No.1384 社会・コミュニティ | 芸術・芸能・映画 『大人のSMAP論』 速水健朗・戸部田誠・みきーる著(宝島社新書)

2017.01.30

 『大人のSMAP論』速水健朗・戸部田誠・みきーる著(宝島社新書)を読みました。異色の3人がSMAPのすべてを語り尽くした内容となっています。

本書の帯

 帯には5人のシルエットとともに、「SMAPの前にSMAPなし!
SMAPの後にSMAPなし!」「ありがとう! SMAP ”革命的アイドル”その奇跡と偉業を語り尽くす!」と書かれています。

本書の帯の裏

 また帯の裏には、SMAPメンバーについて以下のように書かれています。

美形で優秀なのに「ダサい」を追求する中居正広
木村拓哉は日本の恋愛とファッションを変えた
性別を超えてすべてを受け入れてくれそうな稲垣吾郎
草剛は全裸事件でも好感度アップの「いいひと。」
光と闇の両面を持つ切なさのかたまり香取慎吾
森且行が脱退する前と後でSMAPは何が変わったか

 さらにカバー裏には以下のような内容紹介があります。

「2016年12月31日、とうとうSMAPが解散する。『SMAP解散』のニュースはNHKで速報として流され、解散報道を受けての『謝罪生会見』は瞬間最高37%超の視聴率を記録。一アイドルグループの解散が国民的関心事となる”異常事態”となった。ジャニーズの”落ちこぼれ”といわれたグループは、なぜ『国民的アイドル』になり得たのか? 気鋭の評論家・速水健朗氏、偏執的なテレビウォッチャーとして知られる戸部田誠氏(てれびのスキマ)、”ジャニヲタ・エバンジェリスト”みきーる氏の3人が、革命的アイドルの『奇跡』と『偉業』を語り尽くす。これぞ大人も納得、『SMAP論』の決定版!」

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。

「はじめに」
第1章 オンリーワン×5=ナンバーワン
第2章 解散騒動をめぐるカンカンガクガク
第3章 音楽論:自由と覚醒のSMAPPOP
第4章 メンバー論:5(+1)人の超人たち
第5章 テレビ論:高性能総合芸能体かく戦えり
第6章 SMAPなきジャニーズと芸能界の未来

 第1章「オンリーワン×5=ナンバーワン」では、「SMAPは皇室のような象徴的存在」として、戸部田氏が以下のように述べています。

「僕は、テレビに出ている人は芸を見せている人という意味で、すべて芸人と捉えているので、その中でいちばん優秀なグループのうちのひとつがSMAPだと思っています。アイドルは『○○推し』がありますが、SMAPに関しては多くの人が個人推しというより、『グループ推し』のような感覚を持っている。それもまた特殊だと思いますね」

 また、「身近な彼氏であり国民的アイドル」として、みきーる氏が述べます。

「ピッシリしたきれいな王子風の衣装ではなくカジュアルなファッションで、ボーイフレンド的な存在として見てもいいのかなと思わせてくれるアイドルでした。男性からしても『アイツら、いい感じじゃない』と思えますよね。その点でも、SMAPは男性の目線も捉えたんじゃないでしょうか」

 それを受けて戸部田氏が「SMAPには『部活感』がありますね」と言うと、みきーる氏は以下のように答えるのでした。

「すごく放課後の雰囲気があるんですよ。教室にいるクラスの男子なんて何てことないと思っていたのに、放課後にバスケやリフティングをしている姿を見かけてドキっとする。そのトキメキ感を演出したのは、SMAPが最初ではないでしょうか」

 さらに、「震災後に国民に寄り添う存在に」として、速水氏が語ります。

「ジャニー喜多川さんが育て上げたアイドルの理想型は少年隊だというのが、この3人の一致した見解なんですが、その理由は常設のミュージカルを永続的に上演することができるスキルがある人たちだから。86年から08年まで『PLAYZONE』を続けた少年隊がジャニーズの完成型だとすると、SMAPはテレビの中が舞台ですよね」

 戸部田氏は「SMAPだけが長くアイドルでいられた理由」として、「SMAPは多くの日本人にとってもはや『日常』の存在になっていたんですよね。『笑っていいとも!』の最終回もそうでしたが、日常と密接に関わっていたものが急になくなると、突然、誰かが死んでしまったくらいの喪失感があります」と言います。それを受けた速水氏は「本来、アイドルは刹那を楽しむ存在なので、ピークで解散すると、その衝撃も大きいため伝説の存在になる」と述べるのでした。

 第2章「解散騒動をめぐるカンカンガクガク」では、「自由を体現し、自由を奪われるという皮肉」として、戸部田氏は以下のように述べています。

「今年大ヒットした映画『シン・ゴジラ』のコピーは『現実vs虚構』ですけど、2016年のテーマはまさに『現実vs虚構』だったのかなあって思います。SMAPはアイドルの中でも、現実と虚構のバランスを一気に変えたグループですよね。みんなに夢を見せるアイドルでもあるけれど、彼らは現実のリアリティの部分を拡大した。でも、それが巨大な現実に潰されていくことには皮肉を感じます」

 第3章「音楽論:自由と覚醒のSMAPPOP」では、速水氏が「ジャニーズの歴史にはロック派とディスコ派があって、わかりやすく言うと、トシちゃんがダンス/ブラックミュージック系でディスコ派、マッチはロック派です。SMAPはクロい、踊れる路線にした。70年代のブラックミュージックを再解釈するレアグルーヴ路線です」と解説しています。

 第5章「テレビ論:高性能総合芸能体かく戦えり」では、「SMAPのバラエティはとんねるずの系譜?」として、戸部田氏が「SMAPはクレージーキャッツやドリフターズと比較されることが多いのですが、僕の実感だとむしろ、とんねるずだと思うんです」と語っています。みきーる氏も、「たしかに、とんねるずもスーツを着てキメたりしていましたし、彼ら自身のスタイルのよさもあって、カッコいいお笑いでした」と言います。

 さらには、速水氏が以下のように述べるのでした。

「彼らの手法は、まさに”ザ・フジテレビ”です。マネージャーを普通に番組に出演させたり、テレビの裏側を全部見せたりして、視聴者を共犯関係に巻き込む。SMAPは部活感があると言いましたが、とんねるずもまさに部室芸です。あの距離感は、彼ら以前はバラエティの手法としてメインではなかった。SMAPはそれを自然に取り入れた感じはある」

 ここで、速水氏が非常に重要なことを指摘します。

「歌、演技、笑い・・・・・・テレビの『何でもあり』を体現」として、速水氏は「僕が考える総合性は、もちろんドリフターズやクレージーキャッツもそうですが、マチャアキが筆頭のような気がするんですね。もともと歌手だし、ドラマもバラエティもこなす」と述べるのです。

 それを聴いたみきーる氏が「テーブルクロス引きとか。マルチタレントってことですか」と突っ込むと、速水氏は以下のように言うのでした。

「そう、マチャアキはマルチタレントのはしりでしたよね。『カックラキン大放送!!』もあったし、司会もやる。『新春かくし芸大会』も毎年、楽しみだったなぁ。『総合的な芸能』という分野は、実はマチャアキと井上順の2人が引っ張ったと思うんですよね。SMAPはマチャアキ性も井上順的な部分も併せ持っていますよね。戸部田さんが『とんねるず説』なら、僕は『マチャアキ説』を提唱します。料理もするしね、マチャアキ」

 それを読んだわたしは「なるほど!」と膝を叩きました。
 わたしは、「とんねるず説」よりも「マチャアキ説」を断固支持します。
 ブログ『ジャニーズと日本』で紹介した本でも指摘していましたが、GSブームは元祖ジャニーズやフォーリーブスに強い影響を与えています、郷ひろみをはじめとするその後のジャニーズアイドルはすべて、グループサウンズのアイドル性の部分を引き継いでいるのです。そして、ザ・タイガースの沢田研二(ジュリー)などとともにGSブームの最高のアイドルの1人がザ・スパイダースの堺正章(マチャアキ)でした。

炭火焼肉 An」の前で

 堺正章の芸能人としての「総合性」という観点から見れば、SMAPこそはマチャアキの最大の後継者と言えるでしょう。そのマチャアキは六本木の焼肉店「炭火焼肉 An」をプロデュースしていますが、昨年の大晦日の夜、キムタクを除く元SMAPメンバーたちが同店を訪れたことで話題となりました。ブログ「焼肉を食べながら、SMAPについて考えた」で紹介したように、わたしも先日、同店で食事しましたが、沖縄の本部牛が絶品でした。玄関前の看板にはマチャアキの笑顔がありました。

炭火焼肉 An」はマチャアキのプロデュース

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