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戦後怪奇マンガ史』

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No.1340

 

 『戦後怪奇マンガ史』米沢嘉博著(鉄人社)を読みました。

 この読書館でも紹介した『戦後SFマンガ史』の続編です。

 表紙には、ムロタニ・ツネ象の『地獄くん』の絵が使われています。

 

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    本書の帯

 


 本書の帯には「初めて解き明かされたホラーマンガの通史!」と大書され、続いて「水木しげる★楳図かずお★手塚治虫★徳南晴一郎★好美のぼる★古賀新一★いばら美喜★竹内寛行★福田年兼★藤子不二雄★ムロタニ・ツネ象★日野日出志★小島剛夕★森由岐子★諸星大二郎★川島のりかず★つのだじろう・・・・・・etc.」と書かれています。

 

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    本書の帯の裏

 


 アマゾンの「内容紹介」には、以下のように書かれています。

 

「本書は、漫画評論家の故・米沢嘉博氏が生前、ホラー雑誌に連載していた原稿を『戦後怪奇マンガ史』として一冊にまとめたものです。手塚治虫『ロストワールド』から、つのだじろう『新・うしろの百太郎』まで。『怪奇漫画』約40年間の流れをたどっています。 『怪奇漫画』は、膨大な点数の書籍が出版されています。赤本漫画、貸本漫画、初期少女漫画、少年漫画 ・・・。作家で言えば、楳図かずお、日野日出志、伊藤潤二などなど。これまで、個々の作家についての研究書はありましたが、〝通史〟と呼ばれるものは存在しません。それは、なぜか。想像するに『怪奇漫画』では、人がバタバタと死ぬし、残虐な場面も多いため、作品として軽視されがちなのかもしれません。本来、怪奇漫画は、人間のもつ嗜虐性、ほの暗い欲求もあぶり出す『高級な』ジャンルのはずですが、評論家筋からは往々にして低く見られがちで、評論の場などにはあまり上がってこないのが現状です。本書は、そんな裏通りのジャンル『怪奇漫画』を体系的に捉え、さまざまな角度から分析し、総体に迫ろうとした初の試みです。これは著者の独壇場とも言えるもので、アナログ派だった米沢氏は、脳に膨大な記憶のストックを所持し、長年かけて独自のデータベースを構築したのです。 間違いなくこれは、米沢嘉博にしか書けない本です。ホラーファンはもちろん、全ての漫画好きは必読!」

 本書の「目次」は、以下のようにまっています。

 

「編者より」

「本書を読む前に」

第一部 戦後怪奇マンガ史

0 はじめに

1 前史

2 「こわいまんが」の出現と成立

3 水木しげると兎月書房

4 「怪奇探偵漫画」の台頭

5 怪奇時代劇と小島剛夕の人気

6 怪奇アクションシリーズ登場

7 小説と映画の静かな怪奇ブーム

8 貸本劇画の奇書、怪書、珍書

第二部 恐怖マンガの系譜

9 楳図かずお その1 恐怖の刻印

10 楳図かずお その2 恐怖の完成

11 楳図かずお その3 少年から少女へ

12 恐怖からの脱出、SFへの飛翔

13 少年誌発・妖怪ブーム

14 ムロタニ・ツネ象・孤高の怪奇世界

15 楳図かずおと古賀新一

16 古賀新一・因果の舞台劇

17 怪奇競作短編ブーム その1

18 山田ミネコ 魔法少女の時間

19 萩尾望都・その1 吸血鬼幻想

20 萩尾望都・その2 怪奇からSFへ

21 山岸凉子・その1 「ゆうれい談」の登場

22 山岸凉子・その2 肉体・精神・霊

23 山岸凉子・その3 霊感少女の災難

24 日野日出志・その1 原色の風景

25 日野日出志・その2 狂気の地獄絵

26 手塚治虫・その1 青年怪奇マンガへの挑戦

27 手塚治虫・その2 暗い時代の中で

28 手塚治虫・その3 闇の記憶としての恐怖

29 山上たつひこ・悪意と恐怖とグロテスク

30 池上遼一・不条理の風景

31 諸星大二郎・その1 日常にひそむ闇

32 諸星大二郎・その2 SFの中の怪異

33 永井豪・笑いから恐怖へ

34 永井豪・恐怖からSFへ

35 怪奇競作短編ブーム その2

36 古典名作書き下ろしシリーズ

37 ひばり書房の軌跡 その1

38 ひばり書房の軌跡 その2

39 立風書房・レモンコミックスの作家たち

40 美内すずえ・伝奇ロマンの語り手

41 佐伯かよの・SFの中の恐怖

42 里中満智子・愛に恐怖を

43 わたなべまさこ・その1 悪魔の少女たち

44 わたなべまさこ・その2 怪奇メロドラマへの道

45 つのだじろう・マンガと心霊科学
解題1 想田四「米沢さんと怪奇マンガとマンガ史と」

解題2 成瀬正祐「戦後マンガ史の最終楽章」

資料 ひばり書房 怪奇マンガ総目録(暫定版)

「初出一覧」

「参考文献」

 「編者より」の冒頭を、編者の赤田祐一氏は以下のように書いています。

 

「本書は漫画評論家の故・米沢嘉博が生前に連載していた『戦後怪奇マンガ史』『恐怖マンガの系譜』を同題『戦後怪奇マンガ史』として1冊にまとめたものである。初出は30年前―インターネットが一般化される以前の時代―1986年秋から90年冬にかけて、当時のホラービデオブームにより5誌に及ぶホラー漫画専門誌が創刊されたのだが、その中の1誌である『ホラーハウス』(大陸書房)に全46回連載されたものに、書きおろしの解題および資料を加えたもの。戦後怪奇漫画のはじまりに近いとされる手塚治虫『ロストワールド』から、つのだじろう『新・うしろの百太郎』まで、『怪奇漫画』約40年間の流れをたどって概観した一大通史である」

 

 第一部「戦後怪奇マンガ史」の1「前史」の冒頭には、以下のように書かれています。

 

「江戸時代の草紙絵の類の中には、かなりの数の妖異談があったらしい。『江戸挿絵文庫』等を見る限りでは、妖怪、化猫、幽霊といった怪異が描かれている。また『病草紙』『地獄草紙』『餓鬼草紙』など、この世、あの世の怪異を描くものも多かった。中には仏教のプロパガンダの為に描かれたものもあったが、多くは婦女子を恐がらせ、悦ばせる為に描かれたものだったようだ」

 

 続けて、著者は以下のように書いています。

 

「『日本霊異記』『雨月物語』『今昔物語』といった説話文学、物語文学にも怪異談は多い。それは、水木しげるなどが原本とする、江戸時代の"妖怪画"の量の多さにも通じる、日本人の"怪異"好き故であろう。幕末から明治にかけて、挿絵、絵手本等で活躍した、おそらく日本の漫画家第1号である河鍋暁斎も、かなりの『妖怪画』を残している」

 

 また、著者は「怪奇マンガ」の始まりについて以下のように述べます。

 

「やはり、怪奇マンガというジャンルの始まりは、戦後の手塚治虫から始めなければならないだろう。紙芝居『黄金バット』『ハカバ・キタロー(墓場奇太郎)』といったものもあったが、それは戦後甦った時、前者は冒険活劇に、そして因果物であった後者は昭和30年代に水木しげるの作品として現われるのだ」

 

 続けて、著者は手塚治虫について以下のように述べます。

 

「さて、手塚の中にあった怪奇への嗜好は、デビュー前に原型が描かれていた1948年の『ロストワールド』(不二書房)で既に現われている。同作の地上編は、影を使ったミステリアスな仕掛けであり、そこに登場する悪人達の姿形は実にグロテスクだった。ここで、手塚の見せた手法は、後の怪奇マンガにはほとんどそのまま受けつがれていく。おそらくそれはドイツの表現主義映画等の影響を受けたものだったのだろう。同1948年、手塚は『魔法屋敷』(不二書房)を発表している」

 

 3「水木しげると兎月書房」では、著者は初期の水木しげるとその周辺に言及し、以下のように述べています。

 

「1960年、水木しげるが中心となって編集された怪奇短編集『妖奇伝』(兎月書房)が刊行される。言うまでもなく鬼太郎の初登場であり、その誕生が描かれた。2号の醜い禿の骸骨の頭にたてられたロウソクの図というグロテスクな画は、表紙としてかなりのインパクトを持っていたと思われる。水木しげる自身によれば『これがまたグロテスクすぎるというので全然売れない。ところが、1人の読者から長文の手紙が届きましてね。この作品は絶対続けるべきだというんです。この手紙がなければ、こんなに鬼太郎は続いてなかったかもしれませんね』ということらしい」

 
 4「『怪奇探偵漫画』の台頭」では、「スクリーンから玩具箱の中へ・・・・・・」として、著者は以下のように述べます。

 

「1955年『原始人間』、1957年『フランケンシュタインの逆襲』、1958年『吸血鬼ドラキュラ』『美女と液体人間』『獣人ゴリラ男』、1959年『ミイラの幽霊』『双頭の殺人鬼』『黒死館の恐怖』、1960年『アッシャー家の惨劇』『サイコ』『顔のない眼』『電送人間』『ガス人間第1号』、1961年『未知空間の恐怖 光る眼』『死霊の町』、1962年『血とバラ』・・・・・・。昭和30年代前半頃に封切られた怪奇映画である。さらにこの時期、TVでは、ユニヴァーサルの怪奇映画『魔人ドラキュラ』『フランケンシュタイン』・・・・・・『ハエ男の恐怖』等が放映されたはずである」 日本の怪奇マンガの多くも、こうした映画からの刺激を受けて描かれたのでした。

 

 9「楳図かずお その1 恐怖の刻印」では、著者は述べています。

 

「楳図の怪奇マンガは、少女のみならず少年達も怖がらせ、当時の多くの読者に恐怖の刻印を残した。少女マンガ誌の中に怪奇マンガがレギュラーで入ることになっていったのも楳図かずおのせいだ。―彼の登場はまさしく衝撃的だったのである」

 

 楳図の『ママが怖い!』を取り上げた著者は、以下のように述べます。

 

「蛇という生理的恐怖を抱かせる生物を登場させ、それを母という本来なら少女にとって信頼されている『幸せのシンボル』とでもいうべき存在と重ねあわせる設定自体、恐怖を内包していた。この時代の少女マンガはまだ母物ドラマがかなり残っていた。少女にとっての母とは、いつくしみ育ててくれる保護者であるばかりでなく、愛の対象でもあったのだ」

 

 10「楳図かずお その2 恐怖の完成」では、楳図の『赤んぼ少女』を取り上げ、成長しても赤んぼのような姿をした異形のヒロインである「タマミ」について以下のように述べます。

「最後『タマミは悪い子でした』と反省しながら死んでいく赤んぼ少女は、怪異、怪物の死で終わるという怪奇物の大団円の形をとっていたが、それはまぎれもない1つの悲劇だった。いつのまにか、このマンガの中では、タマミが主役にすり替っていたのだ。―人間的であるものがもっとも恐い。ヘビよりクモより不気味だった赤んぼ少女。人間の心の恐ろしさを見せつけたタマミ。しかし、彼女は超えられない肉体的階級性にあがいていた1人の悲劇のヒロインであったのだ」

 

 第二部「恐怖マンガの系譜」の13「少年誌発・妖怪ブーム」では、著者は「妖怪マンガに求められたもの」として、水木しげるについて述べます。

 

「水木しげるは鳥山石燕の創作した妖怪や江戸時代に流行した『百鬼夜行』を参考にして、昔話や伝承の中にいた妖怪達を紹介する形でマンガを描いていたといえよう。歴史を持つ妖怪達は、それ故に何処か気のおけない親しみやすさと懐しさを持っていたし、姿形の面白さが実に魅力的であった。妖怪達は多くの人間達によって創り出され、だからバリエーションに富んでいたのだ」

 

 続けて、著者は以下のように述べています。

 

「だが、水木以外のマンガ家達は、オリジナルな妖怪を描くことを好んだ。別に伝承妖怪に関して水木しげるの著作権みたいなものがあったはずはないのだが、この時期次々と登場した長編マンガのほとんどが、伝承妖怪を使っていない。それがため、時には、怪獣マンガの変形としかいいようのないものもあった。妖怪と怪獣は通底してはいるが別物だ」
  
 19「萩尾望都・その1 吸血鬼幻想」では、著者は「少女マンガの吸血鬼幻想」として、以下のように述べています。

 

「少年マンガが、吸血鬼(夜の悪魔、悪の化身)と戦い、滅ぼすことを中心に描くのに対し、少女マンガでは、常に吸血鬼に対するあこがれ、ロマンティックな想いが物語を支配するのだ。だから、少年マンガの吸血鬼は、黒マントを着て牙を剥き、時に怪物風に人に襲いかかるが、少女マンガの吸血鬼は、ベーゼにも似たエロティックな動作で襲いかかる。 もともと、ドラキュラ自体、貴族然とし、ダンディであることから女性に人気があったし、その姿に性的昂奮を感じることも多いという。ベラ・ルゴシ、そしてクリストファー・リーが、ドラキュラ役者として人気を得たのは、そのセクシーさにあったと言われる。いや、吸血行為自体が、疑似性交であるといううがった見解さえあるのだ」

 

 続けて、著者は以下のように述べています。

 

「エロティシズム、そして、不老不死。"ポー・シリーズ"の根底には、少女達の淡い性的な願望、エロスが潜んでいた。しかも、エドガーは、オド(生気)を吸う上品さを持ち、吸血行為も、美しく演出され、生臭さを感じさせなかった。19世紀のイギリスという物語の舞台も、ロマンティックだった。エドガーとアランの側から描かれることで気のおけないキャラクター性さえ獲得してしまったのだ」

 

 28「手塚治虫・その3 闇の記憶としての恐怖」では、「怪奇指向とロマンの希求」として、著者は以下のように述べています。

 

「怪奇マンガは、恐怖マンガは、手塚治虫によって生まれ、変型され継承され、今に至ったのだ。その長い歴史の中で、手塚治虫は節目節目には必ず怪奇物を発表し、後続達を刺激し続けた。手塚マンガの歴史とは、すなわち恐怖マンガの歴史と見ることもできるのだ。赤本時代の『魔法屋敷』『妖怪探偵団』から、『どろろ』『バンパイヤ』、最後の作品となった『ネオ・ファウスト』まで、手塚治虫が取り組み続けたものは、人間の本質とも繋がる闇の記憶としての『恐怖』『怪奇』だったのだろう」

 

 45「つのだじろう・マンガと心霊科学」では、「もう1つの世界の把握の方法」として、つのだの『恐怖新聞』には、さまざまな超常現象、心霊現象、奇蹟、UFO、E.T、スプーン曲げ、テレパシー、サイコキネシス、透視、予知などが次々に登場することを紹介し、次のように述べます。

 

「注目すべきなのは、ここで描かれた事件が、全て事実に基づいているとしつこく語られ続けたことだ。ちょうどこの頃、中間小説では半村良等の怪奇小説が流行しており、エーリッヒ・フォン・デニケン等の超古代史がもてはやされていた。完全な虚構ではなく、現実や様々な『物』『記録』を混ぜあわせることで生まれてくるリアリティ、本当らしく見せる嘘、語り方が人々をロマンに酔わせていた。つのだじろうが、何処までそれを信じていたかは別にして、ここでは子供達、いや青年や大人までもが好奇心を抱く、解明されていない『世界の謎・不思議』を、オカルト・サイエンス、心霊科学を使うことで、納得できる1つの解釈をつけ、しかもリアルに語ろうとしたのである」

 

 「週刊少年チャンピオン」の『恐怖新聞』に続いて、「週刊少年マガジン」では『うしろの百太郎』の連載が開始されました。『恐怖新聞』も高い人気を誇りましたが、心霊恐怖物のブームは『うしろの百太郎』によって起こっていくことになるとして、著者は以下のように述べます。 「この2本によって、背後霊、守護霊、地縛霊、幽体、エクトプラズム、ポルターガイスト、憑依、転生、コンタクトマン、霊波、こっくりさん、ウィージャ盤など、様々な言葉、概念が一般に知らされることになり、オカルト、心霊科学理解の素地が作られていったことはまちがいない。それは、多くの人にとって、まったく新しい、もう1つの世界への道を示すものだったのである」


 わたしは、子どもの頃から怪奇マンガが大好きでした。 手塚治虫、水木しげる、楳図かずお、古賀新一、永井豪、日野日出志、わたなべまさこ、萩尾望都、山岸涼子、そして、つのだじろう・・・・・・数多くの怪奇マンガを読み漁り、わたしの想像力は肥大化していきました。本書に書かれている怪奇マンガの歴史は、そのまま、わたしの精神史でもあります。