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礼道の「かたち」』

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No.1504


 わたしのブログ記事「サンレーグループ創立50周年記念祝賀会(業界)」ブログ記事「サンレーグループ創立50周年記念祝賀会(一般)」で紹介したように、10月25日・26日に弊社最大の記念行事が行われ、無事に終わりました。まだ少し放心状態ですが、おかげさまで両日とも多くのお客様にお越しいただき、温かいお言葉を頂戴しました。心より感謝しておりますが、そこで1冊の本が配られました。『礼道の「かたち」』佐久間進著(PHP研究所)です。
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   『礼道の「かたち」』(PHP研究所)


 本書は、サンレーグループの佐久間会長の最新刊で、この読書館でも紹介した『人間尊重の「かたち」』の続編です。「人間道、八〇年のあゆみ」というサブタイトルがついています。帯には著者の顔写真ととともに、「八二歳、傘寿を超えて窮境の『八美道』を完成! されど、たゆまぬ精進を続けるその志と覚悟の秘密。神仏への祈りと万物感謝の心。ヒント満載、著者渾身の人生指南の書である」という鎌田東二氏(京都大学名誉教授、上智大学グリーフケア研究所特任教授)の推薦文が書かれています。
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   本書の帯


 著者は1935年生まれ。國學院大學卒。株式会社サンレー代表取締役会長。79年、日本儀礼文化協会を発足。97年、実践礼道小笠原流を確立。柔道7段、合気道3段。小笠原流煎茶道総師範。草月流華道師範、瓢流小唄名取"寿桑"。叙勲・褒章、旭日小綬章受章(2007年)。紺綬褒章受章(1981年)。藍綬褒章受章(1999年)。交通栄誉章受章(2013年)。北九州叙勲者協会会長。また、一般社団法人・全日本冠婚葬祭互助協会会長(初代)、一般社団法人・日本観光旅館連盟会長なども務めました。
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   本書の帯の裏


 アマゾンの「内容紹介」には以下のように書かれています。

「2016年に、冠婚葬祭業の市場規模は、第一次産業の漁業と林業を合算した金額を超えた。その原動力ともなった『冠婚葬祭互助会』を社会に認められる組織にすべく法制化に尽力して浸透させた初代日本冠婚葬祭互助協会会長で、株式会社サンレーの創業者である著者が、儀礼につながる『礼道』と、人間性を高めるための道である『人間道』の真髄を語る。戦後の混乱期、日本の伝統文化を軽視する風潮が蔓延する中、大学で民俗学を修めた著者は、日本古来の伝統的な道を探求することで、冠婚葬祭の正しいあり方を確立するべく、会社を立ち上げ、まだ日本に存在していなかった冠婚葬祭互助会を広めるべく東奔西走する。そして、日本の歴史や人物、宗教などの研究と、現代の偉人との交流などを積み重ねることで、窮境の『八美道』を完成するに至った。50年にわたる冠婚葬祭業の発展に捧げた人生の軌跡と、日本人として忘れてはならない生き方を指南する魂の書」
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   「人間尊重」から「礼道」へ


 本書の「目次」は以下のようになっています。

「はじめに」
プロローグ 道を求めて ― 若き日々
幼き日々
学校生活と師との出会い
儀礼の道を求めて
人に会い、本を読み、旅に出る
第一章 感謝の哲学 ― 悩むな。感謝すれば道は開ける
一.お天道様 ― サムシング・グレート
天とは何か。産霊とは何か。
天からはしごが降りて来る
お天道様―ムスビ―サムシング・グレート
ムスビの力
皇産霊神社
良心の掟一七箇条
二.般若心経の真理 ― ポジティブ思考の実践
般若心経からのヒント
般若心経のとらえ方
私が伝えたい般若心経の本質
般若心経でポジティブに
「本当の幸せ」と般若心経
三.聖徳太子が導いた和の民族―日本人の素晴らしさと可能性
日本への視線
スティーブ・ジョブズが見た日本
世界に誇るべき「和」の民族・日本人
日本を知らない日本人
日本の和と共食信仰
神道―和の宗教
聖徳太子が築いた「和の精神」
なぜ聖徳太子は和の国を築いたか
現代と飛鳥時代の類似
聖徳太子が目指した和の姿
聖徳太子の思想と沖縄イズム
日本人が世界をつくる
四.人間尊重の精神
人間尊重との出会い
共存共栄・利他の精神―渋沢栄一と松下幸之助が指し示したもの
三福と三施/和の経営
支え合いこそ事業
人間尊重のこれから
和の実践と笑い
人間尊重を唱える人間として
感謝力―佐久間進の幸福論へ
第二章 生かされて生きる ― これからの使命
一.病と向き合うということ
前向きに立ち向かう
間質性肺炎という病
「有搆無搆」で病に克つ
二.つながりある社会づくり
天道館
支え合う社会をつくるために
三.日本のおもてなし文化 小笠原家茶道古流のために
小笠原家茶道古流興隆のための提案
小笠原家茶道古流という流派
茶道と「おもてなし」
茶道の中の六芸
茶道と芸術
小笠原家茶道古流の興隆に向けて
村田珠光に学ぶ
四.和の精神を海外へ ミャンマーへのおもてなし文化輸出
ミャンマー進出の決意
私を決意させたもの
高野山での思い
世間の潮音に答えよ
和の精神と知足
講・結・座の融合共生システムとミャンマーでの新モデル
冠婚葬祭とおもてなし
ミャンマーと天の声
志を実現するために
死中に活路を見出す  
第三章 導かれて ― 師との出会い
樋口清之
小笠原忠統
嘉納履正
平井富三郎
正力松太郎
前田久吉
中曽根康弘
高野弘正
小笠原日英
第四章 ことばに代えて ― 感謝の一七条     
第五章 与えられた日々 ― 健康とのつきあい方
健康法八美道
正心/正息/正食/正便/正動/正休/正浴/正交
志をもって「八美礼道」を実践する
病が授けてくれたもの
陽転思考でポジティブに生きる
「むすび」

 「はじめに」の冒頭を、著者は以下のように書きだしています。

「平成28年11月18日、私が創業した株式会社サンレーは50回目の創立記念日を迎えました。それは、私がこの道を歩み始めてから、気づけば50年の月日が流れたということです。この節目に際して、ふと立ち止まって考えてみますと、私の会社と私自身が、今の姿でここにこうしていられますのは、まずはお客さま、地域の皆様をはじめとする、私たちにかかわりある皆様、そして社員と家族の方々の支えがあったればこそなのです。この機会に、心から感謝を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございます」

 著者は本書のサブタイトルにもある「人間道」というものを提唱していますが、それについて以下のように述べています。

「端的に申し上げれば、人間道とは、人間を完成させるために踏む道といえます。自分の魂を磨き、養い、人間性を高めることによって一個の人間としての高みを目指す道と言い換えても良いかもしれません。自分という人間を完成させるためには、自己を高めるために何が必要かを検討して目標を立て、どのような方法でそれを達成していくかを考えなければなりません。目標の立案から実現までの道のりは概して険しいものです。さらにいうならば、達成することが困難でない目標は、目標としては不十分といわざるをえないでしょう。こうした困難な目標を自ら考え、達成することは、それ自体がすでに『道』といっても過言ではありません。つまり目標を発見し、設定して、それを乗り越えていくことは、それ自体が『目標道』ともいうべき哲学的な営みともいえるのです。その取り組みが『人間道』です」

 この目標は各人それぞれでしょうが、著者は自分自身の目標について以下のように述べています。

「私の場合、その目標とは、私の礎である民俗学が拠って立つ儀礼、つまり日本の『冠婚葬祭』をより良いものとし、それを通じて世界の平和に資することでした。私が事業を興した50年前、戦後に蔓延した伝統文化を軽視する風潮の中で、目標道に沿って自分の指針を定めた私は、これを達成するために、日本人の冠婚葬祭のあり方を研究しなければならないと考えました。そして目標実現のための手段として、日本人そのもののあり方を知る必要があるという結論に至ったのです」

 続けて、著者は以下のように述べています。

「その後私は間もなく、日本人のあり方を知るための手段は、私たちの祖先から培われてきた伝統的な『道』の中にあるのではないか。これらを探求することが、冠婚葬祭の内容をより良いものとするために必要なのだという結論を得ました。そこで、以前から嗜んでいた柔道をはじめ、合気道・茶道・煎茶道・華道・気功道・芸道、そして礼道として小笠原流礼法を修めました。また、冠婚葬祭の基ともなる宗教については、神・儒・仏が同居する日本人独自の精神性を研究して、『宗道』ともいうべき私自身の『和』の哲学を、『かたち』にできたと考えております」

 著者は、自身を構成する大きな要素の1つに「日本民俗学」があると自己分析します。民俗学という学問は、単に日本人の儀礼や習俗を究明するだけでなく、研究を通じて、「人間にとって本当の幸せとは何か」を明らかにするためのものだと、著者は認識します。結婚式や葬儀をはじめ、冠婚葬祭をはじめとするさまざまな人生儀礼や年中行事という、人類にとって共通の儀式や文化を研究することによって、人類の存在基盤と、その本当の幸福がどういったものであるかという深遠な課題に取り組む民俗学が誕生したのは、著者の母校である國學院大學の校内にたたずむ院友会館においてのことでした。

 著者は、以下のように述べています。

「國學院大學で教鞭をとっておられた柳田國男先生と、同じく國學院大學の教授で、同大学の卒業生―つまり私の大先輩にあたる折口信夫先生という、当時を代表する碩学者が、お二人で昼夜を問わず検討を重ねられ、苦心惨憺の末、日本に『民俗学』という新たな学問を打ち立てられたのであります。時に昭和10年。私がこの世に生を授かった年でありました。民俗学の誕生と自分の誕生が同年であるとうかがい、しかも、私は民俗学が打ち立てられた、まさにその学舎に通っていた。私はこの学問との間に生まれた強いつながりを通して、私と民俗学が拠って立つ『冠婚葬祭』との間に深く強い、運命的なものを感じざるをえませんでした」

 さらに運命は続きます。著者に民俗学の存在とその素晴らしさを教授したのは恩師・樋口清之教授でした。著者は、冠婚葬祭互助会を事業化しようとした際、その是非について樋口教授のもとを相談に訪れました。そとき、くだんの院友会館で、樋口教授は「民俗学が生まれた場所はこの院友会館だ。その場所で、今度は民俗学が1つの事業として出発しようとしている。これほど面白いことはない。深い意義を感ずる」と述べたそうです。その言葉を聞いた著者は、「ああ、私にとって民俗学との出会いは偶然ではなかった。冠婚葬祭を事業とすることは天命だった」と確信したといいます。だからこそ、当時の著者は「なにがなんでも、私がその事業を成功させなければ」と固く決意したのでした。

 そして、著者は以下のように述べています。

「このときの想いを実現するため、当時、まだ日本に影も形もなかった冠婚葬祭を生業とする冠婚葬祭互助会というビジネスを、どうにか日本に根付かせるべく、そのときどきを、全力で邁進してきました。時に業界の意思を統一すべく業界団体を組織するために、また『冠婚葬祭互助会』を社会から認められた組織にすべく法制化に東奔西走して、どうにか冠婚葬祭互助会を社会に浸透させられるように尽力してきたつもりです。その成果といえるでしょう。2016年、私たちの業界を含めた冠婚葬祭の市場規模は、第一次産業たる漁業と林業のそれを合算したものを上回る1兆8000億円を超え、さらに拡大しています」
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   折口信夫・春洋父子の墓


 その事実は、日本に冠婚葬祭互助会が根付いた何よりの証拠でしょう。
 著者にとって、その報せは大変な感動でした。そこで矢も楯もたまらず、北陸は能登半島の中腹、羽咋市に鎮座する気多大社の社叢にほど近い墓所へと向かいました。その目的を著者は以下のように述べています。

「そこに眠る民俗学者・折口信夫先生とそのご子息である折口春洋先生に、民俗学を祖とする私たちの事業が、ようやく日本の社会に浸透し根付い たことをご報告申し上げるためでした。折口先生の墓参をさせていただいた折のことは、ここまで反射的に体が動くものなのかと自分自身でも驚きを隠せませんでしたが、私と冠婚葬祭、そして民俗学との間にある霊的な結縁を改めて感得させてくれました」
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   「毎日新聞」2015年1月9日朝刊


 じつは、著者が日本民俗学が誕生した昭和10年にこの世に生を受けたことに気づいたのは息子であるわたしでした。父は亥年なのですが、ともに國學院の教授を務めた日本民俗学の二大巨人・柳田國男と折口信夫も一回り離れた亥年でした。父が國學院で日本民俗学を学び、そのまさに中心テーマである「冠婚葬祭」を生業としたことに運命的なものを感じてしまいます。「國學院」の「国学」とは、「日本人とは何か」を追求した学問で、契沖、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤らが活躍しました。わたしの実家の書庫には彼らの全集が揃っており、わたしは高校時代から国学に関心を抱いていました。そして、「日本人とは何か」という国学の問題意識を継承したのが、「新国学」としての日本民俗学です。実家の書庫には、柳田・折口の全集をはじめとする民俗学の本もずらりと並んでいました。
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   國學院大學と私


 

 本書の帯に推薦文を寄せた鎌田東二氏が本書の内容を検索したところ、「道」という字が542回、「和」が332回、「神」が290回、「礼」が251回出てくることを発見したそうです。また、「民俗学」という単語も50回ほど登場するとか。著者にとって民俗学は自身の思想の基本なのでしょう。
 わたしのブログ記事「國學院大學オープンカレッジ特別講座」で紹介した講義で、そのような著者に与えた民俗学の影響について言及しました。2014年11月11日に、わたしは日本民俗学誕生の舞台となった國學院大學で特別講義を行いました。そこで、「國學院」の「国学」とは、「日本人とは何か」を追求した学問で、「日本人とは何か」という国学の問題意識を継承したのが、「新国学」としての日本民俗学であることなどを話しました。
 冠婚葬祭互助会の使命とは、日本人の原点を見つめ、日本人を原点に戻すこと、そして日本人を幸せにすることです。結婚式や葬儀の二大儀礼をはじめ、宮参り、七五三、成人式、長寿祝いなどの「冠婚葬祭」、そして正月や節句や盆に代表される「年中行事」・・・これらの文化の中には、「日本人とは何か」という問いの答が詰まっています。
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   國學院大學での特別講義のようす


 さて著者は、一般社団法人・全日本冠婚葬祭互助協会会長(初代)、一般社団法人・日本観光旅館連盟会長なども務めました。いわば、「儀礼」と「観光」の2つにライフワークとして取り組んできましたが、現在は「儀礼」と「観光」の融合を目指しています。なぜか。その答えは、儀礼こそが「和」の実現にほかならないからであるとして、著者は述べます。

「日本は和の国として、世界的に見ても稀有な、きわめて多様性に富んだ文化を持っています。日本人が持つこうした多様性や柔軟性の根底には、日本独自の和の精神や和の文化があります。この和が、さまざまな思想や文化を平和裏に共存共栄させる素地になっているのです。和の上に立つ日本の儀礼こそ、私たちが世界に向けて発信できる最大の素材であり、日本独自の観光のかたちを実現する要素だと、私は考えます。儀礼は和の精神を具現化するものなのです。儀礼はその行為を通じて、参加した家族を、高齢者を、人間関係を尊重するものです。つまり、儀礼を経験することは、とりもなおさず、家族に代表される人間関係を見直すことでもあります。だから儀礼を経験することは、人と人の平和なつながり―和を生じさせることなのです」

 言うまでもなく、日本人は「和」を尊重する民族です。
 海外からの観光客が日本において日本の儀礼を体験することにより、和の文化に触れ、日本の持つ平和をかなえる力を自国に持ち帰って、儀礼が持つ精神を開花させるとして、著者は以下のように述べます。

「世界に平和を伝播するために、これ以上に有効な手段はありません。儀礼を通じて、やがて世界に平和がもたらされる。それが、私の願う儀礼観光立国の、最大の効果です。真のおもてなしの心を持って、和の国日本の哲学を、世界に伝え、広めたい。このような構想が提唱できるのは、私たちが実践を重視する民俗学という学問を基に、冠婚葬祭という人間の幸せを第一に願う事業を築いて活動してきたからに他なりません。逆にいえば、私たちでなければ、そのビジョンを示すことも、まして実現することもできないのです」

 続けて、著者は以下のように述べています。

「それだけに、私たちは冠婚葬祭互助会としての基本姿勢を保ち続けなければなりません。私たち冠婚葬祭互助会は、講・結・座という日本在来の相互扶助システムを融合させたもので、日本が持つ和の精神、和の哲学の発露であります。こうした背景のもとに立つ私たちが、今度は外国へ和の精神を輸出するのです。その手段の1つこそ、儀礼観光立国なのです。そして来るべき儀礼観光立国の実現に向け、これから前進し続けていきたいと志しています」

 そして、「はじめに」の最後に、著者は述べています。

「このような志を掲げるのは、もちろん私にとって、冠婚葬祭を包含する儀礼が、何よりも重要な存在だからです。これまで私は、冠婚葬祭に携わることを天命ととらえ、事業化して、50年にわたって取り組んできました。本当に良い仕事を授かることができたと、いつも感謝の気持ちが絶えません。そのような私を支えてくれた人、モノ、哲学があります。また、私が冠婚葬祭互助会事業という生業を営む中で求めてきた道があります。
 私自身の齢80という節目を迎え、そして私が興こした事業も創業から50年に至り、新たな創業期を迎えます。ここからは、私がこれまで育んできた道を、哲学を、この機会にご紹介させていただきたいと思います。是非ともお耳を傾けていただければ幸甚の至りです」

 「むすび」では、「人間や社会のあり方を示す礼は、やはり人間の道と表現すべきです」として、著者は以下のように述べています。

「人間の道は慎み深くし、和を貴び、互譲互助の精神をつくるということですが、儀礼はそのすべてを満たし、日本においては和の精神を涵養します。こうして育まれた和の精神こそ、現在、諸外国から日本が注目される理由です。東日本大震災や熊本地震のような事態に際しても、利己的な我を通すのではなく、互いに譲り合い、助け合えるのは、日本人が和の精神を持っているからです。他国にはほとんど見られないこの心を持つ日本を、他国は、和の民族として畏れ敬うのです」
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   茶道の解説をする著者


 しかし、現在の儀礼に問題が存在していないわけではないとし、著者は以下のように具体例をあげます。

「たとえば、現在の茶道は、あまりにも作法に比重が置かれ、そのための修行一辺倒になってしまっています。これでは、何のために修行を行うのか、また、礼が存在する理由がまったくわからなくなってしまっています。『道』の重要性は、人生を豊かにし、和の精神をもたらすことにあります。それを失念してはなりません。そのために必要なのは礼の実践であり、作法が存在する理由を、身体を以て学び取ることです」
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   松柏園のロビーでの大茶会


 その点を「茶の湯とは 心に伝え 眼に伝え 耳に伝えて
 一筆もなし」という歌がいみじくも表現していますが、著者は以下のように述べます。

「私は小笠原忠統公から小笠原流礼法糾方的伝を授かり、その作法と精神を伝えるため実践礼道小笠原流を立ち上げましたが、あえて『実践』のことばを用いたのは、礼の実践の重要性を理解していただくためでした。殊に茶道は総合芸術であり、日本の礼の真髄です。私が携わる小笠原家茶道古流をはじめ、諸流派が以上の点に目を向け、真の意味での礼を実践してくれることを願うばかりです」

 さらに「冠婚葬祭もまた、日本の礼が複合的に結集した総合芸術文化です」として、著者は以下のように述べます。

「私はその内容をより良いものにするために、さまざまな道を学んできました。武道であれば柔道・合気道、両方の段位をあわせると10段になります。芸道でも小笠原流礼法糾方的伝総師範の位をはじめ、小笠原流煎茶道総師範・草月流華道師範・瓢流小唄名取などの資格を手にしてきました。これは、ひとえに冠婚葬祭をはじめとした礼の発展に寄与したいと考えたからです。その意味で、私の半生は礼の探求、すなわち人間の道の探求を行ってきたものだったといっても差し支えないかと思います」

 著者は、自身の人間道の探究について、以下のように述べます。

「私の人間道の探求は、人の幸福の探求であり、人間のあるべき姿の探求だと、胸を張って断言できます。これまで、私が携わってきた冠婚葬祭互助会事業は、日本人が培ってきた和の精神に根ざした助け合いのシステムです。しかも互助会が為す業は儀礼―人間の道を通じた助け合いであり、近い将来、超高齢社会をはじめとした現代社会の諸問題を乗り越える役割を果たすでしょう。ゆえにこそ、この思いと行動を、次の世代に受け継いでもらわなければならない。そして私自身も、それを実行し続けなければならないのです」

 「むすび」の最後に、著者は、座右の銘の代わりとしている以下の自作の道歌を披露しています。

志高く 世のため人のため
        限りある命 力尽くさん

 そして、「限られたこの命ではありますが、生涯をかけて最大多数の方に豊かな生活と幸福をもたらせるよう取り組み、この身が果てるまで全力投球していく覚悟です」と本書を結ぶのでした。
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   「サンレー創立50周年記念式典」で社員に訓示する著者


 本書を一読して、息子であるわたし自身、この本は父の人生の集大成であり、その哲学が見事に凝縮された書であると思いました。
 わたしのブログ記事「創業守礼と天下布礼」にも書いたように、これからの企業には「アップデート」とともに「初期設定」というものが求められます。
 50年前、佐久間会長は万人に太陽の光のように等しく冠婚葬祭のサービスを提供したいと願って、サンレーを創業しました。
 佐久間会長こそは、わが社の「初期設定」を行った本人です。
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   創業者の志を受け継ぎます!


 わが社の「初期設定」を確認する上でも、佐久間会長の言葉を振り返ることができるという意味でも意義ある一冊であると思います。
 わたしは、サンレーの経営を佐久間会長から受け継ぎました。わたしは長男ですが、それはあまり関係ないと思っています。事業とは血液で継承するものではなく、思想で継承するものだと思います。わたしは、他の誰よりも佐久間会長の思想を理解し、その志を共有しているという自信があります。
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   「サンレー創立50周年記念祝賀会」で同業者のみなさんに挨拶する著者


 さらには、サンレーだけでなく、冠婚葬祭互助会事業の「初期設定」もこの本にはふんだんに書かれています。わたしのブログ記事「サンレーグループ創立50周年記念祝賀会(業界)」で紹介した10月25日に、松柏園ホテル新館「ヴィラルーチェ」で開催されました。全国から一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)に加盟する有力互助会の経営者の方々が参集して下さいましたが、その引出物の1つとして本書が配られました。いま大きな曲がり角を迎えている互助会業界にとって、全互協の初代会長でもある著者の言葉は大きな指針となるのではないでしょうか。
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   これからも「人間道」を求めて


 父にはいつまでも元気で、わたしを指導してほしいと願っています。
 そして、わたしも父のように「人間道」を求め続けていきたいです。
 最後に、鎌田東二先生が帯で言及されている「八美道」こそは、父の人間道の神髄であると思います。内容は以下の通りです。


八美道

        一 神を畏れ     
       二 仏を祀り 
        三 人を敬う 
        四 人を思いやり 
        五 己を慎み 
        六 自らを磨き 
        七 孝養に努め 
        八 物を大切にする