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戦略がすべて』

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No.1329

 

 『戦略がすべて』瀧本哲史著(新潮新書)を読みました。 著者は生年月日非公表で、日本のエンジェル投資家、経営コンサルタントです。京都大学産官学連携本部イノベーションマネジメントサイエンス研究部門客員准教授、株式会社オトバンク取締役でもあります。

 

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    本書の帯

 


 本書の帯には「バカは市場で勝ち残れない。」というキャッチコピーとともに、「ビジネス書大賞受賞作『僕は君たちに武器を配りたい』の著者が教える資本主義社会の『攻略法』」と書かれています。

 またカバー前そでには、以下のような内容紹介があります。

 

「ビジネス市場、芸能界、労働市場、教育現場、国家事業、ネット社会・・・・・・どの世界にも各々の『ルール』があり、成功の『方程式』が存在する。ムダな努力を重ねて肩を落とす前に、「戦略」を手に入れて世界をコントロールする側に立て。『僕は君たちに武器を配りたい』がベストセラーとなった稀代の戦略家が、AKB48からオリンピック、就職活動、地方創生、炎上商法まで社会の諸問題を緻密に分析。日本人が取るべき選択を示唆した現在社会の『勝者の書』」

 

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    本書の帯の裏

 


 本書の「目次」は、以下のような構成になっています。

第一章 ヒットコンテンツには「仕掛け」がある   

1.コケるリスクを排除する―AKB48の方程式   

2.全てをプラットフォームとして考える―鉄道会社の方程式   

3.ブランド価値を再構築する―五輪招致の方程式

第二章 労働市場でバカは「評価」されない   

4.「儲ける仕組み」を手に入れる―スター俳優の方程式   

5.資本主義社会の歩き方を学ぶ―RPGの方程式   

6.コンピューターにできる仕事はやめる―編集者の方程式   

7.人の流れで企業を読む―人材市場の方程式   

8.二束三文の人材とならない―2030年の方程式

第三章 「革新」なきプロジェクトは報われない   

9.勝てる土俵を作り出す―オリンピックの方程式  

10.多数決は不毛である―iPS細胞の方程式  

11.人脈とは「外部の脳」である―トップマネジメントの方程式  

12.アナロジーから予測を立てる―北海道の方程式

第四章 情報に潜む「企み」を見抜け  

13.ネットの炎上は必然である―ネットビジネスの方程式  

14.不都合な情報を重視する―新聞誤報の方程式  

15.若者とは仲間になる―デジタルデバイスの方程式  

16.教養とはパスポートである―リベラルアーツの方程式

第五章 人間の「価値」は教育で決まる  

17.優秀な人材を大学で作る―就活の方程式  

18.エリート教育で差別化を図る―東京大学の方程式  

19.コミュニティの文化を意識化する―部活動の方程式  

20.頭の良さをスクリーニングする―英語入試の方程式  

21.入試で人間力を養う―AO入試の方程式

第六章 政治は社会を動かす「ゲーム」だ  

22.勝ち組の街を「足」が運ぶ―地方創生の方程式  

23.マーケティングで政治を捉える―選挙戦の方程式  

24.身近な代理人を利用する―地方政治の方程式

第七章 「戦略」を持てない日本人のために

 

 第一章「ヒットコンテンツには『仕掛け』がある」の1「コケるリスクを排除する―AKB48の方程式」の冒頭を、著者は以下のように書き出しています。

 

「2011年に出版した私の最初の単著『僕は君たちに武器を配りたい』は、主にハイテク製品で議論される『コモディティ化(汎用品化)』をテーマにしたものだった。図式的に言えば『コモディティ化』とは、特定のジャンルにおいて、どの商品の品質も同じように高まると、顧客にとって代わり映えしなくなってしまう状態を指す。結果として際限のない低価格化競争になるという流れに至る。実は、『コモディティ化』の波は、『人材』についても押し寄せてきている。『コモディティ化』した人材は、労働市場で価値が低いので、資金低下、労働の長時間化に陥ることになる。一方で、一部の有用な人材には需要が集中し、コストが高くつく」

 「人」を売るビジネスの「3つの壁」の第一に、著者は「どの人材が売れるか分からない」ということを挙げ、以下のように述べています。

 

「高いレベルの才能を持つ人材をスカウトし、金と時間をかけて育成し、宣伝広告費などに多くのお金をかけても、そのタレントが売れる保証は全くない。これはコンテンツビジネス一般に言えることだ。とりわけ映画に特徴的で、有名な俳優、監督、脚本家を起用し、大規模なタイアップがついても、大外しということはよくあるし、その逆もまたしかりだ」
  
 続けて、著者は以下のような映画のエピソードを披露しています。

 

「一説に史上最大の赤字映画は、キアヌ・リーブス主演、真田広之、浅野忠信、菊池凜子ら出演の『47RONIN』で約150億円の赤字だった。逆に、SF映画の金字塔にして全米興行収入歴代2位(インフレ調整後)の『スター・ウォーズ 新たなる希望』は、制作予算の獲得に苦労し、一部スタッフからは『ゴミ映画』と呼ばれ、現場では居眠りをされたくらいで、公開前はあまり期待されていなかったという」
  
 著者は、「人」を売るビジネスの「3つの壁」の第二として「稼働率の限界」という壁があること、さらには第三には、商品であるタレントとは契約関係にあり、売れれば売れるほど契約の主導権や交渉力がタレント側に移るということを指摘しています。 以上の問題点を解決する方法として、著者は、人材をまとめ売りする「システム」を作ることを提唱し、以下のように述べます。

 

「タレントを個別に作って売り出すのではなく、複数のタレントを包括する『システム』、すなわち『プラットフォーム』を作り、そのシステムごとまとめて売ろうというものである」
  
 この「プラットフォーム」はビジネスなどの基礎となるシステムを指しますが、その象徴的な存在こそ「AKB48」であるといいます。 著者の考えをまとめれば、「人」を売るビジネスには、「成功の不確実性」「稼働率の限界」「交渉主導権の逆転」の壁がある。そして、プラットフォームを作れば、「リスク軽減」と「持続可能性の向上」が期待できるということです。

 2「全てをプラットフォームとして考える―鉄道会社の方程式」では、「儲かるからくりと独占の強み」として、著者は以下のように述べています。

 

「プラットフォームビジネスは、人、物、金、情報をネットワーク化することで、そのネットワークの流量が増えるにしたがって、そのハブであるプラットフォーム事業が利益を上げるという仕組みだ。さらに、一度強いプラットフォームを築き上げれば、利益を独占し、リスクを回避できる」

 第二章「労働市場でバカは『評価』されない」の5「資本主義社会の歩き方を学ぶ―RPGの方程式」の冒頭で、著者は以下のように書いています。

 

「社会学の概念に、『予期的社会化』という言葉がある。これは、子供がその発達過程において、社会の縮図に近いことをあらかじめ行うことで、多くは遊びの形で行われる。分かりやすく言えば『○○ごっこ』である。かつて、日本が軍国主義時代を歩んだときには、子供達の遊びと言えば、軍人ごっこであったし、将棋も軍人将棋だった。また、スポーツの流行りすたりも、子供達の世界観に大きく影響する。小学生のときにメジャーなスポーツが野球だった世代と、サッカーだった世代では、チームプレーに対する考え方やグローバルに活躍することに対する考え方などが明らかに異なる」

 6「コンピューターにできる仕事はやめる―編集者の方程式」では、「スピルバーグは優秀な編集者ではない」として、著者は編集者の仕事について以下のように述べています。

 

「まず最終原稿の倍ぐらいの原稿を作り、様々な想定読者にそれを見せる。その反応をもとに、内容の取捨選択を行うだけではなく、読者像の見直しなども行う。装丁やレイアウトも、想定した読者像をもとにいくつものアイディアを試してから、最終案を決定する。 また、集客の点では、自他社のメディアとの連携や、販売チャネルの連動など、総合的なプロモーションをプランニングする。たとえ雑誌編集者であっても、広告主に対する営業も行い、コンテンツと広告の連動をはかって広告効果を高めることに意識を傾けなくてはいけない。定価2千円を超えながら、定期購読者をがっちり押さえている某雑誌の編集長の仕事を観察していたところ、まさにこのアプローチをとっていた」
  
 著者は「そうなると、コンピューターをしのぐ編集者というのは、コンテンツの精査と販売戦略の両方に通じ、かつそれを有機的につないでヒットを生み出せる編集者だ」として、さらには「極端に言えば、製作、脚本、監督まで務めるスティーブン・スピルバーグどころか、広告、店での配置、パッケージ、最後はアップルストアのレイアウトにまで口を出すスティーブ・ジョブズのような編集者である」と述べます。
  
 7「人の流れで企業を読む―人材市場の方程式」では、「会社を評価する『3つの市場』」として、著者は以下のように述べています。

 

「そもそも企業とは市場競争を通じて評価される。市場競争に勝利した企業が、より多くの資源を手にし、より多く市場に参加する、そのことで資源を社会全体で有効活用する仕組みこそが、市場経済だ。こうした市場経済の仕組みの中で、企業は、大別して3つの市場から評価されている。すなわち、商品市場、資本市場、そして、人材市場である」

 第三章「『革新』なきプロジェクトは報われない」の9「勝てる土俵を作り出す―オリンピックの方程式」では、「どの領域なら『楽勝』できるか」として、著者は以下のように述べます。

 

「勝つための良い戦略を立てるにはどうすればいいか。まず、『どの土俵なら勝てるかを見極め、勝てる土俵を選ぶ』ことにある。あまり頑張らなくても構造的に勝ちやすい場所を選ぶことが何よりも重要だ。ビジネスにおけるこうした土俵のことは『事業ドメイン』という。その上で、『楽勝でできることを、徹底的にやる』。これは私の好きな言い方なのだが、大きなリターンを得る秘訣である」

 それでは、オリンピックにおける正しい戦略とは何でしょうか。著者は「メダルがとりやすい競技を見極め、そこに資源を集中して投入する」ということになると断言し、以下のように述べます。

 

「実はオリンピックではメダルをとりやすい競技ととりにくい競技がある。たとえば、水泳や陸上はメダルがとりやすい。というのも、1人の優秀な選手がいれば、距離や種目の違いで複数のメダルをとることが可能であり、効率が良いのだ。逆に柔道のように体重別の競技だと、優秀な選手でも1種目しかエントリーできず、階級ごとに別の選手を育成しなくてはいけない。チャンスが増えるようでいて、限りあるリソース(資源)が分散してしまうのだ」

 そして著者は、「才能と努力を最大化するマネジメント」として、以下のように述べるのでした。

 

「最近はビジネスにおいても、『セルフマネジメント』などというキーワードが語られ、個人の力で結果を出すことが強調されがちだ。しかし、こういう時代だからこそ、『個人の才能と努力』を最大化するための組織、マネジメントの重要性を強調したい。 『才能と努力を成果につなげるには戦略が必要だ』―戦略的思考とはこの哲学に貫かれている」

 10「多数決は不毛である―iPS細胞の方程式」では、「イノベーションは少数意見から生まれる」として、著者は以下のように述べています。

 

「イノベーション、さらに言えば、資本主義というものは、少数意見が、既存の多数意見を打ち破り、新しい多数意見に変っていくプロセスにおいて最も大きな価値が生じるからである。全員が良いと思う考えは、多くの人が殺到するのでかえって過当競争になり勝者は誰もいない戦いになる。むしろ、ほとんどの人が注目していない、誰もいない領域を自ら開拓した者に多くの報酬を与えるのが市場メカニズムである。優秀とされる官僚が計画的に経済を発展させようとしても、新しい非連続な変化が起きにくいことは歴史が証明しているといって良いだろう」


  11「人脈とは『外部の脳』である―トップマネジメントの方程式」では、「ジェネラリストと専門家の関係性」として、著者は述べます。

 

「首相に代表されるように、トップマネジメントは、広範で多様な知識や能力を持つジェネラリストでなければならない。様々な利害関係、情報を総合して判断するのが仕事であるから、特定の専門知識を持っているだけではその任に堪えることはできない。しかし個人として様々な知識を蓄えることよりも、様々な知識を持つほかの人にどうアクセスできるかのほうが、より現実に必要なものとなってくる。各分野の先端的な知識を個人で完全にアップデートするのは困難であるし、先端的な知識は陳腐化も早く、自分で学習するには投資効果が悪いところもあるからだ」


 また著者は、「『異見』を取り入れた意思決定を」として述べています。

 

「考え方が対立する人材を取り込み、双方の視点を取り入れた上で、それらを統合し最終決断をするのも、トップマネジメントの重要な役割だ。分かりやすい例で言えば、古代中国の中で卓越したトップマネジメント力を持っていた、『三国志』の魏王曹操がその典型である。曹操は、様々な局面で、複数の臣下に相反する意見を出させた上で、どれかを選択するという意思決定方法を採用している。しかも、曹操はあらゆる方法を用いて、様々なタイプの臣下を登用している。親族を殺され、自らの仇敵であった賈詡すらその優秀さから臣下に取り込んでいる。とかく、トップは自分に賛同する人材で部下を固めがちだが、実は「異見」を取り入れることが質の良い意思決定を生むのである」

 さらに著者は、「多様な人的ネットワークこそ教養だ」として述べます。

 

「トップマネジメントにとっての『教養(リベラルアーツ)』とは、どのような知識を持っているか以上に、どのような人材とどのような関係を構築しているか、その多様性、広がりと深さに置き換わることになる。そしてこの話は、組織学習とトップマネジメントにとどまらず、一個人についても全く同じようにあてはまる。というのも、組織というのは知識交換や共同作業、あるいはそれを可能にする契約関係をスムーズにするために便宜的に定義されるものにすぎず、個人に置き換えれば、自分を中心にバーチャルな組織が存在し、自分がその意思決定者の一部をなしていると考えることもできるからである」

 そして、人的ネットワークの構築と教養の関係について述べられます。

 

「組織と個人の関係は文脈に応じて相対的になるわけである。このような見方に立てば、一個人といえどもその個人を中心としたバーチャルな組織のトップマネジメントであり、どのような人材とどのような関係を構築して、どのような知識を活用できているかが重要になってくる。言い換えれば、脳の中で複数の知識が関係づけられるように、人的ネットワークの中で複数の知識が関係づけられれば、それがそのままその人の外部の『脳』ということになるし、さらに言えば、教養体系ということになるだろう。つまり、教養として知識を学ぶことと同様の努力をもって、多様な人的ネットワークを構築することが個人の「教養」を深める方法として有益という結論になる」

 第四章「情報に潜む『企み』を見抜け」の13「ネットの炎上は必然である―ネットビジネスの方程式」では、「『炎上』のメカニズム」として、著者は以下のように述べます。

 

「著名人が感情的な反論をしてくるのを期待して中傷を行い、その期待通り著名人本人が反論するという『ウェブ果たし合い』というジャンルも存在する。宮本武蔵のような有名な剣士を倒せば、一躍有名になれることを期待して、無名の剣士が勝負を挑んだことに由来し、同じように有名なネット論者に極論をぶつけて喧嘩になれば、多くの人に注目されるので自分も有名になれるだろうという、やや浅はかな無名の人間が多数存在する」

 また著者は、「ごく一部の共感者を生み出す危険」として述べます。

 

「出版業界でも毎月のように同じような内容の本を出し続ける著者がいるが、この中には、読者からより高額を徴収できる講習会や会員組織への誘導を目的としている者がいる。彼らにとっては、内容が同じであることに気がつかない、あるいは気持ちいいと感じる読者を効率よくつかまえることが重要なので、似たような本を出し続けている面があるのだ」

 16「教養とはパスポートである―リベラルアーツの方程式」では、「情報消費社会の反動としてのブーム」として、著者は以下のように述べています。

 

「常にネットワークと接続していることは、単にコンテンツとつながっているだけではなく、仕事やプライベートでの人間関係とも絶えずつながっている状態になる。即ち、現代人は過剰な情報と人間関係にさらされ、たとえ人間自身の情報処理能力が上がっているとしても(実際、歴史的に見れば、人間の話す速度、聞いて理解できる速度、読書速度は上がっている)、それを上回るスピードで刺激が増えているのだ。つまり、あらゆる人が情報処理速度を上回る刺激に悩まされる、そういう状況なのである」

 著者は「心地よい情報環境の危険」として、人々が再び自分の心地よい情報、人間関係を再確認する情報環境に回帰しつつあることを指摘します。自分の読みたい新聞を読み、聞きたい人の意見を聞き、見たいテレビを見るのです。

 

「蛸壺型の社会認識からの脱出」として、著者は述べます。 「その結果起きたことが『蛸壺型』の社会認識の広がりである。心地いい情報、意見の合う人間としか付き合わないために、『私の周りはみんな私と同じ意見だ』『私の意見は間違っていない』と思ってしまうのだ」

 さらに著者は、「教養」ブームの本質について述べます。

 

「インターネットによる情報爆発は、世界をつなげるという理想と裏腹に、自分の狭い認識をお互いに再確認しあうという真逆の社会を生むことにもなっている。この文脈までくると、なぜ今、教養が問題になるかが分かるだろう。教養の1つの機能は、アラン・ブルームの言葉を借りれば『他の考え方が成り立ちうることを知ること』にある。つまり、情報の爆発とその防衛による蛸壺化を経て、失われた普遍性を取り戻そうとする動き、これがすなわち『教養』ブームなのだと私は考えている」

 そして著者は、「自分と異なる思想に触れる」として述べるのでした。

 

「それでは何が『教養』か。極端に言えば、それは『自分と異なる思想』全てを指す。自分が普段手にとらないような分野の書籍、雑誌を読むこと、普段自分がであわないような人がいる場所に行くこと(これは簡単に言えば外国だが、物理的に日本の外である必要もない。蛸壺化した社会においては、隣の家ですら『外国』であろう)。そういったことが、すなわち、『教養』を得るということになるだろう。 異なる『種族』の文化を理解するという意味では、『教養』は『文化人類学』のアプローチに近いかもしれない。実際、マーケティングの最先端の世界では文化人類学のアプローチが消費者理解に活用されている」

 第七章「『戦略』を持てない日本人のために」では、「戦略」という言葉について、以下のような説明があります。

 

「『戦略』という語は、英語で言えば『ストラテジー』であり、軍事用語から来ている。古典的な分類によれば、意思決定はそのレベルに応じて、上から『戦略』『作戦(オペレーション)』『戦術(タクティクス)』の3段階に分かれている。作戦はイメージしやすいだろう。これは目標が設定されたときに、そのためにするべきことをより効率よく行うための仕組みづくりである。これは、会社で言えば、基本的な業務プロセスの作り込みやその改善ということになる。戦術は、さらに抽象度が落ちて具体性が増し、現場レベルでの細かな動き方ややり方の調整というものだ」

 本書全体を通じて、著者は「戦略的思考」の重要性を力説します。 それでは、どのようにすれば「戦略的思考」を身につけられるのでしょうか。 著者は、「戦略的思考」を身につける方法について以下のように述べます。

 

「意思決定の機会を多く得るために、ビジネススクールなどで行われているのが、ケーススタディを大量にこなすという『疑似トレーニング』だ。理論を学ぶだけの方が早いのにあえてケースメソッドが用いられるのは、理論を覚えるのとそれを実践するのは別のスキルだからだ。これは元々ロースクールの学習方法だ。法律の準則をそのまま暗記するのではなく、自分でルールを発見したり適用したりすることを目標にしている。単に知識を記憶し再現できるだけでは法律家としての一般的な能力は身につかないからだ」

 続けて、著者は以下のように述べています。

 

「スポーツや将棋などの競技、音楽家、職人など様々な『達人』が、どのようにスキルを上げているかについての研究では、自分に合わせた『独自のトレーニング』を行っていることがわかっている。自分に必要なスキルを高負荷かつ効率的に鍛えるトレーニングを独自に開発し、それを日常的に繰り返す。将棋であれば、闇雲にたくさん対局するよりも、詰め将棋をやった方が終盤での読みの力を高めるには効率が良いというのと同じだ。友人の夫である元アメリカ海軍特殊部隊の人は、電車の待ち時間になるといつも、集中力と反応速度を維持するトレーニングを行うのだという。達人たちは暇さえあればそうした小さなトレーニングを行っている」

 そして最後に、著者は以下のように述べるのでした。

 

「同じ考え方をビジネスマンに応用するのであれば、身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して、戦略的に『勝つ』方法を考える習慣を身につければいい。世界的な経済問題を考えるのもいいが、自分のいる世界で起きたこと、自分の目に映る物事、自分の気になるものに関して考えることのほうが役に立つ」