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Title

考え方』

Category

 No.1436

 

 渡部昇一先生なき後、現代日本において最高の賢者といえば、稲盛和夫翁ではないでしょうか。『考え方』稲盛和夫著(大和書房)を読みました。

 「人生・仕事の結果が変わる」というサブタイトルがついています。

 

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    本書の帯

 


 本書の帯には著者の顔写真とともに、「どんな境遇にあっても、ひたむきに、人間を磨く。」「当代随一の経営者が実践してきた自己成長を促し、真の充足をもたらす唯ひとつの確実な方法」と書かれています。帯の裏には、「人間として正しいままに貫く。」「人生の目的に迷うとき、生き方に悩むとき、心が晴れないとき、支えになってくれる一冊!」と書かれています。

 

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    本書の帯の裏

 


 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。

 

序章 素晴らしい人生をもたらす羅針盤

一  大きな志を持つこと―気高く、素晴らしい夢を描き、追い続ける

二  常に前向きであること―明るい心には、必ず幸運が宿る

三  努力を惜しまないこと ―頑張ることをあきらめない人に、真の充足感は訪れる

四  誠実であること―正しいことを正しいままに追求する

五  創意を凝らすこと―昨日よりは今日、今日よりは明日、 明日よりは明後日と改良改善する

六  挫折にへこたれないこと ―災難は天が与える素晴らしい贈り物

七  心が純粋であること―行動の成功は、その心の美しさによる

八  謙虚であること―自らを愛する心を抑える

九  世のため、人のために行動すること ―自己犠牲をいとわず相手に尽くす

終章 善き思いに満ちていること

 

 本書は『生き方』(サンマーク出版)、『働き方』(三笠書房)といった一連の著者の人生論の流れの中にあります。本書のテーマは書名の通りに「考え方」ですが、序章「素晴らしい人生をもたらす羅針盤」で、著者は「考え方」について、以下のように述べています。

 

「私は、どのような『考え方』を選択するかによって、自分の人生を、素晴らしいものにつくり上げることもできれば、壊すことにもなると考えています。

 人は誰でも、人生で、思いもよらぬ障害に遭遇します。そんな困難に直面したとき、どちらに向いて進むのかは、すべて自分の『考え方』から来る判断です。その1つひとつの判断が集積されたものが、人生の結果となって現れるのです」

 続けて、著者は「考え方」について以下のように述べます。

 

「ならば、常日頃より、自らを正しい方向に導く『考え方』に基づいた判断をしていれば、どんな局面でも迷うことはありません。いつも正しい行動がとれ、結果も素晴らしいものになっていくはずです。

 一方、自分だけよければいいという利己的な心や気まぐれな感情など、自分を悪しき方向へ導く『考え方』がもたらす判断基準しか持っていない人は、常に揺れ動く自分の心に左右されることになります」

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力


 これは著者が考える「人生の方程式」です。

 「考え方」「熱意」「能力」という3つの要素の中でも「考え方」こそが最も大事な要素であり、方程式の結果を大きく左右することになるとして、著者は以下のように述べます。

 

「なぜなら、『能力』や『熱意』が0点から100点まであるのに対して、『考え方』には、悪い『考え方』から、良い『考え方』まで、それぞれマイナス100点からプラス100点までの大きな振れ幅があるからです。

 『能力』も『熱意』も、高ければ高いだけいいのは、言うまでもありません。しかしそれ以上に、自分の『考え方』がプラスなのか、それともマイナスなのか。さらに、その数値は高いのか、低いのかということが、人生や仕事の結果を大きく左右するポイントになります」

 一「大きな志を持つこと―気高く、素晴らしい夢を描き、追い続ける」では、「未来に対して限りないロマンティストであれ」として、著者は述べます。

 

「私はよく、『たとえどんなに苦しい状況にあっても、自分の人生や会社の将来を絶対に悲観的に見てはならない』と言っています。今はつらく苦しい状況にある。しかし、『これからの人生は、きっと明るく開けていくはずだ』『会社はこれから必ず発展するのだ』と信じる。そのような、明るい考え方を持つべきです。決して不平不満を言ったり、暗く憂うつな感情を抱いたり、ましてや人を恨んだり、憎んだり、妬んだりしてはいけません。そのようなネガティブな考えは、人生を暗くしてしまいます。

 素晴らしい人生を歩んでいる人は、必ず明るい考え方をしています。他の人であれば、災いだと感じるような境遇にあっても、それを前向きにとらえ、自分を成長させてくれる好機として感謝することができます。そして、そのように明るくとらえることで、実際に人生も好転しています」

 二「常に前向きであること―明るい心には、必ず幸運が宿る」では、「心に火をつけるのは自分自身」として、著者は以下のように述べます。

 

「仕事を好きになることで、どんな苦労の最中でも、『一生懸命に打ち込んでみよう』と気持ちを前向きに切り替えることができます。全力を打ち込んでやり遂げれば、大きな達成感と自信が生まれ、次の目標へ挑戦する意志が生まれます。その繰り返しのなかでさらに仕事を好きになり、ますます努力を惜しまなくなり、素晴らしい成果を上げることができます。

 これはまさに私の実感です。大学を出て入った会社で、『仕事を好きになった』おかげで、今日の私があるとつくづく思います。仕事を好きになるための努力をすること、これこそが人生において、また仕事において、最も重要な要素だと思います」

 三「努力を惜しまないこと―頑張ることをあきらめない人に、真の充足感は訪れる」では、「真面目に、一生懸命に働く」として、著者は述べます。

 

「自分の境遇を変えることはできません。自らの外にばかり不幸の要因を求める限り、心のうちは永遠に満たされることはないはずです。一方、恵まれない境遇であったとしても、勤勉に働くことさえできれば、幸せをつかむことができます。そうした『勤勉』ということについて、我々が模範とするべきが、二宮尊徳(金次郎)ではないかと私は考えています」

 さらに著者は、内村鑑三が『代表的日本人』の中の「江戸時代に幕府に召し抱えられた二宮尊徳は、まさに貧農の生まれであった。それにもかかわらず、尊徳が裃を着けて殿中にあがったとき、まるで生まれながらの貴人のごとく振る舞った」という文章を紹介し、以下のように述べます。

 

「つまり、尊徳は高貴な生まれなのではないかと思わせるくらい、素晴らしく立派な立ち居振る舞いで、その様は大名諸侯と変わらないくらいであったといいます。それは、尊徳が農作業というものを1つの修業としてとらえ、自らの人生観をそのなかで培っていったからです。それはまさに、『労働が人格をつくる』ということです」

 四「誠実であること―正しいことを正しいままに追求する」では、「いかなる生涯がろうとも、自分に正直に生きる」として、著者は述べます。

 

「人間というのは、行き詰まると、良心では決してよくないとわかっていても、『このくらいはいいだろう』と、つい悪いことをしてしまいます。極端な場合、『結果よければすべてよし』などとうそぶき、自分を納得させ、悪事に手を染めてしまいます。常に正しい道を踏み、誠を尽くしていかなければなりません。相手に迎合したり、『うまく世渡りできるから』といって妥協するような生き方をしてはならないのです。

 どんなに難しい局面に立っても、正道を貫き通す、つまり人間として正しい考え方を貫く真摯な生き方をするべきであると、私は考えています」

 六「挫折にへこたれないこと―災難は天が与える素晴らしい贈り物」では、「艱難辛苦を耐えて、人は成長する」として、著者は述べています。

 

「苦労とは、自分自身を見つめ直し、成長させてくれるまたとないチャンスです。『艱難汝を玉にす』という言葉にもあるように、苦労というものがあって初めて、人間は磨かれます。苦労をしなくて人間性が高まるはずはありません。困難や逆境というものをネガティブにとらえ、悲嘆に暮れるのではなく、志をより堅固にしてくれる格好の機会ととらえて敢然と立ち向かうことが大切です」

 また、「困難に遭えば、過去の業が消える」として、著者は述べます。

 

「起きてしまったことはしようがありません。自分が過ちを犯したと気づいたのなら、いたずらに悩まず、今度は失敗しないようにと改めて新しい思いを胸に抱き、新しい行動に移っていくことが大切です。

 済んでしまったことに対して、深い反省はしても、感情や感性のレベルで心労を重ねてはなりません。理性で物事を考え、新たな思いと新たな行動に、直ちに移るべきです。そうすることが人生を素晴らしいものにしていきます」

 さらに、「いいことも悪いことも、すべてが試練」として、著者は述べます。

 

「人生で起こることは、人間の浅はかな知恵をもって、目先の幸不幸だけで判断してはいけません。天という高い視点から見るべきです。そうすれば、全く異なる様子が見えてくるはずです。今、一見非情に見えるほどの災難に遭遇しているとすれば、それはその人の将来にとってプラスになると思わなければなりません。それは天が与えてくれた『ごほうび』なのかもしれません」

 そして、著者は以下のように述べるのでした。

 

「自然界を見てください。植物は傷めつけられると、それに反発して、よりたくましく成長していきます。たとえば、自然に生えている木に比べて、剪定した庭木のほうが、さらに早く伸びていきます。剪定で木は枝を切られて傷めつけられますが、その傷みをバネにするかのように成長していくのです。麦も、冬の間に麦踏みをしてあえて傷つけることで、立派に育ちます。また薩摩芋は、地面をはうように蔓が伸びますが、そのままにしておいても立派に実りません。夏の一番成長するときに葉をひっくり返し、根を取り除きます。かわいそうですが、そうしなければ、大きな薩摩芋はできません」

 七「心が純粋であること―行動の成功は、その心の美しさによる」では、「心を純粋にする努力を不断に続ける」として、著者は述べます。

 

「毎日、起床時と就寝前に洗面所の鏡に向かうのですが、その際には、昨日の出来事、今日の自分の言動をひとしきり思い返し、『人に不愉快な思いをさせなかったか』『不親切ではなかったか』『傲慢な振る舞いはなかったか』と自らを厳しく問いただします。そして自分の行動や発言に人間として恥ずべき点が見つかれば、自分自身を強く叱り、二度と過ちを繰り返さないよう戒めるようにしています」

 八「謙虚であること―自らを愛する心を抑える」では、「人格を高め、維持する」として、著者は以下のように述べています。

 

「残念ながら、誰しも持って生まれた『性格』が完全なわけではありません。だからこそ、後天的に素晴らしい『哲学』を身につけ、『人格』を高めようと努力する必要があります。特に、多くの部下を持ち、責任も大きなリーダーは、できるだけ『人格』を高め、それを維持しようと努力することが求められます」

 続けて、著者は以下のように述べています。

 

「その身につけるべき素晴らしい『哲学』とは、歴史という風雪に耐え、人類が長く継承してきたものであるべきです。つまり、人間のあるべき姿、持つべき考え方を明らかにし、われわれに善い影響を与えてくれる、素晴らしい聖人や賢人の教えのことです。そのとき留意すべきは、『知っていることと、できることは違う』ということです。たとえば、キリストの教え、釈迦の教え、孔子や孟子の教えをみんな教科書で習い、知識としては理解しています。しかし、知識として持っているだけでは価値はありません。自分を戒め、『人格』を高めるために役立つものでなければならないのです」

 九「世のため、人のために行動すること―自己犠牲をいとわず相手に尽くす」では、「愛に満ちた心は宇宙の意志にも適う」として、著者は述べます。

 

「人間が心のなかで思い、実行することが、すべてをよい方向に進めようとする、宇宙が持つ波長とピタリと合ったときには、人生は好転していく。逆に、自分だけがよくなればいい、自分以外は悪くなってもかまわない、というような、宇宙が持つ考え方と反する利己的な思いを持てば、宇宙の流れに逆らうことになり、善き結果は得られません」

 続けて、著者は以下のように述べています。

 

「そうであれば、私たちは、森羅万象あらゆるものをよくしてあげたいという宇宙に存在する愛の流れと同調する、『他に善かれかし』という利他の心を持つように努めなければなりません。『他人の喜びを自分の喜びとする』『世のため人のためになることを思う』『自分だけでなく周りの人々皆が幸せに生きることを願う』といった、美しく、ピュアで正しい心で人生を生きていけば、必ず神の助け、いわゆる天佑があります。そのことを、京セラの成長発展、第二電電の創業、日本航空の再生が示していますし、私の人生そのものが証明しているように思います」

 終章「善き思いに満ちていること」では、「善き『考え方』を持ち、『他力の風』を味方にする」として、著者は以下のように述べています。

 

「善き『考え方』は、自助努力による『自力』や周囲の人々の助けという『他力』をも超えた、偉大な宇宙のもう1つの『他力』を味方にすることができると―。人生を、大海原を旅する航海にたとえるならば、我々は思い通りの人生を送るために、まずは必死になって自力で船を漕ぐことが必要です。また、仲間の協力や支援してくれる人々の助けも必要ですが、それだけでは遠くにたどり着くことはできません。船の前進を助けてくれる他力の風を受けることではじめて、はるか大海原に乗り出し、航海することができます」

 そして、最後に著者は以下のように述べるのでした。

 

「世の中に自力だけでやれることなどたかが知れています。また、周囲の人々の助けという他力を得るだけで達成できることにも限界があります。偉大なことは人智を超えた天の力である、もう1つの他力を受けなければ成しえません。けれども、天の力という他力を受けるためには、自分自身の心を利己まみれの心ではなく、『他に善かれかし』という美しい心にすることが必要です」

 本書に書かれていることは、これまでの著者の本ですでに読んだ内容も多いですが、大切なことは繰り返しインプットしなければなりません。

 本書に紹介されている著者の言葉は、どれも「当たり前」のことばかりかもしれませんが、その当たり前のことを実行するのが難しいのです。本書には、著者がその生涯において実行してこられた「人としての基本」が見事にまとめられています。一度だけでなく、何度も何度も読み返したい本です。