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恐怖小説 キリカ』

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No.1644


『恐怖小説 キリカ』澤村伊智著(講談社)をご紹介します。一条真也の新ハートフル・ブログ『ぼぎわんが、来る』で紹介した日本ホラー小説大賞受賞作でデビューを果たしたホラー界の新星の長編小説です。
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本書の帯

 表紙カバーには不気味な女性のイラストが描かれ、帯には、以下のように書かれています。
「本当にごめんなさい。日本ホラー小説大賞は、ついうっかり『本物』を世に出してしまいました。――貴志祐介」「『ぼぎわんが、来る』、『ずうのめ人形』の澤村伊智が、スティーヴン・キングの傑作ホラー『ミザリー』に挑む」
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本書の帯の裏

 また、帯の裏には「人間が一番怖い――。」と大書され、続けて、「あなたの日常を侵食する究極のサイコ・サスペンス!」として、以下のように書かれています。
「ホラー小説の新人賞を獲得し、僕は出版に向けて準備をはじめた。隣には支えてくれる最愛の妻・キリカ。順風満帆な日々が続くと思われたが、友人の一人が『作家とは人格破綻者である』『作家は不幸であるべき』と一方的な妄想を僕に押し付け、嫌がらせをはじめる。ストーカー行為、誹謗中傷の手紙、最悪の贈り物。やがて不幸(ミザリー)は、僕とキリカのとある『秘密』を暴き出すが――」

 この小説、とても面白くて一気に読み終えたのですが、著者の筆力に感心しながらも、正直言って「惜しいなあ」とも思いました。『ぼぎわんが、来る』『ずうのめ人形』に続いて書いた第3作ということですが、前2作と同じく3部構成になっています。この著者の小説、最初の第1章はものすごく面白くてページを繰るのももどかしいのに、第2章で少し中だるみして、第3章で「あ~あ」となる......それが3冊とも共通しています。第1章のテンションで最後まで書ききったら、途方もない傑作になるのに惜しいですね。なお、本書の文体は前2作とまったく違うスタイルでした。著者は、なかなか器用な人ですね。

 帯にも書かれているように、本書はスティーヴン・キングの『ミザリー』を意識して書かれたそうです。『ミザリー』は1987年に発表された長編小説で、女性主人公の人生を描く『ミザリー』シリーズで有名なベストセラー作家ポール・シェルダンが主人公です。シェルダンは『ミザリー』シリーズにピリオドを打ち、新たな小説『高速自動車』の原稿を手に、西を目指し車を走らせていました。途中雪嵐に見舞われ、誤って崖から転落し重傷を負った彼は、通りがかった元看護師のアニー・ウィルクスに救出されます。そして、人里離れた彼女の家で治療を受けるのでした。

 アニーは『ミザリー』の熱狂的ファンで、発売されたばかりのミザリーシリーズの最終巻『ミザリーの子供』の結末に納得せず、新作小説を破棄した上で続編を書き下ろすことをシェルダンに強要します。大雪で半ば隔離され、ケガで身動きの取れない閉鎖的な状況の中、アニーの異常性が徐々に露わになるという怖い物語です。キング自身の体験に根ざす"ファン心理の恐ろしさ"を極限まで追求したこの小説は、1990年にロブ・ライナー監督でされ、映画化主演のキャシー・ベイツがアカデミー主演女優賞を受賞しました。

 しかしながら、『ミザリー』と本書『恐怖小説 キリカ』の物語はそれほど似てはいません。第1章の一部に、小説家がストーカーに狙われるエピソードが登場しますが、その程度です。ともにサイコ・ホラーではあるのですが、本書の恐怖のほうが少々ヒネリが効いていると言えます。

 それにしても、小説家の苦労というものはよく描けています。原稿を本にするまでの修正作業に初校、再校、著者校などなど......わたしにはお馴染みの出版物の刊行行程などが詳しく説明されているので、作家志望の人には勉強になるのではないでしょうか。最後に、ネットに本の低評価レビューを書いたら、その投稿者を探し当てて殺しに来る作家という設定は驚きました。これが一番怖かったですね。