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SMAPはなぜ解散したのか』

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No.1385


 2月になりました。ついこの前、正月が来たばかりと思っていたのに!
 昨年いっぱいで解散したSMAPの公式サイトが1月31日に閉鎖されました。「Johnny's net」内にあるSMAPの専用サイトで、同サイト内の「アーティスト一覧」からもSMAPの名前が消えました。この日は最年少メンバー、香取慎吾の40歳の誕生日でもありました。
 『SMAPはなぜ解散したのか』松谷創一郎著(SB新書)を読みました。
 ここまで紹介してきた一連のSMAP本の最後となります。
 著者は、1974年広島県生まれ。商業誌から社会学論文まで幅広く執筆。国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がけています。

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   本書の帯


 本書の帯には「すべては2016年1月13日にはじまった・・・・・・」「解散の経緯、マスコミ報道、日本の芸能界の掟を追う」「中居正広、木村拓哉、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾」「SMAPメンバーはどこへ向かうのか」と書かれています。

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   本書の帯の裏


 カバー裏には、「SMAPは解散する必要があったのか?」として以下のように書かれています。


「『公開処刑』と呼ばれたSMAPの"謝罪会見"。テレビやスポーツ新聞などのマスコミは、これを批判することなく報道した。その背後には芸能界との強い癒着体質があり、ジャニーズ事務所は、旧い『義理と人情』の世界を生きている。国会議員も注視するように、これはグローバル化を目指す文化産業では、致命傷にもなりかねないリスクとなる。メンバーは今後どこに向かうのか。彼らのこれまでとこれから、そして日本のメディア、芸能界の構造を考える」

 わたしのブログ記事「SMAPファンからのメール」に書いたように、SMAPの解散劇は謎と闇を感じます。そこに最も鋭く斬り込んだのが著者だと思います。以下は、本書のベースにもなっている著者が書いたSMAP関連の記事です。


●「存続するSMAP、民主化しないジャニーズ――SMAP解散騒動の煮え切らない結末」(「Yahoo!ニュース個人」2016年1月18日)
●「テレビで『公開処刑』を起こさないための"JYJ法"――SMAP騒動から考える芸能界の将来」(「Yahoo!ニュース個人」2016年1月20日)
●「避けられたはずのSMAP解散──誰も幸せにならなかった結末
(「Yahoo!ニュース個人」2016年8月14日)
●「最後まで奇妙だったSMAP解散報道──徹底的に独自取材を避けるテレビ局」(「Yahoo!ニュース個人」2016年8月16日)
●「なぜ日本の芸能人は『独立』ができないのか
(「PRESIDENT」2016年2月29日号)

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。


「プロローグ」
第1章 SMAPとはどんなグループだったのか
第2章 マスコミは解散をどう報道したのか
第3章 日本・アメリカ・韓国における芸能界の〝掟〟
第4章 SMAP解散で日本はどこへ向かうか
「エピローグ」
「おわりに」

 「プロローグ」の冒頭を、著者は以下のように書き出しています。


「もしかしたら2016年は、SMAP解散報道で始まり、そして解散で終わった1年として、多くのひとの記憶に刻まれるかもしれない。本書はそうしたSMAP解散までの1年を検証するとともに、それを日本社会の問題として捉えたものである。周知のとおり、SMAPの解散においては異様なことが数多く生じた。『公開処刑』とも呼ばれたあの"謝罪会見"をはじめ、それを肯定的に扱って問題視しないテレビやスポーツ新聞などのマスコミの姿勢がそうだ。一方、ネットや雑誌では、ジャニーズ事務所やマスコミの姿勢を疑問視する声が大きく膨らんだ。両者の温度差はとても激しいものだった」

 第1章 「SMAPとはどんなグループだったのか」では、「『SMAP×SMAP』で確立された『全方位型スターグループ』」として、著者は述べます。


「アイドルとは、本来的には疑似恋愛の対象だ。もちろんそれは『疑似』の範疇を出ることはないが、対象に強い恋愛〝的"な感情を抱くことで成立することに主題を置く。アイドルが若者文化としてスタートしたのは、恋愛が若者たちにとって大きなライフイベントだからだ。SMAPももちろん当初はそうして人気を得た存在であることには違いない。
 ただ、SMAPが他のアイドルと違ったのは、女性ファン以外にも訴求する存在であったことだ。具体的には、子どもたちやその親、男性にも当たり前のように受け入れられた。SMAPの歌には興味ふぁないひとも、『スマスマ』での料理対決やコントなどを楽しんでいたのである。彼らの人気は、バラエティタレントとしてのそれでもあったのだ」

 また、著者はアイドルとしてのSMAPについて以下のように述べています。


「SMAPを従来のイメージで『アイドル』とまとめ、歌手としての活動ばかりに注目してしまうことは、その存在感を見誤ることにもなる。確かにアイドル歌手ではあるが、同時にトップ俳優であり、コメディアンであり、司会者だからだ。それは日本の芸能史においても、前例のない『全方位型スターグループ』だったのである」

 「90年代中期のジャニーズを支えたSMAP」として、著者は指摘します。


「80年代のジャニーズ事務所はたのきんトリオ、シブがき隊、少年隊、光GENJIと大人気となったグループを順調に送り出してきた。しかし、その勢いに陰りが出始めたのが、90年代前半から中期にかけてだ。
 この時期、80年代から活動を続けてきたグループの解散が相次いだ。まずは93年6月に男闘呼組が活動を休止。大人気だった光GENJIの人気も急激に失速し、95年9月に解散する。97年には、その2年前にふたりのメンバーが抜けた忍者も活動を終える。また、少年隊は現在まで存続してはいるが、この頃既にグループでの活動よりも個々の活動を優先させている。
 一方で、新人グループも立て続けに生まれていた。94年にTOKIO,95年にV6,97年にKinki KidsがそれぞれCDデビューした。93年から97年にかけては、ジャニーズ事務所に急激な世代交代が生じていた時期だった。SMAPは、この流動期に中心にいたのだった」

 「20年前から噂されてきた〝飯島派"と〝ジュリー派"」として、著者はジャニーズ事務所の中ふたつの派閥が存在したことを明らかにし、それは業界だけでなく、ファンの間でもかねてから噂されてきたと述べます。ふたつの派閥とは、〝飯島派"がSMAPをはじめ。山下智久(元NEWS)、Kis‐My‐Ft2,A.B.C-Z,Sexy Zoneなどで、対して〝ジュリー派"が、TOKIOや嵐、NEWS,関ジャニ∞、KAT-TUN、Hey!Say!JUMPです。

 ジャニーズ事務所には、ジェイ・ドリームとジェイ・ストームというふたつの子会社がありますが、著者は以下のように説明します。


「ジェイ・ドリームは、SMAPやKis‐My‐Ft2のメンバーのための会社で、木村拓哉主演の映画『HERO』などに製作参加(出資)している。社長はジャニー喜多川だが、取締役には飯島が名を連ねていた。一方ジェイ・ストームは、嵐やTOKIOKAT-TUNなどのための会社で、二宮和也主演の映画「GANTZ」などに出資している。社長を務めるのは、藤島ジュリー景子だ。ジャニーズ事務所の二本柱であるSMAPと嵐は、ビジネスを決めるのは、藤島ジュリー景子だ。ジャニーズ事務所の二本柱であるSMAPと嵐は、ビジネス上でもそれぞれべつの扱いだったのである。そんななか、Kinki Kidsとタッキー&翼は、中立だと言われる」

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   元SMAPの草彅剛のシルエット


 第2章 「マスコミは解散をどう報道したのか」では、「ネットでの画像公開を拒否するジャニーズ事務所」として、著者は以下のように述べています。


「そもそもジャニーズ事務所は、過剰なほどにネットと距離を置いてきた事務所だった。よく知られているのは、いまだにネットにタレントの画像(写真)や映像、音声が流通することを強く拒否していることだ」


 たとえば、Amazonなど多くのオンライン書店がありますが、そこで売られる雑誌や書籍では絶対に写真の使用は認められず、そこだけシルエットで表示されます。これは表紙だけでなく、本文中の記事でも同様です。

 わたしのブログ記事「ジャニーズ事務所について思うこと」に書いたように、わたしはこの点について非常に疑問に思っています。
 なぜ、ジャニーズ事務所はネットの画像を過剰に拒否するのでしょうか? 
 その理由を、著者は以下のように推測しています。


「おそらく、コピーが容易なデジタルデータによって海賊版のグッズが製作・流通することを防ぐことが目的だと思われる。他の説としては、ライブなど興行にこだわるジャニー喜多川社長が、所属タレントの現在の姿こそをファンに見てほしいと願っているから、という話も耳にしたことがある」


 続けて、著者は「ただ理由はどうであれ、ジャニーズ事務所のネットを忌避する姿勢が、きわめて時代錯誤であることは違いない」と述べています。。

 ジャニーズ事務所のこの時代錯誤な姿勢は、さまざまな弊害を生みました。国民的アイドルグループであったSMAPの不可解な解散は、その最たる例です。著者は「誰も幸せにならなかった結末」として、以下のように述べています。


「この結末によって、誰ひとりとして幸せになった者はいない。SMAPメンバーはその人気に大きなダメージを負い、ジャニーズ事務所は稼ぎ頭を失い、さらに閉鎖的かつブラック企業のイメージがこれからもまとわり続ける。音楽や放送、CM業界も大切なプレイヤーを失い、飯島は実質的に業界を追い出された。なにより、もっとも傷ついたのがファンであることは言うまでもない。数理経済学者の宮本勝浩は、その経済損失を年間約636億円と算出した。この全てがジャニーズ事務所の売上ではないが、SMAP解散によって数百億円の単位で同社が売上を失うことは決定的だ。しかし、〝義理と人情"のジャニーズ事務所は、そうなることを厭わなかった」

 「崩壊が予想されるジャニーズ事務所」として、著者は述べます。


「ジャニーズ事務所のこうした姿勢とは、俯瞰すれば高度経済成長記期によく見られた一族経営の中小企業が歩んだ末路と似ている。バブル崩壊以降、後期近代社会の流動性に適応できず、そうした多くの企業が減衰し、消えていった。この場合、将来的に起こりがちなのは代替わりの際の混乱だ。具体的には、先代ほどの人望がない2代目(後任)から、内部的にも外部的にもひとが離れていくパターンだ。ジャニーズ事務所の場合、メリー&ジャニー姉弟の持つカリスマ性と強権性を、2代目のジュリーがカバーしきれないことは容易に想像がつく」

 続けて、著者は以下のように述べます。


「それは、一般的にも中小企業で頻繁に見られる『お家騒動』だ。〝義理と人情"や世襲といった旧い価値観ガなかなか共有されない時代に、2代目に信望がなければ、2代目に信望がばければ、簡単に混乱が生じる。非民主的で閉鎖的な組織の成員を繋ぎとめていた情緒的な紐帯が切断されれば、成員たちは理性的かつ民主的な手続きを模索する。よって、2代目は体制を変化させるかどうかの決断を迫られる」

 第3章 「日本・アメリカ・韓国における芸能界の〝掟〟」では、「雇用主であるアメリの芸能人」として次のように述べています。


「世界的に見れば、こうした日本の芸能界のあり方は非常に独特だ。たとえば、アメリカには『芸能プロダクション』はない。アメリカで働く芸能人は、最初から独立した個人として活動するからだ。
 アメリカで芸能プロダクションの代わりに存在するのは、エージェント、あるいはその組織である窓口となる代理人であり、成功報酬の10~15%をを受け取ることで成立するビジネスだ。芸能人は、このエージェントとここに契約して仕事を進める。つまり、アメリカでの芸能人とは、非雇用者ではなく雇用主でもある芸能人だ」

 そして、「『奴隷契約』だから生まれたグループアイドル」として、著者は以下のように述べるのでした。


「アメリカではさほど見られない日韓のグループアイドルも、こうした芸能プロダクションの育成システムと長期契約があるからこそ可能な形式だ。複数のメンバーが安定的に芸能プロダクションに所属するからこそ、グループでの活動も可能となるからだ。つまり、東方神起もKARAも、そして日本のSMAPも、全ては芸能プロダクション主導だからこそ生まれたのである。言い換えれば、"奴隷契約"だからこそ、グループアイドル文化は生まれたのである」