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太陽がいっぱい』

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No.1338


 『太陽がいっぱい』樋口毅宏著(扶桑社)を読みました。プロレス界を虚実綯い交ぜで描いた短編集で、「週刊SPA!」に連載されていたそうです。

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   本書の帯


 表紙カバーには、大きな瞳の中にアントニオ猪木らしきプロレスラーの姿が映っているイラストが描かれています。帯には、「樋口毅宏引退作品」「これが最強のプロレス文学です。」「『リアルを超える空想のプロレス史は燃えるように熱い! 』―大槻ケンヂ(ミュージシャン・作家)と書かれています。

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   本書の帯の裏


 本書に掲載されている短編小説は8編。
 「目次」は以下のようになっています。


Prologue      野心1963
Part.1       人生リングアウト
Part.2       ある悪役レスラーの肖像
Intermission    最強談義
Part.3       最強のいちばん長い日
Part.4       平凡
Part.5       野心2016

 アマゾン「内容紹介」では、各作品を以下のように要約しています。  

  
 「野心2963」は、戦後最大のヒーローである暴君の虐待に耐えながら、青年は復讐を誓う。「人生リングアウト」は、デビューから二十年。"落ちこぼれ"中堅レスラーは後輩スターの引き立て役が務まるか。「ある悪役レスラーの肖像」は、「血も涙もない極悪ヒール」は他団体を渡り歩き"アニキ"と出会う。「最強談義」は、中年プロレスファンが語り合うヨタ話。「最強のいちばん長い日」は、かつて「最強」と呼ばれた男は東京ドームの大一番を控える。出会いと別れの青春、転落までの道程を振り返る。「平凡」は、独白―札付きの不良がプロレスラーになり、世界中を回って見つけた人生の真理。トンパチ賛歌。「太陽がいっぱいは、正義メキシカン、マゾ美女、障がい者、スラム街出身、元陸上ランナー、飛行機事故の生き残り・・・・・・世界中のレスラーが高額賞金を懸けた"ガチ"バトルロイヤルに参戦。「野心2016」は、数多の名勝負を演じ、時代を作ってきたスーパースターが波乱万丈の人生を追想する。

 なぜか「力道山」だけが本名のままで、他のプロレスラーたちはみな仮名で書かれています。たとえば、ジャイアント馬場は「ジャイアンツ河馬」、アントニオ猪木は「カルロス麒麟」、ラッシャー木村は「クラッシャー佐村」、長州力は「パワー吉田」、藤原喜明は「藤木義則」、初代タイガーマスクは「フライングタイガー」、前田日明は「前谷旭」、高田延彦は「鷹羽幹彦」、船木誠勝は「舩城勝利」、鈴木みのるは「清水みのる」、獣神サンダーライガーは「聖獣ハイヤー」、アンドレ・ザ・ジャイアントは「アトラス・ザ・ジャイアント」、スタン・ハンセンは「エイム・ダンセン」、ヒクソン・グレイシーは「リクソン・ブスカぺ」、ホイス・グレイシーは「ロイス・ブスカぺ」・・・・・・キリがないので、これぐらいにしておきますが、要するに明らかに実在のプロレスラーをモデルとした人物が続々と登場するのです。

 それでは、実際のプロレスの歴史とはまったく違う物語が描かれているかといえば、これがほとんど史実と同じで、少しだけ違うのです。「さて、この小説は実際の出来事とどこが違うでしょう?」という間違い探しのような内容になっていて、「なんのために、仮名で書いたのか?」「これでは、ノンフィクションにしたほうが良かったのではないか?」とも思いました。
 まあ、プロレスラーの下ネタとかもバンバン書いているので、本名というわけにはいかなかったのでしょうね。それでも、けっこう面白かったです。わたしのような古い世代のプロレスファンはプロレスを活字化したものに飢えているのかもしれません。

 8編の中で最も良かったのは、「最強のいちばん長い日」でした。「最強」を謳うUWMインターナショナルのエース・鷹羽幹彦が、古巣である業界最大手の真日本プロレスとの全面対抗戦を東京ドームで行い、そのメインイベントで真日のエースと試合を行う。いよいよ出番という直前に1通の手紙が鷹羽に渡されますが、それはかつて袂を分かった兄貴分の前谷旭からの手紙でした。

 この手紙の内容には、わたしもジーンときました。
 おそらく、著者はUWFが好きで好きで仕方がなかったのでしょうね。
 わたしは、「この話が事実なら、どんなに素敵だろうか!」と思いました。
 1人のプロレスファンとして、前田と高田の和解を心より願っています。