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秘儀の世界から』

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No.1165

 

 12月24日はクリスマス・イヴですね。キリスト教は世界宗教ではありますが、グノーシス派をはじめとして大いなる秘儀の体系を持っています。
 『秘儀の世界から』ヘルマン・ベック著、西川隆範訳(平河出版社)を再読しました。この読書館で紹介したルドルフ・シュタイナーの著書『秘儀の歴史』と同じく、『儀式論』(仮題、弘文堂)の参考文献として読み直しました。著者のヘルマン・ベックはドイツのインド学者です。1875年ニュルンベルグ生まれ、ミュンヘンで司法官試補を務めた後、ベルリン大学でサンスクリットを学び、1909年から同大学でインド学、チベット語学の教鞭をとりました。
 その後、ベックはシュタイナーの人智学に共鳴。22年には大学を辞めて、シュタイナーの助言で創始されたクリスチャンゲマインシャフト(キリスト者共同体)の牧師になり、その中心地シュトゥットガルトにあって、仏教学、神秘学、言語学、音楽に関して、多彩な著述活動を終生続けました。代表作に『仏教』(岩波文庫)があります。

 

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   本書の帯


 

 本書のカバー絵には、J・J・ルクー(1756-1825)が描いた「田園にあるケレスの青葉の神殿」が使われています。また、帯には「シュタイナー思想をベースに古代の密儀のヴェールを剥ぐ!」と大書され、続いて「ゾロアスター、イシス、モーセ、エヴァ、ブッダ、そしてキリスト―人智学思想を背景に、人類の精神史における原初の『秘儀』の姿をイメージ豊かに描き、その本質と内的連関を明らかにする」

 

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   本書の帯の裏


 

 本書の「目次」は以下のようになっています。


「序言」
第1章 ゾロアスターの神聖な原言語
第2章 イシス:エジプトの星の叡智とゾロアスター
第3章 イシスの名まえ
第4章 エヴァ:モーセとエジプトの密儀
第5章 ブッダの涅槃
第6章 生命の木
第7章 古代の密儀におけるキリストの秘密
「訳者あとがき」

 

 第1章「ロアスターの神聖な原言語」で、著者は以下のように述べます。


「『神秘学概論』およびデュッセルドルフにおける連続講演で、ルドルフ・シュタイナーは、火、熱エーテルが、物質的および霊的―魂的な、あらゆる宇宙生成の中心点にあること、創造の祭壇の偉大な宇宙の供犠の流出そのものであることを語っている。このように、わたしたちはキリスト教以前の宗教、密儀、儀式のなかに、燃えさかる神聖な炎を見出す。地上の儀式は宇宙の儀式の模像であり、地上の炎は宇宙の供犠の炎の模像である。それゆえ、古代の密儀と儀式のあらゆるところに、『神聖な炎』の崇拝が見られるのである。しかし、ゾロアスター教ほど火の神聖さを感じさせる宗教はほかにない」

 

 第7章「古代の密儀におけるキリストの秘密」で、著者はゴルゴダの秘儀について以下のように述べています。


「ブッダの時代、ゴルゴダの秘儀の5世紀まえには不可能だったことが、キリストにおいて地上の事実となり、復活の事実となった。ブッダは地上の身体のなかにとどまる可能性を語ったのだが、キリストは死を通過していく。あらゆる真実の愛は、低次の形においても、魔術的に作用する。ゴルゴダの秘儀は、神々の最高の愛の行為であり、地球を変容させる白魔術の最高の行為である。それは、地球の歴史全体における、最大の魔術的なできごとであった」

 

 さらに著者は、ゴルゴダの秘儀について以下のように述べます。


「ゴルゴダの秘儀において、かつてインドのヨーガにおいて自家薬篭中のものでありながら、真の精神の目的から逸脱させるものと受け取られるようになった魔術的な力が、正しく成就されたのである。キリストは、ヨーガの魔術的な面の成就者でもあるのである。キリストの力による地球の変容こそが、そのもっとも内的な本質において、キリストに浸透された地球の働きすべての高次の魔術的な目的である。神秘的な自我の内面化のために地上の活動を拒否することは、正当なことではなくなった。人間の自我は、キリストー地球―自我として、精神的な魔術的力によって地上的―自然的なものに働きかけ、変化させ、改造することに意識的になるにつれて、完全なものになるのである」

 

 また、エジプトの密儀について、著者は以下のように述べています。


「エジプトの密儀全体は、この決定的な人類体験に向かっていた。しかし、エジプトの地においては、この『来たるべきもの』は果たされなかった。エジプト人は、この決定的な第四のソティス周期に果たされるものから、ただ外的な覆い、『墓』のみを受け取ったのである。
 エジプトの密儀は墓の周期に入った。墓の文化、ミイラの文化は、エジプトの外的かつ精神的な文化になった。イシスの口は閉ざされた。背後にはいかなる明るい光景も開けていない『死の扉への接近』のみが、密儀の体験として残った。密儀に参入した者は、死と墓の闇と孤独を体験したのである。人類の歴史において、いかなる時代にも、墓と死がエジプトほど衝撃的に体験されたことはない。この墓と死の体験、古代密儀の叡智の埋葬が、キリストにおける復活に先行しなければならなかったのである」

 

 そして著者は再び、ゴルゴダの秘儀について述べます。


「キリスト教以前のさまざまな関連を洞察すると、第四の決定的なシリウス周期がエジプトではなく、パレスティナで、ゴルゴダの密儀において遂行されたことが感じられる。ヘブライ人がエジプトから脱出して以来用意されてきたゴルゴダの秘儀自体が、エジプトの密儀の第四の周期つまり最終期であったと感じられるエジプトの密儀は、キリスト教以前におけるキリストの秘儀であった。密儀の本質から離れたエジプトの外的な墓の文化は、ゴルゴダの秘儀によって、生きた内容を加えられた。地球の墓をとおって、キリストは復活へと向かった。キリストの復活は、地球の未来において感性するものである。沈み去った古代の密儀の宝も、キリストにおいて復活する。古代の星の叡智、キリスト教以前の聖杯の啓示は、聖杯キリスト教、秘教的キリスト教として、ふたたび現われるのである。そして、復活したキリストのなかで目覚める人類の魂、新しいイシスが、星の文字を新たに啓示する」


  最後に「訳者あとがき」で、今は亡き西川隆範氏が書いています。


「シュタイナーは『神秘的事実としてのキリスト教と古代の密儀』で、ブッダの生涯における死がキリストの生涯におけるタボール山上での変容に相当するとし、ブッダの生涯における終着点の段階から、キリスト本来の活動ははじまるとしていますが、注目すべきことにベックは、『世の終わりまで人類と生きものすべてのために働き、地球の運命と結びつくために、ヨーガの力を使うことができる』というブッダの言葉に、すでにキリスト的なものが見られることを指摘しています。この観点は一貫しており、遺稿集『インドの叡智とキリスト教』でも、『キリストに似た地上での働き、地球の目的と未来に結びつく可能性について語った』ブッダ、『いかに霊的な力が地上と結びつき、地上を変化させることができるかを語り、自分がそのような最高の供犠の用意ができていると語った』ブッダについて書いています。ブッダはキリストに等しい働きをする可能性があったのに、当時の人々にはそのようなことがわからず、ブッダは『孤独に』涅槃に赴いたというのです」


 わたしは、つねづね、シュタイナーの人智学とは仏教とキリスト教のブレンド的な存在であると思っていましたが、西川氏の発言はそれを見事に証明してくれています。