方法ばかり。 本書を読むほどに、人と会うのが楽しくなってくる。 人間関係を豊かにするために、最適の一冊」

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
はじめに「礼法という名の魔法にはじまる
「礼法という名の魔法について」
第1の魔法・・・身だしなみ
第2の魔法・・・立ち居振る舞い
第3の魔法・・・言葉遣い
第4の魔法・・・挨拶
第5の魔法・・・お辞儀
第6の魔法・・・思草
第7の魔法・・・会話
第8の魔法・・・笑い
第9の魔法・・・掃除
第10の魔法・・趣味
第11の魔法・・旅行
第12の魔法・・手紙
第13の魔法・・見舞い
第14の魔法・・祝い
第15の魔法・・祭り
第16の魔法・・感謝
第17の魔法・・
おわりに「ゆたかな人間関係が最高の贅沢である
「参考文献一覧」

 

 本書は、「魔法」についての本です。どういう魔法かというと、「人間関係を良くする魔法」です。多くの人々が人間関係に悩んでいます。
 わたしたちが生きる社会において、最大のキーワードは「人間関係」ではないでしょうか。社会とは、つまるところ人間の集まりです。そこでは「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。

 

 そもそも「人間」という字が、人は1人では生きてゆけない存在だということを示しています。人と人との間にあるから「人間」なのです。だからこそ、人間関係の問題は一生つきまといます。夏目漱石の『草枕』には、「智に働けば角がたつ。情に棹されば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかく人の世は住みにくい」という言葉が冒頭に出てきますが、これは人間関係の難しさを見事に表現しています。

 

 さて、わたしは冠婚葬祭の会社を経営しています。冠婚葬祭の根本をなすのは「礼」の精神です。では、「礼」とは何でしょうか。それは、2500年前に中国で孔子が説いた大いなる教えです。平たくいえば、「人間尊重」ということです。わたしは、人類が生んだあらゆる人物の中で孔子をもっとも尊敬しています。孔子こそは、人間が社会の中でどう生きるかを考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」といえるのではないでしょうか。

 

 そのような考えを著書などで述べていたところ、北陸大学「孔子学院」の開学記念講演の講師として2006年8月に招かれ、2008年4月からは同大学の未来創造学部の客員教授として、「孔子研究」の授業を6年間にわたって担当させていただいきました。中国人留学生を含む学生さんたちに「礼」の精神を説くことは、わたし自身、大変良い勉強となりました。何よりも、尊敬する孔子の教えを若い方々の前で話ができたことに心から感謝しています。

 

 さて、わが社では、「人間尊重」を大ミッションに、「冠婚葬祭を通じて良い人間関係づくりのお手伝いをする」を小ミッションに定めており、全社員がいつも「良い人間関係づくり」について考え、行動しています。具体的には、独身の若者や1人暮らしのお年寄り同士を紹介し合ったり、カルチャー教室を運営したり、旅行やイベントを企画・開催したり、さらには話題の隣人祭りを開くお手伝いなどをしています。

 

 もちろん本業がホスピタリティ・サービスの提供ですので、わが社では、お客様を大切にする「こころ」はもちろん、それを「かたち」にすることを何よりも重んじています。会社からの教育や指導はもちろん、社員各自も日々の鍛錬に努めています。こうしたサービス業としては当たり前のことが、一般の方々の「良い人間関係づくり」においても、きっと何かのヒントになるのではないかと思います。

 

「良い人間関係づくり」のためには、まずはマナーとしての礼儀作法が必要となってきます。日本における礼儀作法は、武家礼法であった小笠原流礼法がルーツとなっています。わたしは学生時代より小笠原流礼法第32代宗家の小笠原忠統先生、および父でもある実践礼道小笠原流の佐久間禮宗会長から礼法を学んできました。26歳のときに、小笠原先生から免許皆伝を許されました。

 

 小笠原流礼法などというと、なんだか堅苦しいイメージがありますが、じつは人間関係を良くする方法の体系にほかなりません。小笠原流礼法は、何よりも「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心を大切にしています。これらは、そのまま人間尊重の精神であり、人間関係を良くする精神なのです。また、小笠原流礼法以外にも人間関係を良くするさまざまな魔法がこの世には存在します。本書では、「いいとこ取り」の精神で多くの魔法を集めてみました。

 

 フランスの作家サン=テグジュペリは、名著『人間の土地』に、「真の贅沢というものは、ただ1つしかない、それは人間関係の贅沢だ」と書いています。飛行機の操縦士だった彼は、サハラ砂漠に墜落し、水もない状態で何日も砂漠をさまようという極限状態を経験しています。そこから、水が生命の源であることを悟り、『星の王子さま』に「水は心にもよい」という有名な言葉を登場させたのです。

 

 一条真也の新ハートフル・ブログ『世界をつくった八大聖人』で紹介した著書で、わたしは、ブッダ、孔子、老子、ソクラテス、モーセ、イエス、ムハンマド、聖徳太子といった偉大な聖人たちを「人類の教師たち」と名づけました。彼らの生涯や教えを紹介するとともに、8人の共通思想のようなものを示しました。その最大のものは「水を大切にすること」、次が「思いやりを大切にすること」でした。

 

「思いやり」というのは、他者に心をかけること、つまり、キリスト教の「愛」であり、仏教の「慈悲」であり、儒教の「仁」です。そして、「花には水を、妻には愛を」というコピーがありましたが、水と愛の本質は同じではないかと、わたしは書きました。興味深いことに、思いやりの心とは、実際に水と関係が深いのです。

『大漢和辞典』で有名な漢学者の諸橋徹次は、かつて『孔子・老子・釈迦三聖会談』(講談社学術文庫)という著書で、孔子、老子、ブッダの思想を比較したことがあります。そこで、孔子の「仁」、老子の「慈」、そしてブッダの「慈悲」という3人の最主要道徳は、いずれも草木に関する文字であるという興味深い指摘がなされています。

 

 すなわち、ブッダと老子の「慈」とは「玆の心」であり、「玆」は草木の滋(し)げることだし、一方、孔子の「仁」には草木の種子の意味があるというのです。そして、3人の着目した根源がいずれも草木を通じて天地化育(てんちかいく)の姿にあったのではないかというのです。儒教の書でありながら道教の香りもする『易経』には、「天地の大徳を生と謂う」の一句があります。物を育む、それが天地の心だというのです。

 

 考えてみると、日本語には、やたらと「め」と発音する言葉が多いことに気づきます。愛することを「めずる」といい、物をほどこして人を喜ばせることを「めぐむ」といい、そうして、そういうことがうまくいったときは「めでたい」といい、そのようなことが生じるたびに「めずらしい」と言って喜ぶ。これらはすべて、芽を育てる、育てるようにすることからの言葉ではないかと諸橋徹次は推測するのです。そして、「つめていえば、東洋では、育っていく草木の観察から道を体得したのではありますまいか」と述べています。

 

 東洋思想は、「仁」「慈」「慈悲」を重んじました。すなわち、「思いやり」の心を重視したのです。そして、芽を育てることを心がけました。当然ながら、植物の芽を育てるものは水です。思いやりと水の両者は、芽を育てるという共通の役割があるのです。思いやりが水なら、本講で紹介した17の魔法は、いずれも早く芽を出して大きく草木を育てる養分です。そして、その草木の名前は「人間関係の木」というのです。

 

「GNH」という言葉をご存知でしょうか。グロス・ナショナル・ハピネス、つまり、「国民総幸福量」という意味です。ブータンの前国王が提唱した国民全体の幸福度を示す尺度です。「GNP(国民総生産)」で示されるような「物質的ゆたかさ」を求めるのではなく、「精神的ゆたかさ」、すなわち「幸福」を求めるべきであるという考えから生まれたものです。

 

 ブータンは経済的、物質的には世界でも最も貧しい国の1つですが、国民のなんと9割以上が「自分は幸福だ」と感じているといいます。世界で唯一のチベット仏教を国教とする国であり、葬儀を中心とした宗教儀礼が非常に盛んなことで知られます。そのせいか、ブータンの人々は良い人間関係に恵まれているようです。人間関係の良好さが幸福感に直結することはよく理解できます。まさに、ゆたかな人間関係は最高の贅沢なのですね。

 

 わたしは、どんなにお金や社会的地位や健康に恵まれていても、人間関係に恵まれなければ、その人はやはり不幸だと思います。離婚や自殺だけでなく、いじめ、虐待、殺人、テロ、戦争...世界は深刻な問題にあふれています。まるでハートレス・ソサエティという「心なき社会」に向かっているようにも見えます。わたしたちは、それをハートフル・ソサエティという「心ゆたかな社会」へと進路変更させなければなりません。

 

 かつて、フランスの文化相も務めた作家のアンドレ・マルローは「21世紀はスピリチュアリティの時代である」と述べました。多くの識者もその見方に賛同しています。「スピリチュアリティ」というのは「精神性」とでも訳すべきでしょうが、最近の日本では「スピリチュアル」というよく似た言葉が流行しています。この言葉も本来は「精神的な」といったふうな意味なのでしょうが、どうも「スピリチュアルカウンセラー」などと自称する一部の人間の影響で、霊能力と関連づけられることがほとんどです。

 

 わたしは、心ゆたかな社会とは、決して霊能力に関心が集まる社会ではないと思います。それどころか、安易なオカルト・ブームは、健全な社会にとってきわめて危険であるとさえ思っています。孔子が「怪力乱神を語らず」と述べたことを忘れてはなりません。本当に大切なのは、「霊能力」ではなくて、「礼能力」ではないでしょうか。これは、わが文通相手である宗教哲学者の鎌田東二氏の造語ですが、他者を大切に思える能力、つまり、仁や慈悲や愛の力のことです。

 

 結局、人間関係を良くすることはもちろん、心ゆたかな社会をつくるための最大のカギこそ、わたしたちの礼能力ではないでしょうか。相手への「思いやり」の心くらい大切なものはありません。サン=テグジュペリが墜落してさまよった砂漠そのもののような渇いた現代社会。そこに「思いやり」という水を撒(ま)き、ぜひ、本書に紹介されている17の魔法を存分にお使いいただきたいと思います。そして、あなたの人間関係の木を大きく育てていただければ、これ以上の喜びはありません。

 17という魔法の数にも意味があります。かつて聖徳太子が制定した「十七条憲法」にならっているのです。聖徳太子は「いいとこどり」の精神で、神道、仏教、儒教、道教の思想を見事に17条にまとめました。わたしも、本書では「いいとこどり」の精神で、人間関係を良くする魔法を集めてみました。すると、ちょうど17になったわけです。わたしの父は「国に憲法、人に礼法」という言葉をよく口にしますが、本当にその通りだと思います。
 わたしは何よりも月が大好きなのですが、初めての「隣人祭り」に参加した夜、見事な満月をながめることができました。「あの満月のように、すべての人々の人間関係が円満でありますように」と願って、本書を書きました。