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などらきの首』

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No.1643


『などらきの首』澤村伊智著(角川ホラー文庫)を読みました。一条真也の新ハートフル・ブログ『ぼぎわんが、来る』『ずうのめ人形』『ししりばの家』で紹介した小説と同じく霊能者の比嘉姉妹が活躍する「比嘉姉妹シリーズ」の最新作ですが、こちらは長編の前2作と違って短編集となっています。

 カバー裏表紙には、以下の内容紹介があります。
「『などらきさんに首取られんぞ』祖父母の住む地域に伝わる"などらき"という化け物。刎ね落とされたその首は洞窟の底に封印され、胴体は首を求めて未だに彷徨っているという。しかし不可能な状況で、首は忽然と消えた。僕は高校の同級生の野崎とともに首消失の謎に挑むが......。野崎の初めての事件を描いた表題作に加え、真琴と野崎の出会いや琴子の学生時代などファン必見のエピソード満載、比嘉姉妹シリーズ初の短編集!」

 本書には「ゴカイノカイ」「学校は死の匂い」「居酒屋脳髄談義」「悲鳴」「ファインダーの向こうに」「などらきの首」の6つの短編小説が収められています。ミステリの色合いが強い「悲鳴」を除いては、どれもわたし好みのホラー短編でした。特に、「居酒屋脳髄談義」には哲学小説とも呼べるような不思議な味わいがありましたね。心霊写真をテーマにした「ファインダーの向こうに」も恐怖と郷愁がほどよくミックスされており、ちょっとブラッドベリを連想しました。

 しかしながら、本書の白眉はなんといっても表題作の「などらぎの首」です。比嘉姉妹シリーズの主要キャラであるオカルトライターの野崎の学生時代の物語ですが、日本の土俗的な伝奇ロマンをファンタジー風に味つけした作品でした。比嘉姉妹シリーズでは、著者は「ぼぎわん」、「ずうのめ」、「ししりば」といった、得体の知れない単語を駆使し、独特の恐怖や不安を醸成していますが、この「などらき」も同様です。この著者の言語センスは、クトゥルー神話のH・P・ラヴクラフトを連想させます。

 最後に、著者は大の怪奇小説好き、怪談好きとのことですが、特に岡本綺堂の怪談を好むそうです。綺堂といえば、「西瓜」という有名な怪談があります。昭和7年2月4日刊行の『文学時代』に発表されたもので、現在では、ちくま文庫の『岡本綺堂集』に収録されています。「西瓜」では、主人公が西瓜を買って帰る途中、呼び止められて包みを開けると女の生首が出てくるという変事が起きます。この生首をいったん風呂敷にしまって再度開けてみると、また元の西瓜に戻ってしまいます。その後も西瓜は生首になったと思えばまた西瓜になることを繰り返すのでした。結局、見間違いかもしれないから西瓜を断ち割ってみようということになるのですが......今思い出してもゾッとする怖い話でした。綺堂好きの澤村氏が書いた「などらきの首」でも西瓜が重要な役割で登場するのですが、これはきっと綺堂の「西瓜」へのオマージュではないかと思いました。