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百年続く企業の条件』

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No.1343


 『百年続く企業の条件』帝国データバンク史料館・産業調査部編(朝日新書)を再読しました。「老舗は変化を恐れない」というサブタイトルがついています。2009年9月30日に刊行された本ですが、わがサンレーの創立50周年がいよいよ近づいてきたので(11月18日)、さらなる永続企業となるヒントを探るべく読み返したのです。

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   本書の帯


 本書の帯には「100年に一度の不況ぐらいじゃ驚かない」「それでも企業の寿命は延びている」「誰よりも企業を見続けてきた帝国データバンクが分析する!」と書かれています。

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   本書の帯の裏


 また、カバー前そでには、「世界に冠たる老舗大国の強みは、老舗の『ベンチャー精神』にあった!」として、以下のように書かれています。


「誰よりも企業を見続けてきた目利き集団が、財務、歴史、社訓など、あらゆる角度から徹底分析。経営者へのインタビューと最強のデータベースから、不況、震災、戦災を生き抜く企業の秘密を解き明かす。老舗研究の決定版!」

 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。


「はじめに」
第一章 戦災、震災、恐慌を生き抜いた老舗の社是、社訓  
1 老舗の信と誠
2 老舗の「家訓・社是・社訓」を分析する
第二章 老舗とは何か
1 老舗概論
2 老舗が多い業種はどれだろう
3 老舗の集まる地域と支える人びと
第三章 老舗は一日にして成らず―12社の肖像  
老舗ファイル01 株式会社 虎屋
老舗ファイル02 株式会社 印博屋上原勇七
老舗ファイル03 株式会社 エイラクヤ
老舗ファイル04 ヤマサ醤油 株式会社
老舗ファイル05 福田金属箔粉工業 株式会社
老舗ファイル06 ジャパン・フィード&リカー・アライアンス 株式会社
老舗ファイル07 第七酒造 株式会社
老舗ファイル08 中庄 株式会社
老舗ファイル09 帝國製薬 株式会社
老舗ファイル10 カネダ 株式会社
老舗ファイル11 株式会社 カミネ
第四章 老舗の財務を分析する  
(1)老舗企業全体と全業種平均
(2)業種別にみる老舗企業の財務
第五章 老舗が倒れるとき 
【ケース1】地場の老舗建設業者「小川建設」は、なぜ倒産したか
【ケース2】不況に沈んだ老舗百貨店「丸井今井」
第六章 変わる老舗、新しい老舗
「老舗の創業年表―いまも数多くの企業が歴史を刻む」
「おわりに」

 「はじめに」では、「企業の平均年齢は延びている?」として、以下のように書かれています。


「帝国データバンクの企業概要データベース『COSMOS2』に収録されている約125万社のデータをみると、それらの企業の業歴(創業や設立から現在までの年数)、つまり企業の平均年齢は40.5年。1980年代半ばに唱えられた『企業の寿命30年説』を大きく超えている。
 これは、たくさんの社会インフラや人命が強制的に奪われ、経済活動が止まってしまった第二次世界大戦から60年以上を経て、曲がりなりにも『平和』な時代が続いており、企業の寿命自体が延びているのだといえるだろう。たとえ倒産や廃業が増加しているにしても、それ以上に多くの健全な企業が時を重ねているということだ」

 第一章「戦災、震災、恐慌を生き抜いた老舗の社是、社訓」の1「老舗の信と誠」には、「家訓、社是、社訓はGPSのようなもの」として、「家訓、社是、社訓がありますか?」という設問には、「明文化」もしくは「口伝されている」と回答した企業が77.6%にのぼったと紹介されています。さらには以下のように書かれています。


「企業における家訓、社是、社訓の役割については、『基本的な経営指針』、『社内の共通価値観の醸成』と考えている企業が多く、全体の80%を超えた。具体的には、『経営者の心のブレーキであり、これからやることが正しいかどうか考える時の材料にしている』(清酒醸造)というように、何かを決断する際の指標であり、立ち返るべき原点となっているようだ。『ブレーキ』という言葉が示すように、将来を見据えた目標設定というより、現在の会社のポジションを俯瞰して確認するGPS(全地球測位システム)のような機能を果たすものといえるだろう」

 第二章「老舗とは何か」の1「老舗概論」では、「日本には、いったい何社の老舗企業があるのだろうか」という問いに続いて、以下のように書かれています。


「帝国データバンクの企業概要データベース『COSMOS2』に収録されている約125万社のうち、宗教法人や学校法人、医療法人などの非営利法人を除いた118万8474社のなかで、創業または設立から100年以上(1908年以前に創業または設立)の企業は1万9518社、ほぼ2万社になる。つまり、企業全体の約1.6%が100年以上の歴史を持っている老舗だ。また、創業200年以上は938社、300年以上は435社にのぼる」

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   日本最古の旅館「法師」の玄関内部


 また、「温泉旅館に『超』老舗企業が多い理由」には、以下のように書かれています。


「石川県・粟津温泉で温泉旅館『法師』を経営する善吾楼は、718(養老2)年に越前国生まれの僧、泰澄大師が温泉を掘り当ててから、1300年近い歴史を持っている。この善吾楼は、世界の老舗による国際組織『エノキアン協会』(本部=フランス・パリ、ヨーロッパを中心に40社が加盟)にも加盟しており、その40社のなかでも一番歴史が古いとされる。また、『世界最古の温泉旅館』として、ギネスブックにも登録されている。ちなみに、『西山温泉慶雲館』が善吾楼より歴史が古いのにギネスブックに認定されていないのは、ギネスブックへのエントリーが当事者からの自主申告によってなされているという理由である」


 わたしのブログ記事「法師」で紹介したように、わたしは日本最古の旅館に宿泊しましたが、廊下にエノキアン協会の加盟証が飾られていました。

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   法師エノキアン協会の加盟証


 ちなみに、わたしは旅館・ホテルほど経営の難しい商売はないと思っていますので、この業種に数百年も続く老舗が存在すること自体が不思議でなりません。2「老舗が多い業種はどれだろう」では、清酒製造、酒小売、呉服・服地小売に続いて、旅館・ホテルが4位となっています。そして、以下のように書かれています。


「旅館・ホテルは、世界一古いとしてギネスブックに登録されている石川県・粟津温泉の善吾楼のように、温泉の湯治場から始まったものも多い。また、明治時代に国策で作られた東京の帝国ホテル(1887(明治20)年創業)や、外国人専用のリゾートホテルとして開業した栃木県・日光の金谷ホテル(1873(明治6)年創業)や神奈川県・箱根の富士屋ホテル(1878(明治11)年創業)など、文明開化以降に開業したホテルもすでに100年以上の歴史を重ねる」

 3「老舗の集まる地域と支える人びと」では、近江商人の「三方よし」いついて、以下のように書かれています。


「商いを続けていくうえで、顧客からの信用は不可欠だ。しかも、他国での商いならなおさら、正しい商いを行い、きちんと振る舞って、周囲からの信頼されることが重要になってくる。そのための心得、つまり経営理念として生まれたのが44ページでも紹介した『三方よし』という考えだ」

 続いて、「三方よし」について、以下のように書かれています。


「『売り手よし、買い手よし、世間よし』という言葉の原文は、1754(宝暦4)年に近江国・石馬寺(現在の東近江市)の麻布商の中村治兵衛宗岸が養嗣子にあてて記したものである。自分の利益だけでなく顧客満足を第一に商いを行っていれば、やがて世間からの信頼も得られること。江戸時代にすでに今で言うところのWIN-WINの関係を説いている。この『三方よし』の考えは、現在でも企業のCSR(社会的責任)を語るうえでよく引き合いに出される。まさに『社会的責任』そのものだからだ」

 第五章「老舗が倒れるとき」では、業歴が長いと安全だと思われている理由について、以下のように書かれています。


「1つめは、業歴を重ねると実績が増え、業歴が短い企業よりも仕事を確保しやすいから。2つめは、長寿のたまものとして土地などの資産が多く、不景気になっても資産を切り崩しながらやり過ごして、好景気再来を待てるだけの体力があるから。3つめは、長年の取引から信用があり、いざという時に取引先に融通を利かせてもらったり、信用取引をフル活用したりできるから。この3つが、一般的に語られる論拠であろう」

 【老舗の倒産リスクを見極める十の心得】というのも紹介されていますが、これが非常に示唆に富んでいます。


一、 後継者が社内外で信頼を得ているか
二、 経営者から幹部への権限委譲が進んでいるか
三、 事業承継を早期に周囲に知らせているか
四、 後継者にリーダーシップ、判断力、計数管理力があるか
五、 柔軟性の高い組織文化が醸成されているか
六、 問題を先送りにする傾向が強くないか
七、 現状維持志向に陥っていないか
八、 従業員が経営陣に冷めていないか
九、 オーナー一族が従業員の失笑を買っていないか
十、 会社の悪口がインターネット上で賑わっていないか

 最後に、「おわりに」には以下のように書かれています。


「続いていく老舗企業とは『クラシック』ではなく、『エバーグリーン(常緑樹)』のような存在である。長く育ててきた幹や根はかたくなに守りつつも、常に光合成を行い、新しい葉を伸ばして、年輪を重ねてきた。それは、これから年月を重ねていこうとする新しい企業を導く範となるものだ。『100年に一度』ぐらい、たとえ水が枯れることがあっても、立ち枯れしないだけの力は蓄えている」

 この「あとがき」の素晴らしい名文に、わたしは感銘を受けました。
 ぜひ、わが社も立ち枯れしない企業に育てたいと心から思いました。
 帝国データバンクの本だけあって、本書はデータも豊富で、実践的な経営の参考書であると思いました。サンレー創立50周年まで、あと8日!