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the four GAFA』

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No.1622


「GAFA」が今年の流行語大賞にノミネートされましたね。今回は、発売1週間で10万部を突破した話題の書『the four GAFA』スコット・ギャロウェイ著、渡会圭子訳(東洋経済新報社)を紹介します。Google、Apple、Facebook、Amazonの四大テクノロジー企業についての書で、サブタイトルは「四騎士が創り変えた世界」です。著者は、ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教えています。連続起業家(シリアル・アントレプレナー)として9つの会社を起業。ニューヨーク・タイムズ、ゲートウェイ・コンピューターなどの役員も歴任しています。

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本書の帯

 本書の帯には「Google、Apple、Facebook、Amazon」「激変を預言した著名教授が断言。次の10年を支配するルール」「米国話題のベストセラー! 22カ国で続々刊行!」と書かれています。

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本書の帯の裏

 また、帯の裏には「GAFAが生み出した『新ルール』とは」として、以下のように書かれています。
「崇高なビジョン」を掲げる
「利益」はいらない
法律は「無視」できる
競争相手は「資金」で踏みつぶす
人間の「本能」を刺激する
ほとんどの人は「農奴」になる......など

 さらに、カバー前そでには「Google、Apple、Facebook、Amazon――GAFA」として、以下の本書の三大テーマが紹介されています。
●彼らはなぜ、これほどの力を得たのか
●彼らは世界をどう支配し、どう創り変えたのか
●彼らが創り変えた世界で、僕たちはどう生きるか

 アマゾンの本書のページでは、【各所から絶賛の声が続々! 】として、以下のコメントが紹介されています。
「スコット・ギャロウェイは正直者で、クソ野郎で、挑発的だ。逃げるか戦うか、これほど選択を迫られる本はない。本書はあなたの『世界を見る眼』を書き換えるだろう」――カルヴァン・マクドナルド(セフォラCEO)、「わずか4つの企業がどのように世界を創り変えているか。本書はそれを明らかにする。今まさに起きている変化に、私たちは気づいていない。あなたは困惑するかもしれない。しかし一刻も早くこの変化を知るべきだ」――セス・ゴーディン(『「新しい働き方」ができる人の時代』著者)、「スコット・ギャロウェイは知的で思慮深く、皮肉屋でありながらユーモアにも溢れている。要は『読者を魅了する天才』である」――ジョアン・トンブラコス(ハフィントンポスト)、「知識を得られる本はある。読んで楽しい本もある。本書はその両方を満たす、きわめて稀な一冊だ」――ジョーナ・バーガー(『インビジブル・インフルエンス 決断させる力』著者)

本書の「目次」は、以下の構成になっています。
第1章 GAFA――世界を創り変えた四騎士
第2章 アマゾン――1兆ドルに最も近い巨人
第3章 アップル――ジョブズという教祖を崇める宗教
第4章 フェイスブック――人類の1/4をつなげた怪物
第5章 グーグル――全知全能で無慈悲な神
第6章 四騎士は「ペテン師」から成り上がった
第7章 脳・心・性器を標的にする四騎士
第8章 四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
第9章 NEXT GAFA――第五の騎士は誰なのか
第10章 GAFA「以後」の世界で生きるための武器
第11章 少数の支配者と多数の農奴が生きる世界
「謝辞」「注」「図表出所」

 まず、四騎士というのは「ヨハネの黙示録」の四騎士を指します。地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威」を与えられているとされます。その四騎士に例えられているのがGAFAです。ということは、著者はGAFAが人類を滅亡させると考えているのでしょうか。
GAFAの各自の性質については、このように表現されています。
【Google】
彼はあらゆる質問に答えてくれる。そして私たちの「心の奥底の秘密」を暴く。私たちの思考は彼に既定され、やがて支配される。
【Apple】
私たちは「美」に惹かれ、彼に近づく。しかしそれは「イケている自分」の演出にすぎない。そして彼の献金箱は巨万の富で満たされる。
【Facebook】
彼は「認められたい」という私たちの渇望を利用し、人間関係のすべてを晒させる。彼はそれを記録し続け、私たちは丸裸にされる。
【Amazon】
「楽をしたい」という私たちの本能を、彼は存分に満たしてくれる。気付けばもう、私たちは彼なしでは生きられない。

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さまざまな会議で本書を紹介

 第1章「GAFA――世界を創り変えた四騎士」の冒頭は、こう書かれています。
「テクノロジー業界の四強といえば、誰もがグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを思い浮かべるだろう。これらの巨大企業は過去20年間、歴史上かつてないほどの喜びや人間同士のつながり、あるいは経済的な繁栄や発明を私たちにもたらしてきた。その過程では何万という高給な仕事も生み出している。これら四強企業の製品やサービスは互いに関わり合いながら、何十億もの人々の日常生活を支えている。
 ポケットサイズのスーパーコンピュータをつくったのも、発展途上国にインターネット網を持ち込んだのも、地球の大陸と海の詳細な地図をつくっているのも、これらの企業だ。これら四強企業が生み出した空前の額の富(2兆3000億ドル)は、株式を保有している世界中の何百万という家計を潤している。これらの企業は、世界をより豊かな場所にしているのだ」

 一方、GAFAにはネガティブな評価もあります。
「売上税を払うのを拒否し、従業員の待遇が悪く、何万という仕事を消滅させながら、事業革新の神と崇められている小売業者。
国内のテロリズムについての情報を連邦政府の捜査にも提供せず、その思想に共鳴する宗教じみた熱狂的ファンに支えられるコンピュータ企業。
あなたの子どもたちの何千枚もの写真を分析し、携帯電話を盗聴器として活用し、その情報をフォーチュン500企業に売りつけるソーシャル・メディア企業。
メディアで最も実入りのいい検索分野で90パーセントのシェアを占めながら、せっせと訴訟とロビー励んで、独占禁止法の適用を逃れている広告配信プラットフォーム。こうしたマイナスの評価は世界中から聞こえてくるが、その声のトーンは抑えられている」

 無敵のGAFAのライバルはGAFA自身です。「対立がもたらすバランス」として、著者は「四騎士はビジネスや社会、地球にきわめて大きな影響を与えている。もはや政府や法律でさえ、これら四騎士の快進撃を止めるには無力なように見える。しかし四騎士自身の対抗心の中にこそ、安全装置が組み込まれているようだ。四騎士が互いを憎んでいるのは明らかだ。いまや彼らはそれぞれの分野では敵なしの状態になり、四騎士同士が直接ぶつかあり合っている」と述べています。

 その四騎士同士のぶつかり合いが詳しく紹介されます。
「グーグルはブランド時代の終焉を示唆し、検索を武器に、もうブランドにこだわる必要はないとばかりにアップルを攻撃している。そのアップルも、音楽と映画でアマゾンに対抗している。
アマゾンはグーグルにとって最大の顧客だが、検索についてはグーグルにとっての脅威でもある。何かの商品をさがしている人の55パーセントが、まずアマゾンで調べているのだ(グーグルを使う人は28パーセント)。
アップルとアマゾンは私たちの目の前のテレビ画面やスマホ画面で正面からぶつかり合っている。グーグルとアップルは私たちの時代の象徴とも言えるスマホのオペレーティング・システムをめぐって戦っている」

 さらには、以下の仁義なき戦いが紹介されています。
「Siri(アップル)とアレクサ(アマゾン)が音声認識の闘技場に入場した。2つの『声』のいずれかが、敗北して闘技場を去ることになる。
ネット広告の領域では、フェイスブックがデスクトップからモバイルに完全にシフトして、グーグルからシェアを奪っている。
そしてこれからの10年でより多くの富を生み出しそうなテクノロジーであるクラウドでは、アマゾンとグーグルが接戦を繰り広げている。世界ヘビー級タイトルマッチの伝説の一戦、モハメド・アリ対ジョー・フレージャーを見ているようだ」

 第2章「アマゾン――1兆ドルに最も近い巨人」では、「アマゾンの本質」として、著者は述べています。
「アマゾンが訴えかけるのは、より多くのものをできるだけ楽に集めようとする我々の狩猟採集本能だ。我々はものに強く惹かれる性質を持っている。洞穴に住んでいた大昔から、いちばん多く枝を集め、実を割るのに具合のよい石を持ち、『いつ穀物を植えるか、どのような動物が危険か』を子孫に伝えるため壁に絵を描けるきれいな色の泥を持っている者が、生き残る可能性が高かったからだ」

 アマゾンが多くの書店を消滅させてきた事実は有名ですが、今後はあらゆる小売店を消滅させる存在となります。著者は以下のように述べます。
「アマゾンは小売りのサタンとなり、同じセクターの別の企業と業績が反比例するという、他に類を見ない立場にある。一般的に、同じセクターの企業の株式は同じ方向へと変化する。互いに同調するのだ。
しかし、それが変わってしまった。いま株式市場はこう見ている。アマゾンにとってよいことは小売業にとって悪いことであり、逆もまた真であると。ビジネス史上このようなことはかつてなかった。
そしてそれは自己実現的な矛盾となり、アマゾンの資本コストは、ほかが増加している中で減少している。現実がどうあれ、10倍の掛け金でポーカーをしているアマゾンが勝者となるだろう。アマゾンは他のすべての企業を、ゲームの土俵からひきずり下ろすことができる」

「ゼロ・クリック・オーダーへの野心」では、レジのないコンビニエンス・ストア「アマゾン・ゴー」や円柱形の「アマゾン・エコー」などを紹介して、それらの誕生によって、アマゾンが全面的にクリックなしの注文へと向かっていることがはっきりしたとして、著者は「アマゾンはまもなく消費者の意思決定や注文という作業なしに、物質的な欲求を自動的にすくい上げ、満たしてくれるようになるだろう。ビッグデータと消費者の購買パターンについての知識をさらに深めれば、それが可能になるのだ」と述べています。
 著者は、この概念を「プライム・スクエアド(プライム2乗)と呼びます。何も触れずに買い物ができるという方向へのアマゾンの徹底した取組み、投資家向け広報活動のうまさ、B2B(法人向けのプラットフォーム・サービス)への投資の決定などにより、アマゾンは1兆ドル企業へのレースでスタート地点の最前列を確保したといいます。

 このようにアマゾンは次々に新たな挑戦を試みていますが、著者は「挑戦を支えるアメリカ文化」として、以下のように述べています。
「並はずれた富を持つ人には共通点がある。それは失敗だ。彼らはたいてい、明らかな失敗を経験している。
富への道はリスクが満載で、そのリスクが結局・・・・・・いや、とにかく危険なのである。頭にボールがぶつかって倒れても立ち上がり、ズボンの汚れを払い落し、バッターボックスに立って次はもっと思い切りバットを振るよう励ましてくれる社会。それこそ、億万長者を量産するための秘伝のソースだ。
アメリカの破産法は他国に比べるととても寛大だ。そのためリスクを恐れない人が引き寄せられ、大方の予想どおり、その大半が受け入れられる。世界で最も裕福な50人のうち29人はアメリカに住み、ユニコーン(時価総額が10億ドル以上の非上場ベンチャー企業)の3分の2は本社をアメリカに置いている」

 急成長を続けるアマゾンのビジネスモデルについて、著者は以下のように述べています。
「アマゾンはeコマースの売上高で優位を占めているが、そのビジネスモデルは簡単に再現・維持できるものではない。アマゾンが初めて黒字になったのは設立から7年後の2001年の第4四半期で、それ以降も赤字と黒字を行ったり来たりしている。このことは最近では忘れられがちだ。
この数年間は、アマゾンはそのブランド価値で商売し、借入金を利用して他のもっと儲かる事業へと手を広げている。振り返ると、アマゾンの小売りのプラットフォームは、周囲との関係とブランドを築き、のちにそれで儲けるためのトロイの木馬だったのかもしれない」

 そして、「1兆ドルへの競争」で、著者は述べます。
「いまや機は完全に熟した。アマゾンはゼロ・クリック注文への条件をすべてそろえている。AI,購入履歴、全米人口の45パーセントの住居20マイル以内にある倉庫、何百万ものSKU(在庫管理単位)、アレクサ、最大のクラウド/データ・サービス、460(まもなく何千にもなる)もの実際の店舗、そして世界で最も信頼されている消費者ブランド。これらが、アマゾンが最初に時価評価額1兆ドルを達成する企業になると考えられる理由だ」
 フェイスブックとグーグルはメディアを、アップルは電話を支配しています。そしてアマゾンは小売業界を制覇しようとしているのです。

「大物が負け組みになる」では、小売業はメディアや電話よりもはるかに大きなビジネスであり、アマゾンが独り勝ちすれば多くの負け組が生まれることを指摘し、著者は以下のように述べます。
「最大の負け組はどこか。答えは簡単、ウォルマートである。ウォルマートのeコマースの成長を妨げるものは、アマゾン以外にもある。低賃金でスキル不足の従業員では、マルチチャンネルの環が完成しない。顧客の多くはあまり裕福でなく、ブロードバンドやスマートフォンも持っていない。
20世紀の大富豪は最低賃金で従業員をうまく使ってものを売っていた。21世紀の大富豪は、賃金のいらないロボットをうまく使ってものを売っている」
 この最後の一文は、わたしの心に突き刺さりました。

 第3章「アップル――ジョブズという教祖を崇める宗教」では、「聖と俗と」として、著者は「物体がスピリチュアルな目的に使われるとき、それが神を崇めるものとして神聖視されることはよくある。スティーブ・ジョブズはイノベーション・エコノミーのキリストとなった。彼の輝かしい偉業であるiPhoneは彼を崇めるための道具となって、他の物体やテクノロジーの上位にたてまつられている」と述べます。さらに、著者はアップルの挑戦について以下のように紹介します。
「21世紀最初の10年、ジョブズがアップルに帰還したのち、同社はビジネス史上最大のイノベーションに乗り出した。その10年でアップルは世界を揺るがし続けた。1000億ドル規模の新たなカテゴリーを生み出す製品やサービスを次々と打ち出したのだ。それがiPod,iTunes、アップルストア、iPhone,iPadである。このようなものはそれまで存在しなかった」

 著者は25年にわたって高級ブランドのアドバイスをしているそうですが、ポルシェからプラダまで、そのすべてに共通する5つの性質があると断言します。それは、アイコン的な創業者、職人気質、垂直統合、世界展開、高価格です。最初の「アイコン的な創業者」ですが、著者は以下のように述べます。
「世間はスティーブ・ジョブズをキリストのようなヒーローとして祭りあげている。しかし実際のところ、スティーブ・ジョブズは決して善良な人間ではなかった。とくに父親としては最低だったようだ。彼は裁判所で父親であることを否定した。生物学的に血のつながりがあるとわかっていながら、そして何億ドルもの資産を持っていながら、娘の養育費を払うことを拒否したのだ」
アップルでのストックオプションの問題に関する政府の調査では偽証したとも言われています。

 ところが、2011年にジョブズが死ぬと、世界中が嘆き、何千人もがインターネットに追悼の言葉を書き込みました。アップル本社はもちろん、世界中の店舗、ジョブスが通っていたハイスクールの前にまで信者が集まったそうです。著者は、「これはアイコン的な創業者を神格化し、スターを聖人にする儀式だった。晩年のジョブズがしだいに禁欲的な風貌になっていたために、さらに神格化が容易になった」と述べています。
 ジョブズは「私たちは宇宙をへこませるためにここにる(少しでも世界を変える)」と公の場で語り、実際に彼は「宇宙をへこませた」と信者たちから言われました。しかし著者の意見は異なり、「スティーブ・ジョブズは宇宙に唾を吐いたのだ。宇宙をへこませているのは、毎朝起きて、子どもに服を着せ、学校へ行かせ、子どもの幸せのためなら何でもするという人々だ。世界にもっと必要なのは、まじめな親たちの家であって、高性能なばかげた電話ではない」と述べます。わたしは、著者の意見に賛同します。

 ただし、iPhoneをはじめとしたアップル製品は高性能であるだけでなく、美しいことも忘れてはなりません。それが第二の性質である「職人気質」の賜物です。認知心理学では、魅力的な物体を見ると気分が良くなり、創造的なことをしたくなることが示されています。アップルで1993年から98年までハイテク部門の副社長を務めた認知工学者ドン・ノーマンは「魅力的なもののほうが使える」「洗車してワックスをかけたてのほうが、車はよく走るだろう? 少なくともそう感じるじゃないか」と語っています。

 ブランドの5つの性質のうち最後は「高価格」です。
 実際、アップルの製品は他社製品に比べて高価格ですが、著者は以下のように述べています。
「テクノロジー企業から高級ブランドへ転換するというジョブスの決定は、ビジネス史上、とりわけ重要な――そして価値を創造した――見識だった。
テクノロジー企業は短期間で大企業になれるが、長きにわたって存続することはまれだ。しかしシャネルはシスコシステムズより古いし、グッチはグーグルが消滅に向かうのを見ることになるだろう。
アップルは最高の遺伝子を持ち、22世紀までは存続する可能性が四騎士の中でいちばん高いと私は思う。頭に留めておいてほしい。四騎士の中で、少なくともいまの時点で、創業者と創業当時の経営陣がいなくなったあとでも好調を維持しているのはアップルだけなのだ」

 第4章「フェイスブックーー人類の1/4をつなげた怪物」の冒頭を、著者は「規模の観点から見れば、フェイスブックは人類史上、最も成功しているもののひとつだ」と書きだし、さらに以下のように述べています。
「世界には中国人が14億人、カトリック教徒は13億人、そして毎年ディズニー・ワールドで待つことに耐えている人が1700万人いる。
一方、フェイスブックは20億の人々と意義深い関係を持っている。サッカーのファンは35億人いると言われている。しかしこのすばらしいゲームでさえ、世界の人口の半分を取り込むまでに150年かかった。フェイスブックとその関連組織は、20年たたないうちにそこまで到達してしまいそうだ。同社は最速でユーザー1億人を越えた5つのプラットフォームのうち3つを所有している。フェイスブック、ワッツアップ、そしてインスタグラムだ」

 企業としてのフェイスブックについてですが、著者は以下のように述べています。
「規模とターゲティング能力を併せ持っているメディア企業は、フェイスブックだけだ。フェイスブックの18億6000万人のユーザーが自分のページをつくる。そこには何年分もの価値ある個人的なコンテンツが収められている。広告主がある個人をターゲットにしたければ、フェイスブックがその人の行動に関連するデータを集めてくれている。
それがグーグルを上回る利点であり、フェイスブックがグーグルのマーケットシェアを奪っている理由である。モバイルアプリも備えたフェイスブックは、いまや世界最大のネット広告の売り手である。ほんの数年前にグーグルが従来のメディアからあざやかに広告料を奪い取ったばかりであることを考えると、これは驚くべき業績である」

 著者は、以下のようにも述べています。
「人類の4分の1が、フェイスブックに誇張と自己欺瞞だらけの投稿をしているかもしれない。しかしフェイスブックでユーザーが愛を見つけるチャンスを得ているのも事実だ。プロフィールの交際ステータスを"交際中"から"独身"に変更するだけで、強力なパートナーさがしのシグナルを発信できる。誰かがステータスを変えたという話が、ネットワークを通して広がり、その人が存在することも知らない遠く離れた人にまで届く」

 著者は「第二次世界大戦はイギリス人の頭脳、アメリカ人の腕力、そしてロシア人の血による勝利であると、チャーチルは言った。フェイスブックはその3つをすべて兼ね備えている。顧客であるあなたがそのどれにあたるのかといえば、血である」と述べます。なかなか、うまいことを言いますね。
 さて、スナップチャットというカメラ・アプリケーションの企業があり、多くのアナリストが次なる騎士の候補があります。なにしろ、わたしたちが映像による情報を取り込む速さは、言葉の情報を取り込む速さの6万倍だといいます。そのため映像は心に直接届くのです。

 著者は「スピードと順応力」として、インスタグラムについて以下のように述べます。
「フェイスブックがインスタグラムで成功した要因は、そのスピードとマーケットへの順応力にある。新機軸を次々と生み出す能力は、他に類を見ない。うまくいくものもあれば(メッセンジャー、モバイルアプリ、カスタマイズ・ニュース・フィールド)、失敗に終わるものもある(商品購入などのアクションを友人に通知するおせっかいなビーコン、うまく動かないバイボタン)。新しい製品を生み出しては消すことで、フェイスブックは世界で最も革新的な企業になった」

 第5章「グーグル――全知全能で無慈悲な神」では、「しることはよきこと」として、著者は述べます。
「グーグルはすべての疑問に答えてくれる。この神を持たなかった私たちの祖先は、だいたい謎を抱えたまま生きていた。神はあなたの祈りを聞き届けてはくれるが、多くに応えてはくれなかった。もし神に話しかけられたことがあるというなら、あなただけに声が聞こえているということだ。それは心理学的に危険な状況にあることを意味する。信仰心の厚い人は常に見られていると感じることが多いが、それでも何をすればいいか(常に)わかっているわけではない」

 続けて、著者はグーグルについて述べます。
「私たちは祖先と違って、事実に安心を見いだすことができる。疑問に対してすぐに答えが与えられ、安心が保証される。一酸化炭素を探知するにはどうすればいいか。5つの答えがある。グーグルはいちばんいい答えを示し、強調までしてくれる――パニックに陥っている場合に備えて、これが知っておくべきことであると、大きな字で表示してくれる。
私たちが本能的に最優先するのは生き続けることだ。神は安全を与えてくれる存在であるが、そのために人は行いを正さなくてはならなかった。神に保護と疑問への答えを求めるために、許しを乞い、断食し、自分で棒を打ちつけた。そこまでしても、昔は北朝鮮の核がいくつあるか判断するのは難しかった。いまはただ検索フィールドに疑問を入力すればいい」

 さらに「信頼」として、著者は以下のように述べます。
「アップルは世界一革新的な企業と考えられている。アマゾンは最も評判のよい(どういう意味であれ)企業。フェイスブックはいちばん働きやすい企業だ。しかし私たちがグーグルに置く信頼には並ぶものがない。
グーグルが現代の神と呼ばれる理由の1つは、グーグルが私たちの心の奥底にある秘密を知っているからだ。グーグルは透視能力を持ち、私たちの思考と意図の記録をつける。質問することによって私たちはグーグルに、司祭やラビ、母親、親友、医師にさえ話さないことを告白する。昔のガールフレンドをネットストーキングする。なぜばかなことをするのか考える。不健全なフェティシズム(たとえば足だけに執着する)を持っているか調べる。何であれ私たちはグーグルに打ち明ける。その頻度でそのレベルの質問をされたら、どれほど理解のある友人であろうと引いてしまうだろう」

 そして、「グーグルが抱えるリスク」として、著者は以下のように述べています。
「グーグルは、裏ではビジネス史上でも特に意欲的な戦略を進めている。それは世界中のすべての情報を整理することだ。特に現在ウェブ上に存在する、あるいはウェブから移動できる、あらゆる有用な情報を捕獲して管理することだ。同社はそれにひたむきに取り組み、ついにそれを実現した。
まずすでにウェブ上にある情報から始め、それを管理する門番になった。その後、すべての場所(グーグルマップ)、天文(グーグルスカイ)、地理(グーグルアース、グーグルオーシャン)の情報を集めた。その後はすでに絶版になっている書籍コンテンツと、報道データを集め始めた(グーグル・ライブラリ・プロジェクト)」

 第6章「四騎士は『ペテン師』から成り上がった」では、GAFAの今後の行方を探ります。「『引っ張り合い』を利用する」として、著者は「グーグルとフェイスブックは、そのバランスがどういうものなのかよく知っていた。同社は情報流通のコストが下がり続けていることをうまく活用した。以前は高値だった情報の世界にユーザーを近づけ、新たに門番となることで何十億ドルもの価値を引き出したのだ。フェイスブックも低下している情報のコストと、引き続き高く保たれている価値の間の引っ張り合いを利用してきた。そのトリッキーな動きは、グーグルよりドラマチックだ」と述べています。
 残りのアマゾンについては、著者は「アマゾンがどこに向かっているかは、かなりはっきりしている。①小売業、メディア分野で世界的に優位に立つ。②すべての製品の配送を自社の飛行機、ドローン、自動走行車に切り替える(UPS、フェデックス、DHLよ、さようなら)」と述べています。

 第7章「脳・心・性器を標的にする四騎士」では、著者は「心」の問題を取り上げ、「心は巨大な市場である。買い物も含めて、私たちの行動のほとんどは感情によって動かされるからだ。冷静な脳に費用便益分析をさせるよりも、心をターゲットにするほうが簡単で楽しい。『これを買うべきだろうか?』という問いかけへの脳の答えはたいてい『ノー』だからだ。心は、地上で最も大きな力によって動かされている。それは愛だ。私たちは他者を愛し、慈しみ、世話をするとき、気分がよくなる。そのほうが長生きもできる」と述べています。
 このあたりは、拙著『ハートフル・ソサエティ』(三五館)の「人は、かならず『心』に向かう」というメッセージと完全に合致します。

 また、著者は以下のようにも述べています。
「世界的な長寿地域の1つ、日本の沖縄の健康長寿を調べた研究がある。それによると沖縄の老人は豆を多く食べ、酒を毎日(よいニュース)ほどほどに(がっかり)飲んでいた。さらに彼らは毎日運動し、積極的に人と関わり合う。そして何より、多くの人を愛して面倒を見る。ジョンズ・ホプキンス大学長寿健康研究センターでの最近の研究によると、他人の世話をする人は、そうでない人より死亡率が18パーセント低い。愛は人を長生きさせる。これはダーウィン的な現象だ。人類は消滅を避けるために、他者を世話する必要がある」
 このあたりは、拙著『隣人の時代』(三五館)の「助け合いは人類の本能である」というメッセージと合致します。非常に心強く感じました。

 第8章「四騎士が共有する『覇権の8遺伝子』では、著者は「歴史は繰り返さないが韻を踏む」というマーク・トウェインの言葉を紹介し、四騎士に共通する8つの要素として、①商品の差別化、②ビジョンへの投資、③世界展開、④高感度、⑤垂直統合、⑥AI、⑦キャリアの箔づけになる、⑧地の利・・・を挙げています。これらの要素からアルゴリズム、1兆ドル企業になるためのルールが生じるというのです。
 本書を読み終えて、わたしは爽快な気分になりました。GAFAについて論じた部分が刺激的であったのはもちろんですが、結局、これからの市場を制するのは人間の「心」をとらえた企業だという著者の考え方がわたしと同じであったからです。