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「為政三部書」に学ぶ』

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No.1639


 一条真也です。一条真也の読書館『面白いぞ人間学』を書いたとき、同書で取り上げた101冊の本のうち、まだブログや読書館で紹介していないものが多いことに気づきました。そのすべてをブログで紹介し直すわけにはいきませんが、何度読み返しても色褪せない名著だけは遅まきながら取り上げたいと思います。

 今回は、『「為政三部書」に学ぶ』 安岡正泰著(致知出版社)をご紹介します。「出処進退の人間学」というサブタイトルがついています。著者は、「昭和の碩学」として名高い安岡正篤の次男です。縁あって日本通運で会社員人生を送りましたが、初めて地方の支店長を命ぜられて赴任したとき、不安な焦燥感に駆られたそうです。その感情を取り除いたのが『為政三部書』でした。

 同書は、昭和13年、満州事変から日華事変へと発展してゆく日本の前途を憂慮した安岡正篤が政・官・財の指導者に警鐘を鳴らすため、中国元朝の名臣・張養浩の『三事忠告』を訳注して『為政三部書』と改題して出版したものです。

 張養浩が王道政治を説いた刮目の警告書です。
 内容は「廟堂(大臣)忠告」「風憲(法務観察)忠告」「牧民(地方長官)忠告」の三部から構成され、それぞれの任務に就いたときの心得が彼の実体験をとおして書き綴られています。そこには誠実な国への想い、民衆への想い、そして深い見識が込められており、読む者の胸を打ちます。

 安岡正篤ほどの「人間学の達人」が初めて読んだときに感激したのも納得できる名著です。さらには、指導者としての出処進退、特に「退」という、晩年の名節を汚さないための人間的な処し方が忠告されています

 著者は、会社員生活を終えた後、この書にも書かれている「務めを終えて仕事から離れることは重荷を背中から取りおろすことである」という意味の一文をしみじみと味わったといいます。
 本書には、帝王学の第一人者の子として生まれ、自らは良き会社員として任を全うした著者の人生そのものが反映していると言えるでしょう。本書を読んで、わたしは安岡正泰という方に強い興味を抱きました。