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不倫のオーラ』

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No.1630


『不倫のオーラ』林真理子著(文藝春秋)を読みました。「週刊文春」2017年1月19日号~2018年1月4日・11日号に掲載された著者の連載エッセイ「夜ふけのなわとび」を単行本化したものです。
 著者は1954年山梨生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍。82年エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』がベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で第94回直木賞を受賞。95年『白蓮れんれん』で第8回柴田錬三郎賞、98年『みんなの秘密』で第32回吉川英治文学賞を受賞。現代小説、歴史小説、エッセイで活躍しており、NHK大河ドラマ「西郷どん」の原作者でもあります。

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本書の帯

 本書の帯には「美貌も度胸も権力もすべて得た女たちはどこに向かうのか!?」「芸能人・政治家のスキャンダルはなぜ続く」「トランプの妻vsマクロンの妻」「SMAP解散にハラハラ」「ダイエットの真実」「『週刊文春』大人気エッセイ最新刊!」と書かれています。帯の裏には、「大河ドラマ『西郷どん』でさらに加速! 最先端がわかる名エッセイ」と書かれ、エッセイの一部が引用されています。

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本書の帯の裏

 アマゾンの「内容紹介」には「バカなことをやる時は、死のものぐるいで!!」として、以下のように書かれています。
「還暦を過ぎても『威厳を持たず、ちゃらいおばさん』をモットーに、パンチパーマの鬘に金のネックレスをつけ、死ぬ気でピコ太郎のダンスを踊る。トランプ大統領の誕生、SMAP解散にハラハラしながらも、ついに人生の喜び・オペラの作家として舞台づくりに参加する。美貌の政治家・女優の相次ぐ不倫スキャンダル、小池都知事について鋭く読み解き、母の死を静かに悼む。時代の最先端を走り続けて衰えを見せない唯一無二の存在、原作執筆の大河ドラマ『西郷どん』放送にむけてますますパワーアップ。 元気がでる人気ご長寿エッセイ、最新刊」

「週刊文春」2017年1月19日号~2018年1月4日・11日号に掲載された著者の連載エッセイ48編を単行本化したものです。「週刊文春」といえば、芸能人の不倫への文春砲で有名ですが、本書でも「不倫」をテーマとしたエッセイが多いです。たとえば「下界に降りてくる」というエッセイでは、著者は元「SPEED」の今井絵里子や女優の斉藤由貴の不倫スキャンダルを取り上げ、二人の相手が芸能人でないことを指摘して以下のように述べます。
「少年の時、大好きでたまらなかったスター。その人とひょんなことから知り合い、近しい関係になった。手を伸ばせば届きそうなところまでいった。
手を伸ばした。
手ごたえがあった。
その時の男の人の気持ちというのはどうだろう。もう嬉しくて嬉しくてたまらないはず。学生結婚した妻に『別れてくれ』ぐらいのことを言ってしまうだろうなあ。
そりゃあ不倫はいけないことだし、奥さんにそんな仕打ちをするなんて言語道断だ。しかし、小説家としては気持ちは充分わかるのである」

 また、著者は以下のようにも述べています。
「そうそう、今井さんのお相手は歯医者さんで、斉藤さんの方もお医者さんであった。子どもの時からうんとお勉強していた二人。そして大人になってから現れた、かつての憧れの人。
テレビやグラビアでしか見たことがなかった女性が、今、目の前にいる。自分のことを慕ってくれている。この奇跡は、今まで努力してきた自分への褒美だと考えても何の不思議もない。
そう、そう、松田聖子ちゃんのお相手も歯医者さんだっけ。彼女の場合も、今井さんと同じパターンだったはずであるが、頭のいい彼女は、うまく時間をずらしてしまった。結婚を発表する前に、相手の男性を別れさせているはずだ」

「和食の魅力」というエッセイでは、バブル時代に流行したフレンチ・レストランでのデートが鳴りをひそめているいることを指摘する著者は、当時、ホイチョイ・プロなどが「女性を口説くなら絶対にフレンチ。あの長さがそれに適している」と断定していたことを紹介します。そして、以下のように述べるのでした。
「いま、若い男性の覇気も性欲も下がるばかり。フレンチを食べながら女性を口説くというのは、かなり体力と気力がいることであろう。しかしちょっと前まで男性の多くは頑張ってやってきたことだ。それがしんどいと皆が感じた頃から、日本の少子化は始まったのではないだろうか。若いコたちは背伸びせずに、みんな居酒屋へ行く。それもお酒を飲まず、だらだらと料理を食べる。あれも和食のうちに入るかな」

 本書には、もちろん不倫や恋愛以外の話題も登場します。「桃畑で」というエッセイでは、山梨へと向かう中央線のグリーン車内で車内販売のコーヒーを飲みながら、著者は読書をするのですが、こう書いています。
「私の至福のひとときだ。読みかけの村上春樹さんの『騎士団長殺し』、読んでいるうちに胸がドキドキする。この方の文章のうまさというのはプロだからこそわかるところがいっぱい。簡潔でいて、次の出来ごとを予感させる波瀾を含んでいる。構文のなめらかさ、リズムのつくり方、自然に投入される比喩......なんかもうすご過ぎる。ただ感嘆するのみ」

 たしかに、一条真也の読書館『騎士団長殺し』で紹介した村上春樹氏の小説は面白かったです。読みながら大いにコーフンしました。そういえば、かつてエッセイ本でもコーフンしたことがありました。林真理子氏のデビュー作にして出世作である『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(主婦の友社、角川文庫)を読んだときです。その文章のうまさ、ユーモアのセンスには唸りました。わたしは自分のことを「プロ」と呼ぶのはちょっと気が引けますが、物書きの端くれだからこそわかる著者の上手さを本書の端々からも感じました。